ブログ記事2,464件
排卵してしまったのでしょうか、というのは外来で時々聞かれる質問です。排卵の兆候として皆さまがお感じになるのは、「おりものが増えた」「お腹が痛い」「(排卵誘発中の場合など)お腹の張りがラクになってしまった」などです。では、これらは本当に排卵の兆項なのでしょうか。「おりものが増えた」は、体内のE2(エストロゲン)が増えたことを反映しています。卵胞発育→E2増加→排卵、という流れがありますので、おりものが増えたあと排卵という流れは間違いではありませんが、排卵と直接関連があるわけではなく、あ
知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日では番外編です。「ホルモン補充周期と自然周期の凍結胚移植はどちらが妊娠率が高いか」という、永遠のテーマをお話ししようと思います。まず初めに、相当誤解が多いので、最初に用語の整理をしておきますが、ホルモン補充周期とは、エストロゲン製剤で排卵を抑え、排卵しない形にして、黄体ホルモンは全て薬で補う方法のこと、自然周期とは、ホルモン剤の有無にかかわらず、排卵を起こして排卵後〇日後という形で移植する周期
あくまでも公式ブログなので、特定の薬剤についてあれこれ書くのは禁じ手であると思ってはいるが、面白い薬なので今日はルトラールとデュファストンについて語ってみようと思います。黄体ホルモンには、投与経路の分類では、膣坐薬、筋注、内服の3種類があり、内容的には①天然型プロゲステロン製剤と、②合成黄体ホルモン類似物質に大別されます。ここで、黄体ホルモン剤については、こちらの過去ログを再掲します。①天然型黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤基礎体温は上昇し、P4の検査結果として反映します。【膣
以前のブログで、理論上ではこうであるというようなことは必ずしも実測統計と一致しない(理論が実態を忠実に示すとは限らない)、ということを説明しました。理論的にはこうなるはずなんだけど、実際にには、そうではない、ということは医療に限らず世の中いくらでもあります。もちろん、実測統計も、その統計の取り方によって簡単に結論がフラフラしますので、実測統計が常に真実というわけでもありません。例えば、吉野家と松屋はどっちが美味しいか、セブンイレブンとファミマはどっちが人気があるか、スーパードライと一
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第12回となりました。こんなご時世は勉強がはかどる、今夜も「生殖医療解説シリーズ」をよろしくお願いします。まずは、おさらいですが、日本産科婦人科学会は、次のように定めています。「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対して
様々な治療の甲斐があって、無事に妊娠されたあとも、不安は尽きないことでしょう。エコーの時、診察の時に、皆様口々に「大丈夫ですか、順調ですか」とご質問されます。実際には妊娠中の発育は個人差が大きいのですが、意外と知られていないのは、体外受精児の妊娠初期の発育は、自然妊娠のそれと比べて数日程度(筆者の個人的な主観だと3~4日)遅めに見えることが多いことです。体外受精児が小さいというよりも、週数算定上の差なのかも知れません。ちゃんととったデータではありませんが、現場の実感としては、胎嚢(G
外来でよくある質問に、「こんな私でも可能性はあるのでしょうか」というものがあります。もちろん、あまり厳密なことを想定した質問ではなく、私は治療続ける価値があると思いますか?というような趣旨だと思うのですが、実はこれは大変難しい質問です。月経中基礎値FSH>100の周期で、新鮮胚移植で妊娠AMH<0.01で初期胚1個移植で妊娠49歳の採卵で妊娠グレード4の初期胚で妊娠着床の窓を2.5日もずらして妊娠3年も卵胞すら育ったことがなかったが3年ぶりに卵胞発育して受精卵凍結成功妊娠判定時
皆さんこんばんは。今日は、書いてありそうでどこにも書いていない、好評シリーズ「よくある質問」③です。では早速。Q11)ホルモン補充周期で妊娠歴あり。前回は、D20で移植したので今回もD20で移植したほうがよいのでしょうか、D19で移植したら着床の窓はずれてしまうのでしょうか。A11)ホルモン補充周期に限らず、大切なのは、排卵(あるいはそれに相当する日)から何日後に妊娠したか、であり、月経から何日後に移植したかではありません。ホルモン補充周期の場合は、黄体ホルモン開始日を0日目として、胚
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜はレギューラ編第22回、卵巣過剰刺激症候群(OvarianHyperStimulationSyndrome:OHSS)です。さて、前回の番外編で、副作用が許容範囲内である限り卵子は採れれば採れるほどよい、と解説しました。OHSSのリスクを100%完全に回避できるならば、刺激(HMG、uFSH、rFSH)の量が増えても結果的に採れた卵子の量が増えても卵子の質は下がることはなく
みなさん、こんばんは。早いもので4月になりました。関東のお花見は卒業シーズンですが、北日本はこれからが見頃ですね。毎年、日本は縦に長いなあと思う瞬間です。さて、今日は胎児の心拍についてです。前回の記事(妊娠週数の数え方)では、妊娠週数の数え方についてご説明しましたが、一般的に胎児の心拍が確認できるのは、妊娠6週半ば~7週にかけてです。ものすごく成長が早くて妊娠5週末に心拍がかすかに見える方、妊娠8週になってやっと心拍が見える方、それぞれおられますが、いずれも頻度は少なめです。胎児の心拍は
妊娠判定が陽性となった方の全てが出産まで至るわけではなく、残念ながら流産になってしまうこともあります。体をしっかり休めたい気持ちと、少しでも早く治療を再開したい気持ちの狭間で揺れ動く不安な気持ちから、様々なご質問があります。その中でも、特に多いのが、次の月経はいつ来るのか、何回月経が来ればよいのか(いつから治療を開始できるか)というものです。流産週数や体質その他にもよりますが、流産後の月経は、たいていの場合、手術や自然排出になった日から起算して早いと2週間後、遅いと6週間くらいか
みなさん、こんにちは。リプロダクションクリニック東京のぼんちゃんこと大原です。前稿はご好評ありがとうございました。本日は、人工授精(IUI,intrauterineinsemination)のベストな時期について、お話させていただきます。「人工授精の時に超音波で排卵後だったので、人工授精する時期が遅かったんではないかと心配です」とご質問を受けることがあります。果たしてそうなのでしょうか。そこで皆さん、今日は実際に卵子と精子の気持ちになって、その出会いに思いを馳せてみましょう
みなさん、こんばんは。ふと、生殖医療解説シリーズを半月も書いていないことに気づきました。最初からこのブログをお読みではない方もおられると思いますが、このブログは一定の更新頻度を守るのではなく、筆者が心から書きたいと思った題材ができた時に書き始め、納得のいく記事ができた時だけアップする、というスタイルで行きたいのです。が。半月はちょっと長いです。これでは読者離れしてしまう。どうしよう。ということで、今日はニーズな高そうな題材に挑戦してみました。過去記事でも類似記事は書きましたが、今日の題材は
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第9回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。今日は、黄体ホルモンについて解説します。黄体ホルモンは、いわゆる天然型黄体ホルモン(プロゲステロン)と、合成黄体ホルモン製剤(黄体ホルモン類似物質)に大別されます。血液検査で測定できるのは、このうち天然型黄体ホルモン(P4)のみです。ちなみに、いきなり脱線しますが、なぜ、天然型黄体ホルモンがP4というかについては、エ
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第16回です。なお、スーパードライのネタは番外編に変更しました。私たち医師は、どのように卵巣刺激を選んでいるのか。もちろん、最終的には個人の体質や治療歴によって大きく変わりますが、今日は雰囲気だけでも分かっていただければ。そもそも、卵巣刺激には、①卵胞を育てる(卵巣刺激・排卵誘発)+②育った卵胞を排卵しないように抑える(排卵抑制)+③卵子を成熟させる(トリガー)、の3段階
みなさん、こんにちは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日も番外編です。体外受精においては、自然周期、低刺激、高刺激等の方針があります。中には完全自然周期とか中刺激という用語を使う場合もあります。意外かもしれませんが、これらは、各クリニックあるいは医師が独自に表現・分類しているだけで、「こういうものを低刺激といいましょう」とか、「こういうのを中刺激といいます」という共通の明確な定義はありません。例えば、クロミッドだけを内服
今日は11月29日、いい肉の日です。11月11日はポッキーの日、11月22日はいい夫婦の日ですが、外来でコメントして一番皆様の反応がいいのが、この日です。たいして面白いわけではないのでウケ狙いでドヤ顔で言うよりも、ニコリともせず真顔で急にと言うと、不意を突かれて笑っていただけることが多いと気づき、この言葉にはだいぶお世話になりました。ちなみに、「ポッキーの日」は、皆様、ほぼ無反応で、患者さんとクラークの冷ややかな視線がステレオで突き刺さり、寂しい思いをしました。さて、いきなり脱線してし
みなさん、こんばんは。少しお久しぶりになりますが、今日は、月経中に見えた卵胞を採卵することの是非についてお話してみようと思います。卵巣機能が正常で月経不順がなければ、通常は月経中には育っている卵胞はありません(10mm未満が正常)。月経周期が短い場合(おおむね26日未満の場合)、月経3日目ごろにはすでに11~12mmくらいの卵胞が見えることもありますが、この程度であればあまり大きな問題にはなりません。しかし、月経3日目ごろに、18mm~20数mmの「卵胞のようなもの」が見えることがあります
昨日に続いてこんばんは。前編はこちらホルモン補充周期と自然周期の凍結胚移植はどちらが妊娠率が高いかさて、昨日は、実は結論を出さないまま、その方に合った治療方針を選択するべきだ、とだけ書いて、結論を書いておりません。やや題名を変えて、結局どうしたらよいのか、ということについて、それぞれのメリット・デメリットをもとに考えてみましょう。①ホルモン補充周期・利点、得意ポイント卵胞発育や排卵日を一切気にしなくてよい(何しろ排卵しない!)黄体機能不全を気にしなくてよい日程
外来診療において、もちろん、陽性のお話しばかりたくさんできれば一番いいのだが、妊娠率が100%でない以上、どうしても陰性のお話しもすることになる。その中で一番聞かれるというか、ほぼ必ず聞かれる質問は、「なぜ着床しなかったのでしょうか、何が悪かったのでしょうか」ということである。過去記事「原因を知りたい」についても色々書いたが、原因を究明することは必ずしも容易ではない。もちろん、明らかに途中のホルモン値がよくなかった、融解後の胚の状態がよくなかった、移植後に高熱を出した、子宮内膜が薄かった等
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第7回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなものを、「遺残卵胞」という言い方をすることがあります。今日は、この「遺残卵胞」について解説いたします。日本産科婦人科学会刊行の産科婦人科用語集には、「遺残卵胞」という言葉はありません。というのも、「月経中にみられる、ある程度大きな卵胞のようなもの」は、実際には、色々な内容の
今日は体外受精・顕微授精における精子選別法についてお話します。不妊原因は女性・男性半分ずつが原因であるとか、卵子と精子がそれぞれ関連する、とよく言われます。実際には卵子側の要因が大きいと思われる局面は少なくありませんが、さりとて受精卵の染色体の半分は男性由来であり、精子の重要性が高いことには変わりありません。【体外受精(ふりかけ法)か顕微授精か】よく体外受精は自然に選ばれた精子だから、というような言い方をされますが、自然妊娠の場合は何千万・何億の腟内射精された精子が子宮・卵管の約1
4月以降についてご質問がありましたので、いくつか回答いたします。・助成金について助成金は、「対象かどうか」と「支払い年度」が関係します。とりあえず回数と年齢制限的に問題なければ、採卵周期開始日もしくは移植周期開始日が3月31日以前であれば、助成金制度の対象になります(何らかの事情で治療に入れない場合は別)。治療終了日(通常は移植後の妊娠判定日だが、受精せず・分割せずなどで途中で治療が終了した場合はその日)が3月31日までなら2021年度、4月1日以降なら2022年度の助成金の対象と
みなさん、こんにちは。リプロダクションクリニック東京の大原です。おかげさまで、癒しのぼんちゃんは今日も元気にフサフサです。本日は生殖医療解説シリーズレギュラー編22として、新たなる着床の窓の検査である、ERPeak検査についてお話しいたします。世の中、人との出会いや仕事など、なんでもタイミングが大事でありますが、受精卵と子宮内膜にとっても全く同様のことが言えます。お互いが着床にとって最適な時期でなければ、うまく着床が成立しません。その一つの重要な要素に、子宮内膜の着床の窓という考えがあり
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも第21回となります。今夜は、少し大きなテーマで書いてみたいと思います。まずは用語の整理から。受精とは、卵子の中に精子が入り、融合して細胞分裂可能な状況になる(いわゆる正常受精卵になる)ことをいいます。英語では、fertilizationです。これに対して「授精」("てへん"がつく)は、文字通り精子を授けるところまでの作業のことを言います。人工授精は、子宮内に精子を授けるから人工「
みなさん、こんばんは。今日は、排卵痛・排卵期出血についてお話します。皆さんは、排卵痛の経験ありますか?筆者が以前勤めていた病院の病棟の看護師さんで、「私は排卵が分かる」としきりに言う方がいて、たまに「あ、ほら今右から排卵した」などと言っていたのを今でも覚えていますが、そこまでの方はそうそうおられないとしても、分かる方にはわかるらしいです。実際に、患者さんでもそのようなことを言われる方がいるのですが、実際にエコーで確認をしてみると、どうやら、①排卵前に卵胞がぐぐーーっと急に大きくなる過
現在、NIPTは、認可施設、無認可施設で行われています。認可施設は、日本産科婦人科学会の規制内での検査施設、無認可施設はそれ以外の施設です。認可のNIPT施設は、良くも悪くも原則として30分以上のカウンセリング、施設側にも様々な制約が課され、ハードルは高い上、検査項目や検査施設も限られますが(基本的には13、18、21トリソミーのみ検査可能)、結果説明は対面で行われ、十分な知識を有する専門スタッフによるカウンセリングが保証しています。無認可施設の開設者は、そもそも産婦人科医や小児科医ではない
8-6)、「病気をなくす」にはたくさんのビタミンDが必要であるOrthomolecularMedicineNewsService(OMNS),February21,2012および、オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版、より栄養医学について学ぶ方法として、逆にメディアを利用する手もある。医薬品を擁護しているウェブサイトや新聞・雑誌に「読んではいけない」と書かれている本やウェブサイトそのものを読んでみよう。また、こうした医療関係のメディアが、新しい本について大騒ぎし
みなさん、こんばんは。今日は新しいシリーズ「よくある質問」シリーズです。当院では、ホルモン補充周期の場合、初回来院は月経2-5日目、その次は、11-16日目に来ていただいております。初回来院の時に、「次は11-16日目のいつ来ていただいても結構です」と説明すると、それなりに高頻度で、「それはどういうことですか」「本当にいつでもいいんですか?」「いつが一番とか本当はあるんでしょう」という質問とともに、「着床の窓とか聞くんですが、それでもいつでもいいんですか」という質問があります。着
コロナ禍で、マスクや手洗いが浸透し、インフルエンザだけでなく、花粉症、風邪が激減したように思います。毎年春・秋になると花粉症の薬の相談、あるいは季節の変わり目には、風邪の相談を受けることが定番なのですが、コロナ禍になってからはほとんどありません。とは言え、寒くなってきて、もし風邪を引いたら、あるいは軽い風邪症状があるのだが、という相談がないわけではありません。不妊治療中、あるいは妊娠中の風邪(あるいはその予防)は、どうしたらよいのでしょうか。風邪の原因ウイルスは、ライノウイルス、コロ