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昨晩、テリィはケビンに言った。「ジャレッドと並べてローリーを演じることになる。実質、軽いオーディションみたいなものになるだろうな」「だよな」「発音を整えたほうがいい。観客は全員イギリス人だ」「お、おぅ……やってみるよ」ケビンは深く息を吸い込み、わずかに顎を引く。台本を手に取り、ローリーの第一声を発した瞬間……テリィの眉が、わずかに動いた。(……ん?)耳がその違いを先に捉えた。ケビンの声質はいつもと同じだ。だが、その語尾の処理、母音の抜き方、子音の立て方。(イギリス英語の……舞
ロンドン芸術座の稽古場には、木の床を叩く靴音と、台詞を読み上げる声が響いていた。テリィは主役の大尉役として立っていた。その隣に立つのは、準主役ローリー役のジャレッド・カーター。長い手足に整った顔立ち、立っているだけで絵になる俳優だ。だが、どうしても、何かが足りなかった。「ローリーの台詞、“夜明けを恐れているんじゃない、失うのが怖いだけだ”その言葉には、怒りが混じっているはずです」テリィの声は穏やかで、けれど鋭さを帯びていた。ジャレッドは小さく眉を寄せる。「怒り、ですか……?」「
1月。メイフェアの街角を、馬車と車が交錯しながら過ぎてゆく。テリィはフィリップ卿の執務室を訪ねていた。暖炉の前で紅茶を飲んでいた卿が、穏やかに微笑む。「ブロードウェイで上演された『BeforeDawn』、あれを観たという男がいる。今、ロンドンで小劇団を率いるハロルド・モンターギュ氏だ。彼が君を探している。」「……ロンドンで、再演ということか?」「そうだ。彼はあの作品に深く心を打たれたらしい。もう一度ロンドンで見たいと」テリィの指先がわずかに震えた。『BeforeDawn』……
ロンドンの12月は、昼も夜も区別がつかないような薄灰色だった。だが大晦日の夜だけは、街の空気にどこかそわそわとした温かな気配が漂う。ケンジントンのタウンハウスでは、暖炉の火が静かに揺れていた。湯気の立つマグを両手で抱えながら、キャンディがふいに言う。「……ロンドンで年越しなんて、なんだかまだ不思議ね」テリィは上着の袖をまくりながら、暖炉の前に腰をおろした。「ここはビッグ・ベンの鐘が鳴るだけだ。あの鐘の音が新年を告げるだけ、ニューヨークの賑やかさとは違う」「それで十分よ。あなたと聞け
午前8時。とある春の朝。ストラスフォード劇場近くの公園。前回の惨敗から数年後。ケビンとマイケルは黙々とストレッチをしていた。「今日こそ……ついていってみせる」「うん……死ぬ気で……!」そこへ、ランニングウェア姿のテリィが現れた。黒のスポーツジャケットに、軽量シューズ。まるで雑誌のモデルのようにスタイリッシュ。「準備できてるのか?」「お、おう……!」「やるしかない……!」そこへ、「おはよう、みんな!」軽やかで明るい声が飛んできた。キャンディだ。白のジョガーにベージュの
今さら・でも―キャンディキャンディいつもアクセスいただきありがとうございますブログを最初から読む二次小説を最初から読む11年目のSONNET目次草ネタを読むFinalStoryの考察を読む考察①FinalStoryって?考察②新旧手紙の比較考察③あのひとは誰?考察④Finalと漫画の違い考察⑤テリィの手紙考察⑥男アルバートさん考察⑦キャンディの気持ち考察⑧テリィとスザナアメンバー限定記事を読むDearfor
こんにちは🩷とってもとっても遅くなってしまいましたが、永遠のジュリエットvol.39をお届けします。↓永遠のジュリエットvol.39〈キャンディキャンディ二次小説〉|キャンディキャンディ二次小説『永遠のジュリエット』「遅かったのね、テリィ」真夜中をかなり過ぎた頃。チャリティーパーティーから戻ったテリュースがマーロウ邸のガレージに車www.candycandy.site前回から長いことあいてしまったので、前のお話も貼り付けておきます🩷↓永遠のジュリエットvol.38〈キャンデ
十二月に入ったばかりのニューヨーク。摩天楼の隙間をすり抜ける風は鋭く冷たいのに、テリィとキャンディの暮らすペントハウスには、暖炉に火が入り、ほのかな甘い香りが満ちていた。結婚して初めて迎えるクリスマス。夕食を済ませたあと、キャンディがぽつりと口にした。「ねぇ、テリィ。……ここにツリーを置きたいわ」テリィは片眉を上げ、軽く頷いた。「だって、クリスマスなんだもの。ツリーがないのは寂しいもの」彼女の声は弾んでいて、まるで子どもがお願いをするときのようだった。「そうだな」「本物のもみの木