ブログ記事164件
1979年の5月に、モーツァルトの《魔笛》のヴォーカル・スコアを全曲読みました。(そのうち半分ぐらいの曲はピアノで伴奏しました)。それからちょうど、45年がたちます。なので、一番古くから知っている作品ではあるわけです。ところが・・・ある日、《魔笛》の全曲解説のご依頼が来ました。昔の名録音の再発売に解説文を新しく書き下ろすというものです。音源を観て「しまった!」と思う。知らない一曲が入っている盤であったからです。というわけで、いろいろ調べて勉強させてもらいました。仕事で勉強させても
それは、ダントツで・・・・その1.オペレッタの解説。異稿が多く、セリフのヌケや即興的な足しがあったりしますし、資料が多くはありません。《メリー・ウィドウ》の作曲者レハールの「作品リスト」を観ると、ひきつけを起こしますよ。あまりに異版が多すぎて(!)放送でオペレッタを解説する機会がここ数年続いていて、そのたびに、胃が痛くなり、頭痛もします。でも、曲調が親しみやすいからか、そういう労苦に気付いて下さる方は殆どおられません。昨年末、ディアナ・ダムラウさんのオペレッタのアリア集の解説のご依頼
2024年2月10日(土)16時開演、いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会「和洋感応—愉悦の流域」が近づいてまいりました。公演プログラムに掲載いたします楽曲解説を4回に分けてご紹介いたします。最終回④では「三味線協奏曲」を、作曲家自らの解説を掲載いたします。◇-◇-◇-◇-◇◆藤倉大:三味線協奏曲三味線協奏曲は、三味線奏者の本條秀慈郎さんと友人の長谷川綾子さんによって個人的に共同委嘱されました。この協奏曲は、秀慈郎さんのために書かれたソロ三味線のための私の以前
2024年2月10日(土)16時開演、いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会「和洋感応—愉悦の流域」が近づいてまいりました。公演プログラムに掲載いたします楽曲解説を4回に分けてご紹介いたします。今回の③では川島素晴プログラム・アドバイザーによる3曲目『室内交響曲「タイム・カレント」』の解説を掲載いたします。◇-◇-◇-◇-◇◆一柳慧:室内交響曲「タイム・カレント」一柳慧(1933-2022)は、日本におけるアメリカ実験主義の受容、及びその独自な発展において欠くべ
2024年2月10日(土)16時開演、いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会「和洋感応—愉悦の流域」が近づいてまいりました。公演プログラムに掲載いたします楽曲解説を4回に分けてご紹介いたします。今回の②では2曲目『室内オーケストラのための「ハルシネーション」』、作曲家自らによる解説を掲載いたします。本作は、「関西出身若手作曲家委嘱プロジェクト」の第9弾として、いずみシンフォニエッタ大阪が委嘱した新作です。◇-◇-◇-◇-◇◆冷水乃栄流:室内オーケストラのための「ハ
2024年2月10日(土)16時開演、いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会「和洋感応—愉悦の流域」が近づいてまいりました。公演プログラムに掲載いたします楽曲解説を4回に分けてご紹介いたします。初回①では川島素晴プログラム・アドバイザーによる序文と1曲目「シンプル・シンフォニー」の解説を掲載いたします。◇-◇-◇-◇-◇西村朗音楽監督により「和洋感応―愉悦の流域」と銘打たれた本日の公演。前半は、西洋クラシック音楽を代表してブリテンの初期の代表作と、日本の若手作曲家を
講演会で、あるオペラ一作を詳しく紹介することになっているのですが、そのオペラを、2か月後、別の場でも詳しく紹介することになりました。「頑張らなければ」と思います。せっかくの機会なので。こういうとき、偶然の力によって「頑張ろう」と言われているような気もして、励まされます。さて、このブログを書く前に偶然目にした動画(ショート)にも励まされました。https://fb.watch/pYIPHSkHr2/人が黙々と働いて、モノがどんどん出来上がってゆく過程は、観ていて清々しくもあります。数日
藤原歌劇団《ファウスト》公演の曲順変更について告知の投稿です。1月27日(土)の《ファウスト》公演では、第4幕の曲順が演出意図により変更され、〈教会の場〉が〈ヴァランタンの死〉の後に来ていました。この変更が曲目解説者である私に知らされたのは、なんと1月25日(木)の夜20時でして、プログラムの印刷も終わっていました。時々、こういうことがありますが、今回は、東京公演のプログラムへの追加情報ということで、私の個人的なFACEBOOKやブログでも告知をさせて頂きます。ただし、2月の名古屋公演のプロ
1万2千字の曲目解説のご依頼が来て、スケジュール上どうしても厳しく、3日間家に籠って書かないといけないという羽目になりました。よく知っていると思っていた演目ですが、研究がどんどん進むから、知らなかったことも多い。でも、昨晩、1万2千百十一字で完成し、原稿も送信しました。それで・・・今回とても良く理解できたことがありました。「この演目については、ある重要なポイントがまだ分かっていない、はっきりしていないんだ」ということです。だから、最新の研究書でもこんな、曖昧な点が残る。なるほど。大
私が自分の仕事に向かう際の「最も大きなエネルギーになるもの、一番のモチヴェーション」は何か?それは、とてもシンプルな感情です。「可哀そう」なのです。1.ドニゼッティのオペラは、どんなに小さな役柄でも独自の音型を持ち、そこでキャラクターが一瞬でも際立つのに、昔からカットばかりされて、そういうところが見逃されがちで「本当にもったいない。可哀そう。気の毒」2.オペラ公演でミスした歌い手が平然としていて、そのミスのあおりを喰らった他のキャストがまるで失敗したみたいに見えるのは余りに気の毒。「可
「無伴奏チェロ・リサイタル」でしたので、ステージには譜面台と椅子しかありません。譜面台も小型でした。足元に黒い板のようなものが………近頃流行りのIpadの楽譜なのですね。譜面台にのっているのはIpadだけで、黒い板のようなものは、楽譜を移動させるスイッチなのでした。右足の部分にスイッチを置いて足で操作するのですね。無伴奏のチェロリサイタルなので、譜めくりの方がいるわけではないのですから、この機械は必需品かもしれません。チェロは私が好きな楽器です。あの深い包み込むよう
それは、P.ハジエフ:歌劇《マリア・デシスラヴァ》より〈偉大なる神よ、私の願いを聞いてください〉というソプラノ・ソロです。ParashkevHadjiev:MariaDesislava“VelikiBozhe,chuimoiatamolba”資料がなくて本当に苦労しました。死ぬかと思いました(それは嘘)。高名な音楽評論家の●●先生からも「どうやって解説したんですか?」と質問されました。「実は、たまたまですが、同じ作曲家の違うオペラの楽譜一冊を買って持っていまして・・・そ
日生劇場さんの《メデア》のプログラム内で、曲目解説のところに二か所、誤りがありました。以下、謹んで訂正させて頂きます。1.18頁の下から14行目の末尾辺り《メデ》の激烈さは=>《メデ》の激烈さは評判を呼び、*最後の言葉が、校正の際に抜け落ちました。2.19頁の上から10行目1952年=>1953年*1953年が正しいです。申し訳ありませんでした。たくさんの方からご連絡頂きまして、本当に有難うございました。9月の岡山芸術創造劇場ハレノワさんでの上演も、とても楽しみにしていま
編集者さんから急ぎの質問が届き、在宅中であったので、楽譜の写真を撮って送りました。「こんな風に、楽譜に書いてあるわけですよ。日本語では序曲ですが、イタリア語だと、この当時はSinfoniaと記すんです。この作品と同年の作は、ドイツ語圏だとウェーバーの《オイリュアンテ》になります。《オイリュアンテ》の序曲も有名ですよね。楽譜にどう書いてあるか、時間があれば自分でも探ってみて下さい」「序曲と前奏曲はどう違うんですか?」「一般的に、序曲の方が大規模です。ただ、ワーグナーだと何でも大掛かりだから、
《Aida》は《アイーダ》としか書けず、《Rinaldo》も《リナルド》ですし、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》はまさしく《DieMeistersingervonNürnberg》ですが、時々、楽譜もなく、タイトルだけが残っていて、結果「どうやって訳して良いかわからない題名」も出てきます。そういう時に役立つのが初演評。30年前は図書館でコツコツ資料を探してきましたが、最近は、インターネット検索である程度掴めるのが有難いところです。初演評には「どういう物語か」が多少なりとも記
どれほど仕事を早く上げても、上げた途端に別の仕事が来て・・・という毎日で、この不況下で有難いことですが、間違えたり忘れたりしないか心配にもなります。でも、ご依頼に対しては「出来る出来ない」を速攻でお返事しないといけないので、まずは出来るかどうかを調べないといけません。出来るかどうかの分かれ目は、まずは楽譜が手元にあるかです。今日面白かったのは、ある音源を再発売されるそうで、その音源に対する長い曲目解説のご依頼が来たことでした。楽譜は何度も使ったものが手元にあり、解説自体も2回書いているの
昨日の投稿で、「酒粕と桜の花の塩漬けで何を作ろうか」と書いた途端、何名もの方からメールをいただき、皆さん、全く同じことを言っておられました。「甘酒作って桜の花を上に載せればいいんじゃないですか?」確かに!それで朝一番で甘酒を作り、美味しく飲みました。桜の花の塩漬けを載せて。しかしながら、数時間ほど頭が痛い(!)。アルコールに如何に弱いかということが、改めて、覿面に分かりました。夜寝る前に、残りの甘酒を呑んで・・・それなら寝ちゃうからまあいいだろうということです。でも、この手作り甘酒
ヴェルディの《仮面舞踏会》は昔から解説や批評依頼がとても多く、何度も何度も書いてきました。こちらはつい先日、曲目解説を書いたばかりのSACD全曲盤。CDデッキでも聴けます。ムーティ、アーロヨ、ドミンゴ、カップッチッリ、グリスト、コッソットと大物揃い。そして、先日来、《仮面舞踏会》の批評を数件にわたって書く必要が生じています。大指揮者の演奏もあれば、若手指揮者が分けて振った演奏の批評もあり、マスター・クラスもあり・・・批評すれば解説依頼が来て、研究して解説を書けばまた批評が来ての繰り返し
先日、あるオペラの公演のプログラムに、曲目解説を寄稿しました。公演は全日程ともほぼ満席とのこと。大きな成果です。「プログラム、お陰様で好評を頂き、売り切れてしまって・・・まだまだご希望の方が多いので、いま刷り増しをやっているんです」と担当さんから口頭でお知らせ頂きました。たまに、そういうことがあります。出演者の頑張りで、演目により興味を持ってくれるお客さんの数が増えたわけですね。これからも、こういう「嬉しい誤算」が増えればと願います。★★★来る3月25日(土)日生劇場さん関連
発表会の準備、着々と進んでいます。プログラムに載せる毎年のお約束「主観だらけの曲目解説」が今日仕上がりました。生徒さんたちも頑張っています。ギリギリか?と少々心配な生徒さんがいないでもありませんが、いや、大丈夫でしょう。コロナ禍も発表会をヤキモキしながらどうにか開催してきました。まだコロナ前通りのスタイルではないし感染予防対策は行ないますが、それでも少しだけ気持ち穏やかに行えそうです。あと、約10日です。みんな、頑張ろうね!『主観だらけの曲目解説』大変な雪ですね
1.演奏批評の場合は「歌手や指揮者、オーケストラ、合唱団が好調であること」に尽きます。良いことを書きたくてこの仕事をしているわけです。2.曲目解説の場合は「良いページがきちんと演奏されること」。今度、あるオペラの解説を書くのですが、一点どうしても気になっていたことがありました。それは、「準主役のアリアの一番難しいところをカットしてしまわないか」というもの。昨日、公演の指揮者さんとフランクにお話しする機会がありました。「●●●のアリア、カットあります?」「ええっと・・・あ、全部歌って
つい先日「アーサー王伝説のオペラってありますか?」というご質問が寄せられました。WCARSの会員さんからであったので、ミニ講演会にも来られると伺い、その前に30分ほど、別の場所で詳しくお話をしました。「そのものずばりだと、セミ・オペラですがパーセルの《アーサー王》や、ショーソンのオペラ《アーサー王(アルテュス王)》などはあるんですが、決定打的な作品はまだないんですよ。ショーソンのオペラにしてもそこそこ知られているというぐらいで・・・」そして今日、帰宅して郵便物を開き、「今月の批評依頼」の文
歌劇《源氏物語》の曲目解説のご依頼があったのが、前月の下旬でした。公演日まで半月ちょっとしかないという慌ただしさです。拙宅の机の上には大型のデスクトップが2つ置いてあり、その片方にPDF化されたフルスコアを映し出し、もう片方には、資料映像(英語版上演時のもの)を流し、デスクトップの前にはモバイルPCを置いてそれで原稿を書き、机の空いたスペースにはヴォーカルスコアを置いて時々参照するーフルスコアとヴォーカルスコアで指定が違うところが幾つかあります。結構ある事例です。どちらを優先するかは指揮者
品のない話ですから、ご用心下さい。17時40分にある公演が終わり、18時30分に別の場所である公演に移動していたときのことです。移動自体に30分はかかるので、ぎりぎりで焦っていました。無事、20分前にホール到着。先に小用を済ませておこうと思い、地下の手洗いに入ると小用の便器が埋まっているので、個室に入って用を済ませ、水を流す前に便器の蓋を閉めました。その途端、携帯に電話が入ります。番号を観て、ひょっとして?と思って出ると「●●病院ですが、ご家族様の手術が明日に決まりましてその説明をさせ
お正月はとっくに終わっているのに、まだのんびりしています。でも、事務的な事をしなければならなく、どうも拍車がかかりません。先ず、15日の試演会で伴奏者に楽譜を送ったり、2月の本番の曲のワンポイント解説を、といわれ、短いのでやっと送りました。主催者はもっと大変なんですよね。集計したり、印刷にかけたり。あと楽譜の製本に追われてました。自分用、ピアノの方、先生、3部必要ですが、ある曲は長いので、コピーも大変、製本も大変です。前のがありますが、どうしても足りなくなり、曲もたくさん
来週、開催される講演会のためのレジュメを書いていました。テーマは「バスの声」に関することです。一人、特別に紹介したくなり、レジュメに入れました。米国の大物、ジェローム・ハインズです。テノールのフランコ・コレッリと仲が良かったそうです。ハインズ最晩年の名演を観ました。1992年?91年かな・・・ロングビーチでの《シモン・ボッカネグラ》のフィエスコです。70歳を超えていて、歌手たちの中で一番声が届きました。痩せた響きでも、もともとの厚みが違う。頑迷な老人役が非常に合い、気品も備わっていました
以前、マスネのあるオペラが日本初演されたとき、曲目解説のご依頼がありました。「ヴォーカル・スコアはうちにありますから、大丈夫ですよ」そう伝えると、制作の方が声を潜めてひとこと。「今回、初演版でやるんです」へ?初演版?その演目に初演版というか、異稿があるとは知りませんでした。なら、コピー譜をお借りして…という流れになりました。こういうオペラの上演の場合、楽譜出版社と上演団体の間で契約書を交わすとき、『ヴォーカル・スコアについては、●●部まで複製許可』といった類いの文言が必ず入ります。
素晴らしい実力の持ち主である、ある大歌手さんから、事務所を通じて確認が来ました。私が書いた曲目解説を事前に確認されたようで、書き直してほしいとのことでした。内容を読んで「ああ、へー。そうするんだ。立派というか流石というか」すぐに書き直してお送りしておきました。私が書いた解説は、下に掲げた楽譜によるものです。でも、先方が今回歌うのは、異稿。この下に掲げたものです。ちょっとの違いですが、歌う人には大違いです。最初に出した楽譜は、あるオペラの全曲譜。普通に売られていてすぐ買えます。下の
WCARSの会員さんと、会員さんではない私の知人の方から同時に質問が寄せられました。「ロシア語で書いているものは読めない、と仰るのに、ロシア・オペラの解説をするのはなぜですか?」それに対する答えは、ただ一つ:「それは私自身も、お訊ねしたいことです」。いろんなご依頼が毎日来ます。ロシア語の辞書を持っていて、簡単な内容は辞書を片手に調べたりもしますが、「ロシア・オペラに関するロシア語の論文を読めるほどの語学力は有していない」のです。でも、例えばコンサートで、1曲だけチャイコフスキーのアリアが
「ロシア・オペラに関する論文ってどんなのですか?」という質問がありました。ロシア語で書いてあるものは私は読めないので、自分が一番読みやすい英仏の論文になるのですが、有名ロシア・オペラには、台本の対訳も載った大きな論文集というものがあり、それを参照するといろんなことがわかってとても面白いのです。ただ、最新のものになっているかどうかだけは注意しておく必要があります。例えばこんなもの。右側は歌詞のフランス語訳。左側はキリル文字のローマ字転写です。同じ固有名詞でも、綴りが違っている理由です。左側は