「海をあげる」この本は、2021年本屋大賞ノンフィクション部門で大賞を受賞した上間陽子さんの作品。上間さんは琉球大学で風俗調査、沖縄階層調査、若年出産女性調査を行っている研究者であるが、研究書ではないエッセイも出しており、この本は2作目。読後感はイタリア在住が長かった須賀敦子さんを思った。瑞々しい感性と知性の深さは似ているけれど、上間さんの場合、基地と隣り合わせの環境の沖縄で住民に課せられる理不尽さとどうしようもない無力さを語る際、こちらも何とも居心地の悪さを感じてしまう。この本のラストの文章を