まずは、熱い拍手で迎えられた仁左衛門丈の元気なお姿に安堵。「堀川波の鼓」は、現代で言えば単身赴任の夫が戻ってみたら、奥さんが不倫。親戚や同僚にも知れ渡り、大騒動になっていた…というなかなか重い話で、実は近松のこの手の人情物苦手です。妻は命を絶たねばならない。ショックを受けながらも愛妻の命を救いたいと涙を浮かべ苦悩する彦九郎(仁左衛門)にも、冒頭であんなに夫を恋しがっていたのに、不義をはたらいてしまうお種(扇雀)にも、今一つ同調できないのですが、仁左衛門丈の美しい苦悩と、お酒の力で思いがけないこと