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松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!64著者が上記の原稿を書いた後、昨年11月13日にパナソニックの社長が津賀一宏氏から楠見雄規氏に交代する旨の発表がありました。これは、通例よりも約4カ月も早い社長交代人事でした。楠見次期社長は、2021年4月1日付けで、CEOに就任し、6月24日付けで社長となり、津賀一宏社長は、4月1日付けでCEOを退任、6月に取締役会長に就任するということです。また、パナソニックは、2022年4月から持株会社制へと移行し、社名をパナソニックホールディング
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!63津賀社長は、ある機会に「ビジョンがないわけではない。このままではヤバいということもわかっている。ただ、具体的に何を作ればいいのかはまだ決まっていない。」と述べています。“ないわけではないビジョン”とは一体何でしょうか?残念ながら、それは“社会が真にパナソニックに求めるもの”(大戦略)とは言えないでしょう。もしそうなら、どのような製品・サービスによって人々が心から喜んでいるのか、その具体的なイメージがくっきりと見えるはずです。少なくと
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!62『君は、2020年3月期の減収減益の見通しについて、“不本意な数字の8割は米中貿易摩擦など外部要因にある”と言うていたが、うまくいかないときに、経営者は、その原因を環境や他人のせいにしてはいかん。そう考えると、打つ手がないこととなるし、それ以降も外部要因の影響に翻弄されることとなるからや。経営者たる者、常に、うまくいかない原因は自社に、そして、自分自身にあると考えないかん。また、初めから“失敗の原因はわれにあり”との覚悟を持って事に
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!61『“お客様大事に徹する”ことを自分の言葉で全社に求めたのはええことや。しかし、言葉だけでは不十分やし、言いっ放しではいかん。自分の言うた方針を事業部が実行するような仕組みを作る必要もあるやろうし、また、事業部がその方針を本当に実行しているかどうかということは、絶えず気にして自分の目と耳で確かめんといかんな。“見える化”とか言うて、その指標だけに頼っていては駄目や。現場がおかしいという萌しをいち早く敏感に掴まんといかん。少しでもおかし
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!60さらに具体的に、松下幸之助は、津賀社長を次の様に叱るかもしれません。『津賀君は、どうも“手っ取り早く成果を出したい”とか“経営者としての成功”というような君自身の利害や“収益を伴う成長をしたい”とか“儲かる仕組み”というような自社の利益にとらわれ過ぎておるようやな。そうした自分とか自社という私の立場や利害にとらわれた状態で世の中を見ても、客観的に正しく実相をつかむことはできん。とらわれたことしか見えんようになるし、見えても自
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!59上に見た通り、残念なことに、津賀社長は、『松下幸之助の経営理念』を頭で知識としては理解していながらも、それは自身の『強固な信念』のレベルには達していなかったわけです。社長がそうですから、周りの役員たちも、同様でした。例えば、毎年経営理念の役員研修というものが行われていましたが、自分たちはもう卒業したと言わんばかりに形ばかりのものと化しており、ある年の役員研修には“ワインの研修”までが付いていました。このようにパナソニックでは、松下幸
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!5821世紀の現代は、以前とは比較にならないほど経営環境が大きく変動し続けています。このような激変する経営環境の下で、経営のかじ取りをすることは容易ではありません。しかし、その際経営者にとって大切なことは、このような時代の変化に対して、『変えるべきもの』と『変えてはならないもの』を明確に区別することです。この点、松下幸之助は、「正しい経営理念」というものは、「基本的にはいつの時代にも通じるもの」であり、それは「不変である」としま
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!57以上様々な観点から津賀社長の経営の問題点を見てまいりましたが、冒頭に申し上げた通り、一言で言えば、津賀社長の“リーダーシップの欠如”ということにつきますが、津賀社長の様々な言動は、さらに遡れば、津賀社長自身の“物の見方”と“物の考え方”、さらに遡れば、津賀社長自身の“心の持ち方”にすべての原因があったものと考えられます。会社の経営者には、その会社の経営について、基本的に自分の思う通りに“目指す方向”を定め、それに則した組織を
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!56さらに言えば、松下幸之助は、『宇宙や自然だけでなく、その中にある人間社会も物心両面にわたって限りなく発展していくものだ』(生成発展の原理)という考えから、“経営の危機”や“困難”をむしろ“発展への転機”と前向きに捉えました。曰く、「行き詰まっている仕事は、新しいものを生み出す一つの転機に立っていると考えたらええと思うんです。そういう考えを持てば画期的な躍進・・・に変わっていくと思うんです。」このように松下幸之助は、“禍転じて福となす
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!55むしろ、逆に津賀社長の言動の中には、『全社で危機感を共有する』ことに反する言動すらあったのです。例えば、第一に、先に述べた通り、津賀社長が“大戦略”を示さなかったことも、目指すべき戦略目標と現状とのギャップが示されることがないため、現状のままではだめだとの“危機感”を持ちにくかった原因の一つとなったものと考えられます。そのような全社で目指す“大戦略”がないと、それぞれの事業部では、自分たちで勝手に都合のいいように解釈をするこ
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!54それでは、津賀社長の言動は、『全社で危機感を共有する』ためにどのような効果があったのでしょうか?津賀社長は、「当社は普通の会社ではない」、あるいは、「主力のデジタル家電では負け組である」と一応全社に対して警告を発しています。しかしながら、“言葉”だけに終わり、“行為”が伴っていないのです。人間というものは、自分の身の安全が直接脅かされるような“脅威”が目に見えない限り、“言葉”だけでは変わりません。逆に言えば、大会社となった
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!53次に、津賀社長の『リーダーシップの欠如』の要因としては、全社に『正しい危機感』を抱かせ、それを活用して全社改革を実行することができなかったことです。「危機感なきところ、成長なし」と松下幸之助は断言します。実際、ソニーや日立と比較したときのパナソニック凋落・停滞の原因の一つとして『全社的に危機感の乏しいこと』という“大企業病”の症状が、指摘されていました。津賀社長は、この経営危機を克服するために、パナソニックが目指すべき新たな方向を“
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!52もう一つ大切なことがあります。それは、“相手の立場”に成り切って、『人々の役に立つこと』を考える際には、そのことだけに集中してアイデアを出すということ、言い換えれば、それを実現するのに必要な“コスト”については考えず、一旦脇に置いておくということです。そして、次の段階で改めて『収支を立てる』ことを考えるのです。そのアイデアを実現するためのコストを削減し、あるいは、不要な機能を削ぎ落すために知恵と工夫をするのです。このようにすれば、ア
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!51それでは、津賀社長が繰り返し強調した『お客様価値を徹底追求すること』が事業部において必ずしも十分に実行されなかったのはどうしてでしょうか、あるいは、やり方に問題があったのでしょうか?社員たちのモチベーションという“心”の状態が『お客様価値』を徹底追求する準備ができていなかったことは先に述べた通りです。ここでは、そのやり方について、いくつかの問題を指摘しておきたいと思います。松下幸之助は、1935年に松下電器基本内規と
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!50津賀社長が現場の実態を把握していなかったことの例として、津賀社長自身がこの8年間最も力を入れて発信してきた『お客様価値を徹底追求すること』という方針の全社への浸透度(実践度合い)ということを採り上げてみたいと思います。これは、松下幸之助が『お客様大事の心に徹する』という言葉で強調した“経営理念”の一つの津賀社長なりの表現ということになります。先に述べた通り、津賀社長が繰り返し強調した『お客様価値を徹底追求すること』が、文字通
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!49『実行力の欠如』の要因として第二に、津賀社長が事業部の現場の実態を十分に把握できていなかったことを挙げておきたいと思います。“現場の実態”がわからなければ、それに則した対策を打つことはできません。津賀社長が現場の実態を把握できていなかったことは、最近になって、次々と不採算事業が現れて、津賀社長が本人の想定以上に“モグラ叩き”に追われていると自ら告白しているという事実から明らかです。なぜこのようなことになったのでしょうか?
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!48また、松下幸之助は、“武士道の精神”に言及しつつ、リーダーのあるべき姿を次の様に述べています。「大将が、いつの場合でも、おれは生きるんだ、おまえらは死んでくれというんであれば、おそらく戦争も成り立たんでしょう。戦争にならんでしょう。だから昔の武将というものは、そのときの国民というか領民のために、あるいは家中のために、自分はいつでも死ぬんだという覚悟が常にできていないといかん。それがほんとうの大将というものですな。そういう大将のもとに
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!47なお、米中貿易摩擦などのいわゆる“不可抗力”の外部要因については、企業の側ではどうしようもないようにも思われます。そうすると、環境が好転するのを待つほかないということになりそうです。しかしながら、そのような中でもうまくそれに対応して、利益を上げている企業が必ずあります。そうだとすれば、その企業の対応の仕方如何で結果は変わってくるということでしょう。また、これは単なる米中貿易摩擦ではなく、今後しばらくは続く米中覇権戦争と捉える
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!46それでは、『失敗の原因はわれにありとの考えに徹する』と言う点について、中村邦夫氏と津賀社長はどうだったのでしょうか?松下幸之助は、先にご紹介した通り、『失敗の原因はわれにありとの考えに徹する』ことを”経営者の条件”だとし、経営者たる者は、「うまく行かない要因は100%、譲っても95%は自分にあると考えなければならない」と断言しました。このように『うまく行かない要因』を自社内部の要因や自分自身の要因と捉えることはそれだけ対策を
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!45中村邦夫氏と津賀社長の共通する特徴の『自分自身の経営の失敗に対する責任を負おうとしないこと』という部分は、リーダーシップに不可欠な要素として松下幸之助が強調し、自ら一貫して実践した『失敗の原因はわれにありとの考えに徹する』ことが、中村・津賀両氏に欠けていたことを意味するものです。松下幸之助は、特に経営者に対して『必ず成功すると考えること』を求め、同時にその論理的帰結として『失敗の原因はわれにありとの考えに徹すること』を“経営者の条件
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!44津賀一宏社長は、中村邦夫会長(当時)から大坪文雄社長の次の社長として指名されたのですが、実は、津賀氏は中村邦夫氏に良く似ており、中村・津賀両氏にはいくつかの共通点があります。一つは、“徹底した合理主義”の持ち主であること、そして、人間たる社員を“コスト”と見てリストラ(人員削減)を手段として使うことによってV字回復(実際はいずれも回復途上)を果たしたこと、言い換えれば、経営者が持つべき『人間観と人間の本質』の理解と『社員に対する“愛
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!43いわゆる終身雇用制は、年功序列制とともに、日本的経営の要素の一つと言われますが、さらに、松下幸之助は、“人間大事の経営”を目指していたという点で、他の経営者とは一線を画する独自性を有していました。ここでいう“人間”は、お客様に限らず、社員も含まれます。とすれば、その社員を解雇するリストラは、この経営哲学に反するようにも見えます。松下幸之助以降のパナソニックの歴代社長で、人員削減のためのリストラ(早期退職の募集)に初めて手を付
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!42このように松下幸之助は、経営について、“目に見える要因”だけでなく、「社員の人たちの心構えとかやる気、心持ち」とそれに大きな影響を及ぼす「従業員の人びとに対する経営者の気持ち、心根というもの」という“目に見えない要因”も合わせて考えて取り組むことが重要だということを強調しました。これらの“目に見えない要因”の存在やその重要な機能についての認識がなく、“合理的な経営”という観点だけからしか物が見えない津賀社長を見れば、松下幸之
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!41ところで、津賀社長は、“社員の受け取る賃金”について次のように述べました。「利益優先の必達目標を社会に向けて約束した以上、賃金のカットにも着手せざるを得ませんでした。」これは一体どういうことでしょうか?ここで“利益”というものは、松下幸之助によれば、『事業を通じて社会の発展に貢献したこと』の結果として社会から与えられるべき報酬ですから、社会に向けて約束した“利益目標”の達成もまた、“良い製品をより安く提供する”という『事業
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!40また、松下幸之助は、『モノをつくる前に人をつくる』として、“人”と“人材育成”を重視し、経営理念を理解し、かつ、社会的にも成熟した人間に成長するよう育成することに注力しました。ここでは、“大戦略”との関係が特に重要です。先にご紹介した通り、ソニーや日立は、経営危機に際して、中長期に目指すべき“大戦略”を発表し、その実現に向けて必要な人材を計画的に育成し、人的資源を有効活用しました。また、松下幸之助は、人間には『人間を含む万物を活かす
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!39そのような津賀社長の“従業員に対する心根”は、さらに遡れば、経営者たる津賀社長自身の人間の捉え方、即ち『人間観』と“何のために事業を行うのか”という『事業目的』に大きく左右されるものと考えられます。この点、松下幸之助は、『まず経営理念を確立すること』、即ち“事業の目的(会社の存在意義)”と“経営のやり方”についてしっかりした基本の考え方を持つこととともに、“羊の特質を知らずして羊飼いにはなれない”と『人間観を持つこと』を経営者に求め
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!38この点、松下幸之助は、社員の“心の持ち方”というものを重視し、社員の“気分”がよくなるために、実に様々な配慮と工夫を施しました。社員の給与レベルも平均より高く、35歳くらいまでに自分の家が持てるようにという配慮で貯蓄制度等社員のために様々の充実した福祉制度が用意されていました。これにより、社員は後顧の憂いなく、存分にお客様の求めるものを実現していくことに専念することができたのです。この点に経営の神様松下幸之助と“凡庸な経営者
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!37では、人間というものはどういうものでしょうか?松下幸之助は言います。「人間というものは、気分が大事な問題です。気分がくさっていると、立派な知恵、才覚をもっている人でも、それを十分に生かすことができません。しかし気分が非常にいいと、今まで何ら気づかなかったことも考えつくというように、だんだんと活動力が増してきます。そこから成功の姿、発展の姿も出てきます。それでさらに気分がよくなってくる、というわけです。こういうように、人間の心
松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!36最近の他社の事例で言えば、日本航空の再生の例があります。親方日の丸で赤字続きの日本航空の再生を請け負った稲盛和夫京セラ名誉会長は、就任翌期には、営業利益1800億円の高収益企業に生まれ変わらせ、わずか3年足らずで奇跡的に再上場させましたが、その際の“秘訣”はまさにこの点にありました。再生に向けて同氏がやったことは、京セラでその威力を発揮してきた小集団の組織をベースとして時間当たり採算の最大化を図る“アメーバ経営”の手法によって、どん