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読んでくださっているみなさまへこれはB面——つまり、普段の私の話…地元に戻って最初の冬、私はある「道具」をネットで注文した。家庭用の光脱毛器。スマホで検索して、レビューをいくつも読んで、深夜にポチッと押した購入ボタン。箱に入った段ボールが届いた時、なつみは「何それ?」と聞いた。「仕事で使う機械だよ」嘘をつくのは得意になっていた。自室に鍵をかけて、箱を開けた瞬間の気持ちを、うまく言葉にできない。脱毛器を手に取って、説明書を広げて、こんなことを一人でしている自分が少し可笑しかった。
光脱毛を始めて半年ほど経った頃、TsLOVEで一つの書き込みを見つけた。「オエストロジェル」という名前だった。「ホルモン」「個人輸入」「塗り薬」「効果が出た」——そういう言葉が並んでいた。女性ホルモンを自己管理で使っている女装者が、体験を詳しく書いていた。(こういうことが、できるのか)何度も読み返した。成分はエストラジオール。海外ではドラッグストアで売っているような薬で、日本では処方箋が必要——でも個人輸入というルートがあった。肌に塗るだけで、徐々に女性ホルモンの効果が体に現れる
三ヶ月後、次の東京出張で久しぶりに御用邸へ行った。個室でメイクをしながら服を脱いだ時、ふと気づいた。腕と太ももが、明らかに変わっていた。(変わってる)指先でなぞってみた。肌が、すべすべだった。以前は気になっていたざらっとした感触が、ほとんどない。鏡の中に映る体が、前より少しだけ女性に近づいているような気がした。(いい、絶対いい、こうしかった)5階の談話室で知り合った人と、その夜にその人の個室で時間を過ごした。暗い中で体を触れられた時、以前より自然に、女性としていられた気がした
昼休みにスマホを確認すると、コンビニに荷物が届いたというメールが入っていた。(来た)と思ったら、昼飯も早々に切り上げて、会社近くのコンビニへ小走りで向かった。普通の段ボール。外見からは何も分からなかった。それをトートバッグに押し込んで、仕事に戻った。その夜はなつみがパートで遅かったから、子供と二人で夕飯を食べた。子供が寝た後、段ボールを自室のクローゼットの奥にそっと隠した。翌日の昼間、奥さんと子供が買い物に出かけた。一人になった瞬間、クローゼットから箱を取り出した。(今だ)包装を解
その後も、何度か調べた。レビューを読んで、比較をして、「効果あり」「痛みは少ない」「3ヶ月で変化」という文字をていねいに追った。価格は当時で二万円ほど。「サロンに通うよりずっと安い」と書いてあるページを見て、それ以上の迷いはなかった。(これは、奥さんに言えない買い物だ)当然のことだった。家庭用光脱毛器を何に使うか、聞かれたら答えられない。でも、誰にも知られずに購入できる方法はあった。クレジットカードで、受け取りは会社の近くのコンビニ指定にした。それだけで解決した。カートに入れて
単身赴任から地元に戻ってからは、夫婦の寝室は別になっていた。横浜の社宅では一人だったから、戻ってきた時にどうするか、自然と話し合いになった。子供の学校の関係で部屋の配置を変えていたこともあって、「そのままにしよう」ということになった。奥さんも特に異議はなさそうだった。おかげで、夜が一人の時間になった。子供が寝た後、奥さんも自分の部屋へ引き上げる。廊下に物音がしなくなると、私はスマホの画面を灯した。(どうすれば、もっと女性に近づけるのだろう)御用邸で体を見せるたびに、ずっと気になってい
番外編です。本編では触れなかった、出張二日目の夜の話を聞いてください。御用邸から戻ってホテルの部屋に入ったところで、マリさんからメッセージが届いていた。「明日の夜、彼と一緒に六本木ラフ行くつもりなんだけど、美香も来ない?」マリさんには、彼氏がいた。純男の人で、マリさんの女装仲間との遊びにも慣れているという話を前に聞いたことがあった。六本木ラフが何かはもう知っていた......女装可のハプニングバー。DKMや御用邸とは、また別の場所。(行ってみたい)という気持ちと、(ちょっと不安)と
出張の最終日の朝、ホテルのユニットバスで残った化粧を念入りに落としながら、鏡の中のB面(男性)の顔を見た。少しだけ、名残惜しかった。美香の荷物をトランクに詰め直して、チェックアウトした。フロントにキーカードを返した時、昨夜ここを出ていった女性が自分だということを、受付のスタッフは知らない。(たぶん)荷物を預けてある場所へ電車で向かって、服や化粧品を棚に戻した。扉を閉めて、鍵をかける。(また、ここに置いていく)鍵を閉めた感触が、手の中に残った。新幹線のホームで、何を食べようかと考え
浅草駅の改札を出ると、地下からの風が頬に当たった。(ああ、この風だ)何ヶ月ぶりかで、この場所に立っている。ヒールで石畳を踏みながら、通りを曲がって......見慣れた入口が見えた。変わっていなかった。受付で手続きをして、靴を靴箱に預けた。鍵を受け取る。裸足になった足の裏に、床の感触が伝わってきた。(帰ってきた)今夜はホテルでメイクと着替えをすませてきたから、個室は取らなかった。ロッカーに荷物を入れて、そのままエレベーターへ。5階のボタンを押す。談話室に入ると、いつもの橙色の
ビジネスホテルの部屋は、狭かった。ベッドと机と小さなユニットバス。窓を開けると隣のビルの壁が近かった。でも......鏡だけは、全身が映るくらい大きかった。シャワーを浴びて、荷物を広げた。スカートを棚に置いて、ウィッグをベッドの上に乗せて、化粧品を並べた。機能的な白い机の上に美香の道具が並んでいくのを見ていると、少し可笑しくなった。(ここが今夜の美香の部屋だ)ホテルで変身して外に出るのは、今夜が初めてだった。ファンデーションを手のひらに取って、顔に叩いていく。目元にアイライ
100回投稿継続できました。読んでくれてありがとう💖今なら初の有料記事が無料でこちらです⇩『【お知らせ】番外編⑦「濃厚完全版:あの夜の全て〜DKMでの初めて〜」について』こんにちは、美香です💕いつもアメブロで「美香の日記」を読んでくださり、ありがとうございます!今日は大切なお知らせがあります。━━━━…ameblo.jp水曜の朝、新幹線に乗った。仕事の書類が入った鞄を膝に置いたまま、車窓の外を見ていた。いくつものトンネルをくぐるたびに、車内が一瞬暗くなる。三ヶ
地元に帰って、三ヶ月が経った。なつみ(私の妻)と子供との日常は、穏やかだった。週末は買い物に出かけて、夜は一緒にテレビを見て、子供が笑うと自然に笑い返した。それも私の普通の日常であり、嘘ではなかった。(でも、一つ違うのは美香がいないこと...)毎朝スーツに着替えながら、ふと気づく。このクローゼットには、男性の服しか入っていない。スカートも、化粧品も、一つもない。全部、東京のトランクルームにある。そんな月曜の朝、出社すると上司から依頼があった。「今週、東京で〇〇に関する会議をす
読んでくださっているあなたへ。第3章「解放」(第53〜81回)を書き終えました。途中から読み始めてくださった方にも、ここまで一緒に歩いてきてくださった方にも、改めて第3章の旅を振り返らせてください。■2008年秋、浅草の御用邸へ(第53〜57回)第2章「つながり」でDKMや女装仲間との出会いを経た私は、ずっと気になっていた「浅草の御用邸」へ初めて足を踏み入れました。入口で靴を靴箱に預けて、裸足で館内へ...あの感触を今でも覚えています。初めての夜(第54回)、変身したまま5階の談
読んでくださっているあなたへ。昨日投稿した番外編⑯が、通算100回目の投稿になりました。正直に言うと、ここまで続けられるとは思っていませんでした。書き始めた頃は、誰かに読んでもらえるかどうかも分からなかった…それでも回を重ねるたびに、スキをくれる人がいて、コメントをくれる人がいた。「続きを楽しみにしています」という言葉が、何度も背中を押してくれました。100回続けられたのは、読んでくれているあなたのおかげです。本当にありがとうございます。感謝の気持ちを込めて、今日4月1日から期間
読んでくださっているあなたへ。第3章「解放」の本編では書ききれなかった、男性としての私のことを少し話させてください。横浜の4年間、私には二つの顔があった。平日は普通の営業マン。取引先に頭を下げて、会議で意見を言って、飲み会でビールを飲んで笑う。上司に怒られ、後輩の面倒を見て……そういう日常の中で、A面(美香)のことは完全に切り離されていた。(この人たちは、美香のことを知らない)毎週毎週、その事実が不思議で、少しおかしかった。でも誰にも言えない秘密を抱えていることが、実は私を守って
キャリーケースが、思ったより軽かった。ほとんどの荷物は、荷造りして先に送ってもらった。美香の荷物は蔵前のトランクルームに置いてきた。だからケースの中には男性の服と、仕事の書類と、ちょっとした生活用品だけが入っている。(これが、男性としての私の全部だ…)新横浜駅のホームで、足元のキャリーケースをぼんやりと見下ろした。いつもより小さく見えた。新幹線が滑り込んでくる音がして、ドアが開いた。ケースを棚の上に押し込んで、指定席の窓側に座った。隣には知らない人が座っていて、お互いに無言だった。
引越しの前日、私は最後に横浜を歩いた。みなとみらいの、海に向かって伸びた遊歩道。夜の海風が冷たくて、でも頬に気持ちよかった。ヒールで石畳を歩きながら、ランドマークタワーのぼんやりとした光を見上げた。(この景色を、何回見たんだろう)女装して初めて外に出た夜も、夜景を遠くに眺めながら歩いた。あの時は怖くて震えていたのに、今はこの街が丸ごと懐かしい。4年間で横浜は、男性としての私と、美香としての私、どちらも育ててくれた街になっていた。ベンチに腰を下ろして、しばらく海を見ていた。御用邸で
引越しの三日前の土曜日、私は最後に御用邸へ向かった。浅草駅のホームに降り立つと、地下から吹き上げてくる風が頬に触れた。この感触を、いつからか好きになっていた。(ここへ来る時の私は、いつも少しだけ自由になれた)受付で手続きをして、靴を靴箱に預ける。鍵を受け取った瞬間に、いつも気持ちが切り替わる気がしていた。今夜は4階の個室を取った。最初の頃は5階の雑魚寝スペース(大部屋)で夜を過ごしていたけれど……布団に横になると夜中に知らない誰かの手が伸びてきて、熟睡できないことが続いた。それから
正式な書類が、机の上に置かれていた。「4月1日付、○○営業所への異動を命ずる」…たった一行の文字が、横浜での4年間に静かに線を引いていた。3月下旬、職場の同僚がランチに誘ってくれた。「送別会、やるよ!」と明るい声で言われて、愛想よく笑い返した。親しい同僚も男性としての私しか知らない。転勤を惜しんでくれる声が、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。夜、社宅に帰って部屋の電気をつけると、いつもより静かに見えた。ク
※本編(第72〜76回)ではお伝えしきれなかった、あの夜の全てをここに記します。御用邸でマリさんと出会った夜のことを、もう少しだけ詳しく書いておきたい。「2丁目って知ってる?」と聞かれた時、私の心の中では「行きたい」という気持ちと「怖い」という気持ちが半々だった。女装で外を歩くことへの緊張は随分と薄れてきてはいたけれど、知らない街・知らないお店というのはまだ少しハードルがあって。でもマリさんが「大丈夫よ」と言った時の、あの声の温かさに背中を押された。(この人に
窓の外の新宿の夜が、ゆっくりと白んでいった。カーテンの隙間から差し込む朝の光の中で、ユカコさんはまだ眠っていた。ショートカットが枕に少し広がって、規則正しい寝息を立てている。(昨夜のことが、夢じゃなかった)その事実が、じんわりと現実として馴染んでいく。静かに身支度を整えながら、昨夜のことを少しずつ思い返していた。マリさんに連れられた2丁目のバー、ユカコさんとの会話、そして...あの夜の、あの柔らかさ。ユカコさんが目を覚ましたのは、それからしばらくしてのことだった。「おはよう」と
「もう少し飲んでいこ?」...…その問いを断れなかった。マリさんはしばらくして「私、今日は先に帰るわ」と言って、立ち上がった。「二人でゆっくりしてきて♡」...…そう笑って、あっという間に扉の向こうに消えてしまった。(置いていくの、マリさん...)残ったのは、ユカコさんと私だけ。カクテルをもう一杯飲んで、また話して、それから自然な流れでバーを出た。夜の2丁目は静かに輝いていた。ヒールの音が石畳を叩いて、ユカコさんの白い首筋が街灯の光にうっすら浮かんで見えた。(この人と、もう少し
マリさんが手を振った先に、カウンターに一人で座る女性がいた。ショートカット、細いフレームのメガネ、カジュアルなニット...どこにでもいそうな自然体の純女。でも背筋がすっとしていて、なにか芯のある佇まいがあった。「ユカコ、久しぶり!こっちは美香ちゃん、女装子の友達よ」マリさんに紹介されると、ユカコさんはこちらを向いて「はじめまして」と言った。そして一拍置いて、「かわいいじゃない」と、さらりと添えた。(純女さんに「かわいい」って......)男性からの「かわいい」とは全然違う響きがあっ
来週の土曜日...マリさんとの約束が、一週間ずっと胸の奥で灯り続けていた。新宿三丁目駅の地上に出ると、マリさんはすでにそこにいた。「あら、ちゃんと来たじゃない」と笑って、すぐに歩き出す。横浜から電車を乗り継いできた私は、女装のままホームを歩く時の緊張を今日もどこかに抱えていた。でもマリさんは「それが普通よ」と言わんばかりに颯爽と前を歩いていて、(この人について歩けば、きっと大丈夫)という気持ちが自然と湧いてきた。旧甲州街道から少し折れて、しばらくいくと、街の空気が変わった。派
れいかさんとの別れの夜、TsLOVEに見知らぬ名前からのメッセージが届いていた。「私も御用邸の常連なの。あなたが故郷へ帰るって聞いた。新宿、行っとかないともったいないよ」…送り主の名前は、マリ。(知らない人から。でも、なぜか返信したくなった)それから数日後の夜、私はもう一度だけ御用邸の扉を開けた。れいかさんとの「最後の夜」を過ごしたはずだったのに、マリさんという人に会ってみたいという気持ちが、どうしても消えなくて。ロッカーで変身を終えて5階へ上がると、談話室を見渡した時に「美香ちゃんだ
第3章「解放」の中盤に差し掛かった今、少し立ち止まって……この章で起きたことを、感情の側から整理したい。■「痛み」から始まった最初は、痛みがあった。DKMで初めてひろしさんに受け入れてもらった夜、指が一本入ってきた時の緊張と、じわりとした痛み。あれは今でも覚えている。でも不思議なことに……その痛みは、私を「やめたい」という気持ちには向かわせなかった。むしろ「この痛みが終わったら、何があるんだろう」という好奇心が、勝っていた。女性が受け入れる時にも、最初は痛みがある。私は
書くことが、こんなに楽しいとは思わなかった。1日1回の投稿…たったそれだけ、と思っていたのに、気づけば文章の推敲、時系列の確認であっという間に夜が更けている。(続けることって、こんなに大変だったんだ)特に挿絵には頭を悩ませている。画像生成AIをいくつか試しているのだけど、思い通りの1枚を作るのに、時間もお金もけっこうかかっているのが正直なところ。(これ、趣味の範囲に収まってるかな…笑)また、どこまで書いていいのか、どんな画像なら掲載できるのか
この番外編は、私の体が変わっていった過程を……出来る限り正直に書いた記録です。第45回「初めて最後まで」で書いたDKMでの初体験から、第69回で体験した「雌イキ」まで…2年近くかけて積み重なっていった体の変化を、時系列で振り返ります。第一夜:DKMでの初挿入(2008年9月・第45回より)怖かった。ひろしさんに個室に誘われた時、正直、何度も断ろうと思った。「ここまで来たんだから」という気持ちと、「本当にできるのか」という恐怖が、ずっと混ざり
3月の最後の土曜日、私は御用邸への階段を上った。いつもと同じ。受付で鍵を受け取り、ロッカーで着替え、メイクを整えてから5階へ...でも今夜は、全部が「最後かもしれない」という意識の中にあった。(また来られるかは分からない)4月からは古郷へ帰る。横浜の社宅を引き払い、この街を離れる。御用邸に来るたびに積み重ねてきたもの...体の変化も、出会いも、あの橙色のランプも...全部を、置いていくことになる。談話室のドアを開けると、見慣れた橙色の光が迎えてくれた。「美香ちゃん、久しぶ
あの夜のことが、まだ体の中に残っていた。雌イキ...体で初めてその言葉を理解した夜の翌朝、橙色のランプが白みがかった自然光に変わっていた。大部屋のあちこちで、人々がそっと起き上がり、着替え、静かに去っていく。(朝だ)体の奥には、まだほんのりとした痺れが残っていた。昨夜のあの感覚...骨盤の内側から溶けていくような波...が、夢と現実の境目のようにぼんやりと漂っていた。のそりと起き上がって、着替え始めた。スカートのジッパーを上げながら、鏡を横目に見ると、メイクは少し崩れていた