心が動くというか、さりげなさく巧いな、と思った場面がある。…ヒロイン・スズ子の母・ツヤが実子ではない赤ん坊を連れて帰ると、夫は驚きながらも、「まぁ、ええか…」といった調子で乗り越えるところだ。このなんとも言えない重さを無理ながらも軽く一寸流した調子がいい。例えれば、果樹園で手慣れた手つきのもぎ取りに等しい。戸惑いを通り越すはずの驚きを封じる呼吸である。同じく、呼吸といえば、スズ子が少女歌劇団の試験を1日間違えて受けに行くと、その歌を聴いた歌劇団の部長?と思しき人物が、「…入れたれや…」という間合