ブログ記事603件
自分が二十代のころ、若き日の水谷豊さんが天才ピアニストに扮した「赤い激流」というテレビドラマが放映されていました。当時の水谷さんは萩原健一さんと組んだ「傷だらけの天使」で注目され、さらにこのドラマでその人気に火が付いたようです。残念ながらドラマのあらすじは覚えていませんが、たった一つのシーンだけ記憶しています。それは主人公の水谷さんが殺人の罪を着せられて監獄に入っている場面。―――収監されている狭い部屋の床にピアノの鍵盤を書き記した主人公。―――やがて彼は床面
アメリカのミステリー作家ジャック・カーリイの長編小説。―――衝撃の真相が読者を直撃するサスペンス・スリラーです。アラバマ州モビール市警の刑事カーソン・ライダーは、ニューヨーク市警からの緊急要請により同市に赴く。やがて彼は無残に切り裂かれた女性の死体と対面。―――カーソンも知るその被害者はある矯正施設の責任者で、生前に彼に対するビデオメッセージを残していた・・・。そのメッセージのなかには、カーソンに連絡して欲しいこと。彼が殺人的傾向にあるサイコパスを理解する第一人者である
イギリスのミステリー作家アンソニー・ホロヴィッツによる長編小説。―――犯人当てミステリーの醍醐味を存分に味わうことのできる作品です。実直さが評判の離婚専門弁護士リチャード・プライスがワインの瓶で殴打され殺害された。―――なお現場となった自宅の壁にはペンキで乱暴に描かれた数字「一八二」が残され、また事件の直前に被害者は謎の訪問者に向かって「いったい、どうして?」「もう遅いのに」と話しかけていたという・・・。さらにこの事件より一週間前のこと。―――リチャードによって離
自分はむかし放映されていた旧作のテレビドラマをときどき視聴しています。京都のある新聞社を舞台にした「新・京都迷宮案内」もそのうちのひとつ。―――今でもBSで再放映中なのでご覧になっている方がいらっしゃるかも知れません(?)。主人公の新聞記者・杉浦恭介に扮しているのは橋爪功さん。―――芸達者の彼はドラマの中で「へそまがり」のヒラ記者をユーモラスに演じています・・・。先日その番組のなかである懐かしいフォークソングに再会しました。それは第八話「37年目のラブレター雛祭
松本清張さんによるミステリー小説集。「たづたづし」「危険な斜面」「記念に」「不安宴会」「密宗律仙教」の五編を収めています。作品の舞台はいずれも昭和の世。―――時は「戦後」が終わりようやく経済も高度成長の時代に入ったころです・・・。街にはサラリーマンがあふれ出し、スピンアウトした者たちが主役となった「事件」も頻発し出します。作者は本編においてこのような時代の熱気のなかで起こったような「男と女の事件簿」をミステリータッチで描き出しています。なかでも「たづたづし」と
戦国時代を舞台にした米沢穂信さんの長編小説。本格推理小説と歴史小説を合体させたミステリーの登場です。主人公をつとめるのは織田信長配下の武将・荒木村重。―――彼はある日突然信長に背いて伊丹の有岡城に籠城。反織田勢力の毛利勢や大阪の本願寺に呼応し、信長に反旗を翻しました。村重が謀反を起こしてからの一年間。―――本書はその間に城下で発生した四つの難事件の顛末を描いています。とは言えその四つの事件はそれぞれ不可解極まるもの。―――なかには「密室殺人」の様相を呈する
本編でイーストウッドは同じ賞金稼ぎのリー・ヴァン・クリーフとイーライ・ウォラックの三人で二十万ドル相当の金貨を奪い合います。はたしてこの金貨を手にするのは誰(?)。タイトル「続・夕陽のガンマン」キャストブロンディ「名無しの男」(クリント・イーストウッド)セテンサ(リー・ヴァン・クリーフ)テュコ(イーライ・ウォラック)監督セルジオ・レオーネ音楽エンリオ・モリコーネ舞台は南北戦争時代の荒れ果てた荒野。―――ブロンディは強盗を生業(なりわい
アメリカの推理作家ダシール・ハメットの長編小説。荒々しい暴力と犯罪の世界を描いたハードボイルド小説です。コンチネンタル探偵社サンフランシスコ支局のオプ(調査員)である「私」は、町の改革を目指す新聞社の社長の依頼で、西部の鉱山町パースンヴィルに赴く。―――だが依頼人は「私」が町に到着したその日に路上で何者かに射殺されてしまった・・・。その犯人捜しの途中で「私」は町の最高実力者である彼の父親エリヒューから新たな依頼を受ける。それは町で不法な抗争を繰り広げているギャングた
北欧デンマークのミステリー作家ローネ・タイルスの長編小説。主人公の女性ジャーナリスト、ノラが三十年前に発生した少女失踪事件の謎を解き明かそうとする物語りです。イギリスに向かう船で二人のデンマーク人少女が消えた。その生死が不明のまま、事件は迷宮入りとなった・・・。その三十年後、女性ジャーナリストのノラ・サンドは、少女たちが消える直前に船上で撮られたと思われる写真を偶然手に入れる。その写真に写っていた少女が未解決事件の当事者と知った彼女は、少女たちの過去を掘り起こすリサーチを
自分はむかしテレビで「隊長ブーリバ」という洋画を観たことがあります。この映画は十七世紀初頭に活躍したウクライナ・コサックの指導者タラス・ブーリバを描いた物語り。―――ロシアの作家ゴーゴリの歴史小説をもとに作られました。主演の隊長ブーリバにはユル・ブリナーが扮していました。この映画に出演したころがおそらく彼の全盛期。―――頭をそり上げたそのたくましい体躯が印象的でした。また彼の息子アンドリー役で当時の人気男優トニー・カーチスが出演しています。映画のなかでアンドリーは父親
逢坂剛さんによる長編ミステリー。謎の人工血液を巡って製薬会社の闇に巻き込まれていく女性二人の冒険譚です。「人殺しの会社!」。八甲製薬の秘書・麻矢は役員室へ抗議にきた男からある写真を託される。その写真は白濁した内臓だった。―――男は彼女に、八甲製薬が製造・販売した人口血液製剤「フロロゾル」を輸血されたせいで自分の父親が死んだと言うのだ。麻矢は親友のフリーカメラマンのぶ代にこの話を相談。―――やがて二人は時を移さず会社の麻矢の友人古森とともに、この人工血液の謎を解こう
道尾秀介さんによる中編小説集。「光の箱」「暗がりの子供」「物語の夕暮れ」という三つの作品を収めています。なお作者はそれぞれの作品のなかに、「作中作」として童話などの物語を挿入。―――また登場人物の一部が重複していることもあってか、本作全体を一つの長編小説として読んでもらおうという意図もありそうです。「光の箱」の主人公は童話作家の圭介。―――中学校時代にいじめを受けていた圭介は弥生というクラスメイトと出会い、やがて同じ高校に進んだ二人は親密な関係を結ぶようになります。
自分は何年か前に伊坂幸太郎さんの長編小説「ゴールデンスランバー」を読了しました。この小説は首相暗殺の容疑者として疑われた主人公の必死の逃亡を描いた物語り。―――全編にサスペンスが横溢し、そのわかりやすい(?)ストーリー展開も相まって、作者の会心作としても知られています。その作中で逃亡中の主人公たちがビートルズのアルバム「アビイ・ロード」について語り合う場面があります・・・。主人公の友人たちが「ビートルズは最後の最後まで、傑作を作って、解散したんですよ」「仲が悪
アメリカの推理作家ウイリアム・アイリッシュの長編小説。数十年まえに上梓された作品ですが、いまだに多くの推理小説ファンを魅了して止まないミステリーの一つです。株式ブローカーのスコットはただ一人街をさまよっていた。彼はつい先ほど妻と喧嘩して、家を飛び出してきたのだ。しばらく歩いていると彼は奇妙な帽子をかぶった女に出会った。彼は気晴らしに女を誘いレストランで食事。―――その後カジノ座へ行ったりしたあと、夜中に彼女と別れた。ところが帰ってみると家に残してきた妻は彼のネクタイで
英国の推理作家D・M・ディヴァインの長編小説。本格推理小説と法廷推理劇の楽しさを併せ持ったミステリーの登場です。事務弁護士のジョン・プレスコットは二件の殺人事件の被告として、いま法廷に立たされている。最初の事件は六年前に起こった。―――それは自殺した彼の友人ピーターが実は彼によって殺されていたというもの・・・。誰かが警察にその旨通報したのだ。二つ目の事件は数か月前のもので、ジョンの弁護士事務所で働いている秘書が何者かに刺殺された。いずれも状況証拠や検察側の証言は彼を
尾道に住む周吉とその妻とみは、東京で暮らしている子供たちと久しぶりに会います。笠智衆さんなど懐かしい俳優たちが出演している日本映画です。タイトル「東京物語」キャスト平山周吉(笠智衆)平山とみ(東山千栄子)紀子(原節子)平山幸一(山村聡)金子志げ(杉村春子)監督小津安二郎尾道に暮らす周吉と妻のとみは次女の京子に留守を頼み東京にでかける。―――二人は下町で小さな医院を開業している長男の幸一の家に泊
連城三紀彦さんによる長編小説。―――大胆不敵な小児誘拐事件の顛末を扱ったミステリーです。二月二十八日、月曜日。―――息子の圭太を幼稚園に預けている小川香奈子は、その幼稚園から圭太が蜂に刺されて危険な状態に陥り病院へ運ばれた、との連絡を受ける。幼稚園に急行すると息子の担当は、香奈子に似ている女性ともう一人の男に圭太を渡したと言う・・・。誘拐事件と察した香奈子は警察に連絡。―――するとしばらくたってから小川家に犯人から電話が掛かってきた。その電話のなかで犯人は彼女に伝える
藤沢周平さんによる時代短編小説集。―――歴史に名を残した剣客たちの決闘シーンをリアルに描いた五つの作品を収めています。冒頭の第一話「二天(にてん)の窟(あなぐら)」では、巌流島の決闘で有名な宮本武蔵が登場します。彼は吉川英治の代表作「宮本武蔵」以来、剣聖とあがめられてきたお人。―――ドラマや映画などでも剣の求道者として描かれ、そのストイックな生き方に共鳴した方も多いと思われます。ところが本編で作者は勝負に執着する彼の卑劣な側面を鮮やかに活写。―――従来のイメージを覆
ロシアの作曲家チャイコフスキーはその生涯に六つの交響曲を作曲しました。なかでも第六番「悲愴」は彼の全作品のなかで最も人気のある曲の一つかも知れません。全曲にあふれる流麗・優美かつドラマティックで繊細なメロディー。それらを彩る華麗なオーケストレーション。そして最終楽章に悲痛な緩徐楽章(遅いテンポの楽章)を置いた独創的な構成など。―――これらが聴者に多くの共感を呼んでいると思われます。ところでチャイコフスキーは本曲初演のわずか九日後に亡くなっています。享年五十三歳。―
アメリカの推理作家マイクル・コナリーによる長編小説。ロサンジェルス市警の女性刑事バラードが活躍する警察ミステリーです。ロス市警ハリウッド分署の女性刑事バラードは深夜勤務の担当者。―――ある夜彼女は監禁暴行事件の捜査にあたる・・・。被害者はトランスジェンダーの男性でひどい暴行を受けていた。独自に捜査を進めようとするバラードだが、同夜ナイトクラブで勃発した銃撃事件に駆り出される。この事件を担当するのは彼女の元同僚のチャステイン。―――ところが彼は日を置かず自宅の駐車場で何
法廷を舞台としたアガサ・クリスティーの戯曲。アッと驚く結末が待っている迫真の推理劇です。ハンサムながらも文無しの青年レナードは金持ちのオールドミスと街なかで出会う。―――やがてレナードは足しげく彼女の家に足を運んだ・・・。ある夜そのオールドミスが撲殺される。状況証拠は容疑者の青年に不利なものばかり。金が目当てだとすれば動機も充分。―――なぜなら彼女は遺言を数日前に書き換え、そのほとんどはレナードに遺贈されるからだ。ついに彼は殺人容疑で逮捕される。さらに彼を救えるは
元ロデオスターの老人がメキシコに住む少年を父親に合わせるためアメリカへ向かう物語り。―――クリント・イーストウッドが主人公の老カウボーイに扮しています。タイトル「クライ・マッチョ」キャストマイク(クリント・イーストウッド)ラフォ(エドゥアルド・ミネット)マルタ(ナタリア・トラヴェン)監督クリント・イーストウッド物語りは1978年のテキサスで始まる。マイクはかつてロデオで名を馳せた老カウボーイ。―――現在は落ちぶれて馬の調教で生計
角田光代さんの長編小説。女友だちと共同で古着屋を経営する主人公ハナの「奮闘」をせつなく描いています。ハナは今年三十七歳。―――ある日友人たちと居酒屋で一杯やっていたハナは、同席していた恋人のタケダくんから「結婚してやる。ちゃんとしてやんなきゃな」と得意げに言われる。ハナは「なんかつまんねえ」と反発。―――その翌日彼女の自宅に泊まっていた彼に「私結婚しない」と言う・・・。彼女にして見れば人前で突然「結婚してやる」みたいに言われて腹が立ったのだ。とは言え結婚とは別に
伊坂幸太郎さんの中編「PK」「超人」「密使」を収めた作品集です。三つの中編小説のなかで登場人物は少しづつ重複しています。またその舞台設定はいずれも近未来を連想させるもの。―――さらに「スーパーマン」や戦隊ヒーローも何故かちょっと顔を出す(?)・・・。なんとなく関連がありそうなこの三編。―――最後まで読んでみると本書全体を一つの長編小説として読んだような気がするかも知れません。「PK」は2002年サッカーワールドカップの前年に行われたアジア最終予選の試合で、
先日「志乃ちゃんは自分の名前を言えない」という長いタイトルの映画を視聴しました。この映画は人と交わるのが苦手な女子高校生の大島志乃と岡崎加代が、音楽を通じて心を通わせていく物語り。―――クラスのなかで孤立していった二人はやがてバンドを組み、夏休みになると街に出て路上で演奏するようになります。その時二人が歌っていた曲が「あの素晴しい愛をもう一度」でした・・・。吃音で苦しむ志乃がボーカルを。彼女をバンドに誘った加代がギターを担当。最初は歌もギターも決して上手とは言えなか
イギリスの女流推理作家ミネット・ウォルターズの長編小説。イングランドのある団地で勃発した暴動の一部始終をリアリスティックに描いたミステリーです。バシンデール団地に引っ越してきた老人とその息子は小児性愛者だと疑われる・・・。この噂が出始めると彼らに不安を持つ団地住民のメラニーはふたりを排除しようとする抗議デモを計画。―――ところが時を同じくしてふたりが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪。―――これをきっかけにデモは住民たちを巻き込んだ暴動へと発展する。暴徒と化した住民
ジョン・ディクスン・カーの長編推理小説。名探偵フェル博士が不可解な連続殺人事件の謎に挑む一編です。作家のケントは友人とある賭けする。それは南アフリカからロンドンへ無銭旅行ができるか、というもの。―――船に人夫として雇われた彼はやっとのことでロンドンにたどり着く・・・。ところが空腹のケントは友人との待ち合わせ場所のホテルで無銭飲食に及ぶ。ホテルのスタッフに呼び止められた彼はホテルの一室に案内されるが、なんとその部屋で彼の友人一行の女性が絞殺されていた。進退窮まった
何十年もまえ自分は「ファイヴ・イージー・ピーセス」という映画をテレビで視聴したことがあります。この映画の主役を務めていたのは若き日のジャック・ニコルソン。―――主人公は子供のころピアノを熱心に練習していましたが、大人になってからは怠惰な生活を送る毎日。―――そんな彼がある日彼女に弾いて聴かせた曲がショパンの前奏曲第四番でした・・・。残念ながら自分はこの映画の詳細を覚えていません。(調べてみると)曲を弾き終えた主人公は彼女にこう話したそうです。―――「子どものころはも
東野圭吾さんの長編ミステリー。天才物理学者の「ガリレオ」湯川学が登場する一編です。静岡県内のとある民家で発生した火災現場で、三年前に失踪した若い女性の遺体が発見された。彼女は並木沙織という若い女性で、その生前、歌手を目指していた町の人気者だった・・・。容疑者は二十三年前の少女殺害事件で警視庁捜査一課の草薙が逮捕し、無罪となった蓮沼という男。―――草薙は蓮沼を逮捕するも、今回もまた証拠不十分で釈放されてしまう。やがて蓮沼は沙織の失踪後に退去していたその町に舞い戻り、彼
高校一年生の小鳩常悟朗(じょうごろう)君と小山内(おさない)ゆきさんの二人を探偵役に据えた米澤穂信さんのミステリー短編集です。高校生のお二人が探偵役であること。また事件の舞台が学校内や街のカフェであることもあってか「殺人」などの凶悪犯罪は起こりません。その代わりにスイーツに絡んだ魅力的な謎が次々と登場。―――収められている短編は「巴里(パリ)マカロンの謎」「紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎」「伯林(ベルリン)あげぱんの謎」「花府(フィレンツェ)シュークリーム