ブログ記事39件
塾長・健の東大三鷹寮42夏休み、人気が少なくなった寮内をひとり歩く。春先の喧騒が嘘のよう。シーンと静まりかえっている。夕食前、ここでみんな集まってワイワイやっていたよな。銀杏並木のあたりで立ち止まり、ふとそんなことを思う。あれはわずか数か月前。なのに、ずい分と時間がたったような気がしている。***8月になると僕も帰省する。高校の山岳部の後輩から、夏山登山に誘われている。飯豊連峰の縦走。1週間ほどかけて。福島県から入り、新潟県へと出る
塾長・健の東大三鷹寮41夏休みになった。寮は人影もまばら。閑散とした雰囲気だ。それにしても・・寮に来てから、まだ3・4か月しか経っていない。が、その間に経験したことは。中味がギッシリ。濃密な時間だった。***これから数年、僕は寮で過ごすことになる。が、この時の時間ほどのものは、ついぞ味わうかとがなかった。いや、それどころか。僕の人生の中でも、一二を争うくらいのものだ。***吉祥寺から三鷹寮へ向かっていた僕は、この先ど
塾長・健の東大三鷹寮40剣道部のこと、授業のことを書いて。ふと思った。そうか、僕は剣道部を選ばなかったんだ。授業を選ばなかったんだ。無意識のうちに、三鷹寮を選んでいたんだ。そういうことだったのか・・***つまりね、剣道部を選んでいたら三鷹寮を出る。そして本郷キャンパスに通いやすい所に住居を移す。そうしていたはず。授業を選んでいたら、もっと貪欲に「面白い授業はないか?」って、探し回っていたはず。***でもね、結局はそういう行動を
塾長・健の東大三鷹寮39その点、ダンは違っていた。寮に帰ってきても、自分の勉強スペースで黙々と勉強していた。***勉強スペース:学校の教室並みの大きなスペースを、衝立などで区切る。同部屋には5人いたので、それぞれが自分のスペースを確保する。部屋のまん中にはソファーやストーブ。そこに集まって、時にはワイワイ話をする。***ダンが自分の勉強スペースから出てくる。「しっかり勉強したぞ」そんな雰囲気を漂わせていた。彼は僕と違って受け取る力が
塾長・健の東大三鷹寮38東大の授業について。これがね、残念ながら僕にははまらなかった。とても残念。1年生は教養科目。哲学とか社会学の講義に出てみた。大きな教室で、マイクを持った講師が話すだけ。一方通行。なんとか我慢して半年続けた講義もあったが、とくに何も残らなかった。***語学の授業はクラス別。僕はドイツ語。少人数で学ぶ。最初の文法入門は面白くて通ったが・・やがて飽きた。英語はもっと早かった。ある本を定められて、それ
塾長・健の東大三鷹寮37結局、剣道部に在籍したのは数か月に過ぎない。僕は小さい頃から習い事がまるでダメで。長く続いたためしがない。1年以上続いたものは皆無だ。今回も残念ながらそのパターンになった。***でもね、そこで得た人間関係。とりわけ新入部員同士の。それは大きな財産になった。駒場キャンパスは2年生まで。3年生からは本郷キャンパスに移る。そこで剣道部時代の仲間と会うと、声をかけあった。***誰それは今どうしているとか、お互いに情報を
塾長・健の東大三鷹寮36本郷キャンパスで練習を終わる。先のコースの逆をたどって三鷹寮へ戻る。2時間近い。着くと9時過ぎ。時には夕食に間に合わない。そう。寮生に開放され、すでに食べられていた。www***これには困った。結局、夏休みに入って何度か練習に出たのが最後。休みが終わって郷里から戻っても、剣道部の練習に出ることはなかった。他の新入部員も同様だったらしい。***男性部員が次々とやめていく中、ひとりだけ4年間続いた人がいる
塾長・健の東大三鷹寮35書いていて思い出したが、剣道部の新入部員は、他に男性が2名。あと女性が1名。総勢7名だった。授業が終わると駒場の体育館で、みんなでワイワイやっていた。それはそれは楽しい日々だった(笑)***が、ある日突然、これからは初心者も本郷キャンパスで練習すると告げられた。1年生でも経験者は、すでに本郷キャンパスで練習していた。七徳堂といって、由緒正しい稽古場。駒場の体育館とは比べものにならない。***ひとつ困ったことがあった。そ
塾長・健の東大三鷹寮34聞けばCくんは、高校のとき陸上部。短距離選手。駒場キャンパスの周囲は2・3キロあるだろうか。短距離の人には長すぎる。他方、僕は山岳部。ちょっとモノ足りないくらいの距離。その差が出た。***とはいえ彼は陸上部。専門じゃない奴に走りで負けるのは、プライドが許さない。そんな思いがあったのだろうね。すごいガッツ。バイタリティー。まるで猟犬のようだ。Cくんは後に官僚になる。出世するタイプだ。***僕のイメージはどうかとい
塾長・健の東大三鷹寮33剣道部の練習は、新人のだが、まず体力作りから。駒場キャンパスの周囲を走る。10~20分くらいだったかな。その後、体育館で素振りをする。これが主なメニュー。1~2時間ほどで終わる。***最初のランニング。僕はいつもトップだった。みんながあまりに遅いのでビックリした。そういえば僕は山岳部。高校の時だが。中距離・長距離は得意だ。とくに練習しなくても、いつもクラスの上位だった。***ある日、いつものようにトップでグラン
塾長・健の東大三鷹寮32剣道部を通して、僕は何人かと知り合った。なかでも、次の3名。・Aくん愉快な奴。心の底で、ゆるゆると楽しんでいる。真剣に取り組んでいるんだけど、そこには楽しみがある。三鷹寮もいっしょ。理系。後に大学教授になった。***・Bくん誠実。ちょっとズレた所がある。駒場寮に住んでいた。あそこ、まともな人間が住む場所ではない。・・と、三鷹寮の僕が言えるか(笑)でもね、勉強に向きあう態度。そして人に向きあう態度。これが、とても誠実。
塾長・健の東大三鷹寮31部活は剣道部に入った。これまで経験があるのか?と問われれば、実はない。まったくの素人。そんな人が大学生になっていきなり剣道を始めるなんて。無茶もいいところだ。普通は小学生から始めて。大学生になる頃は、すでに数年、人によっては10年以上のキャリアを積んでいるはずなのに。***でも、なぜか。大学生になったら、武道をやってみたくなった。これまで経験したことのない世界に、首を突っ込んでみたくなったのだ。***入ってみてビック
塾長・健の東大三鷹寮30お電話チャンピオンがいた。Cくん。お電話の総数のうち、何割かが彼だった。ダントツの1位。ある時、Aにお電話があった。もちろんCくん。すると、ほどなくBにもお電話が。これもCくん。寮生のアナウンス。「Cくん、Cくん。Bにもお電話です」わざわざ「も」を入れた。これには笑えた。***僕にも時たま、お電話があった。母親と、東京に住むいとこから(笑)***そんなお電話騒動も、夏が近づくとパタリとなくなった。どうやらCく
塾長・健の東大三鷹寮28ある晩、ダンと討論になった。喧嘩したわけじゃない。あるテーマについて話していたら、いつの間にか論争になって。***僕が「それは・・」だろう、って言うと。ダンがすかさず「いや、それは・・」と反論する。と、僕も「でも、そうじゃないよ。だって・・」と応じる。するとダンも「いやいや、違うよ。・・じゃないか。だから・・」すかさず僕が「それ、おかしいよ。そもそも・・だろ。なら・・ことになるじゃないか」***止まる所を知らなかった
塾長・健の東大三鷹寮27「火事だぁ」僕は大声で叫んだ。階段を上ってきて気づいたのだが、部屋の前にある大きな竹製のくずかごが燃え上がっていた。炎はくずかご全体に及び、まさに建物に延焼しようという勢い。ヤバイ!!***僕はダッシュで部屋に飛び込んだ。そこには万一に備え、水を入れたポリバケツが置いてある。各部屋、常備だ。それを手に取ると、くずかご目がけて水を浴びせた。バシャ!!炎は一瞬にして収まった。ふぅー!!僕は胸をなでおろした。
塾長・健の東大三鷹寮26後に、僕も寮祭を手伝うようになった。協力をお願いするべく、女子大に足を運んだりした。なかでも、ある女子大の学園祭・実行委員の人たちとは懇意になり。三鷹寮の寮祭にも来ていただいた。代わりに僕も、彼女たちが主催するダンパへ誘われた。***チケット代:三鷹寮500円、女子大2000円。だいぶ開きがある。会場:三鷹寮は当然ながら寮のホール。女子大は、出かけてビックリ。都心の一等地にあるオシャレな会場。***当日、寮の友
塾長・健の東大三鷹寮25土曜。ダンスパーティー、略してダンパの当日。ホールはいつもの姿とは様変わりしていた。窓には暗幕が張られ。外からの光が入らないようになっている。出入り口も暗幕で仕切られ、中の様子はうかがえない。***なにより驚いたのは天井。例の球形の物体。実はミラーボールだった!それがクルクル回転し、周囲に光の帯を投げかけていた。「そうか。これだったのか」謎が解けた。それにしても、こんな設備まであるとは・・さす
塾長・健の東大三鷹寮24ダンを誘ったが、行かないという。他の1年生2人も同じ。結局、僕ひとりで出た。相変わらず、ノリが良い。いや、良すぎる(笑)祖父と会うために新調したジャケットを着て、講習会に出てみた。大勢の人、人、人。ホールがぎっしり。***女性が多い。おそらく他の大学の生徒。どこから、こんなに?三鷹寮は僻地だ。陸の孤島。吉祥寺駅から歩いたら30分以上。バスでも15分はかかる。なぜ、これほど集まる?謎だ。寮委員の集客力のすごさに、舌を巻くばかり
塾長・健の東大三鷹寮23またある夜、寮内放送が流れた。「今度、寮祭の一環としてダンスパーティーを開催します。来週・土曜、午後7時から。場所は事務室わきのホールです。新入寮生の皆さんは、ダンスを踊れない方も多いでしょう‥」***そりゃ、そうだ。ずっと受験・受験の日々。ダンスなどとは無縁の毎日だった。「お相手の女性も同じ。そこで火・水・木の三日間、ダンス講習会を行います。指導に当たるのは東大ダンス部の皆さんです」***なんと、講習会まで行う。それもダ
塾長・健の東大三鷹寮22売店に行く。すでに何人か、寮生が買い物をしている。僕はカップラーメンを買った。今日の夜食だ。20分ほどすると、売店は閉まる。今のコンビニと違い、24時間・営業ではない。1日わずか20分の稼働時間なのだ。***ある晩、夜中の12時ごろ。突然、寮内放送が流れた。「売店、開けろ!!」誰かが酔っ払って、マイクで叫んでいる。が、開く気配はない。そりゃ、そうだ。ところが10分もすると、哀願調に。「売店、
塾長・健の東大三鷹寮2110時になった。売店が開く時間だ。三鷹寮には売店があった。事務室わきに大きなホールがある。その一角に。売店委員というのがあって。寮委員が務めていた。そして10時になるとカギを開け、寮内放送を流す。***「ただ今より売店を開けます。今日はカップラーメンが入荷しています」なんて。食料品そして文具などが売られていた。当時はコンビニという便利なものはなかった。だから寮生にとっては、貴重な存在だった。***小腹が空いた。
塾長・健の東大三鷹寮209時が近づいてきた。「一度、行ってみるか」。そう思い、ダンを誘った。三鷹寮では朝と夕の2回、食事が出る。予約制。が、食べない者も多い。そこで夜9時になると、残った食事を開放する。そんなシステムだった。***ダンはしぶしぶ付いてきた。食堂の入口に来ると、すでに10人以上もの寮生が順番待ち。みんな早い。ビックリした。そして9時。おかずは先頭の数名でなくなり。後の僕たちは、ご飯とみそ汁だけ。***仕方ない。ご飯にみそ汁をぶ
塾長・健の東大三鷹寮19それから校内を散策し、二食(第二食堂)わきの喫茶店に入った。暑い日だったので、僕はアイスコーヒーを注文した。祖父も同じ。「お前もひとりで大変だろう。お小遣いだ」。そう言って、1万円を渡してくれた。***上野駅まで祖父を見送り、僕は帰途についた。思いがけず家族と過ごした時間。僕の心に活力がみなぎっていた。思えば東京へ来て1ヵ月ちょっと。僕は孤独な戦いをしていた。そこに100万もの援軍がやって来た。そんな気がした。***こうして祖父のこ
塾長・健の東大三鷹寮18食事の後、ひと息ついてからキャンパスへ向かった。赤門から入り、正門へと歩く。そこから銀杏並木を通り、安田講堂へ。冬には幹と枝だけだった銀杏の木も、今は葉がいっぱい。緑一色だ。***安田講堂から三四郎池へと降りていく。池のほとりで記念撮影。生協で買った一張羅の上着を着た僕。が、後で写真を見るとほほがこけ、どこか疲れた様子。東京へ来て1ヵ月ちょっと。気づかないうちに疲れがたまっていたのかな。***池から上へ。講堂わきに大きな銅像。足を組ん
塾長・健の東大三鷹寮17本郷三丁目の交差点でタクシーを降りた。そこから本郷キャンパスに向かって、通りを歩く。いろんなお店があって、なかなか楽しい。ちょうどお昼どき。おなかも空いてきた。「じいちゃん、何か食べるか?」***「うん。肉がいい」。意外な答えにビックリした。祖父は元・漁船員。なので、好きなのは魚。とりわけ鰹の刺身。その彼から、肉という答えが返ってくるとは。***一軒のお店に入る。肉と玉ねぎを炒めたランチ。「うん、うまい。東京の食べ物はおいしいな」モリ
塾長・健の東大三鷹寮165月の連休が近づいてきた。「帰省するのか」、実家から電話が。「いや」と答える。「じいちゃんが東大を見物したがっている。案内してやってくれ」祖父は漁船員だった。今は船を降り、父の仕事を手伝ったりしていた。***彼は新しい物が好き。好奇心旺盛。年に似合わずハイカラ趣味だ。当日、上野駅に出迎えに行った。この日のため大学生協で上着を買っていた。祖父に負けないよう、僕なりの精いっぱいのオシャレ(笑)***「東京のタクシーは派手だなぁ」。上野駅でタ
塾長・健の東大三鷹寮15ひときわ盛り上がっているグループがあった。座の真ん中に、眼鏡をかけた大柄な男がいる。一升瓶を股にはさんで座り、何やら唄ったり。あるいは口上を述べたり。香具師のようだ。***「あー、よかチンチ*。よかチンチ*」。なんだ、それは。卑猥なやつか。ビックリした。一升瓶をいとおしそうに撫でながら。そう、チンチ*に見立てて。寮委員の先輩か?すごい人がいるもんだ。***が、あとで聞いたのだが、彼も新入寮生。そう、僕と同じ学年。ついこの間まで受験生だった
塾長・健の東大三鷹寮14実は、三鷹寮は土足なのだ。外から帰ってきても、靴を脱がない。部屋の中でも土足。唯一脱ぐのは、ベッドに入る時だけ。もっとも、多くの寮生はサンダルで暮らしている。さすがに寮の中でも靴をはくのは、ちょっと窮屈だ。***畳がないので、こういう生活になっている。そうしてみると、畳というのはすごい発明だ。さて和室。上から畳を見下ろす。けっこうな距離。あそこまで腰を下ろすのかと、妙な気分になった。日本にやってきた外国人は、こんな感覚なのかな。***も
塾長・健の東大三鷹寮13またある夜、寮内放送が流れた。「寮委員会です。金曜の夜、新入生の皆さんを歓迎するコンパを開きます。場所は事務室わきの和室。時間は午後7時から。新入生の皆さん、ふるってご参加ください」***その夜はたまたま英語の課題が多くて。取り組んでいたら、8時近くになってしまった。見回すと、1年生はみな部屋にいる。ダンを誘ったが、行かないという。みんな、ノリが悪い。いや、僕が良すぎるのか(笑)***和室へ行ってビックリ。すでに多くの寮生で盛り上がって
塾長・健の東大三鷹寮12文1のひとりは、部活に明け暮れ。勉強に励むタイプかと思っていたが、意外だった。が、後に財閥系の企業に入社。確かにエリート・ビジネスマンが似合うタイプ。「やっぱ、そうだよなぁ」と思った。***1年生のもうひとりはダン。灘高出身。東の横綱が開成なら、西の横綱は灘。僕のような東北の片田舎の高校とは、レベルが違う。いったいどんな人種なんだ?うわさに聞く灘高生を目の前にして、僕は興味津々。***でも当たり前のことに気づいた。灘高が歩いているので