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なぜ、年末が来るのに、いまだに1月号を読むのか。ただ、読んでなかったけど、読みたかったからだ。最初に目を通したのが、読み切り小説の「報道加害」下村あつし著。メディアの暴力について書かれた作品だった。ドラマっぽい一冊だなあと感じた。いかにも、幻冬らしい作品。「血と反抗」石井光太著。これも、幻冬らしさがある作品だった。在留外国人やその家族の問題にリアルに触れることのできる作品だ。幻冬が追求するのは、リアリティーとドラマなんだろう。
日本の片隅の里山に「日の出池」と言う名前の池がありました。湖ほどは広くなく、沼よりは大きい、どちらかと言うと小ぶりな池です。そこには日本の在来種たちが平和に暮らしていました。小鮒のコブちゃんとモロコのロコちゃんは仲良しです。コブちゃんは毎朝仲間たちと回遊して藻やエビなどの朝御飯を探します。「やあ、コブちゃんおはよう」「おはようロコちゃん」水面近くを泳ぐモロコたちの中にいるロコをコブちゃんたち底に近いところを泳ぐフナたちは見上げています。キラキラと輝く美しい水面。
私は、杉下ハヅキ。男の人が苦手だ。嫌いというのではない。むしろ周りの女の子たちより、何倍も男の人が好きだと思う。それゆえに、男の人の前に立つと緊張して、何がなんだか分からなくなってしまうのだ。さらに、男の人の前で自分を良く見せようとしてしまう癖がある。そのせいで、男の人の前では自分らしく居れず、笑顔も口数も減ってしまい、食事も喉を通らない。それほど男の人を意識していない女の子たちの方が、自分らしさを出していてずっと素敵で、笑顔で男の人と話せていて、食事も楽しんでいる。私はそうした女の子
青木コウは、野田リクトのことが気になっていた。自分の気持ちに、青木は深い疑問を抱いていた。俺の恋愛対象は女だし、性欲を抱く対象だって女だ、それなのになんであいつのことが…彼は自分自身に、困惑していたのだ。きっかけは、はっきりしていた。あの劇を演じてからだ。青木は大学の演劇サークルに所属しており、野田も同じサークルの仲間なのだった。つい一ヶ月前の公演で、二人は共演した。『オーシャンズ・ラブ』という、ボーイズ・ラブをテーマにした寸劇だ。野田は、大好きな彼女にフラれた傷心の男Rを演じ
SHRが終わり帰る準備をしていると、他のクラスの女子達が「校門に凄いイケメンがいる!」と騒いでいる。イケメンに目がない女子達は一目見ようと、窓から覗いたり、校門に走っていく者までいる。まさかね。そんなはずはないよね。そのイケメンに心当たりがある私はどうか違いますようにと祈る。下駄箱に行き靴に履き替え、他の生徒に混ざって遠くから様子を見ると、校門の所に女子達が一定の距離を置いて群がっているのが見える。その中に頭一つ分高い男の顔を確認する。予想通り私の彼氏、咲夜くんだ。眉目秀麗とは
【幼なじみ王子と従者とホットチョコレート】番外編、読み切り掌編になります。ファンタジーだけど、ファンタジー要素はあまりありません。イメージイラスト(ボールペン画)――――――――――――小説掌編【雨の日のミラとラフィの過ごし方】ざんざん、ざあざあと朝から雨が降る。春のこの時は珍しいことだ。「暇だ」昼食の茹でたジャガイモをつついて崩しながら、ラフィが春の湖畔のように澄んだ青い瞳を半眼にし、頬杖をつく。「行儀が悪い」指摘すると、姿勢をただすのは、ラフィの素直でいいところだ
①冬の季節のこと。冬季。②冬の夜の月のこと。寒月。⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘「今から降りる、、」トランシーバーでそう言うと、しっかりと脚で地面をつかむように意識しながら歩き出したタツジロウは今年で引退するつもりだつまりこの冬で終わるということだ狩猟許可、猟銃免許証も返納してあとはゆっくりばあさんと二人、子どもも孫もいないかわりに少しは貯めた貯金で体の許す限り旅をしていきたいと思っていた老後の温泉巡りを夢として派手な生活を避けて生きてきて気がつ
温め鳥(ぬくめどり)とは、冬の寒い夜、鷹が小鳥を捕らえて足を暖めること、または、その小鳥のことです。鷹は翌朝小鳥を放しますが、恩を返すためにその日は小鳥の飛び去った方向に狩に行かないといいます。⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘少年院を出たり入ったりして結局はこんな事をして生きているまあ、世辞にも良いとはいえない、、アツシが仲間と呼べる連中は手に職を持っていたり、はっきりとは言わないがアツシと同じようなことをしていたりと、実にさまざまだったお互いに
看護師達がまだ少し興奮しているカオルをベッドの上に寝かせ終えると「ちょっと一服してくるそう言うと父親のショウジはそそくさと病室を出た「パパー、タバコ減らしてねー、、後ろからカオルの声が追いかけてくる8階からエレベーターを使わずに階段を少し急ぎながらそれでも病院の狭い階段なのですれ違う患者や医師、看護師達にぶつからないように注意を払いながらまるで忍者の動きのように壁を背でなぞるようにして降りて行った我ながらおかしな事をしていると思ったがエレベーターを使わ
『012短編「雨夜のヤクザ」<11話:最後の再来>』『011短編「雨夜のヤクザ」<10話:カタギとヤクザ>』『010短編「雨夜のヤクザ」<9話:兄貴>』『009短編「雨夜のヤクザ」<8話:本題>』『…ameblo.jpの続きSAMURAI-侍喫茶店に向かうと、極道な二人がまた入口前に立っているのが見えた。お店から30mは離れているのに、コチラに気づいた二人の男は腰を90度に曲げて礼をしている。横を通り過ぎるOL達が男達の頭を下げる方を見て「誰かくるの?
ドラマなどを見ていると「そんな上手いこと行くかぃ」とか、「ご都合主義もここまできたらギャグだな」とか思うことってありませんか?ドラマみたいに劇的な、奇跡のようなこと、私の身にも起こりませんかね?まぁ、あれはフィクションだしやっぱありえんね。でもそんなフェイク(偽物)の世界が実はあったんですよ。『フェイク』「月島さん、保留1番お電話です。美濃商事の松原部長からです」「留守だって言ってくれ」「いえ、もう代わりますって言ってしまいました」と事務の子が舌を出す。この前トラ
GW企画です。5月1日はこの読み切り小説です。2日は「お賽銭は・・・」の続きを。3日から5日は短編小説「ひこばえ物語」(前編・中編・後編)を7日から再び「お賽銭は・・・」を投稿します^^『作州怪異伝(妖怪夜話)』美作国(みまさかのくに=岡山県北部)に榊の翁(さかきのおきな)と村人に呼ばれている老人がいる。榊の翁は炭焼きである。クヌギや楢、樫などの木材を原木とし、それを黒炭にする。窯(かま)に火入れをしてから燃やすための木材をつぎ足す。窯の中の原木が乾燥し、
電子音が頭上で鳴り響く。スマホを見ると朝の6時半だった。「う、うぅ~~ん」俺はゆっくり伸びをした。えっと・・・昨夜は23時にベッドに入ったから、眠りに入ったのが23時半として・・・睡眠時間は7時間か。久しぶりにゆっくり眠ったという満足感。いつもは同じ時刻に眠っても目が覚めるのは朝の4時だから4時間半の睡眠時間だ。いつもより2時間半も多い。満足するはずだ。「佳彦さん、ゆっくり眠れたようね」「あぁ、久しぶりだよ、こんなにぐっすり眠れたのは」妻の十和子が隣のベッドから微笑
あれは去年の春、私がまだ大手健康薬品メーカーで研修期間中だったころの話です。同期入社の酒井リョウジ君と会議室の隣の席に並んで商品説明のVTRを見ていました。20人ほどの新入社員が整然と並んでいました。私とリョウジ君は前から4列目の真ん中の席でした。リョウジ君は私のタイプの男の子なのです。午後2時。開始から15分頃でした。私は隣の酒井君に目が釘付けになったのです。「酒井君、ちょっと・・・」彼の頭がカックンとなったので見たら今にも眠りそうでした。何とかしないと居眠りが
パーーン!日ノ本の扇子が権造のバーコード頭にヒットして乾いた良い音がした。「あひゃぁ!」成兼権造(ウワツカサドリエラソヒコ)はのけ反って仰向けに倒れた。「え?わし、そんなに強く殴ってないし・・・どったの?」実は権造は生まれてこの方一度も頭を叩かれたり人に怒られたことが無いのだ。そのため免疫が無くて両方された途端にショックで倒れたのだ。「よっわ!」しかしまたも権造の眉間からウワンウワンウワンと念波が出だした。それと同時に部屋の外の社員が「会長!どうしました?」と騒ぎ出
ラスト読み切りです。では、どうぞ~^^旅行会社の先輩でもあり、僕の大学時代の山岳同好会の先輩でもある安藤さん。仕事でも責任感のある先輩で、職場の後輩の面倒見が良い。僕、石和守はそんな安藤さんの学生時代からの後輩であることが自慢だった。『先輩』「マモルはあのこと、どう思う?」修三が僕におずおずと聞いた。何の話かは分かっている。「どうって・・・」「あれだろ?安藤先輩の・・・だろ?」裕司が修三の右から口を挟んだ。バーのカウンター席は僕(石和守
え~、小咄を一席。山小屋でばったりと出会った四人の猟師たちがおりました。四人は晩酌をして寝てしまいました。翌朝、彼らはそれぞれに獲物が違うのですが負けん気だけは強くて囲炉裏を囲んで自慢話がはじまります。まず一人目の作蔵。「俺は長年山を歩き回って狩りをしてきただ。けんども今回の獲物は超大物でな」皮の色は見たことも無い緑色をしていて少し細長く大きい。「しかもだ!そいつらは固まっていたんだ。俺は興奮して銃を構えた」ダダーン!「仕留めたり!」俺は手ごたえを感じてその場
さて今夜の寝床はどこにしようか?段ボール数枚と毛布を抱え、今夜もあても無く彷徨う。お!あそこが良いな。大通りからは人一人分がやっと通れる路地の向こうに雑居ビルの裏口が見えた。ドアの真上の蛍光灯は切れそうなのか嫌な音と共にチカチカと点滅している。ゴミを踏みしめながら路地に入っていく。裏口脇に段ボールを敷く。毛布を掛けて横たわる。蛍光灯に蛾が舞っている。借金を重ねて小さな町工場を捨て、家族を捨てて夜逃げをした。いや、家族に捨てられて、が正解だな。
絵本風読み切り小説『リーシュの七色トカゲ』リーシュは軍人さん。戦闘機のパイロットが彼のお仕事です。過酷な訓練と命がけの任務。そんな彼の日々を癒してくれるのは。「ベローニ、ただいま」虹色のトカゲ、ベローニはリーシュが帰ってくると玄関までお出迎えして喜びます。街で迷子になっていた小さなベローニ。ほんの2、3日ですくすく育って今では2メートル。餌はチキンの丸焼きを一日6つ。リーシュはベローニと一緒にベッドに入ります。そしてリーシュの
1、時折見かけるその人はライトブラウンの、ベリーショートヘア。やや大きめのイヤリングに、ヘップバーンをおもわせるスレンダーライン、スリムパンツ。一度見たら忘れられないキラキラした大きな目。意識なんてしてないのに、探してなんかいないのに、人混みの中から見つけてしまう。なぜこうも見つけてしまうのか、、、美しい光を纏っているだけではなくなにかがあるはずなのにそのなにかがわからない。2、金曜日、珍しく残業なし。飲み会を断って、足早に会社を出る。駅地下を歩いていると、
僕の昔話を聞いてください。僕の名前は江崎隆則。大阪で大手インテリア販売店の寝具売り場の主任をしています。大学生の頃、陸上部に澤村裕という同級生がいて彼とはとても仲が良かったのです。僕は就活で少し無理をして大手スポーツ用品の面接を受けましたが、見事(?)一次面接で落ちました。澤村も苦戦はしていましたが、大阪のお菓子の卸しをしている老舗に何とか潜り込めたようです。「良かったな、裕。就職おめでとう。それに比べて俺はもう就職浪人せなあかんかも」「ありがとう。俺的はエビス屋に就職
「清水さん、勇気と希望を持って掘るのです」「はい」私はノルク教授の指示を受けてツルハシを振り下ろした。ザクっという音と柔らかい土の手ごたえを感じる。深く突き刺さったツルハシを抉る(こじる)ようにして抜くと茶褐色の土がボロりと抜ける。まだ湿り気のある表層の土を掘り進む。「あぁ、これは」20センチほど掘ったところから白い車の屋根が見えた。これは私が一年前に廃車にした車だ。「良い車だった。こいつであちこち旅しました。良い車でした」少し横に避けて掘り進むと、カ
サムが工場に着いたのは朝の7時。オンボロのワンボックスカーが調子悪くて家を早くでなければならない。以前、朝に動かなかったことがあって8マイルもの距離を自転車で飛ばしたからだ。「相棒、おまえさんさえいつもご機嫌なら俺は早出しなくて済むんだぜ」所々錆びた黄色い相棒は丸い目をして黙って聞いている。そして今日も一番乗りをする。今日の仕事は『昨夜使った工具の手入れと総数の点検、プレス機の給油、給油のためのマシン油の運搬、今日使う部品が揃っているかどうかの点検、そしてそれを梱包から
中学生の頃からだろうか。俺が同じテニス部の美津子のことを気になりだしたのは?短い髪はくせっ毛で、いつもまとわりついてきて猫みたいだなって思ってた。美津子を意識しだしたのは男女混合ダブルスで組んだ頃からかも知れない。いつもは元気いっぱい頑張ってくれてたのに、他校との練習試合でボロ負けした日の夕方、一緒に帰ろうと校門のところで待ってたらいつまで経っても出てこない。おかしいな?と思ってコートに行ったらしゃがんでいた。「美津子?帰らないのか?みつ・・・」美津子は負けた悔
キャベツを見ると自分の故郷を思い出す。青空と一面緑のキャベツ畑を思い出す。そして汗を拭くじいちゃんの笑顔を思い出す。『孫とジジイの物語』「吉森!ちょっと来い」課長が手招きしている。はぁ、とコッソリため息を吐く。「お前今月何件契約取ってきた?」課長のご機嫌は明らかに悪かった。「1件です」「え?なんだって?俺の耳が遠くなったのかな?聞こえなかったんだけど」「あ~あ、またやられてるよ」「課長のイライラの捌け口」クスクス笑われているのも聞こえてるんだよ。いや
夜空の彼方から彗星がやってくる。天文学会はその彗星を発見した天文好き漫才師のコンビ名「天野カケル・コケル」の名前を取って「カケルコケル彗星」と名付けました。「カッコ悪る」「ダッサ」「日本の恥」散々罵られたけどしょうがないじゃないですか。一番楽しみにしていたのは名付け親になった天野カケルとコケルでした。テレビ局のレポーターが二人にインタビューをした。「さすが天文オタクのお二人ですね、実家の屋上にこんな立派な天文台を作るなんて」「オタク言うな!」「失礼しました。天
春彦が会社から戻ると修平と薫が花束を差し出した。「あなた、長年のお勤め、お疲れ様でした」「父ちゃん、お疲れ様」俺は突然の出来事に驚き、そして目頭が熱くなった。今日は俺の定年退職の日。『オヤジの定年』家族3人で慎ましく暮らしてきた。春彦は小さな機械部品工場で部品組み立てラインの責任者として働いていた。工場から賃貸マンションまではとても遠くて、朝早くから出勤して夜遅くまで働いた。母の薫も近所の介護施設でパートとして働いていた。貧乏でもないが決して裕福でも無く、贅沢と言
あるところに一人の男性がいました。男性の名は高梨貢(みつぐ)さん(54歳)。一人娘の美羽(みわ)が明日、結婚式なので落ち着かない。どんなことがあっても泣いてたまるか、とそれだけは決めていた。美羽の母親は美羽が8歳の時に家を出て行きました。良き妻で母親だと思っていましたが、職場の上司と恋に落ちて子供まで出来てしまったのです。「美羽は俺が立派に育てる。お前のような女にはぜったいせえへん」貢は激怒して妻を追い出しました。しかし働きながら家事と子育てをすることは容易ではあ
わしは「このしろ荘」と言うアパートの大家をやっとります古家と申します。今年でもう89歳だす。アパートは駅から徒歩25分、築40年の家賃2万円の1Kだす。もちろん共益費込みだす。規約?そんなもんなかったと思います。住人の方々の自主性にお任せしてありますんやわ。住みようてええアパートだすよってに、一度あんさんも見に来ておくんなはれ。ダダンダンダンダンダン!!ドスーーンバターーン!今日も2階の部屋から騒音が響いてくる。越前谷よしひろが飛び起きて時計を見ると午前2時
オチの全くない読み切り小説を1本お届けします。『秘密子(ひみこ)とみじん子』もう夜の10時を回っている。俺はくたびれた体と頭を奮い立たせて最後の原稿を書いた。もうこれ以上は無理。頭からブスブスと煙が立ち上り、タバコの煙と混じって部屋を徘徊した。灰皿には剣山のごとくタバコがひしめき合っていて、まるでラッシュ時の電車のようになっている。首の後ろが痛い。コンコン。「はい」ミニスカートの女が入ってきた。書物が開いたまま散乱している中を器用にまたいでこちら