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よく、採卵を早めに、遅めに、などと言ったりしますが、質問や相談、あるいは誤解もある部分なので、今日は採卵のタイミングが早い、遅いについてお話したいと思います。刺激周期(高刺激)ではしっかり排卵抑制(排卵しないように抑える薬)をしますので、排卵しやすい体質であるか、薬が効きにくい体質とか、その周期の治療がたまたま合わないとか、運が悪い周期とか、担当医がイケてない等以外は、排卵抑制を併用しながら刺激する限り、卵胞が40mmくらいまでなら、排卵させないまま刺激を続けることができます(体質やその周
ジェネリック医薬品、飲んだことありますか。ジェネリックとは、後発医薬品のことで、いわゆる新薬(先発薬)の特許が切れる10年後から、特許切れの有効成分を使って発売される安価な薬のことです。以前は、10年たつと色々な薬がゾロゾロ出てくるので「ゾロ」「ゾロ薬」などと呼ばれたりもした。ジェネリックは先発薬と比べて同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則として同一とされている。しかし、主成分が同じというだけで、副成分や剤型、製造方法が完全に同じとは限らないので外見も違うし、人によっては効き目が違う
様々な治療の甲斐があって、無事に妊娠されたあとも、不安は尽きないことでしょう。エコーの時、診察の時に、皆様口々に「大丈夫ですか、順調ですか」とご質問されます。実際には妊娠中の発育は個人差が大きいのですが、意外と知られていないのは、体外受精児の妊娠初期の発育は、自然妊娠のそれと比べて数日程度(筆者の個人的な主観だと3~4日)遅めに見えることが多いことです。体外受精児が小さいというよりも、週数算定上の差なのかも知れません。ちゃんととったデータではありませんが、現場の実感としては、胎嚢(G
あくまでも公式ブログなので、特定の薬剤についてあれこれ書くのは禁じ手であると思ってはいるが、面白い薬なので今日はルトラールとデュファストンについて語ってみようと思います。黄体ホルモンには、投与経路の分類では、膣坐薬、筋注、内服の3種類があり、内容的には①天然型プロゲステロン製剤と、②合成黄体ホルモン類似物質に大別されます。ここで、黄体ホルモン剤については、こちらの過去ログを再掲します。①天然型黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤基礎体温は上昇し、P4の検査結果として反映します。【膣
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜はレギューラ編第22回、卵巣過剰刺激症候群(OvarianHyperStimulationSyndrome:OHSS)です。さて、前回の番外編で、副作用が許容範囲内である限り卵子は採れれば採れるほどよい、と解説しました。OHSSのリスクを100%完全に回避できるならば、刺激(HMG、uFSH、rFSH)の量が増えても結果的に採れた卵子の量が増えても卵子の質は下がることはなく
排卵してしまったのでしょうか、というのは外来で時々聞かれる質問です。排卵の兆候として皆さまがお感じになるのは、「おりものが増えた」「お腹が痛い」「(排卵誘発中の場合など)お腹の張りがラクになってしまった」などです。では、これらは本当に排卵の兆項なのでしょうか。「おりものが増えた」は、体内のE2(エストロゲン)が増えたことを反映しています。卵胞発育→E2増加→排卵、という流れがありますので、おりものが増えたあと排卵という流れは間違いではありませんが、排卵と直接関連があるわけではなく、あ
みなさん、こんばんは。ふと、生殖医療解説シリーズを半月も書いていないことに気づきました。最初からこのブログをお読みではない方もおられると思いますが、このブログは一定の更新頻度を守るのではなく、筆者が心から書きたいと思った題材ができた時に書き始め、納得のいく記事ができた時だけアップする、というスタイルで行きたいのです。が。半月はちょっと長いです。これでは読者離れしてしまう。どうしよう。ということで、今日はニーズな高そうな題材に挑戦してみました。過去記事でも類似記事は書きましたが、今日の題材は
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する生殖医療解説シリーズ、今夜も番外編です。移植の方法については、色々なクリニックや、色々な医師が、色々なことを書いています。多胎のリスクがあるから移植は絶対1個、というクリニックもあれば、許容範囲内での複数個移植に比較的寛容なクリニックもあります。2個以内の移植に限っても、バリエーションとしても初期胚1個移植、初期胚2個移植、胚盤胞1個移植、胚盤胞2個移植、2段階移植(初期胚+胚盤胞移植を中1日で2回行う
みなさんこんばんは。卵巣刺激法とその薬剤今日は後編です。③トリガーまず初めに、卵の核成熟についておさらいしましょう。このように、顕微鏡で形態学的に確認できる卵の成熟のことを、卵の核成熟といいます。結構勘違いしている人が多いのですが、採卵36時間前のLHサージ(トリガー)よりも前は、ほぼ全てがGV卵(超未熟卵)です。卵子の中に、核小体を持つGV(germinalvesicle、日本語訳では胚胞という)があり、顕微鏡で確認できます。卵胞が発育してくることを「卵胞が成熟」すると言っちゃっ
外来診療において、もちろん、陽性のお話しばかりたくさんできれば一番いいのだが、妊娠率が100%でない以上、どうしても陰性のお話しもすることになる。その中で一番聞かれるというか、ほぼ必ず聞かれる質問は、「なぜ着床しなかったのでしょうか、何が悪かったのでしょうか」ということである。過去記事「原因を知りたい」についても色々書いたが、原因を究明することは必ずしも容易ではない。もちろん、明らかに途中のホルモン値がよくなかった、融解後の胚の状態がよくなかった、移植後に高熱を出した、子宮内膜が薄かった等
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今夜もよろしくお願いします。最近、番外編が多いですが、今日も番外編です。今日は便秘についてです。女性と便秘は実は切っても切れないもの。では、どんな時に便秘になりやすいのでしょうか。答えは、「黄体ホルモンが高い時」です。排卵後、採卵後、ホルモン補充周期で黄体ホルモン開始後、黄体フィードバック法でルトラール等を内服中、妊娠後などがそれに該当します。排卵後は浮腫(むく)みやすく、水分吸
「頭痛にバファリン♪」のCMを聞いたことがある方は多いと思いますが、解熱鎮痛薬の代表格、バファリン。市販のバファリンはライオンが、処方薬のバファリン配合錠Aはエーザイが、当院で処方するバイアスピリンはバイエルが発売しています(バイエルが発売するアスピリンだからバイアスピリン)。市販のバファリンは奥が深いです。大人用の錠剤だけで5種類ありますが、ほとんど全部成分が違います。「バファリン・プレミアム」はイブプロフェン+アセトアミノフェン、「バファリンA」と「バファリンライト」はアセチルサリチル
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第12回となりました。こんなご時世は勉強がはかどる、今夜も「生殖医療解説シリーズ」をよろしくお願いします。まずは、おさらいですが、日本産科婦人科学会は、次のように定めています。「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対して
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第14回です、今夜はFSH調節法後編です。だいぶ引っ張ったので、皆さまのご期待の応えられる記事になったか非常に心配ですが、、、はじまりはじまり。前編では、視床下部下垂体系からの命令を卵巣が受けて働くことをご説明しました。要旨としては、卵巣は、脳の視床下部・下垂体系からの指令(主にFSHの分泌)により働く(卵胞が発育する、E2が分泌される)が、卵巣の働きが悪いと(卵胞発育不良、
NIPT登場後、NIPTは、「採血だけで分かる」「お腹に針刺したりしない」「赤ちゃんにもリスクがない」「精度が高い」ということで、大きく話題になりました。では、NIPTの実際の流れはどういったものなのでしょうか。NIPTを受けるきっかけは様々ですが、ご夫婦の希望で自発的に受ける場合と、他の出生前診断(母体血清マーカー検査やコンバインド検査、超音波検査等)で異常があったり年齢が高い等、検査を受ける理由付けが高いと思われる場合があります。NIPTは妊娠9~10週くらいから受けることもできま
何月が妊娠しやすいか、というのがよく話題になります。不妊治療をしていると、何月が妊娠しやすいか=その月に移植すると妊娠しやすい、とつい思ってしまいがちですが、自然妊娠を含んだ場合、必ずしもそうとは言えません。また、何月の出産が多いか、ということと、何月何日の出産が多いか、ということも必ずしもイコールではありません。今日は、このテーマについてお話したいと思います。この表は、筆者が昔、どこかネットから拾ってきた出産カレンダーです。結構有名なやつなので知っている方もおられると思います。
着床の窓についての記事をアップしたところ、ご質問がありましたので回答します。Q)自然周期で着床の窓の検査をしてずれなしの人がホルモン補充で移植しても、やはりずれなしとなるのでしょうか?自然周期で着床の窓けんさをして、ずれがなく、自然周期で移植をし一度陽性が出ています。流産してしまいましたが、その後自然周期で何度移植しても陰性が続き、ホルモン補充の移植を試してみようかと思うのですが、その場合はまたホルモン補充の周期での着床の窓の検査をした方が良いのでしょうか?とても疑問に思いメッセージをさせてい
こんばんは。今日は、月経中に、いわゆる「遺残卵胞」がある場合や、小卵胞数が少ない場合についてお話します。遺残卵胞とは正式な用語ではなく俗語であり、様々な場合があり、1つの状態を示すわけではありません。そして、それぞれについて対応が異なることはすでに何度か解説してきました。(正式な用語ではないため、""あるいは「」で囲ったり、いわゆる、と断り書きをつけたりしています)『「遺残卵胞」(生殖医療解説シリーズ7)』みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日で第16回です。なお、スーパードライのネタは番外編に変更しました。私たち医師は、どのように卵巣刺激を選んでいるのか。もちろん、最終的には個人の体質や治療歴によって大きく変わりますが、今日は雰囲気だけでも分かっていただければ。そもそも、卵巣刺激には、①卵胞を育てる(卵巣刺激・排卵誘発)+②育った卵胞を排卵しないように抑える(排卵抑制)+③卵子を成熟させる(トリガー)、の3段階
不妊治療のブログでは、PGT-A(着床前診断)の情報はあふれていますが、出生前診断の情報は意外と少ないのが現状です。そこで、今日は、NIPTをはじめとする出生前診断について、6回にわたりシリーズでお届けしようと思います。皆様にぜひ知っておいていただきたい倫理面の問題点についても解説していこうと思っていますが、なにぶんデリケートな分野ですので、私見はできる限り避け、産科あるいは遺伝科としての一般的あるいは標準的な見解に沿って客観的に(抑制的)に解説することを心掛けてお話していきます。様々な立
JR東日本の新幹線E4系と言っても鉄分の濃い方にしか分からないと思うが、オール2階建て新幹線と言えば分かる方が多いのではないかと思う。2階建て新幹線は実は、1985年10月1日に東海道新幹線100系車両のグリーン車が最初である。鉄仮面こと300系新幹線以降は、1編成1323席(普通車1123席、グリーン車200席)としており、座席数・座席配置を統一しているJR東海の新幹線車両に、こんな異端な車両が走っていたのかと思うと意外だし、違和感しかないが、一度は乗ってみたかった、、、その後、19
みなさん、こんにちは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズ、今日も番外編です。体外受精においては、自然周期、低刺激、高刺激等の方針があります。中には完全自然周期とか中刺激という用語を使う場合もあります。意外かもしれませんが、これらは、各クリニックあるいは医師が独自に表現・分類しているだけで、「こういうものを低刺激といいましょう」とか、「こういうのを中刺激といいます」という共通の明確な定義はありません。例えば、クロミッドだけを内服
リプロダクションクリニック東京公式ブログをご覧いただきましてありがとうございます。当院へまだ通院されていない方もおられると思いますので、メール等でよくご質問いただく内容についてQ&A形式で回答します。①当院は土日祝日も含めて、毎日診療しております当院は、年末年始の数日以外、原則として土、日、祝日も含めて毎日診療しております。曜日による診療制限もありません。お仕事をされている方が通院しやすいように、また、その方にとってのベストの日に診察を行うためです。祝日を除く火~金は、最終予約時刻1
今日は子宮内膜についてです。以前にも子宮内膜について書いておりますので、もしまだの方はぜひご一読ください。子宮内膜(生殖医療解説シリーズ番外編12)さて、今日は子宮内膜が薄い時についてです。一言で子宮内膜が薄いといっても色々な場合があります。では、どういう時にどういう対処をすればよいのでしょうか。①子宮内膜を薄くする状況がないか確認新鮮胚移植を予定しているのに長期多量のクロミッドを使っているような場合は見直します。②E2製剤の増量ホルモン補充周期で移植している場合、
以前に「胚移植の技術」について書いたところ、「いいね」が100を超えたので、気をよくして今日は採卵の技術について書いてみようと思います。過去ログはこちら。『胚移植の技術』松林医師のブログや、他の医師ブログで解説されているこの記事ですが、以前よりこうしたデータはありましたが、なかなか信じていただけません。少し解説を加えていきたい…ameblo.jp採卵は、容易に卵巣が描出でき、膣から卵巣までの間に子宮や膀胱などのが入り込んでいなければ、比較的容易な技術です。回収そのもののイメージは、中
みなさんこんばんは。知りたいけれど、どこかに書いていそうで書いていない内容を解説する、生殖医療解説シリーズも、今日で第8回となりました。バックナンバーもぜひご覧ください。今日は、新鮮胚移植と、それにまつわるホルモン動向についてお話しいたします。一般的に、新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植のほうが妊娠率が高いと言われていますが、これにはいくつか理由があります。凍結すると胚のグレードがよくなるわけではなく、凍結融解胚移植のほうが、着床環境がよいことに起因します。①クロミッドの影響
不妊治療(生殖医療)のゴールはどこなのか、色々色々な考え・感じ方があるので正解があるわけではありませんが、少なくとも妊娠成立は1つの大きな通過点であるがゴールとは言えないかなというのは、多くの方が納得できる部分だと思います。妊娠して安定期に入るとか、出産、あるいはその子が成長して幸せな家族が成立して初めてゴールなんだとか、最終的なゴールの考え方は色々あることでしょう。生殖医療の世界で論文を出すときにも、「妊娠率(pregnancyrate)」だけでは正確な議論がなされているとは胸を張りに
皆さんこんばんは。よくある質問は、生殖医療解説シリーズ番外編に分類していましたが、独立したテーマとして書いていきたいと思います。Q7)採卵周期中に出血がありました。生理でしょうか、大丈夫でしょうかA7)採卵周期中の出血は、①ホルモン剤の筋肉注射(プロギノンデポー、ペラニンデポー)を打ったあと②エストロゲン製剤を使っていたがやめた③卵胞がなかなか育たないまま2週間以上たったのいずれかであることが多いのですが、そもそも卵巣と子宮は別臓器であり、卵巣とは別の子宮からの出血は、全て、
前稿では、卵子の成熟の一般論についてお話しいたしました。では、穿刺卵胞あたりの卵回収率や、卵の成熟率がよくない場合は、どうしたらよいのでしょうか。卵胞があり、きちんと穿刺できたのにもかかわらず、卵子が回収できないことを「空胞」といいます。ここで注意したいのは、空胞とは、あたかも「卵子がなかったので取れなかった(カラだった)」という表現に聞こえますが、超音波では卵子があったかなかったか判断することはできませんので、「卵子があったが、何らかの事情で取れなかった」も「卵子がなかったので取れな
昨日は大原先生の記事をアップしたが、大原先生が書くといつもいっぱいいいね!が来る上、アクセスも増えるんですよね。いいなあ。「皆様の癒しはなんでしょうか」なんて書いてましたが、私たちの癒しは、大原先生、あなたです。これからもずっとずっと、笑顔が素敵で、いつも優しくて、でもすっごく頭が良くて、とっても頼りになる大原先生でいてくださいね!このくらい持ち上げておけば、また1か月後くらいにはもう1本記事かいてくれるかな。では本題に。今日は昨日の続きでAMHや卵巣機能についてです。外来でよくある質