今日、十六日は土地では薮入りといって、正月と同じように親類の家で寄り合うのが普通だ。平太郎も叔父の川田茂左衛門の家へ行った。親戚が集まり、無事を祝し、酒や飯もすむと、茂左衛門が言った。「このあいだから、そなたの家では怪しいことが起こり、泊まりに行って逃げ帰った人も多いとか。一人で暮らしている、そなたの気丈さには、皆、感心している。しかしながら、後に何か間違いがあっては、そなたはもちろん、一族の者も、見捨てたのだと言われては立つ瀬がない。どうだろう、しばらくの間、どこか親戚の家に泊まって様子をみて