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今日は、国字「畠(はたけ)」を朱文で彫りました。「畑」も国字ですが、「畠」も同じく日本で作られた漢字。畑は“火”が加わって焼畑を連想させる構成だったのに対し、畠は「白い田」。どうしても、冬のあいだ雪が積もった田んぼの風景を思い浮かべてしまいます。白田の構造は直線が多く、篆刻に落とし込むとスッキリとした気持ちよさがあります。畠という字は、素朴だけれどもどこか凛としていて、彫っていて静かに楽しい字でした。■今回の制作裏話朱文で彫ったのですが、正直に言
𬺰(もぎき)。「枝をもいだ木」という意味を持ち、姓氏にも用いられる字だそうです。ただ、字面を見るとどうしても枝というより「根をもいだ木」にも見えてしまう。手元の辞書には載っておらず、ネットで調べるしかない字。「えだなし」と読むものもあれば、「もげき」とするものもあり、正直なところ、よくわからないまま彫ることになりました。でも、植木職人さんにとっては、毎日の仕事の中で普通に目にしている存在なのかもしれません。そう考えると、この字も急に現実味を帯びてくる気
古い教材が出てきました。でも、肝心なことが書いていない。…ので、カメラに向かって喋ってみました。(下記の今日のYouTube)…が、心急くままのお喋りでしたので、簡単に書き留めておきます。私が初見演奏が得意な理由(思い当たる節…)①2〜3歳頃から歌が大好きだった②環境:様々な楽譜を片っ端から手にして遊んでいた(詳しくは動画)初見の効果は絶大。譜読みの早さは勿論、暗譜にも影響。和声進行を把握するだけでなく、全体像をつかむ力がつく。個人的に一番思うのは、「知らない曲で
今回彫ったのは、**「匂(におう)」**という国字。普段から「いい匂いがする」「花が匂う」など、ごく当たり前に使っている漢字ですが、調べてみると、意味はそれだけではありませんでした。におう。かおる。かおりがする。つややかで美しい。おもむき。雰囲気。そして――日本刀の刃にうっすらと見える模様。この最後の意味を知ったとき、一気にこの字の見え方が変わりました。「匂」と「錵(にえ)」はどこか似ている以前、「錵(にえ)」という字を彫りました。焼き入れによって刀
今回彫った国字は𫒼(さかほこ)。意味は「逆さになった鉾(ほこ)」です。この字を見た瞬間、どうしても思い出してしまう場所があります。それが、**高千穂峰の天逆鉾(あまのさかほこ)**です。天逆鉾を目指して登った、でも——実は以前、どうしても天逆鉾をこの目で見たくて、高千穂峰に登りました。ところがその日は悪天候。森林限界を越えたあたりから、今までに経験したことのない突風が吹き荒れました。まっすぐ立つこともできず、常に中腰で体を低くしての移動。飛ばされない
今回は国字「働(はたらく)」を篆刻しました。「人」と「動」でできているこの漢字。見た目のままですが、“人が動くと働になる”という構造になっています。改めて考えてみると、とても分かりやすくて、同時に少し不思議な漢字でもあります。■人はなぜ動くのか、そしてなぜ働くのかそもそも、人はなぜ動くのか。生まれてきたからには、何かを感じて、何かを経験するために、「動かない」という選択肢は、あまり無いような気がしています。けれど、その「動く」がそのまま「働く」に結び
今回は、国字「𦨞(かわら)」を朱文で彫りました。「かわら」と聞くと瓦屋根を思い浮かべますが、この字が指すのは、和船の底に通った一本の太い板材。船首から船尾まで、一直線に伸びる“竜骨(キール)”のような役割をもつ大事な部材です。調べていくうちに、ただの板ではなく「船の背骨」そのものだと知り、その力強さをどう印面で表現するかが今回のテーマになりました。■𦨞という字のおもしろさ「舟」に「元」で“かわら”。瓦のイメージとは全く違い、船を支える中心構造の名前になるのが面
今回の百顆印は、国字の「鞆(とも)」を白文で彫りました。「鞆」という字は、弓を射る際に左手首の内側につける、防具のような役割の道具を指します。弓を放った瞬間、弦が腕に当たらないよう守るためのものですね。私は弓道の経験があるわけではないので、実際につけたことはありませんが、名前だけは耳にしたことがありました。また「鞆の浦」という地名にも使われているので、地名由来としても身近な人には馴染みがあるかもしれません。革に「丙」で“とも”。意味を知ると、漢字として
今回彫ったのは、国字の「乄(しめ)」。意味は「合計」や「しめ(封じ目)」などで、〆切の〆にもつながる文字です。普段はあまり書く機会がありませんが、意外と身近な場面に潜んでいます。この字、実は語源がはっきりしていません。その中の一説に「卜(ぼく)が変形したもの」という面白い話があり、今回はその説をヒントにしつつデザインしてみました。■存在しない金文をどうするか問題乄には古い書体の資料がほぼないため、金文を“自分で作る”ところから始まる篆刻になりました。朱文で彫
今回は、国字「纐(こう)」を白文で篆刻しました。意味は「しぼり・絞り染め・くくり染め」。“纐纈(こうけち)染”にまつわる言葉で、古い日本の染色技法ともつながっています。■「纐」という字が身近だった話実はこの字、僕にとってはちょっと身近な存在です。知り合いに纐纈(こうけつ)さんという方がいて、珍しい名字なのかな?と思って調べてみたら、なんと実家の近くが名字の発祥地でした(笑)そういえば中学の先生にもいた気がするので、意外にも日常の中にひっそり存在
今回は、国字「燵(たつ)」を篆刻しました。「炬燵・火燵(こたつ)」に使われる字で、“火であたためる”という意味を持つ、冬らしい一文字です。■「燵」という字について燵(たつ)は、こたつに使われる字として知られています。調べてみると、こたつにも据え・切り・大和・電気・掘り・敷き・置き…など、いろんな種類があるらしいですが、正直、うちにはこたつはありません。理由はひとつ。「あると動かなくなる」(実証済み)。たぶん日本中の冬あるあるです。寒
今回彫ったのは、国字の「褜(えな)」。意味は“胞衣(えな)”——胎児を包んでいた膜のことです。胞と衣で、えな。女性のお腹の中にだけ存在する特別なもの。これがなければ、僕たちはこの世に生まれて来ることもできなかったんだろうなと思うと、本当にすごい仕組みです。生まれてすぐ立ち上がれるわけではないけれど、みんなかつてはえなに包まれていたんですよね。■篆刻のこと今回は白文で彫りました。撃辺(げきへん)の刻みが規則的に並んでしまって、押してみたら切手みたい
今回の百顆印は、「蓙(ざ/ござ)」という国字を彫りました。イグサなどを編んで作った伝統的な敷物を表す漢字です。昔は夏になると、どこの家でも“ござ”が活躍していましたよね。最近ではすっかり見なくなりましたが、井草のあの香りはいまでも特別なものだなと感じます。新しい畳の匂いが好きで、できれば畳の上でのんびり過ごしたい——檜のお風呂など、自然素材のものは身体にも心にも馴染むような気がします。暮らしの中で触れてきた素材には、不思議と落ち着きを感じますね。制作について
今回の百顆印は、国字の「匁(もんめ)」を彫りました。重さの単位でもあり、お金の単位でもある、ちょっと不思議な漢字です。■匁という言葉「匁(め/もんめ)」は、重さの単位(一貫の1/1000)江戸時代の貨幣の単位(一両の1/60)として使われていたそうです。生活とお金、そして重さが自然と結びついていた時代の名残なんだろうなぁと思います。「はないちもんめ」は「花一匁」なのか…と考えると、重さの匁なのか、お金の匁なのか、どちらにも取れてちょっと面白いですね。
今回は、国字の「𣜿(ゆずりは)」を白文で彫りました。ゆずりはは山でときどき目にする常緑樹で、お正月飾りのしめ縄にもひっそり添えられています。新しい葉のために古い葉が落ちるという性質から、「譲る」「世代交代」「子孫繁栄」といった意味が見出され、縁起の良い木として扱われてきました。ただ、山を歩いていると、ほとんどの木が葉を落とし、地面にはさまざまな落ち葉が積もっています。常緑樹ですら枯葉を撒き、山道はその循環の上に続いています。自然は常に「ゆずり合い」ででき
今回彫った字は「袰(ほろ)」。「ほろ」といえば、車の幌(ほろ)を連想する方も多いかもしれませんが、この「袰」は矢を防ぐために鎧の上にかけた布製の袋を指す、古い日本の言葉です。母に衣で「袰」。熟語には「母衣」もあり、どこか人の手の温かさがこもった字だなと感じます。現代では矢が飛んでくることも、鎧を身につけることもなくなりましたが、手仕事で作られた衣類を何度も補修し、一生大事にしていた時代の気配が、この一文字からふと立ち上がるように思えました。■僕な
𬚩(いわくら)今回彫ったのは𬚩(いわくら)という国字です。「神が宿る岩・石」を意味し、古くから人々に崇められてきた存在です。■言葉について山を歩いていると、こうした“何となく特別に見える岩”に出会うことがあります。普段はただの石なのに、そこに立つと空気が変わるような、ちょっと近寄りがたい気配を感じる。まさに岩倉と呼ばれるものは、そういう存在なのだろうなと思います。ただ、巨大な岩だと普通にその上に乗ったりしていたので、今思えばちょっと恐れ多い行為だったのか
今回彫ったのは、**笹(𥸮)**という国字です。「ささ」、細く小さな竹が群生する、あの笹です。山に入る人ならお馴染みの存在ですね。■笹という言葉から思い出したこと笹はとにかく成長が早く、繁殖力も強い植物。山の中では道を覆い尽くすほどに広がることもあって、笹漕ぎは楽しい反面、朝露の季節は全身びしょ濡れになります。レインパンツがないと本当にひどい。でも、そんな笹にもいろんな側面があります。葉を持ち帰って乾燥させ、刻んでお湯を注ぐと笹の葉茶になる。「厄
今回は、国字である「鯱(しゃち)」を6mm角で白文彫りしました。鯱といえば、イルカの仲間としての“しゃち”と、名古屋城の屋根に乗る“しゃちほこ”の二つの顔を持つ漢字です。虎の頭に魚の体、背中に棘——火除けの守り神として親しまれてきた存在ですね。■思い出から浮かぶ「鯱」のイメージ名古屋城の金のシャチホコを見に行った記憶があります。でも、当時の僕が気になったのはシャチホコ本体よりも、石垣に刻まれた不思議な紋様。今思えば家紋だったんだろうな、と今だから分かること
今日の篆刻は国字「硲(はざま)」。谷あい・谷間・峡などを表す日本生まれの漢字で、「石」と「谷」という組み合わせがそのまま情景を語ってくれるようです。地名や名字にも使われ、「硲さん」というお名前もあるのだとか。「はざま」と聞くと、ふとガレ場の急登で立ち往生した時のことを思い出しました。進むことも戻ることもできず、ただその場所に立つしかなかった——あの心細い空気も、まさに“硲”だったのかもしれません。人生でも、自然の中でも、はざまに立つ瞬間ってあるものだなぁと感じま
今回は、歌舞伎の題目「藤川船𦪌話(ふじかわぶねのりあいばなし)」にのみ登場する、非常に珍しい国字𦪌(のりあい)を彫りました。■字の背景「舟」と「寄」が組み合わさった形で、数人が身体を寄せて同じ舟に乗る=乗り合いを表す字だそうです。現代では見かけることのほとんどない漢字ですが、意味を知ると、昔の移動の情景が少し浮かんできます。今は電車やバス、飛行機なども“乗り合い”ではあるものの、昔のように人と肩を寄せて移動する感覚は薄れているのかもしれません。便利になった
今回彫ったのは「𧏛(きさ)」という、とても珍しい国字です。『𧏛貝比売(きさがいひめ)』という神名に使われており、“きさ”は赤貝の古名でもあるのだそうです。古事記では、この女神が大国主を蘇生させたとされていて、まるで神話の中の“ザオリク”のような存在です。普段目にすることのない字なのに、神の名だけに残っている。そんなところに古語や神話の面白さを感じます。■制作メモ今日は白文で彫りました。久しぶりに出てきた6mm角の石を整えて使ってみたのですが、印
今回は、国字の「𨏍(いえづと)」を彫りました。意味は「家に持ち帰るみやげ」。実はこれまで一度も聞いたことがない言葉で、今回の制作を通して初めて知った漢字です。■ことばの意味と不思議な構成「いえづと」は、家苞(いえづと)と書く場合もあるそうですが、今回扱った𨏍の字は「車」と「榮」を組み合わせた形。家に持ち帰るお土産をなぜこの二つで表したのか、いまひとつ理由が想像できません。車で運ぶからなのか、榮(さかえ)=華やかさから“特別なもの”を連想したのか…。馴染みのな
今回彫ったのは「雫(しずく)」。雨冠に“下”という、とても素直で美しい形をした国字です。■言葉の背景雫と言えば、やっぱり「雨垂れ石をも穿つ」のあの雫。落ちては消える小さな水の粒が、長い時間をかけて石すら削ってしまうという、あのたとえ話。同じ“しずく”でも「滴」という字があるのに、日本ではわざわざ新しく「雫」を作った。水が落ちる瞬間のかたちや、その儚さまで写そうとしたように感じます。古い辞典では国字かどうかの扱いが揺れていたりするのも面白く、漢字は、
女と花で「だて」と読む、美しい国字を彫りました。今日彫ったのは「婲(だて)」。“伊達”の印象が強い言葉ですが、実は「女」+「花」の国字でも「だて」と読み、“美しく身なりを整える女性”を表すのだそうです。字を見るだけで、どこか艶やかさや気品が漂う一字。伊達男に対して“婲女(だておんな)”と言えば、すっと姿勢の整った、芯のある女性が浮かんできます。そんな背景を想像するのも楽しい字です。■彫るときに考えていたこと今回は白文で彫りました。枠も含めて、全体の
今日は「迚(とても)」という国字を彫りました。普段ひらがなでしか見ない言葉ですが、実はこんな漢字があるんです。■迚という言葉意味は「とても・非常に」。強い程度を表すときに使われる国字です。しんにょうに「中」という組み合わせで“最上級”が表せるのは、なかなか面白い発想ですよね。ただ、しんにょうは“四辻(よつつじ)=道の分岐”、中は“旗や目印”の意味があると言われていて、どう考えても「非常に」にはつながりそうにない…気もする。まぁ、その不思議さごと受け入れるのが漢字の楽しさです。
今日の作品は「噺(はなし)」です。この字は物語やある事柄についての話を表し、新たな口から生まれる言葉を象徴しています。この字を見ていると、どうしても落語が思い浮かびます。噺と落語の魅力「噺」は、新しい口で語られるもの。つまり、今この瞬間にしか生まれない言葉の象徴のように感じます。落語の噺家たちは、昔話を語りつつも、その場の空気に応じて新たな言葉を紡いでいきます。だからこそ「話」ではなく「噺」という特別な言葉が使われるのでしょう。戦中には禁
今日の作品は「濹(ボク)」です。「濹水(ぼくすい)」という言葉は、かつて隅田川の別名として使われていました。水に「墨」を重ねた美しくも深い響きが、この字には宿っています。濹の意味と感覚墨は単なる黒色ではなく、光を吸収し、青や紫を秘めた魅力的な世界を持っています。水に溶けた墨の揺らぎを眺めていると、時間が静かに滲んでいくような感覚を覚えます。この字は、私たちの日常にあふれる壮大な自然の一部を象徴しているように思います。制作時の挑戦今回は白文で制作
今日の作品は「弖(て)」です。この字は、助詞の「て」に当たる国字であり、あの「てにをは(弖爾乎波)」の「て」を表しています。言葉の響きをそのまま文字にした、日本語らしい一字なのです。ことばのエピソード「弖」は、日本語の特性を生かした言葉として、響きを文字に変える技術を感じさせます。助詞という役割に対して、形式的な美しさを持ちながらも実用性を兼ね備えています。僕の解釈見た目には、下線付きの「て」のようにも見えますね。「女子(じょし)」という言葉は親
今日の作品は「𪐷(くろい)」です。この字は、黒色を表す一字であり、「黒」に「玄」を加えることで、単なる黒以上の何かを示唆しているように感じます。ことばのエピソード「𪐷」は、色の暗さに加え、何か神秘的なニュアンスを持つ字です。黒と玄を組み合わせることで、単なる色ではなく、深い意味を持つ語に昇華しています。僕の解釈黒と玄を合わせて「くろ」。敢えて玄をつけることで、玄妙や玄人の「玄」を意識したのかもしれないと考えます。この言葉には、なんだか「く