とても借(かる)べき宿(やど)もあらぬに、樹(こ)の下岩(もといは)の挟間(さま)なりとも、霎時(しばし)憩(いこ)はばやとおぼしけるに、路(みち)の傍(かたはら)にふりたる神社(やしろ)のありしかば、やがて馬(うま)より下(お)りて社壇(しやだん)に尻(しり)をかけ、馬(うま)に対(むかひ)て宣(のたま)ふやう、「さても汝(なんぢ)は幸(さち)なきものかな。新院(しんゐん)けふの戦(いくさ)に勝(かち)給(たま)はゞ、父(ちゝ)もわれも夥(あまた)の所領(しよれふ)を賜(たまは)りて、汝(なん