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「名探偵。」深夜の阿笠邸のリビングにオレの声が響く。いつも通り連休中に少年探偵団の子ども達に誘われて泊っていく事になったオレと青子。そしてやはりいつも通り青子は既にオレの膝で気持ちよさそうに寝息を立てて熟睡していて。この家の主である博士と探偵団の子ども達は9時きっかりに寝室へと向かい、哀ちゃんは地下室で一人であの薬の研究を進めているらしい。というわけで、いつも通り今ここで起きているのはオレと目の前にいる名探偵の二人きり。「名探偵。」もう一度呼びかけたオレに名探偵が微かに苦笑
「こんにちは!!」「お邪魔します。」オレ達が博士の家について、門の前でインターフォンを鳴らすと、すぐに子ども達が玄関からバッと飛び出してきた。「快斗お兄さん!青子お姉さん!」「こんにちはー!!」「おせぇぞ!!快斗兄ちゃん。待ってたんだからな。」そう言われて苦笑して顔を見合わせたオレと青子の手を握ると子ども達はそのまま駆け足で走り始める。「うわっ・・・そんな、急がなくても。」「何言ってんだよ。早くしねぇと夕方になっちまって快斗兄ちゃんのマジック見られなくなるだろ?」その言葉に一瞬
「快斗?」そうして切なげにも見える瞳で目を細め空を見上げる快斗の横顔に青子は思わず息を止めた。深く愁いを感じさせるその表情。それは青子の心の裡に月に帰る前のかぐや姫を思わせた。不安になった青子が繋いでいる指先に力を込めると、そんな青子に気づいた快斗が前屈みになり下から青子の表情をうかがう。「青子?」呼び掛けた快斗の視線を避ける様に俯くと青子は首を横に振った。「なんでもない。なんでもないよ。」そう言って更にぎゅっと手を強く握り顔を伏せる青子に快斗は目を瞠った。その時初めて快斗
昼休憩の後、少しだけ教室を抜け出して戻ってくると、いつも隣の席にいるはずの青子の姿が見当たらずに、オレはぐるりと室内を見渡した。やっぱりいない。(どこに行ったんだよ?)もちろん青子には青子の用事があるし24時間ずっと青子のそばにいる事は出来ない。それでも少しでも姿が見当たらないと不安に感じてしまう自分は相当重症だと思う。きっと青子に話したら笑われるに違いない。(そんな情けない事言えるかって・・・。)そこまで考えてまわりに気づかれない様にひとりで微かに苦笑していると、不安気な表情で廊
「なんで?」青子は教室を飛び出してからずっと考えていた。快斗を嫌いなはずなんてない。幼い頃、思い出の時計台の前で出会ったあの日から、ずっと快斗はそばにいてくれて。快斗だけはいつも何があっても青子のそばにいてくれて。そんな快斗の事を嫌いなんて思った事なんかあるはずも無くて。(どうしてあんな事言っちゃったんだろう・・・。)心の中で呟いてみるけど、理由なんかわかりきってる。あの瞬間、青子の中で快斗とキッドの顔が重なって見えた気がして、そう思ったら、もう止められなかった。
いつも通りの習慣で休日の朝、青子の作った朝食を食べる為に中森家の扉を開いた快斗。だが玄関に入ってもキッチンにも居間にも人の気配がない事を不思議に思いまわりを見渡した。休日だからといって青子がいつまでもベッドから起きてこない事は絶対にないし、警部が仕事なら尚更青子は起きて警部の出発の時間に合わせて食事の支度をしているはずだった。「青子?」快斗は青子を呼びながら玄関で靴を脱いで中に入る。すると、テーブルには朝食を済ませた食器が一人分だけ置かれていてそのままになっていた。快斗はすぐ
コナンはゆっくりと目を開くと体を起こしてあたりを見渡した。すぐに一メートルほど離れた場所でキッドの姿のまま眠る快斗に気づく。立ち上がり近くによると、顔を顰めて苦しそうに唸り声を上げる。何か悪い夢でも見ているんだろうか?いや、もしかしたら・・・。そう思いながら顔を近づけると、快斗がわずかに声を上げた。「青子・・・。」その声にコナンは苦笑をもらす。結局快斗の思考の着地点はどこまでもいっても彼女なのだ・・・と。そう思いながら静かに肩を揺すった。「おい。起きろよ。」その声にハッとし
『アイのシナリオ』シリーズ「WITH」≪歩き出す未来へ≫の冒頭、名探偵奪還シーンの続きのつもりで書きました。「WITH《歩き出す未来へ》」/「向日葵(ひまわり)」の小説[pixiv]http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7608958・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「服部君!!コナン君が大怪我したって本当!?」そう問いかける蘭に平次が頷く。「ああ。ホンマや。今緊急手術中や。腹をナイフで刺されとって、他に
『キス《快青バージョン》』http://ameblo.jp/infinity20021008/entry-12234711063.htmlで青子視点で公開した作品を快斗視点で書いてみました。よろしければお楽しみください。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「なんか腹減ったな。」「そうだね。今日はお父さんも泊まりだし。夕飯何にしようかな?」そう答える青子を見ながらオレは思わず苦笑をもらす。「そうだな・・・。」(ホント・・・高校生男女の会話じゃねぇよな。)『
大きく扉開かれたエントランスの扉。そこに快斗達が到着するのを待って一歩屋敷に足を踏み入れると、ヨハネスなぜかは緊張し強張った顔で一瞬だけ立ち止まり中を覗いた。その行為の違和感にすぐにすぐに気づいたコナンはヨハネスの顔を下から覗き込み首を傾げる。「どうしたの?」「いや・・・。」応えるとヨハネスはすぐにほっと息を吐いて唇を強く引いたまま長い廊下を歩き始めた。コナンと快斗は数瞬だけ顔を見合わせ小首を傾げた後、ヨハネスから一メートルほど後ろを歩き始める。「どう思う?名探偵。」「いや、まだ
「名探偵。青子が持っている発信機の信号を辿れるか?そうすればきっと・・・。」「ああ、もちろん。」言い掛けた快斗に頷くとすぐにメガネのフレームにコナンが手を掛けた。その時だった。突然自らの掌中で音を響かせたそれに快斗は目を見開くと険しい表情でそれを耳許にあてる。『おかえり、黒羽快斗君。長旅ご苦労様。』その声に快斗は唇を強く引いた。無言のまま何も話さない快斗の顔をコナンはポケットに手を入れたままじっと見つめる。『おやおや、どうしたのかな?せっかく僕が君の帰還を祝福する為にこうして連絡
オレはその日青子と二人でテレビの前のソファに座り、食い入る様にテレビ画面を見つめていた。テレビ画面のテロップには『黒羽盗一奇跡の大脱出』と表示されていた。大きな垂れ幕が下げられた遊園地でジェットコースターのまわりを取り囲む大勢の観客と報道陣が映し出されていて。そんな中で行われようとしていたのは、世界一のマジシャンであり、オレの親父でもある黒羽盗一の脱出マジックだった。ジェットコースターに乗り込んだ親父の手足はスタッフにより手錠と鎖でがんじ絡めに縛られていって、コースターの軌道上に