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アメリカの推理作家ダシール・ハメットの長編小説。ハメットはハードボイルド小説の始祖とも言われているお方。―――本作はそんな彼の代表作と目されている作品です。私立探偵サム・スペードの事務所に若い女が訪れた。ワンダリーと名乗る女は、たちの悪い男と駆け落ちしてしまった妹を連れ戻して欲しいという。―――スペードはその依頼を応諾し、彼のパートナーであるアーチャーが相手の男を尾行する・・・。ところがアーチャーも相手の男も何者かに射殺されてしまう。警察は彼の妻と不倫していたサムに殺
自分はむかしからスペインという国に憧れていました。いまだに彼の地を訪れたことがありませんが、旅番組や情報誌を見るにつけその思いは強くなる一方。―――なんとか一度は行きたいな、と思っています。ところでミステリ作家の逢坂剛さんは知る人ぞ知る「スペイン」好きなお方です。―――スペインの風土や文化、とくにフラメンコを初めとする音楽に精通。その著「カディスの赤い星」では謎のギターを巡るサスペンス満点のストーリー展開が、ミステリーファンの心を鷲づかみ。―――思えば自分のスペイ
英国の推理作家アンソニー・ホロヴィッツが贈る超絶のミステリー。―――本書が上梓された当時、日本のミステリファンたちの話題を独占したという作品です。1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦メアリ・ブラキストンの葬儀がしめやかに執り行われた。鍵のかかった屋敷の階段下に倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけて転落したのか、あるいは何者かに突き落とされたのか。―――その死は小さな村に次第に波紋を広げていった・・・。名探偵アティカス・ピュントはその事件後ある
横山秀夫さんによる警察ミステリー連作短編集です。主役を務めるのはF県警強行班の三人の班長たち。―――収められている作品は「沈黙のアリバイ」「第三の時効」「囚人のジレンマ」「密室の抜け穴」「ペルソナの微笑み」「モノクロームの反転」の六篇です。いずれも甲乙つけがたい作品で、それぞれ彼らのスリリングな活躍を描いて余すところがありません。またこのうちの何篇かは何度もなんどもテレビドラマ化されているので本書をご存じのかたも多いハズです。なお今回自分は何度目かの再読。―――しかし
米沢穂信さんによる七篇からなるミステリー短編集です。主人公は高校一年生の折木(おれき)奉太郎。―――彼を含めた神山高校古典部四人が不思議な謎に挑戦する連作短編集です。奉太郎は物事の裏側を見抜く鋭い頭脳を持ちながらも、何事にも積極的には関ろうとしない「省エネ」少年。―――彼は古典部OBの姉の共恵に勧められ、同部に入部しました。古典部はここ数年部員ゼロ。―――ところが今年は千反田えるという深窓のお嬢様を含め計四人が入部しました。部長を務めることとなった千反田えるは
アメリカの推理作家トマス・H・クックによる長編ミステリー。主人公ロイは自分の記憶から抹殺した忌まわしい事件の謎をふたたび追い始めますが・・・。ロイの父ジェシーは肝臓がんをわずらい余命幾ばくも無いからだ。―――彼はその父を看取るため二十数年ぶりに故郷の田舎町へ戻ってきた・・・。ある日ロイは旧知の保安官ロニーから、川の谷間で発見された死体の捜査を依頼された。聞き取り調査の過程でロイはかつて弟のアーチーが自殺した事件の真相をさぐる・・・。弟は恋人の両親を射殺したうえ留置
シューベルトは29年という短い生涯のなかで三つの歌曲集を作曲しています。それは本曲「冬の旅」と「美しき水車屋の娘」「白鳥の歌」。―――そのなかで本曲「冬の旅」は最も人気のある歌曲集と言われています。作曲されたのは彼が亡くなる1年前。―――そのころシューベルトは極度の貧困と病気が重なり生活も相当苦しかったようです。そんなときに出会ったのが詩人ミューラーの連作詩集「冬の旅」でした。詩集のなかの主人公は失恋し死を求めてさまよう男。―――孤独な彼は生きる希望を失っていまし
アガサ・クリスティー女史による長編ミステリーです。ナイル河をさかのぼる豪華客船上で起こった連続殺人事件。―――たまたま同乗していた名探偵ポアロが真相解明に乗り出しますが・・・。美貌で大富豪の若き女性リネットは親友ジャクリーンから婚約者のサイモンを奪い結婚。―――二人は新婚旅行でエジプトへおもむく・・・。だがサイモンを諦めきれないジャクリーンは、彼らが乗船する豪華客船に同乗しナイル河を遡上。周囲の目を気にしようともしない彼女は執拗にサイモンとリネットをつけ狙う。やが
伊坂幸太郎さんの五編からなるミステリー短編集。いずれも主人公の家裁調査官・陣内が遭遇した不思議な出来事の顛末を描いています。陣内は奔放かつ破天荒極まる規格外の男。―――彼の言動は直情径行で何ごとに対しても断定的です。いつも周囲を自分のペースに巻き込み、時には煙に巻いてしまう・・・。その一方で彼は独自の正義感を持ち、「少年たちに奇跡を起こすことこそ自分たちの仕事だ」と常日頃から豪語(?)。―――本作の魅力の一端は、この陣内の一見複雑ですが実はわかりやすいキャラクター造
伊坂幸太郎さんは自身の短編小説集「チルドレン」のなかでビートルズの楽曲をいくつか紹介しています。この小説の主人公は「家裁調査官」の陣内という男。―――彼は「俺たちは奇跡を起こすんだ」というモットーを持つ仕事人ですが、その一方でビートルズ好きのセミプロ・ミュージシャンでもあります・・・。そんな彼は集中のある「短編」のなかで、年長の非行少年をライヴハウスに招待。―――少年の前で陣内のバンドが歌ったのが本曲「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」でした。そもそも少
「天下人(てんかびと)」豊臣秀吉を正史の裏側から描いた山田風太郎さんの長編小説。「英雄」といわれている秀吉の虚構性をあばいた異色の歴史小説です。織田信長の家臣となった藤吉郎(秀吉)は「天下もとるが、女もとる」とばかり、出世の野望に燃えた。竹中半兵衛という参謀を得て、巧みな弁舌と憎めない面相で正体を隠しながら、冷徹な権謀術数でライバルたちを蹴落としていく・・・。半兵衛の基本戦略は「共喰(ともぐ)い」。―――信長を倒して天下をとるため、いくつかの策を周到に用意して来るべき「
イギリスの推理作家アラン・ブラッドリーによる本格推理小説。―――お転婆な十一歳の少女フレーヴィアが大活躍するユーモア長編ミステリーの登場です。第二次世界大戦直後の1950年12月。ロンドン近郊の田舎に住むフレーヴィアは「今年こそ」との決意のもと、サンタクロースの捕獲作戦を計画。―――ところが彼女たちが暮らすバックショー荘はクリスマスを前にして、映画撮影に貸し出すこととなった。これは一家の家計が苦しくなり、その打開策として父がやむなく決断したもの。またそれに便乗して村
イタリアが誇る映画俳優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名コンビによる悲恋映画です。第二次世界大戦の勃発が結婚したばかりの夫婦を分断。―――大戦終了後、妻は戦地ソビエトから帰還しない夫をかの地に訪ねる旅に出ましたが・・・。タイトル「ひまわり」キャストジョバンナ(ソフィア・ローレン)アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)マーシャ(リュドミラ・サベーリエア)監督ヴィットリオ・デ・シーカナポリに住む娘ジョバンナは兵士のアント
アメリカの推理作家ロバート・ロプレスティによるユーモアミステリの連作短編集です。本編の主人公は「ミステリ作家」のシャンクス。―――彼はロマンス小説家の妻コーラと結婚して二十余年になります。作家生活もようやく軌道に乗ってはいるものの、けっしてベストセラー作家とは言えません・・・。最近では妻の作品の売り上げが彼をしのぐようになり、シャンクスは少々気に病んでいる様子。また一方で彼はつねづねこのように宣言。―――「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」と・・・。
女性銀行員・花咲舞を主人公とした池井戸潤さんの連作短編集です。銀行内に潜む悪に黙っていることができない主人公。本編はそんな彼女の正義のやいばが銀行の抱える闇を切り裂く痛快極まる金融ミステリーです。舞台は二十世紀末の東京第一銀行。―――その時代はちょうどバブルがはじけ、大手ゼネコンや大銀行、証券会社などが次々と倒産していた頃です・・・。主人公の花咲舞は東京第一銀行の事務部臨店指導グループに勤務。―――上司の相馬調査役と二人で営業店の事務指導を行っています。実は
本曲はフランスの作曲家ラヴェルの代表作として有名な作品です。全体は三つの楽章から成りますが、第一楽章の冒頭で響くのが「むち」の乾いた小気味よい音。―――この「むち」という楽器に関して、ミステリー作家の北村薫さんがある作品のなかで面白い小話を披露しています・・・。東京の上野公園で長い凶器のようなものを持って歩いている男がいた・・・。彼はいかにも怪しい人物。―――もしかたら凶悪事件の関係者かも知れない。ところがその男はあるオーケストラの打楽器奏者だった、というオチ。
女性三人の友情を描いた北村薫さんの長編小説です。幼友達でもあった三人の女性たちの過去をフィードバックしつつ、その絆と別れを綴っています。テレビ局のアナウンサー・千波と、作家・牧子、写真家の妻・美々は幼馴染のお友達。三人とも同い年の四十代で、住まいが近いこともあって始終会ったりしている仲。―――千波は若いころテレビ局の花形アナウンサーだった。とは言えいまはもっぱら後進の指導に注力。ところがそんな千波にチャンスが巡ってくる。―――四月の番組編成にあたり、彼女は朝のワイドショ
驚天動地のトリックが炸裂するジョン・ディクスン・カーの本格推理長編。―――テニスコート上で犯された「足跡のない殺人」の謎に名探偵フェル博士が挑む一編です。暑い夏の日の夕方、雨上がりのテニスコート上で絞殺死体が発見される。コート上に残された足跡は被害者フランクのものと彼の婚約者ブレンダのものが二つ。―――だが彼女は彼を殺していないと言う・・・。窮地に追い込まれた彼女を救おうとするのは事務弁護士のヒュー。―――彼は以前からブレンダに思いを寄せていた・・・。一方事件当時
特殊撮影の多彩な映像が炸裂するSF・ファンタジー映画。「ジュマンジ」とは百年前の呪いが封じ込まれているすごろくゲーム盤です。26年間ジュマンジのなかに閉じ込められていた主人公のアランは、再び「現代」に戻ってきましたが・・・。タイトル「ジュマンジ」キャストアラン・パリッシュ(ロビン・ウィリアムズ)サラ・ウィットル(ボニー・ハント)ジュディ・シェパード(キルスティン・ダンスト)ピーター・シェパード(ブラッドリー・ピアーズ)監督
当代きってのストーリーテラーのお一人・ジェフリー・ディーヴァーが放つ長編ミステリー。―――「二人の女VS二人の殺し屋」による息詰まる対決を描いたサスペンス巨編の登場です。女性保安官補ブリンは夜遅く通報で森の別荘を訪れた。とその時彼女を襲ったのは殺し屋たちの銃弾だった。別荘の住人二人は殺し屋たちによってすでに殺されている。―――彼女は現場で出会った女性ミシェルを助けて逃走するも、いかんせん車両、無線、銃がない。当面援軍も望めそうもない・・・。やがて暗い森のなかで殺し屋
あるとき自分の誕生日に息子からチャゲ&飛鳥さんのアルバムをプレゼントされました。それは「CHAGE&ASUKAVERYBESTROLLOVER20TH」というCD二枚組のベストアルバムでした。―――これは彼らのデヴュー二十周年の記念アルバム・・・。彼らの曲は詩もメロディーも概しておしゃれで都会的。―――その一方でリリックな歌や生の感情を爆発させたエネルギッシュな曲もありました。このアルバムのなかにはそうした彼らの代表曲が目白押し。「恋人はワイン色」「僕はこの瞳
道尾秀介さんの六篇からなるミステリー短編小説集です。各篇の主人公は性別や年齢も異なる六人。―――認知症の母と暮らす初老の男(「隠れ鬼」)。妹を連れて毎晩虫取りに出かける小学生(「虫送り」)。河原で暮らすホームレス(「冬の蝶」)。パートを掛け持ちする女性(「春の蝶」)。配送社に勤める若者(「風媒花」)。初めて担任となった小学校の女先生(「遠い光」)・・・。この六人に共通しているのはそれぞれ心のなかに「ある秘密」を抱えていることです。―――それは家族との確執であったり失
冲方丁(うぶかたとう)によるSF・ジュブナイル(青少年向け)小説です。テレビや映画で放・上映された同名の人気アニメは作者が原作者。―――彼の手によってあらため小説化されたのが本作です。舞台ははるか未来の日本。―――そのころ地球ではいずこからともなく襲来して来た敵「フェストゥム」と激しい戦いを繰り広げていた・・・。真壁一騎(かずき)は太平洋の孤島・竜宮島(たつみやじま)で暮らす中学三年生。―――彼の飛びぬけた運動能力は同窓生たちからも一目置かれていた・・・。やがて
自分が高校生のころロックギターにハマっている友人がいました・・・。彼はヘビーロックの大ファン。―――有名バンドのコピーを目標に毎日エレキギターの練習に励んでいました。とは言え彼はロック一辺倒ではありませんでした。今思うとギターのうまい音楽人には相応のリスペクトを持っていたように思います。―――たとえばフォーク・ソングの世界では長谷川きよしさん。クラシックではナルシソ・イエペスなどでした・・・。自分はそのころたまたまイエペスの弾く「アランフェス協奏曲」のアルバムを購入
アメリカの女流作家キャロル・オコンネルによる長編推理小説です。クリスマス直前に発生した二人の少女誘拐事件。―――本作はその顛末をドラマティックに描き切った超絶のミステリーです。クリスマスも近いある日、ニューヨーク州の田舎町で十歳になる二人の少女が失踪。―――彼女たちは聖ウルスラ学園の同級生で仲の良い友達同士だった・・・。やがて彼女たちは何者かによって誘拐されたと断定。―――地元の刑事ルージュにとってこれは悪夢の再現だった。というのは彼の双子の妹スーザンが十五年前の同時期
ドイツの作家シーラッハによるミステリー短編集です。収められた十一の物語りすべてに刑事弁護士の「私」が登場。―――本書はその「私」を主人公とする連作短編集とも言えそうです。各短編では「犯罪」を犯した人物のキャラクターや「犯罪」を犯した経緯、動機などを詳述。―――「私」はその犯罪の意味するところを深く掘り下げ、裁判に臨んでいくというスタイルをとっています。とは言え本書はいわゆる本格推理小説とは異なります。「私」は犯罪者の依頼に基づく弁護士。―――本格推理小説でいうところ
加山雄三さんはお若い頃「若大将」シリーズの映画に何本も主演。―――本作はそんな加山さんの人気絶頂期に撮られた映画です。共演は(いつもの通り)「青大将」の田中邦衛さんや「マドンナ」の星由里子さんたち・・・。彼らとの息の合った共演も懐かしい東宝の「娯楽映画」です。タイトル「アルプスの若大将」キャスト田沼雄一(加山雄三)岸澄子(星由里子)石山新次郎(田中邦衛)監督古沢憲吾京南大学スキー部のキャプテン田沼雄
松本清張のミステリー長編「内海の輪」と同短編「死んだ馬」の二編を収めた作品集。―――いずれも完全犯罪をもくろむ男たちの野望とその顛末を描いています。短めの長編「内海の輪」はいわゆる倒叙ミステリー。終始犯人の目線でその犯行の一部始終を追っていきます。主人公は新進の考古学者の江村宗三。―――本編は不倫の果てに殺人を犯した彼が、やがて破滅への道をたどり始める物語りです・・・。江村は弥生時代を専門とする考古学者。―――現在Z大学で教鞭をとり将来を嘱望されている。彼は銀座で元
警察庁のエリート官僚を主人公に据えた今野敏の警察ミステリー。―――過去に凶悪犯罪を起こした少年たちが何者かに次々と殺されます。はたしてこの事件の背後にあるものは・・・。東京近辺で拳銃を使った殺人事件が立て続けに発生する。被害者三人はいずれも過去に凶悪な犯罪を犯した若者たち。―――三人とも少年院から出獄後に殺されていた・・・。警察庁に勤める竜崎は東大出のいわゆるキャリア官僚。マスコミ対策ほかを担う総務課長を務めている。彼は本事件のホシは同一犯とにらみ犯人像を推察。―――
中島みゆきさんの最初期の歌のなかに「時代」という曲があります。―――この曲は皆さんご存じのとおり、かつて彼女がポップスコンテストで歌い、優勝した名曲です。この時の様子をテレビで観ていた自分は地声(失礼)とも思える彼女の張りつめた力強い歌声に仰天。その後、彼女のファーストアルバム「私の声が聞こえますか」のなかに収録されている「時代」を聴いて二度ビックリ。―――ここではギター一本の伴奏のもと、淡々としながらも情感のこもった彼女の歌声が披露されていました。このように