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誰しも「あの作品は人間関係がややこしかったな」という作品が――ドラマであれ人間であれ――あると思う。断言する、この『ロイストン事件』はそれに匹敵する。ロイストン事件(創元推理文庫)Amazon(アマゾン)「この人とこの人は兄弟だけど、お母さんが違っていて、この人はこの人の婚約者で――いや、元婚約者で、こちらとこちらはつきあっているけれど、この人はこちらとも関係があって、その相手は――え?」もちろん人物表はある。おなじみのカバーの折り返し部分にあるのだが、それ
名古屋ウィメンズマラソン2025D.M.ディヴァインの代表作『五番目のコード(2011)創元推理文庫/初出は1967年』フランコ・ネロ主演で映画化(1971)されたが原作とは多少違っているようす。才能はあるものの地方記者として燻っている(アル中気味の)ジェレミー・ビールドは連続猟奇殺人事件の容疑者にされる。殺人の手法は電気コードでの絞殺。襟元に棺桶の取っ手の符牒コードであるカードが縫い付けられる。ジェレミーは元カノでシングルマザー・ヘレンの協力を得て真犯人を追い始めるのだが。
ドラマ東京サラダボウル奈緒D.M.ディヴァインはアガサ・クリスティーの系譜で(だれが犯人か?という謎を扱う伝統的なフーダニットといわれる)本格もののミステリ作家。個人的にはハードボイルド&サスペンス、警察小説を好むことから本格ものから離れていたのですが、このところディヴァインにハマっています。今まで読んだ4作からいえば、舞台設定が似ているものの謎解きとドラマ性のバランスが絶妙。加えて、人物描写が素晴らしく上質なドラマを観ているような感じ。彼の作品は1961年から81年まで20年間
イギリスの大学を舞台にしたミステリから2冊紹介。ジル・ペイトン・ウォルシュ(1937-2020)の『ウィンダム図書館の奇妙な事件(1993)創元推理文庫』。ケンブリッジ大学の古色蒼然たる学寮セント・アガサ・カレッジ内の中世然たる図書館で起きた密室殺人から連続殺人事件へ。古い図書館の成り立ちや(なんの役にも立ちそうにない)稀覯本が事件の根底にあるようなのだが?主人公はその学寮付き保健師(30代の独身女性の)イモージェン・クワイが、事件に関わった学生が官憲の捜査に協力しないことから、致し
英国の推理作家D・M・ディヴァインの長編小説。本格推理小説と法廷推理劇の楽しさを併せ持ったミステリーの登場です。事務弁護士のジョン・プレスコットは二件の殺人事件の被告として、いま法廷に立たされている。最初の事件は六年前に起こった。―――それは自殺した彼の友人ピーターが実は彼によって殺されていたというもの・・・。誰かが警察にその旨通報したのだ。二つ目の事件は数か月前のもので、ジョンの弁護士事務所で働いている秘書が何者かに刺殺された。いずれも状況証拠や検察側の証言は彼を
D・M・ディヴァイン著「すり替えられた誘拐」である。何の気なしにつらつら読んでしまったが、途中で舞台が1960年代後半と判明、あ、だから電話連絡が家電だったのか、と気付いた。イギリスの大学が舞台である。沢山の大学生達がやりたい事やって、そもそも人間嫌いの主人公(?)ブライアンはうんざりぎみで黙々と講師として働いている。大学生と云っちゃあ大人の云う事を聞かない歳頃だ。もう自分は大人だと思っているから、てめえふざけんなよ的な事を平気でやらかす。そんな中に持ちあがった誘拐計画が事件
時は1969年、大学紛争華やかなりし頃である。場所はイギリスのブランチフィールド大学・・・・・・小オックスフォードという人もいる・・・・・・田舎大学だ。これがリアルに描かれる。つまり――人が多い!これ誰?学生?いや先生か。これ誰?え、大学職員まで出てくるの?これ誰?名字か名前かどっちかにしてよ!何度人物紹介表を見たか知れない。まあ、大学だから、人が多いのは当然だ。大学なのに、登場人物がたとえば3人だったら、不自然ではないか。すり替えられた誘拐(創元推理文
英国の本格推理作家D・M・ディヴァインの長編小説です。スコットランドの地方都市で発生した殺人事件と失踪事件。―――薄暗い沼のなかから現れた真犯人の姿とは・・・。ルース・ケラウェイは父を知らずに育った。母の死後彼女はスコットランドの小都市に渡る。―――亡き母が勤務していた市役所に勤める一方で、彼女はある計画を練って動き出す・・・。一方同棲相手のリズとのすさんだ生活に憔悴していたケン・ローレンスは、同じ職場に勤め始めたルースに興味を惹かれる。父を探すかたわら三年前の議員
イギリスの本格推理作家ディヴァインは、読者の期待を決して裏切ることがありません。―――本編はアッと驚く「フーダニット」に加え、人間ドラマとしても読み応え充分な逸品です。夏休み前の七月の熱いある日、友人たちと海に泳ぎに出かけた少女ジャニスは帰ってこなかった。その後彼女は海岸近くのゴルフ場で全裸死体となって発見される。有力な容疑者として町の診療所の勤務医テリー・ケンダルが浮上するも彼は崖から転落死。―――犯行を苦にした自殺とされたが、やがて第二の少女殺人事件が起こる・・・。
「フーダニット」の名手であるイギリスの本格推理作家D・M・ディヴァインによる長編ミステリーです。最後に待ち受けているサプライズド・エンディング。―――この鋭い切れ味こそ、ディヴァインの独壇場とも言えそうです(!)。ネヴィルは美男子だが妻からも愛想をつかされている怠け者。普段は見た目を武器にジゴロ稼業で遊び暮らしている。そんな彼にある日うまい儲け話が転がり込んだ。それは婚約者に捨てられた財産家の美人令嬢アルマを篭絡すること。―――この話に乗ったネヴィルはさっそく彼女に近づく
法廷では、ひとりの弁護士が、2件の殺人の有罪が確実視された被告人としてそこにいるにもかかわらず、刑事裁判の審理を他人事のように眺めていました。6年前、駆け出しだった男──プレスコットは、友人からある女性を紹介されます。ひと目でその美女ノラの虜になったときから、彼の運命は狂いだしました。四部構成の四部すべてに驚きが待つ、ディヴァイン中期の傑作本格ミステリです。物語は、主人公のジョン・プレスコットが法廷の被告席で、検察側の冒頭陳述を聞いているシーンからスタートします。読者には誰が被害者かわ
弁護士ジョン・プレスコットは法廷にいた。気の毒な依頼人の正義のため――ではない。彼が被告だからだ。罪状は、殺人。しかも二つの殺人である。運命の証人(創元推理文庫Mテ)Amazon(アマゾン)1,320〜3,320円1968年の、いきなり法廷から話は始まる。被告席には、ジョン・プレスコット――しかし、彼は白けきっていた。陪審員も、弁護人も、裁判に関わる者皆、界隈の住人すべてが、ジョン・プレスコットが犯人だと、すでに断罪しきっているのだ。ばかばかしい!と、彼は落書
英国の本格ミステリー作家、D・M・ディヴァインの長編ミステリーです。複雑極まる人間関係のすきをついて、冷酷にも殺人計画を遂行していく真犯人の狙いとは(?)。歴史学者のモーリス・スレイターは、幼馴染のジョフリーの邸宅「ガーストン館」に招かれた。ジョフリーは人気作家で最近ではテレビショーにも出演、今では国民的な人気を得ている。―――ところが兄ライオネルが彼の館に来てから様子がおかしくなっていた。実は彼は兄から半年にわたり脅迫を受け、加えて自身の日記の出版計画が家族内に波紋を
「フーダニット」の名手ディヴァインが放つ本格長編推理小説です。―――と同時に、主人公であり本編の語り手でもあるアランの「人生」をも考えさせてくれる、人間ドラマの逸品です。診療所の共同経営者ヘンダーソンが不慮の死を遂げて二か月がたった。―――医師のアラン・ターナーは、その死が、何者かが仕組んで事故に見せかけた可能性を、市長のハケットから指摘される・・・。もし他殺であるならば、かなり綿密に練られた犯行と思われた。ヘンダーソンに恨みや嫌悪を抱く者は少なくなかったが、機会と動
青色の文字はブログで公開しています。D・М・ディヴァイン(10冊)「悪魔はすぐそこに」(2009年・B)(二回目2011年・A)「兄の殺人者」(2011年・A)(二回目2011年・A)「五番目のコード」(2011年・A)「ウォリス家の殺人」(2011年・A)「災厄の紳士」(2011年・A)「三本の緑の小壜」(2012年・A)「跡形なく沈む」(2013年・A)「紙片は告発する」(2019年・A)「紙片は告発する」(D・M・ディヴァインさんのこと)自分が彼を本当に好
周囲から軽んじられているタイピストのルースは、職場で拾った奇妙な紙片のことを警察に話すつもりだと、町政庁舎〔タウンホール〕の同僚たちに話しますが、その夜、彼女は何者かに殺害されてしまいます。現在の町は、町長選出をめぐって揺れており、少なからぬ数の人間が秘密をかかえていました。発覚を恐れ、口を封じたのは誰なのか、作者の9作目の長編ミステリです。発展著しいスコットランドの町キルクラノンは新町長の選出をめぐって揺れていました。有力候補の一人の娘ルース・エルダーは町政庁舎〔タウンホール〕でタ
(1970/中村有希訳、創元推理文庫、2017.2.28)D・M・ディヴァインというイギリス作家の本邦初訳作品です。エリス・ピーターズの『雪と毒杯』はオビに「正統派の英国本格」と書いてありましたけどこちらはオビ背に「正統派“犯人当て”」と書いてあります。オビ表の「フーダニット」というのが「犯人当て」という意味で「完璧なフーダニット」といわれるといやが上にも期待しちゃいますけど小説世界の印象は真逆というか日本の社会派推理小説みたいに地味なお話でした。
魅力に欠く人物というのがいる。機転もきかず、深みもなく、ユーモアもない。話をいらぬほど盛るが、見え透いていてしらけさせる。話の矛盾を指摘すると、むきになって自説を言い張り、相手にするのがばかばかしくなる。小学校の時クラスにいたあの子、近所に住んでいたあの子。誰だか覚えてもいないあの人は、いったい、どんな人物だったのだろう?長らく疑問に思っていたが、こういう人物だったのかもしれない。あわぬ場所に生まれ落ちて、その後もあわぬ環境に育って、そこでなんとか生き抜こうとして、一