背景から分離し、世界から疎外された人物をめぐる描写は必然的に不足しがちになる、というのが前回のおはなしだった。背景とその主成分、あるいは最小単位において合致した人物像は、作者の、あるいは作品の主体性に導かれるかたちで、目的的に描かれることになる。作品は、「描かれるべきもの」を中心に背景とともに自然に歪んでいく。それは、たとえば、いまわたしたちが過ごしている宇宙が急速に横に伸び始めて、わたしたちを含めたなにもかもが横に伸び始めたとしても、だれもそれに気づくことはなく、観測することもできないのと同じ