ブログ記事59件
海江田組、組員達御用達の喫茶店。人で賑わう店内の片隅にあるテーブルに、丈二と洋一の姿があった。あからさまに落胆の表情を浮かべた洋一は、目の前に置かれたホットコーヒーをあおるようにグッと飲み干して深いため息をつく。「あ〜〜〜あ…………こんなコトならアニキの話なんざ聞かなきゃヨカッタよぉ…………」丈二はそんな洋一に対して申し訳ない気持ちも少しはあったが、気遣うそぶりも見せずに「フン!」と鼻であしらった。「だから言っただろーが…………そう上手く行ってりゃいいいんだけどってヨ…………」「そうだ
府中刑務所の重々しい鉄製の門の前。海江田組の組員たちはその扉を囲むようにして集まり、その時を待っていた。賢治の存在感は組の中でも際立っており、それを知る者達はそれぞれ様々な表情でその場に立つ。山崎組の面々は待ちに待った日が訪れたとはしゃぐ様に談笑し、氏家組の面々は碌に話もせず、お通夜のように押し黙ってその場にいる。そして、そのなんとも言えない空気の中に、一際真剣な表情で門を見据えながら立つ丈二の姿があった。丈二は誰とも言葉を交わさず、押し黙って扉を睨みつける。その雰囲気は側にいる者が
俺の2回目の人生は、江原との戦いの日々だったと言っても過言ではないだろう。小さないざこざから始まった因縁はどんどん規模が大きくなって行き、それに伴い沢山の人たちを巻き込んでしまう。俺たちがお互いを憎み合い、譲らずにいたおかげで一体どれだけの人がその人生を狂わされ、その命を落としたのだろう。俺は最愛のカオリを江原自らの手によって殺されている。カオリは俺との間に出来た子供をお腹に宿し、これから結婚して幸せな家庭を築こうとした矢先にだ。俺は身を引き裂かれるように悶え苦しみ、止めどなく溢れる憎