東京・霞が関の静かな通りや、京都の老舗料亭のひっそりとした入口前を、時折、移動する離宮のように重厚で黒い影が滑るように通り過ぎる。ヨーロッパのスーパーカーのような轟音もなく、アメリカンラグジュアリーカーのような派手さもない。ただ、禅のような静寂と威厳をもって、車内の人物の非凡さを静かに宣言している。それが、トヨタ・センチュリーである。自動車そのものを超え、日本の社会文化的シンボルへと昇華された、究極の乗り物。それは大衆を喜ばせるために生まれたのではなく、もはや外物によって自身を証明する必要のない