ブログ記事2件
私のふるさとは、北海道の南岸、太平洋に面した様似町(さまにちょう)である。そこは襟裳(えりも)岬を擁するえりも町と、サラブレッドの生産地である浦河町に挟まれた小さな町だ。一帯は日高昆布の産地である。とりわけ様似の浜は、良質な昆布の採れる「上浜(じょうはま)」にランク付けされている。早朝から始まる昆布採りの作業は、かなりの重労働である。高校一年の夏、札幌から帰省したおり、初めて昆布干しの手伝いをした。一人前の男になりたい、そんな密かな思いがあった。毎年、七月上旬から九月下旬にかけて〝採り
「旗(はだ)、揚がったよ!」午前四時半、カアちゃんの威勢のいい電話で起こされる。顔をザッと洗って自転車に飛び乗り、海岸沿いの道を風を切って走る。柔らかな生まれたての朝の光が、海面でキラキラと踊っている。磯の香りを胸一杯に吸い込みながら、沖合に浮かぶ小舟に目を走らせる。ああ、喫水線がまだ見えている、大丈夫だ。一番舟が戻ってくるまでには、間があるのを確認し、ほっとして自転車の速度をゆるめる。うっすらと額に滲(にじ)んだ汗が、心地よい潮風に吸い取られていく。沖合に浮かぶ岩礁の磯場で、喧(かまび