武智鉄二監督『紅閨夢』(1964年)にしてやられるのは握り固めたお団子のような体躯に和装、着物姿の婦人をふたり引き連れて街なかを一目散に早歩く主人公はどっから見ても谷崎潤一郎の引き写しです。都会の劇場という暗がりで白昼堂々芸術とエロの際どい一線に滴るのは女性のふくよかな柔肌でして鼻の穴をおっぴろげて堪能しては(単なる女好きというよりも)何か利かぬ気の、女性美への憧憬に何怯むところとてありません。ひとびとの口の端にのぼる新たな肉体を求めて次なる場所へ移る合間にこれまた豪勢な食事に舌鼓を打って女性と