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6「え~っと」と声に出したものの、あまりの質問内容に声音が小さくなった。「それって……」質問の意味が分からない。「それって、分かりません」かすれ気味の声で答えた。「ふ~ん、秋野さんって真面目で正直な人だと思ってたけど、分かりませんってか……ふ~ん」冷たく言い放たれてますます百子は困惑を深めた。質問内容もさることながら、なんで自分はいきなり上司に冷たくされているのか。涙目で石田の顔を捉えてみれば、上司は自分とは顔も合わせず下を向いて仕事をしている。『神様、
5w10日比野くんを見送りしばしボーッとしていたのだけれど、我に返ると呼ばれてたことを思い出し、急いで石田さんの部屋へと向かった。私は上司の部屋の前で2度3度とノックをした。ドアが開き、石田さんの顔が見え……中に入るものだとばかり考えていたのに予想に反して中に入るようにという『どうぞ』という言葉を聞けず私は困惑した。お互い見合うように視線を交わしていたけれど、私はいたたまれなくなり、視線を外して少し下方に落とした。上司の紡ぎ出す言葉を待つために。……な
4「おじゃましまぁ~す。風呂がまだだから1時間くらいしたら撤収するのでぇ~」「うん、どうぞ。久しぶりだね、話するの。同期の人同士で飲み会とか今もあるのかな?私なんか、すっかりお呼びがかからなくなっちゃって」私と彼は座卓を挟んで座った。今回のお宿は旅館だ。「いや、もうやってない。しばらく呼ばれたりしてたけど。男どもは女子たちを誘ってたみたいだけど、彼女たちの興味が友人知人を通しての異業種に向いちゃったみたいで今じゃ見向きもされてないよ。どう?
3w7ちょうどそれから数日後ほんとにたまたまの偶然で石田と帰りの電車で一緒になった。百子の帰宅方面とは反対方向だったのだが、友人と待ち合わせをし大阪に行く為百子はその電車に乗ったのだ。プラットホームで互いに気付き、一緒に電車に乗り込み隣同士に座った。百子の友だちは百子の左側、石田は右側で、百子……両手に花だった。隣に友人がいたのも良かった。落ち着いて石田と彼が電車を降りるまでにこやかに話ができた。石田は途中下車し、「「お疲れさまでした」」と言い、互いに別れ
更新が遅れてすみません( ̄▽ ̄;)2◇憧れ入社して1年も過ぎる頃には、仕事熱心な上司に憧れるようになっていた。いや、恋焦がれるようになっていたのだ。だけど実らぬ恋と分かっていたため『憧れている』と自分の気持ちをうまい具合に変換していた。◇◇◇◇営業が出払い、契約社員の黒田花子と自分との二人になった日の、あまりの忙しさに息つく暇もないくらい二人共一心不乱に仕事をしていた時のことだった。一段落ついたのか彼女が『あ~あぁ、あとも
1◇初詣参拝百子は自分も手を合わせ拝みながら隣で同じように参拝している夫の伸之の様子をチラりと伺う。自分は勿論のこと、今年も一年家族皆つつがなく平穏無事に過ごせますようにと祈願しつつ、またここまで夫婦仲睦まじくこれたことなどに対するお礼、感謝の気持ちなどを申し上げた。果たして……夫の伸之は何を思い何を祈願したのだろう。そうは思うものの『知りたいか?夫の腹の底を。覗いてみたいか?』と問われれば、NOと答えるだろう。百子は、世
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。9◇様子見4(最終話)◇◇◇◇家を出て、路上駐車している場所に向かっていると20代後半に見えるひょろりと背の高い男性がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。たしか貴理子の旦那は30才とか言ってたよな。『いくらなんでもこんな若い青年じゃないよな。まるで貴理子とだったら姉弟だ』と思いつつ、男の行く先を振り返り見届けた。ビンゴ
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。8◇様子見3「その話、今聞いてもうれしいから、一年半前に聞けてたら涙を流して喜んだと思う。だって私はあなたにプロポーズしてからもずーっと、離婚してほしいって言われるまであなたのことがほんとに好きだったからねー。アホみたいに好きだったんだ」「ン?じゃあ俺と……」「私ね一年半前に職場の男性から告白されてその少し後に結婚したんだ。残念……って
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。7◇様子見2「貴理子、今日は改めて話を聞いてほしくて訪ねてきた」「えっ……ナニ」「彼女とは結婚してない」「えっ、だってあなた……そのために私と離婚したんじゃないの」「一年以上かけて彼女と間合いを取りいざ告白しようと思った矢先、彼女からの話で分かったんだよ。彼女には将来を誓い合っていて付き合っている男がいるってことが。子供が大きくなる
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。6◇様子見家は、慰謝料代わりに譲り受けた家に今も現夫の誠二と暮らしている貴理子。なにおかいわんや……そんな貴理子の元へ……昔住んでいた家へ……仕事の出先からの途中で元夫の正義が立ち寄る。◇◇◇◇驚きながらもにこやかに出迎えてくれる貴理子に手応えを感じる正義。「どうしたの?結婚して今は幸せの絶頂なんでし
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。5――――貴理子の恋と結婚2―――――夫が年上だったにも係わらず、日々喧嘩もなく楽しく過ごしていたにもかかわらず、ある日突然離婚してほしいといわれるようなことを経験すると流石に次の結婚には慎重になる。青木さんはやさしくて話も合って一緒にいると楽しい人だけど、12才も年下だからなぁ~。アタシが小学6年生の時おかあさんのお腹の
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。4――――貴理子の恋と結婚―――――離婚直後は流石に生きる気力が湧かず、今まで勤めていた会社を辞めて、毎日クッションを敷いたソファを陣取り、無駄にダラダラと下らないTVを見たりして時間をやり過ごした。2か月もするとこのままじゃあいけないと一念発起。貴理子の住む地域には図書館がふたつあり、そのうちの1つでアルバイト募集
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。3◇結婚生活に終止符を打った後でその後元夫の正義は少しずつ想い人の女性嘉島優子にアプローチするも彼女にはすでに将来を約束した意中の彼氏がいた。子供がある程度大きくなってから籍を入れることになっているのだと本人から聞かされた。正義が何気を装って離婚したことを嘉島優子に話すと正義の好意を知ってか知らで(ず)か、彼女は自分のことについて話してき
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。2◇夫の好きな女性そんなふうな考えを持って帰宅。夫ともう一度話し合うつもりでダイニングのテーブルで向き合うも、先手必勝のごとく宣言されてしまう。「申し訳ないけど、彼女のことだけを考えたい。君のことは考えられないような状況だから早く離婚してほしい。身勝手なのは重々|心得てる《承知》し悪いのは自分だということも分かってる。だけどこの
好きな女性ができたので別れてほしい……っていきなり言われてもねぇ~。困るわぁ~。縋ればいいのか、潔く別れた方がいいのか。1◇夫の好きな女性夫から昨日好きな女性ができたから別れて欲しいと言われた。そんな私は40才、夫の正義は44才子無し夫婦。夫の希望で子供は作らなかった。好きな人ができたからってアンタ、40才にもなる古女房を切り捨てるなんて、あんまりじゃないの。あなたはいいわよ、また新しい奥さんと二人の生活でしょ?あたしなんか子供もいないか
さよなら、サヨナラ……大切な人167(最終話)この真鍋のアプローチと花の様子を何気に伺っていた人物がいた。掛居が相馬とはもう付き合ってないのでは?という噂がまことしやかに流れ、ご多分に漏れずこの噂を相原も耳にすることとなったのだが、それでも相原はまだ懐疑的だった。だが掛居が他部署の真鍋とどうも付き合っていると聞き及び、ここで初めて彼女が本当に相馬と付き合っていないのだと確信できたのだった。あの日以降、彼女に何も自分は聞かず一方的に接触を絶ってしまった。そ
さよなら、サヨナラ……大切な人166デートに誘ってくれたその|男性《ひと》は、やさしそうな人に見えた。花は、今の何かを打破したくてデートに応じることにし、出かけて行った。しかし何度か彼とのデートに出掛けたけれど、つい相原と比べてしまう自分がいて、心癒されない自分に気付き自己嫌悪に陥るのだった。◇◇◇◇掛居とのデートは話も合うし楽しかった。だが、彼女が自分との逢瀬を100%楽しんでいるようにはどうしても思えず、自分の誘いを断り
さよなら、サヨナラ……大切な人165相馬さんの異動の知らせと、やっぱりというか、異動後相馬さんと掛居さんが付き合うことが決定してるという噂がまことしやかに流れてきた。社内はその噂で持ち切りだった。ちぇっ、告白する前に失恋だな、こりゃあ。やっぱり掛居さんも相馬さん狙いだったかぁ~。様子見してたせいで『セーフ』と俺は独りごちる。やはり様子見って大事だよな、はぁ~。だけど不思議なことがあった。相馬さんが実際の異動でいなくなるまで引継ぎとかがあるので
さよなら、サヨナラ……大切な人164ところがある時、ン?と思うような現場に出くわすことになったのだ。それもなんというか、どうしてこんなややこしいシチュエーションで出くわすかなぁ~というような。帰りが相馬さんと同じ時間帯になり、声を掛けようとしたら相原さんが娘ちゃんを抱いて出て来て、その後からすぐに掛居さんが続いて出て来て……それをひっそりと眺めている相馬さんがいて、ブルブル。何気に俺は相馬さんに声かけられなかったんだよね。おかしいだろ?何もないんだ
さよなら、サヨナラ……大切な人1632月末日に辞令が下り、2週間後に相馬は新しい部署に着任した。相馬の異動が決まり、それに伴いまことしやかに流れた相馬と自分との噂に、やはりというか、その日を境に相原からの誘いはピタっとなくなってしまい、花は寂しくてたまらなかった。思っていた以上に心地よい相原との関係に依存してしまっていたようだ。相原のことを好きなのだと気づかされもした。けれど、どうすることもできず、時間だけが過ぎてゆく。そんな中、花は夜間保育も辞めさせてもら
さよなら、サヨナラ……大切な人162「相馬さん、私相馬さんと二人三脚での仕事か充実していてすごく楽しかったです。後、最低でも2年は一緒にお仕事したかったです。そしたらもっと相馬さんのこと、知れるかななんて思ってました。でも今相馬さんがいなくなってしまったら、もう相馬さんのことを知るチャンスはなくなります。相馬さんへの返事にはもっと時間が必要でした。相馬さんが異動願いを出した時点でこのお話はGameOverなんです。交際はできません。ごめんなさい」「いやいや、
さよなら、サヨナラ……大切な人161相原との、遠い先の見えない付き合いを始めた花は、自分たちの付き合いが……というより、相原の本意がどこにあるのか、もう少し鮮明になった時、自分がどこに向かって進めばいいのか考えればいいと思っていたのだ。自分が非常に曖昧な|場所《ところ》にいることは百も承知している。相馬が当初の主張を覆してきた時も困惑したものだが、今回のことはどう考えてもあり得ない話で本当に困ったことになった。周囲のお祭り騒ぎも沈静化した頃、花は相馬の袖を引っ張っ
さよなら、サヨナラ……大切な人160「聞いたわよー。上手いことやったわね。相馬さんをGetするなんて」「えっ、そんなこと私……」「掛居さん」呼ばれて相馬さんの方を見ると困った様子で手を合わせて『お願い・頼む』って感じのポーズをとっていた。エアーボイスで『どういうこと?』と訊くと、『後で話すから』と彼からもエアーボイスで返ってきた。周囲から『良かったね』とか『おめでとう』というような声が掛かり、私がハッとして相原さんのデスクの方に視線を向けると。彼は祝福を受けてい
❧更新が遅れてしまい申し訳ありませんさよなら、サヨナラ……大切な人159『掛居』の二文字が出た時、ダンボの耳が大きく動いた気がする。そして相原の胸に動揺が走った。彼女たち二人が話し始めた時、相原はすでに缶コーヒーを手に窓際に立っていたのだ。『相馬』の二文字でダンボになりかけた耳は聞いていくうちにすっかりダンボになり、最後の方では動きそうになるぐらい彼女たちの話を聞き逃すまいとダンボ耳が強く反応してしまった。そして相原も同じように掛居のことだろうと思った。自分は掛居
❧更新が遅れてしまい申し訳ありませんさよなら、サヨナラ……大切な人158「相馬さん、付き合ってる人いらっしゃるんですか?」あまりに突然で露骨に直球を投げられ、相馬は目が点になった。『いきなりすごい質問だなぁ~』質問してきた女子社員の横にいる|女子《こ》は対照的に俯いてスプーンを動かしていて心なしか、耳が赤く染まって見える。自分の返事を知りたがっているのがその彼女か、はたまた質問してきている彼女か、どちらかは分からないが、どちらにしても今自分が想い人以外他の誰とも付き合
❧更新が遅れてしまい申し訳ありませんさよなら、サヨナラ……大切な人157◇相馬の気持ち相馬がクリスマス前に自分の心変わりを花に伝えると、どちらかが異動になった時に交際のことを考える(付き合うのか、申し出を断るのか)と言われ、姑息にも?画策するのだった。花の前向きな返事を聞いた後すぐに異動願いを出しておいたのだ。相馬は花の真意に気付かず、もしかすると自ら墓穴を掘ったかもしれないことに気付いていなかった。もし異動が早期に決まってしまえば、花の望む今の居心地がよくてヤル
❧更新が遅れてしまい申し訳ありませんさよなら、サヨナラ……大切な人156◇花の気持ちクリスマスのお泊りの日、定期的に会えるような関係になりたいと相原から告白された。結婚を前提にお付き合いして下さいとは言われず、最低でも週に一度くらいは会いたいのだと懇願された。彼が話した話の中には将来結婚したいという意志表示はなかった。なので、おそらくこの関係に名前を付けるとすれば、|ガールフレンド《友だち》の立ち位置ということなのだろう。ひとまず、相原のお気に入りの友人と
さよなら、サヨナラ……大切な人155「俺ね、掛居さんのことが好きなんだ。だからずっとこの先も今までみたいに時々会いたいと思ってる」「分かりました。好きって言ってくれてありがと。今まで通り、承知しました……」なんとかちゃんと返事を済ませた掛居は背中の温もりに包まれて深い眠りへと|誘《いざな》われていった。翌朝目覚めてみると隣には誰もいなかった。夢うつつぼんやりと花は昨夜のことを振り返る。私の隣に相原さんがいて、いろいろ話をしてくれていたはずなんだけど、アレ
さよなら、サヨナラ……大切な人154『おっ、掛居さんの温もりが~あったかぇ~。生き返るぅ~』とか独り言ちている模様。「相原さん、ただの同僚友人関係で一緒の布団は流石に憚られますけども」「うん、分かる。女性からしたらそうだよね。クリスマスっていうことで大目に見てよ。クッション置いてちゃんと気遣い見せてるしぃ」「そういうことじゃなくてですね……ンもうしょうがないなぁ~」と抗議と納得しているうちに彼に背後からそっと抱かれていた。包まれているようなふわっとした感覚だっ
さよなら、サヨナラ……大切な人153「ね、左手出してみて」花が手を出すと相原が手を繋いで言った。「今日はさ、クリスマスという特別な日だから好きな子の手を繋いでいい日なんだぜ」手を繋がれ相原と隣を歩き出した花は少し口角を上げにんまりした。いきなりのことで驚きはしたけれど、くすぐったい気持ちになり嫌じゃなかった。相原の手は暖かかった。しばらくこのままでいたいと思ったが花のマンションは駅近ですぐに手を離さなければならなくなる。……なのに相原は佇んだまま