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(ジェジュンside)物心ついたときには父親はおらず、母親が一人で俺たちを養っていた。だから母さんは、仕事で家を開ける事が多かった。ユチョンは身体が弱い子供で、ユチョンが熱を出すと母さんが仕事に行けないから、俺はユチョンが風邪をひかないように、熱を出さないように気をつけなければならなかった。まだ母さんに甘えたいユチョンは、よく母さんを呼びながら泣いた。こればかりはどうしようもないのに、まるで自分が悪いかのような気がして俺はユチョンに謝った。気をつけていても熱が出てしま
大きな体のユノが、落ち着かない様子でウロウロと歩き回っている。「もう!お兄様ったら!二人目なのに、少しは落ち着いて下さいませ!」「二人目だろうと心配なものは心配だ!時間がかかりすぎではないか?」「そんなに心配なら、傍で手を握って差し上げればよろしいものを」「ばっばかもの!そんな…辛そうなジェジュンを見るのは耐えられんっ…」「まったく!唯一王と言っても、男はこういう時ダメなんだから!」双子の母親となったミヨンは、日に日に逞しくなっている。ユノにダメだしをしながら、二人の子ども
―――出会った時から惹かれ合い、決して誰にも引きはがせない。どうしようもなく求め合い、本能のままに抱き合う魂の片割れ。人はそれを「運命の番」と呼ぶ――――うららかな春の日差しの中、真新しい制服に身を包んだ学生たちが、楽しそうに歩いている。少し大きめの制服、後ろには嬉しそうな母親たち。親と歩くのが少し恥ずかしい年頃で、少し離れて歩きながらも、何かと世話を焼かれている。今日、キムジェジュンは中学生になった。スラリと背が伸びたが、細身の体はそのままで、遠くから見ると女の子
やっと落ち着いたチャンミンに、ユノがコーヒーを淹れた。ユノからチャンミンにコーヒーを淹れるのは、珍しい事だ。「落ち着いたか?」「はぁ…。ちょっと理性を持って行かれそうでした。ものすごいフェロモンだ。あのバニラちゃんが、あんなフェロモンだったなんて…」「俺も驚いた。だが…俺は確信している」「何をです?ちゃんと説明してください」ユノは、ざっとチャンミンに説明をした。「番に…ですか?」「あぁ、そう考えている。俺たちは運命の番だ」「しかし…」「お前の言いたいことは分かる。
古い雑居ビルの一角、西方派事務所に、チャンミンと数人の部下はいた。「な、なんだ、おまえらっ」「私はCYグループの第一秘書です。単刀直入に言います。キムジェジュンを私達が買います」「はぁ?キムジェジュン?誰だ、知らねーなぁ~」しらばっくれる構成員に、チャンミンはフッと笑った。「知らない訳がないでしょう。アナタ達がわずかな借金のカタに捕まえ、チョ議員に高額で売りつけようとしているあの子です。それを私達が買うと言っているんです」「は?な、何言ってんだ。簡単に渡すわけねーだろ!あ
店は混んでいるのに静まり返り、みんな下を向いていた。ペロリとスンデを平らげたジュンスを連れ、二人はお金を払って店を出た。「美味しかった!また来てもいい?」「もちろんです。ありがとうございました」「あ、君、名前なんていうの?」「僕はキムジェジュンと言います。是非また来てくださいね^^」「うん。じゃあまたね~」二人が店を出ると、一斉にはぁ~~という声が聞こえた。まるで息を止めていたかのような、緊張が一気に解けたようなため息だった。「どうしたんですか?おじさん」「ったく
「シン王様!来ました!獣王族が来ましたぁぁっ!!」シンの所に衛兵が走ってやって来た。「兵の数は?」「分かりません!しかし…3千ではありません!もっともっと多い…」「どういうことだ?」ジングクが静かに言った。「恐らく獣王族を倒しに行った1万の兵が、あちらに寝返ったかと…」「何ぃ?」「もともと下僕の兵たちです。こうなる事ぐらいは想定内です!すぐに私の騎馬隊を向かわせます!」「お前の騎馬隊はカングンと並ぶ最強の軍。頼んだぞ!」「はっ!」ジングクが部屋を出て、シンは
ジェジュンの部屋に入ると、すぐにジェジュンはユノに抱きついた。はぁ~~男臭い♡汗と埃の匂いがするけど、それが何かエロい…♡ムフフユノの制服にしがみつき、クンクン匂いを嗅ぎながらボタンを開き、厚い胸に飛び込んだ。ドンとベッドに押し倒されて、そのままベルトとファスナーを下ろされる。どうやら、今日は制服を脱がせてもらえないようだ。だが、ジェジュンが嬉々としてユノのズボンを脱がしてきたので、ユノはそのままされるがままに従った。「うっ…は…」ユノジュニアを手や口で奉仕しながら
「まぁ…ちょーっと体を触られるぐらいさ」いくら鈍いジェジュンでも、男が言っている意味は理解した。「い、嫌です…!そんな…」「だったらこのままホームレスになるか?バーさんは病院を追い出され、どうやって生きていくんだ?今までお前を育ててくれたバーさんに、そんな仕打ちをするつもりか?」「…っ!」男達に囲まれ、助けてくれる人は誰もいない。ジェジュンは恐怖に体が震えたが、必死で我慢した。「ま、ゆっくり考えろ。考えたところで、どうしようもないがな。また来る」男達はそう言っ
やっと起きたジェジュンは、目をこすりながらボーっとしていた。ジュンスに新しい抑制剤を貰うと、やっと頭がはっきりした。「ユチョンが特別に調合して作らせたんだ。香りも消えたね。どう?身体軽くなった?」「うん。すごく楽になった!ありがとう」「良かった。それでユノ兄がね、話があるって…」「え?ユノさん?お、お風呂に入らなきゃ!何着たらいいかな!あぁ顔むくんでる!どうしよう!」バタバタと部屋を歩き回るジェジュンに、ジュンスはクスッと笑った。まるでいつかの自分を見ているよう…僕もユチョ
病院にジェジュンを連れて行き、手当てを受けさせる。ガラスで切った足には、包帯が巻かれているが、大事には至らなかった。ジェジュンは安心したのか眠ってしまい、頬に付いた青あざを見て、再びユノの怒りに火がともる。チャンミンが来て、ジェジュンの痛々しい様子に眉をひそめた。「ユノ兄、ジェジュンは?」「大丈夫だ。目が覚めたら家に連れ帰ってくれ」「行くんですか?」「あぁ。二度とこんな事させない」「分かっているでしょうが…一応あの人は、あなたの母親だという事を忘れないで」「うるせぇ」
チャンミンは、忙しい合間を縫って、シンガポールのチャンギ国際空港に降り立っていた。美しく充実した施設で世界的にも評価が高い空港だが、忙しいチャンミンは早足で歩いていた。ジェジュンに冷たくされ、すっかりポンコツになったユノのせいで、なかなか時間が取れなかったが、どうしても確認したい事があった為、無理してやってきたのだ。ジェジュンを慰めに行ったユチョンが、ジェジュンにも時間が必要だと言うので、ホテル暮らしをさせている。「ジェジュンが怒ってしまった」「ジェジュンに嫌われた」と落ち込むユノに
一週間後、ジュンスが作ったジェジュンの部屋が出来た。一階にある入り口近くの倉庫だった場所をリフォームしたので、女性達との隔離が成されている。いくら子供とはいえ、ジェジュンも男なので、両方に気を遣った造りになっている。お風呂もトイレも部屋にあり、ベッドや机、簡単なクローゼットもある。質素ではあるが日当たりも良く、ジェジュンは口に手を当てて言葉を失った。「そんなに予算が無かったから…質素で悪いんだけど…」ジュンスが申し訳なさそうに言う。ユチョンと番であるジュンスは、ユチョン
※当ブログに掲載されている小説の登場人物は、実際の人物、団体等と一切関係ございません。完全に作者の妄想小説であり、そういったものが苦手な方は読むことをお控えください。◆◆◆穏やかな朝日を受け、川のせせらぎがきらめいている。川辺に立つ柳がゆらゆらと揺れ、それと重なるようにしだれ桜がしなり、揺れている。緑の柳の合間から見える、濃いピンクが映える。通り過ぎる車に、散った花弁が舞い上がった。長い冬を超え、やっと見せたその風景は。うららかで、匂い立つ、春そのもの。
ジュンスさんに、部屋の外で待つように言われたけど…落ち着かない。この家に住めるよう、このお屋敷の主人であり、CYグループのトップに掛け合ってくれるという。初めてこのお屋敷に入ったけど…家というより、高級ホテルみたいな洗練された建物。廊下には絨毯が敷き詰められて、部屋もいくつもあって、絵画やオブジェが飾られている。家に入る前も、壁がどこまでも続いていて、どこまでがこの家の敷地か分かんなかったもん。はぁ…お金ってのは、ある所にはたくさんあるんだなぁ。僕には全く関係のない世界って感
肩を落としたジェジュンをスンジュンに託し、チャンミンはユノの病室に戻った。椅子を引きずりユノの枕元に座った。誰もいない病室で、ユノはベッドに背中を預け、小さなため息をついていた。チャンミンはふぅと一息ついてから言った。「…で?いつまで続けるおつもりですか?」「……何がだ?」「心配しなくても今ここに、私の他には誰もいません」チャンミンの言葉に、ぼんやりと座っていたユノの目に力がみなぎった。「……いつ、分かった?」「やっぱり」チャンミン
CYグループ理事室で、副理事長のムンスミンは、秘書からの報告書を片手に震えていた。「何ですって…?ユノがオメガを屋敷に住まわせてると…?母である私に何の報告も無しに、いつもいつもユノは勝手な事を!」濃いメイクに大きなダイヤの指輪を光らせ、忌々しい顔で長い爪をカチカチ鳴らしていた。スミンは、ユノの父チョンウンソクの妻であり、ユノの母、そしてチョングループの副理事長である。江南にある高級タワーマンションに一人で住むスミンであるが、時折ユノが住む屋敷に顔を出す。スミンも、ユノの子供に
物心ついた時から、僕はオメガ専門の保護施設にいた。ここには捨てられたオメガの子供達が30人ほど、国の支援金で暮らしている。アルファに無理やり襲われ出来た子供、生まれた子供がオメガだったため捨てられた子供、番解除が出来なくて処理されたオメガの子供…。オメガ保護法が出来てから、捨てられるオメガの子供は減ったが、それでも時々つれて来られる。僕がどういう経緯でここに来たのかは分からない。ただ分かっているのは、僕が「捨てられた子供」という事だ。園長は僕たちに言う。「養子に行くのが、君
元気になってきたジェジュンは、朝餉が終わると庭に向かい、朝日を浴びるのが日課になった。木漏れ日の下の朝日を浴びて、眩しい新緑の世界に目を閉じる。初夏の日差しは眩しく、気の早いセミが鳴き、水をカメに移すシンドンが汗を拭いている。すると、遠く町の方から、何やら珍しい音が聞こえてきた。(シンドン、なんだか町の方で、旗が揺れてるね)「あぁ、祭りがあるようです。露店が出たり、大道芸が来るとか」(祭り??)その途端、ジェジュンの目がキラキラと輝いた。キョロキョロと辺りを見回し、馬
第一章〜異世界召喚〜5万人の観客、飛び散るシルバーテープの雨、轟く音響、照明の作る煌びやかな世界。そしてステージ上を死に物狂いで駆け抜けた僕達は舞台のセンター、奈落に仕込んだマットレスに向かって飛び降りる。暗転の中アンコールに応えるために着替えを急がなくてはいけない。花火を合図に背中から…マットレスに…落ち…落ちない?というより…ずっと…。「ち、ちゃんみん、な、なんで?なんで?」暗闇の中ユノヒョンの声が近くで聞こえる。「あー、何ですかね、底がないですねこれ。」「何ゆって、
イトゥク先生の所から帰ると、ジェジュンが屋根部屋の前で蹲っていた。その瞬間、ジェジュンへの愛しさが爆発した。ジェジュンに会いたくて、ずっと一緒にいたくて。子供の頃交わした小さな約束、孤独の中で唯一心を許せる存在だったジェジュン、何も与えられなかった自分たちが唯一欲した存在、それがジェジュンだった。あんなに会いたかったジェジュンと、運命のいたずらで別れ別れになり、記憶さえ失って。でもまた巡り合えた。やっぱり、俺にとってジェジュンは運命の人なんだ…!言葉が出ない。
ヒチョルが約束の場所、日本式料亭に着くと個室にはもうチャンミンが待っていた。「すみません、遅れまして」「いいえ、キム室長。私もちょうど今来た所です」チャンミンは、血の気のないヒチョルの顔色を見て驚いた。さすがにここ数日、寝る間も惜しんで奔走していたか…。ヒチョルは席に着くと、料理に手を付ける前に話し始めた。「もうご存じかと思いますので、単刀直入に申し上げます。是非チョン家のお力を貸していただいて、マスコミの報道を押さえて頂きたい」「キム室長、分かっていると思いますが…そ
「少し、昔話をしようか…」ユチョンは静かな口調で話し始めた。「俺はまだガキの頃、ジュンスを手放しちまった事がある。俺がバカだったから気付けなかったんだ。そのせいでジュンスを守れなかった。俺の力が足りないばっかりに、ジュンスに一生消えない傷を負わせた」「え…?消えない傷って…まさか…」「あいつはアルファに売られた経験がある」ジュンスはいつも笑っていた。同じオメガであるジェジュンにいつだって優しくしてくれて、守ってくれた。そんなジュンスに、辛い過去があったなんて考えた事
長ソファで、ジェジュンの膝枕で眠るユノと、そのまま寝ちゃったジェジュン。「ふふふ。ユチョン、あれ見て」「ハハハッ。平和だなぁ」日々、スーパーαとして、チョン家当主として、CYグループのトップとして、大きな重責を負いながら働くユノを見るのが、ユチョンは辛かった。同じチョン家に生まれながら、その全てをユノが請け負い、自分はほんの少しのサポートをするだけですんでいるのは、全てユノのおかげだ。自分は決してユノの様にはなれない。だが、その事でユノから責められたことは一度としてないのだ。
バスの窓から、懐かしい景色が見えてきた。たった6年しか過ぎていないのに、随分懐かしい気がした。バスを降り病院に着くと、ジェジュンは緊張しながら中へ入った。「爺ちゃん、ジェジュンが来てくれたよ」じーちゃんは頬がこけるほど痩せこけ、土色の顔色をしており、素人ながらもう長くないんだと分かった。ジェジュンに気が付くと、ベッドを起こし、にっこりと笑ってジェジュンの手を取った。「よく来たな…。死ぬ前に会えてよかったよ」「じーちゃん、ごめんなさい。僕知らなくて…。お見舞いにも来ないで
いつの間にか日は暮れて、ほの暗い街灯に照らされたまま、ジェジュンはベンチに座っていた。動けなかったと言った方がいいだろう。体は冷え切って、手は氷の様に冷たいのに、震える事すら忘れていた。目の前に、キッと高級車が止まる。中から、焦ったユノが下りてくるのが見えた。「ジェジュン!どうした?大丈夫か?」ジェジュンはぼんやりユノを見上げた。大好きなユノが来たのに、ジェジュンの心に怒りの炎が灯った。「なんで…ここが?…あ~…GPS?なるほどね…」「ジェジュン…?」ジェ
ジェジュンが、ソウル大に合格した。「えっ!ほんとにソウル大合格したの?よく頑張ってたもんね!すごいよ!ヨカッタね~♡」「ありがとうジュンス兄!嬉しいよぉ~♡」ジュンスは飛び上がって喜んでくれて、二人は抱き合ってぴょんぴょん跳ねた。ユノ、ユチョン、チャンミンも喜んでくれたが、この3人はソウル大に合格するという事がそれほど難関ではない人達なので、ジュンスほどの驚きはなかった。合格祝いにみんながプレゼントをくれた。ジュンスは可愛いバッグ、ユチョンは高性能タブレット、チャンミンは
やってきたジュンスは、ソファに眠るジェジュンを見て、部屋に充満する香りに気づき驚いた。「え?もしかして…これってジェジュンのフェロモン?」「そうだ。ヤバイんだ」「まさか…ユノ…!」「安心しろ。項も噛んでないし、そもそも最後までヤってない。こいつにはまだ早いだろ。危険だ」ホッとしたジュンスは、ユノの様子がいつもと違う事に気づいた。どうやら、ユノは心からジェジュンを心配しているらしい。ジュンスはオメガであるため、オメガのフェロモンにあてられる事はないが、このフェロモンは強烈
次の日、朝食の為レストランに降りると、ユチョンとジュンスがコーヒーを飲んでいた。昨夜は熱い夜を過ごしたのだろう、ユチョンは「やぁおはよう!」とキラキラした笑顔を見せ、隣でジュンスは気だるげに肘をついていた。「おはようございまーす♪」元気そうなジェジュンの姿を見て、ユチョンはアレレ?と思った。もしかしたら今朝は起きて来られないのでは?と思っていたから。「え?ユノ兄…?もしかして、まだ?」「うるさい!今、段階を踏んでいる所だ!」旅行に来てまでもヤらないなんて、ユノ兄はよ
ヒチョルは一枚の紙をチャンミンの前に差し出した。「これは…」それは、ジェジュンの診察記録だった。そこには、こう書かれていた。「ホルモン異常。不妊の兆候あり」…ジェジュンが…不妊?これはユチョン達と「ヒートが来ない」とオメガ専門の病院に行った時の記録か。という事は、ユチョン達は知っていたのか?さすがのチャンミンも、一瞬狼狽えてしまったが、そこを見逃すヒチョルではなかった。「こちらといたしましても「不妊のオメガと番になる」などという最悪のケースは避けたいので。ご