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砂川文次「ブラックボックス」(「文藝春秋」2022年3月号)砂川文次「ブラックボックス」(第166回芥川賞受賞作)は、たいへん読みやすい文体である。こう始まる。歩行者用の信号が数十メートル先で明滅を始める。それに気が付いてか、ビニール傘を差した何人かの勤め人が急ぎ足で横断歩道を駆けていく。佐久間亮介は、ドロップハンドルの持ち手をブラケット部分からドロップ部分へと替えた。上体がさらに前傾になる。(254ページ)この几帳面な文体(意識)が動いている人間が、几帳面さゆえに他人とうまく「
5月12日(月)砂川文次著『小隊』文春文庫2022年5月10日第1刷ロシア軍が北海道に上陸。自衛隊の3尉・安達は敵を迎え撃つべく小隊を率いて任務につく。避難を拒む住民、届かない敵の情報、淡々と命令をこなす日々ー。そんな安達の〝戦場〟は姿を現したロシア軍によって地獄と化す。「自衛隊の戦争」を迫真のリアルさで描く表題作ほか、元自衛官の芥川賞作家による戦争小説3篇。本書は2021年の第164回芥川賞候補作品「小隊」、2019年の第160回芥川賞候補作品「戦場のレビヤタン」、デビ
ロシア軍上陸、迎え撃つ自衛隊!!元自衛官の芥川賞作家による衝撃作を鮮烈コミカライズ!!宣戦布告のないまま、ロシア軍が北海道に上陸した。自衛隊は住民を避難させ、防御態勢を固める。にらみ合いが続くなか、小隊を率いる安達3尉は、釧路郊外の中隊指揮所から呼び出しをうける。「敵は明朝、行動開始と見積もられる」。迫り来る戦車、装甲車、歩兵戦闘車……。”ホンモノの戦闘”がはじまる!小泉悠(東京大学先端科学技術研究センター准教授)推薦!!「読みながらウクライナの戦禍に思いを馳せた。これは私たちが生き
最近に読んだ、ここ数年内に書かれた現代文学作品を6品紹介します。1、烏(からす)に単(ひとえ)は似合わない(2012、阿部智里)最近完結した「八咫烏(やたがらす)シリーズ」全6冊の最初の本で、松本清張賞受賞作。授賞当時作者は20歳だった(現在は26歳で早稲田の院生)。仮想の平安時代を設定し、特にこの第1作では若宮の妃選びにしのぎを削る東西南北4摂家の姫君たちのつば競り合いを描いている。八咫烏とは記紀神話に出てくる3本足の烏のことだが、ここでは「人はすべて烏に変身できる」という設定に
この前、森博嗣先生原作の「スカイ・クロラ」を見たんだけど、訳が分からなくて原作を読みました。スカイ・クロラ(通常版)[Blu-ray]Amazon(アマゾン)この前までアマプラにあったんだけど、もう公開が終わったのかなくなっている…戦争が何たるかを世界から忘れさせないように仕事として戦争を請け負う会社(民間軍事会社)があって、空中戦を繰り広げているんだけどパイロットが永遠に大人にならないキルドレという人々という世界のお話。そのキルドレの青年が主人公なの森先生が飛行機の
ミリタリー好きな戦争嫌いとしては、砂川文学は寡作で全て読んでいたが、芥川賞まはいかがなものか?と、いつもひっかかっていた。久々の本作は見た目なボリュームからしてすごいが、お話も吹っ切れ感あり、一部にはミリタリーアクションではなく文学小説だ。くどくて読むのを挫折した等のレビューもあるが、私には半端な砂川文学がミリタリーアクションに舵を切った転換点と感じた。確かに序盤はやたらデティールの細かいミリタリー描写が、ミリタリーファン以外にはくどいし、登場人物や主人公が御高説?を独白するのが、逆にミ
JamesSetouchi砂川文次『ブラックボックス』(令和3=2021年下半期芥川賞)1砂川文次『ブラックボックス』結論から言うと、結構面白い。読後充実感があり、考えさせてくれる、とも思った。主人公はサクマ。三十才前のロードバイク便メッセンジャーをしている、非正規雇用(厳密には個人事業主扱い。福利厚生が極めて弱い)の男だ。ロードバイクで東京の町を疾走し、会社の契約書などを配達する。これは私の知らない世界だったので、新鮮だった。サクマは生きることに不器用で、学校で
第166回芥川賞受賞作品をAmazonオーディブルで聴きました。標準のスピードだとえらく時間がかかるので、1.2倍速で聴くとちょうど良い感じでした。(時折1.5倍速も試しました)【感想】この主人公のような心情は、時代を問わずいつの世にも存在すると思う。しかし、この本にはとりわけ非正規雇用の不条理が重くのしかかっている。この人はこの人なりに精一杯働いてきた。それが重要な点だ。確かに彼のキレやすい性格や行動には問題がある。しかし、社会の歪みや差別、この世の不条理が彼の鬱憤の元凶であるのは明ら
砂川文次「オートマタ・シティ」(『群像』2024年5月号所収)を読みました。この小説は、(過去に立ち消えになったはずの)「新東京特別市」計画の調査を命じられた行政監査院のコマツが、上司のフジタとともに奮闘する姿を描いた小説なのですが、途中までの(いくら仕事とは言え)若干白けた感じから、後半にかけて(サスペンス映画の一部のような)手に汗握るような展開になった事(←しかも、登場人物それぞれの仕事上の担当業務ゆえにそうならざるを得ないのが何だか面白かったです…。)も手伝ったのでしょうか、予想より
いろんな観点から読める作品。コロナものと読むこともできるし、ワーキングプア・社会格差ものと読むこともできるし、ホワイト社会に適応できない哀れな男子もの(遠野遥『破局』とか)と読むこともできる、と思った。ネットのレビューを見ると、最後になんとなく、希望を感じさせるような終わり方でよかった、みたいな意見が多い。が、たぶん、結局、いざという時には感情がコントロールできず、「失敗を繰り返す人生になるんだろうな、コイツ」という気がして、自分としては暗い気持ちになってしまう作品であった。
砂川文次さんブラックボックス世に対する負の感情を見事に描いていると思います。不平不満、怒り、焦り。きっと誰もが持ったかもしれない感情を表現。
「ブラックボックス」砂川文次、講談社、2022年発行辞め癖、衝動的暴力行為など理解しがたいけれど、存在している人の内面を描く物語。一線を越えた犯罪者となる人はそうでない人とそれほど違いがあるわけではないと感じました。ただ、どこか歯車が合わない違和感も感じました。以下は文中引用とミニ感想です。サクマにとっての判断とは、思考というよりもむしろ習性に近いものだ。この道をこう行くぞ、と決めるよりも何となく走っていた方がうまく回るときがある。→そんな時はある気がします。確かになかなかしっかり決める
『ブラックボックス』砂川文次(講談社2022年1月26日)自転車メッセンジャーの仕事に従事する主人公、漕いで、漕いで、漕いで、彼はどこへ向かうのか──。「遠くに行きたかった。遠くというのはずっと距離のことだと思っていた。両親も弟も繰り返しを繰り返していた。おれは多分それが嫌だった。遠くに行きたいというのは、要するに繰り返しから逃れることだった。」-p.86⋆出来高制の自転車メッセンジャーとして働く主人公は、自衛官や会社員として働いた職歴があるが、どちらの仕事もある理由のせいで
現在、出張の供の本はこちら小隊(砂川文次著)。まだ途中ですが世界情勢を鑑みると有り得ない内容では無いかと。多分、有事の際にはウクライナみたいな覚悟は国民には無いかと。近隣国に恵まれない日本、本日の選挙結果が気になります。(7月10日時点。)こちらの本は函館出張中に購入しました。出張で良く立ち寄るのは地元のスーパー、ホームセンターそして書店です。ちなみに本日(11日)から出張しております。次回、更新します。
Audible砂川文次著「ブラックボックス」の感想・・・。メッセンジャーの平凡な生活を描写していくのかと思いきや、途中から主人公の性格が「あらら〜?」となり、違和感を覚えました。最近は、こんな傾向が多くなっているのかもしれないけど、それにしてはメッセンジャーのお仕事ちゃんとこなしてた人なのになぁ・・・と。
ややや、あの変なカエル男じゃあありませんか。首なんかすくめちゃってどうしたんですか?えっ、弾が飛んでくるって?あぁ、あれはマシュマロですよ。痛くも痒くもないってば。砂川文次「小隊」に収録されているのは「小隊」、「戦場のレビヤタン」、「市街戦」の3作品。以下は、北海道に攻め込んできたロシア軍との闘いを描く「小隊」のレビューです。ドンパチやってヒーローが活躍する物語ではなく、元自衛隊員が描写する戦闘のリアルです。これほどまでにかゆみ、体臭など肉体の不快さを描写した小説があったでしょうか。
主人公は28歳のサクマ。高校卒業後、早く家を出たくて自衛隊に入ってみたものの2年で除隊、不動産の営業1年、その後寮付きの工場や現場、コンビニアルバイトなどを経て、登録制の自転車便の配達員となります。それなりのやりがいを得たところで世の中はコロナ禍となります。付き合っていた彼女は彼の子どもを身ごもり、経済的には、今も未来も不安定要素がいっぱい。不安定なのは外側だけでなく彼の内面。頭にくると自制心が効かず、暴力をふるってしまう習性が・・・。「昼間走る街並みやそこかしこにあるであ
𓎂読書。備忘録𓎂𓇬ブラックボックス砂川文次内容紹介第166回芥川賞受賞作。ずっと遠くに行きたかった。今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本
『小隊』では、ごく普通の青年が、初めての戦闘を経験し、一端(いっぱし)の職業軍人になる姿を描いている。この小説を読み始めて、そして半ばまで読み進めて、思った。わからない、のである。最後まで何とか読み終わった。それでも、何が書いてあったのかわからない。細かい描写が、たくさん並んでいた。で、それが何か、である。安達3尉は陸上自衛隊の小隊長をしている。北海道に侵攻してくるロシア軍を迎え撃つ、という話である。まず描かれるものは避難誘導の現場である。一般人のいるところでは、心おきなく戦
毎日結構な時間をかけて、イスラム模様を描いている。イスラム芸術の幾何学:天上の図形を描く(アルケミスト双書)この本を参考にしている。図形を拡大するために、kindle版も買ってしまった👛一読したでけでは分からない解説を、使わないカレンダーの裏などに実際に図形を描きつつ(紙が大きくないと分からなくなる)検討し、何とか手がかりをつかまえては、最終的には大きなスケッチブックに、作品として描いている。ズレや歪みが目立たない模様を入れるのもテクニック!?
「プーチン氏は虐殺やめろ」在日ロシア大使館近くで抗議デモ|毎日新聞毎日新聞東京都港区の在日ロシア大使館付近ではプーチン氏の演説が始まる少し前の9日午後3時ごろから約1時間、ロシアへの抗議デモが行われた。市民団体の呼びかけ...都平和祈念館建設を要請アンケで「早期に」9割市民団体/東京|毎日新聞毎日新聞東京大空襲の遺品などを展示する都の平和祈念館建設構想が20年以上にわたり事実上凍結されている中、市民団体が9日、都民へのアンケート結果をもとに、都に...「義
ストイックな文章と描写が続く。バイクのメッセンジャーとして書類を配達する毎日、仕事は早く稼ぐサクマ。将来の見通しが立たない単調で不安定な日々を送るサクマ。刑務所に入っても同じような日々を繰り返すサクマ。53P建物と建物の間隙はほとんどなく、そういう壁と壁の間から立ち登る煙は換気扇からのものか。ブラックボックスだ。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろうオフィスや倉庫、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようでいて見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相
ずっと遠くに行きたかった。今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。(本文より)第166回芥川賞受賞作だけを頼りに全く予備知識なしで読んでみたところものすごく心にグッとくるものがあった。ストーリー前半メッセンジャーとして働く主人公の日常が淡々と描かれておりこの辺りに疾走感のようなテンポもなく正直読むのがしんどかった。ところが主人公の環境が変
今回は文藝春秋を電子書籍(kindle)で買い、月に2回程度通う千葉市の歯科医師への通院途上に砂川文次「ブラックボックス」を読みました、だらだらと。やさぐれた若者の将来に夢を持てないまったくもってため息のでる作品。人ごとではない、すぐ隣にありそうな人のお話し。以下、読書メーター投稿文書です。1月発表の芥川賞受賞作品。昭和10年第一回受賞作品、石川達三「蒼氓」から全て読みました。今回は、生きづらさを背負いながら、一度踏み外すとなかなかいわゆる「普通」の生活に戻れないサ
昨日までの陽気から一転、季節が戻りましたね。小雨降る、肌寒い一日です。ジェットコースターのように気温が上下すると身体がついていきません。最近の読書から。『あきない世傳金と銀十二出帆篇』高田郁目次:託す者、託される者家内安全穀雨知恵比べ掌の中の信帆を上げよ今津からの伝言有為不注年歴のちの桜花遥かなる波路浅草田原町に「五鈴屋江戸本店」を開いて十年。藍染め浴衣地でその名を江戸中に知られる五鈴屋ではあるが、再び呉服も扱えるようになりたい、
芥川賞に輝いた砂川文次さんの『ブラックボックス』を読み終えた自分の内側を向いて葛藤する話なのかな?陳腐な感想でごめん!私は芥川賞よりも直木賞の作品が好きかも(◜ω◝)芥川龍之介の作品で『鼻』を読んだ時ビオレの鼻パックしたいと思ってしまった文学とは縁の遠い私なのだ文中突然の場面転換にとても戸惑ってしまった…ブラックボックス[砂川文次]楽天市場1,705円
ブラックボックス著者:砂川文次講談社第166回芥川賞受賞本を手に取る機会が減ってきてしまっていて、そうするとついつい「○○賞受賞」という帯がついた本に手が伸びます。海外の紀伊國屋書店に並んでいる和書はすでに選りすぐりだと思うで、どれも人気作品で面白いのだろうと思うのですが、ピンとくる作品がないときはとりあえず文学賞受賞作かな、という気持ちもあるのでしょうか。(でも何となく本屋大賞は・・・)先日は第165回芥川賞受賞の『貝に続く場所にて』を買ってみました。面白かったので
こんにちは。今日も御覧いただき、誠にありがとうございます。借りていた本📘、読み終わりましたブラックボックス[砂川文次]楽天市場1,705円ブラックボックス【電子書籍】[砂川文次]楽天市場1,617円CASHbっていう便利な節約アプリを見つけたよ!スーパーとかコンビニとかどこのお店で買ったものでも、レシートを送ればキャッシュバックされるお得アプリだよ!会員登録の時にお友だち紹介コードAHFN0を入れて登録してね!http://bit.ly/CASH
社会に適応できない若者の、暴力衝動と生き辛さを描く。作者は1990年大阪府生まれで、大学卒業後に陸上自衛隊に入りヘリコプターの操縦もしていたという元自衛官です。現在は地方公務員。受賞者インタビューによれば、高校時代に読んだ司馬遼太郎『坂の上の雲』で軍人に憧れたとのこと。2016年『市街戦』で文學界新人賞を受賞、その後『戦場のレビヤタン』『小隊』が芥川賞候補となり、今回『ブラックボックス』で芥川賞を受賞。好きな作家は安部公房、村上龍などのようです。この『ブラックボックス』は非正規の個人事業主と