かくの如き町人生活一般の規範化の使命を帯びて登場したのが石門心学であった。そうして、その祖石田梅厳によって「売利を得るは商人の道なり。…商人の買利は士の禄に同じ」とし、「汝独り売買の利ばかりを欲心にて道なしと云ひ、商人を悪んで断絶せんとす。何を以て商人ばかりを賤め嫌ふことぞや」(都鄙問答、巻二)といわれるとき、ここに倫理外存在に甘んじた町人から、自己階級の内面的倫理を自覚し、これを武士階級のそれと対等に置かんとうる町人への進展を鮮やかに読み取ることができるのである。もしこの道を推し進め、町人階級