朝もやで視界が遮られていた。陽が高くなれば、このもやもじきに晴れるだろう。今日はめでたい日だ。この船も無事に進水式を終えた。後は実際に乗り込んで出航するのを待つだけだ。今日は穏やかな凪。荒れる事も多いこの海がこんなに静かなのも珍しい。水面にはいつの間にか海鳥が増えていた。豊穣の海には沢山の生き物が居て、餌には困らないはずだ。暗かった水面が徐々に明るくなっていき、よりはっきりと海の色が際立つ様になっていった。キラキラと輝く水面はどんな宝石よりも綺麗だった。どこまでも続く海。水平線の彼方にはどんな光