しばらく前(昨年11月)に岩波文庫の『アイヌ神遥集』を読んだ。同書が最初に刊行されたのが1923年というから、ちょうど100年前。その著者が知里幸惠という人である。文庫本にある中川裕氏の解説によると、知里幸惠(ちりゆきえ)は1903年6月に北海道幌別郡(現登別市)に生まれ、6歳のときに叔母に預けられ、旭川・近文で暮らすことになった。アイヌの伝承の第一人者である祖母や叔母と暮らす中で、幸惠もアイヌ語とアイヌ文学の造形を深めていったという。15歳のときに金田一京助に見いだされ、最初は心臓に病を抱えて