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テッペー1stminialbumレコ発ライブ2021年9月19日17時〜大分市Fサウンドカフェguest出演田口千里昨夜の西野ナオトさんのワンマンライブから一夜明けまして本日9月19日(日)はテッペーレコ発ライブguestに田口千里さん可愛い可愛い後輩テッペーの初レコ発餞に先輩田口さんは何を歌ってくださるのかどんなメッセージをたくすのかお見逃し無く前人未踏7時間の長丁場『55ライブ』を1人でやりきった田口さん1ヶ月経って、今日が初の
「おじいちゃん元気だったね」千草とカスミは民宿の二階の窓から海を眺めている。「お姉ちゃん、いつこっちに来るの」「もう少し先かな。いろいろ整理することがあるし」「そうなんだ」「どうしたの」千草がカスミの顔を見る。「捨てられる」「ユキっていう名前は向こうに置いてくるよ」「置いてくるだけ」「あたしもヒロ君も、また拾いに行っちゃったんだよ」「それでいいのよ」「カオルさんもタカシ君も捨てられたと思っているみたいだけど」「そうじゃないよ
「あいつ来なかったな」「そんなのわかってたじゃない」「そうだけどさ」タカシはカリカリのトーストをかじりながらカオルを目で追っている。カオルは少し眠そうな目をしながらも忙しそうに動いていた。「今日は出かけるんだって」「今から寝ちゃったら起きられないよね」「目覚ましかけても」「多分ムリ」「それなら少し落ち着いたら」「コーヒーでも飲んで」「そうだね」カオルはタカシの向かいにすわってコーヒーを飲みはじめた。「少し濃い目に作った
「やっぱり親子だよね。ケンタとマスターってよく似てるの」「そうかなあ」「ヒロ君は一緒にいるところ見ていないから」「そうかもしれないけど」「ライブのほうはどうだったの」「やり切ったかな」カスミが明るい声で言う。「いっしょに出た女の子が別のライブに出ないかって誘ってくれたの」「彼女もすごく良かったよ。かおりちゃんっていうの。今度紹介する」「マスターの店にはもう出ないの」「また同じような企画をするから出てほしいって」「そうやって少しずつでも活
「緊張する」「どうかな。ストリートはなれてるけど」「その時になってみないとね」「大丈夫ですよ。昨日も歩道橋で歌ってたらしいよね」「なんか納得いかなくて。それで急に思い立って」ユキがセッティングしたレストラン。ユキとカスミに向かい合うようにマスターが席についている。こんなふうに人と食事するのはいつ以来だろうとマスターは考えていた。「すいませんね、お待たせしちゃって」ユキがマスターに言う。「こんなこと久しぶりなので、自分の
「ヒロさん」ヒロは後ろからの声に振り返った。「カオルちゃん」久しぶりに会ったカオルだったけれど、ヒロは昨日も会ったような錯覚を覚えた。変わってないな。「人だかりができてるね」「はじめはみんな通り過ぎるだけだっただけど」「今日は花見から流れてくる人が多いみたいだね。だんだん集まってきた」「場慣れはしてるはずだから。昼間は久しぶりで声が出てなかったけど、良くなってきた」「お姉さんから聞いたの」「おねえさん」「そう。千草さん」カオ
「オレも行ったほうがいいのかな」「ユキさんに誘われなかったの」タカシは少し戸惑いながらカオルを見ている。「妹さんがカオルのお店でライブをやるってことは聞いたけど」「ユキさんと会ったの」「電話だよ」「それって来てほしいってことじゃない」「そうかな」カオルは店に出る支度をしている。今日はパソコンも見てないし、ずいぶん早いな。「何かあるの」「何かって」「店に行く前に用事があるとか。出かけるの早いんじゃない」そうか。今日はユキ
「マスターどうでした。ユキさんの妹さんは」「雰囲気あるね」「雰囲気」カオルが聞き返す。「そう、雰囲気。大事だよね」開店したばかりで、まだシルバー・ピストルには客がいない。こんな時間にカオルが店にいるのは久しぶりだった。「カレシがついてきたよ。ユキさんといっしょに」「知り合いなんだろう」「ヒロさん変わってないのかな」カオルがつぶやく。「オレにはわからないけど」「そうですよね。明日会えるのかな」「明日は来ないみたいだよ、カレシ」
「いよいよですね」コンビニの裏に植えてある桜がチラホラ咲きはじめた。この木は山桜なのでソメイヨシノよりも少し早く咲きはじめる。「やっとカスミの歌がきける」「エミさんはカスミの歌きいたことがなかったんですか」「そうなの」「どうしてなんだろうね。あたしが歌ってって言っても歌ってくれないの」「子どもたちも楽しみにしてるみたい」そう言ってエミが微笑む。「サキ、カスミお姉ちゃんの歌ききに行くの」そう言ってサキがヒロにからみついてくる。「サキはカス
「きれいに咲いてるね」ヒロとカスミは一月に訪れた神社の桜をながめている。カスミは背中にギターケースを背負っていた。あの時よりよりも華やかに見えるのは桜のせいだけではないだろう。ヒロはそう思いながらカスミを見ている。「エミさんは今日来るの」「もう電車に乗ってるころかな」「ヒロ君はこれから帰るんでしょう」「リハくらいまではいたかったけどね」「リハは昨日したじゃない」「まあね」ヒロとカスミはこっちに着いてすぐに、以前二人で訪れた店に入っ
これからお店に出るということらしいけど、サブおじさんの民宿で会った時の千草とはだいぶ違っているように思えてヒロは少し戸惑っていた。「お久しぶりです。寛太郎といいます」「カスミの姉の千草です」千草にもヒロのことがあの時の印象とは少し違って見えた。もしかするとヒロに関する情報が色々と入っていたからかもしれないと千草は思った。カスミはかしこまった雰囲気を少しでも和らげようと言葉をさがしている。「カオルさんとはお知り合いなんですか」千草の言葉に
「ねえユキさん。妹さんストリートで歌ってたんですよね」ユキはカーディガンにデニムのパンツ。スニーカーを履いている。「混雑しているみたいだから、気を使わなくていいものがいいと思って」カーディガンの上には、ロングのダウンジャケットを着ていた。「これ通販で買ったの」ユキがにこやかに言う。少しめかしこんできたカオルと、スーツを着たタカシは目を見合わせて笑った。そしてまわりの人の多さに驚いた三人はお参りをあきらめてコーヒーショップに入ってい
川から少し入ったところにある神社。浅草からはさほど離れていないけれど、位置的には川の反対側になる。一月もこの時期になると、休日でも参拝者はなくひっそりとしていた。「浅草から少し離れるとこんなに静かなんだね」「すごい人だったよね」「スカイツリーも無理っぽい感じだね」「まあね」「いい天気なのに」カスミが少し残念そうに言う。「平日に来ればいいのかな」「そんなに変わらないんじゃない。観光地だし」「でもやっぱり違うと思う。今日は歩くの
「ねえ、着物着ていったほうがいいかな」「一人で着れるの」「そうだよね」「それよりもカオル、着物なんて持ってた」「そうか」タカシは雑煮の餅をかじりながら、相変わらずカオルらしいと思った。「どうしてもユキさんのこと考えちゃうんだよね」「たしかにユキさんは着物似合そうだね」「タカシぐらい休みがあればなあ」「実家に帰るとかしないの」「今さら帰っても、驚かれて迷惑がられるだけだから」「お母さん一人でさびしくないの」「妹が近くにい
三郎がおじいちゃんの家に年越しそばを持ってきてくれた。ヒロもカスミも仕事が忙しいせいか年を越すという実感はなかったけれど、こうしておじいちゃんとテーブルを囲んでそばを食べることで、新しい年がまたやってくるということを感じることができた。「ここから学校に通っているころは、いつもこうしてサブおじさんのおそばを二人で食べたんだよね」カスミの言葉におじいちゃんはにっこり笑うそして「今日は一人増えた」と言った。「おそば食べたら仕事に行くの」「そう
「シルバー・ピストル」では、久しぶりのライブが行われていた。店の奥のステージで歌っているのはマスターの友人のユーちゃん。プロのミュージシャンではないが、あちこちのライブハウスで歌っている。関係者にも顔が広い。「ユーちゃん、久しぶりですね」常連客のコウちゃんが声をかける。「なんかね。最近マスターがその気にならなくて」「ライブハウスではやってますから今度来てください」そう言ってユーちゃんはコウちゃんにフライヤーを渡す。店の中は熱気であふれていたけ
エミとマサミは同期入社ではあったが、それほど親しい友人ではなかった。それでも職場が近かったこともあって、エミはマサミの結婚式に招待された。他の友人を呼ぶ都合上、エミを無視できなかったという事情もあったようだ。その後トシユキがエミの上司になり、近くに住んでいたこともあってエミとマサミは親しく付き合うようになった。「いいなあ、こんなかわいい子がいて」マサミはケンタとサキを見て少しうらやましそうに言う。「ママのお友だちと会うの」ケ
「クリスマスなのに休めないんだ」「そもそもクリスマスは祝日じゃないし」「イヴの前日は祝日だけどね」「それにカオルだって休めないだろう」「それはそうだけど」「イヴの日ってお店混んでるの」「それなりにはね」「俺がそっちに行ってもいいかな」「やめてよ。タカシが来たって相手できないよ」「そうか。フライドチキンでも持って行こうと思ったんだけど」「チキンならあたしが貰ってくるよ。朝になっちゃうけれど、多分余るから」「お客さんとかが持ってきて」
「こんなところにいていいんですか」マスターがユキに言う。「たまにはね」「マスターはこの商売長いの」「そうですね。長いといえば長いし、短いといえば短いですね」「何かよくわからないなあ」そう言ってユキが笑う。「結婚してからこっちに出てきたんですよ。それまでは田舎暮らしで」「こっちの人と結婚したんだ」「遠距離恋愛」「まあ、そんなところです」マスターはウォッカベースのドライマティーニをユキの前に置く。「あたしね、ジンベースのマティーニしか飲んだ
駐車場に赤い車が止まった。クレムソンレーキのような色だけれど、ちょっとピンクがかっているようにも見える。中からはおそろいのタートルネックのセーターを着たカップルが降りてきて、男のほうがセーターのまま少し小走りで店の中に入ってきた。女はセーターの上に白っぽいダウンを羽織りながらゆっくりと歩いてくる。「いらっしゃいませ、こんにちは」店に入ってきた男にヒロが声をかける。一瞬ヒロのほうを見た男は、入口のところで店の中をゆっくりと見まわしている。商品を
「エミさん、ケンタとサキのお父さんてどんな人なんですか」「どうしたの急に」「夜一人でいたときに、駐車場に止まったままで誰も降りてこない車があって」「その話前にも聞いたよね」「よくあることじゃない。車の中で休んだり、仮眠したり」「そうなんですけどね」「その人はずっと降りてこなくて、店の中の様子をうかがっているような感じだったんです」「もしかしたらエミさんの知り合いじゃないかと思って」「ちがうと思うよ。ヒロ君も何をしていたのか、
マスターのところにカップルが訪ねてきている。そのカップルはカウンターでマスターと静かに話をしていた。常連のコウちゃんとボックス席にいるカオルはその様子をうかがっている。「失礼します」ミキもボックス席についた。「内緒の話でもしてるんですかね」「はじめての客だなあ。そういえばこの前もカップル来てたよね」ふだんはカウンターで飲んでいるコウちゃんは少し落ち着かない様子。「こんなこと滅多にないんだから、よそ見はしない」「カオルちゃんだってチラチラ
ヒロとカスミを乗せた電車が海沿いを走りはじめた。そろそろ乗り換えの駅に着くところ。その駅からローカル線に乗って二人の住む町に向かう。夏の時期はリゾート地に向かう客でいっぱいになるローカル線も、この時期は学校に通う学生やお年寄りぐらいしか利用しないので車内はガランとしている。週末には少し様子が変わるようだけれど、温泉が目当ての人たちはほとんどが団体客なので電車を利用する人は少ない。ヒロの働いているコンビニにもたまに観光バスが止まる。駐車場
「久しぶりね。今はタカシ君のところにいるの」ジーンズにゆったりとしたベージュのカーディガンをはおったユキをカオルはなかなか見つけることができなかった。ユキさんは相変わらずきれいだ。ほとんどメイクをしていないのに。気品っていうのかな。ちょっとした仕草でさえ美しい。あたしなんて全然問題外。カオルはそう思った。ユキさんに会うならと、気合を入れてめかしこんできた自分が滑稽にさえ思えてしまう。「素敵な服ね」ユキが言う。「通販なんですけど。今ちょっ
「お姉さんに会っていかなくていいの」ヒロはワインを飲みながらカスミに言う。「仕事そんなに休めないし、もう一日あれば会っていってもいいんだけど」「ヒロ君も明日の夕方までには戻らなきゃならないんでしょう」「まあね、エミさんやアキラ君にも負担かけられないし」「ねえ、カルパッチョとチーズだけじゃお腹空いちゃうんじゃない」「そうだね、パスタでもたのもうか。それともフィッシュ・アンド・チップス食べに行く」「近くにあるかな」「調べてたんじゃないの」
「もう戻っちゃったの。残念ね」ユキは少し不機嫌そうな顔で電話を切る。そして気持ちを切り替えるように向かいにすわっているタカシに笑いかける。「あの子、昨日からカレシとこっちに来ていたみたいなの」「妹さんですか。たしかカスミちゃん」「そう、会社を辞めておじいちゃんのところに戻ったんだけど、おじいちゃんの家を出てカレシと同棲しているみたいなの」「ユキさんはカレシと会ったことあるんですか」「おじいちゃんのところに帰ったとき、叔父さんのやっている
「ごめん、マスター」「カオルちゃん遅かったね」「また、ネット通販にハマってた」「そんなところかな」カオルはコートを脱いで、カウンターの中に入っていく。カウンターの常連客はミキちゃんが相手をしていた。「そういえばさっきまでカオルちゃんを待っていた人がいたよ」常連客の一人がカオルに声をかける。「誰だろう」「カップルで来てたみたい」「あたしも今来たばかりだから」ミキちゃんがカオルに言う。「さみしかったよ。マスターだけでさ」「
カスミはいくつかのコードを鳴らしたあと、少し考え込み、またコードを鳴らしていく。ヒロはそんなカスミを見ながらピンク色のハーブティーを一口すすった。ローズヒップのアスコルビン酸とハイビスカスのクエン酸の酸味が舌から脳に刺激を伝える。ペパーミントも入れた方がよかったかな。ヒロは心の中でつぶやいた。「お茶飲んだら。頭がすっきりするよ」「どのコードに行けばいいのかわからなくなっちゃった」「一度忘れちゃった方がいいかもね」「そうかな」
「ねえ、そろそろパソコン換えたら。すごく遅いの」「そうだね。買ってからだいぶ経つし、OSも古いから」タカシはインターネットの通販サイトをのぞいているカオルの様子をうかがいながらそう言う。「それより、そろそろお店に行かなくていいの」「もうそんな時間」「そんな時間だよ」「そうか」「集中していると時間忘れちゃうんだよね」そんなに熱中するものが通販サイトにあるのだろうかと思いながら、タカシはカオルのすわっているデスクのほうに歩いていく。「
ディキシーランド・ジャズが流れている。ニューオーリンズで誕生したその音楽はミシシッピ・リバーを遡ってシカゴに辿り着いた。都会的でより洗練されたディキシーランド・ジャズをシカゴスタイルと呼ぶ所以はそこにあるらしい。そんなことを考えているヒロのとなりでは、カスミがスマホをのぞきながら何やらイラついていた。「エディ・コンドンですよ」ヒロの質問にマスターが答える。「ここは電波の状況が悪くて」そしてイラついているカスミを見ながらこうつづける。「そん