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李琴峰『五つ数えれば三日月が』李琴峰さん「五つ数えれば三日月が」インタビュー日本語で執筆、透明な膜隔てるよう|好書好日李琴峰(り・ことみ)さんの『五つ数えれば三日月が』(文芸春秋)は、自身にとって初めての芥川賞候補作。結果は次点。選考会では「決してかなわない恋愛を直球勝負で描いた」と評価された。1989年、台湾生まれ。第一言語は中国語。祖父母は台...book.asahi.com中編+短編。『彼岸花が咲く島』のファンタジーな印象が強いけど、こちらは極めて自然主義に近い現代を舞台にした小
村上春樹『女のいない男たち』文春文庫『女のいない男たち』村上春樹|文庫村上春樹による最新短篇集「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」他全6篇。最高度に結晶化しためくるめく短篇集。books.bunshun.jp村上春樹の小説は読むまいと決めて29年生きてきた。だから、これまでに読んだことのある村上春樹の文章は『ティファニーで朝食を』の翻訳だけだ(それだってそこに至るまでには色々な理由があったのだけれど、たぶんここに書くべきことではない)。そう
『月の光現代中国SFアンソロジー』読んで字の如く。アンソロなので共通要素みたいなのも薄めで、とにかく現代SF。SFはインパクトだと思ってるので、以下パンチライン。「万物は循環、変化する。量子力学とエントロピーの増大からそれがわかる。これを理解できないと、宇宙の設計者がなぜ北朝鮮を創造したのか理解できない。朝鮮人はこの法則をだれよりよく把握している」「サリンジャーと朝鮮人」「幸福と不幸の順序を逆転すれば、それを正常だと思うのでしょう。しかし歴史のなかに悪が存在するとして、順序を変えた
辻村深月『盲目的な恋と友情』辻村深月『盲目的な恋と友情』|新潮社タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭www.shinchosha.co.jpあぁ、能う限りロマンチックに書くとすれば私は蘭花に会わなかった留利絵なのだろうけれど、そのような目から読むと、『盲目的な恋と友情』(は同じものだ)となる。結局全部執
吉本ばなな『哀しい予感」哀しい予感文庫「哀しい予感」のあらすじ、最新情報をKADOKAWA公式サイトより。www.kadokawa.co.jpどこか現実感のない叔母のふわふわしたところになぜか心惹かれるわたしは、そんな糸の切れた凧のような叔母が実は姉であること、わたしの今の家はわたしを引き取ってくれた家で弟とは血が繋がらないことを知る。それをきっかけに、血の繋がった父母の死の現場への不定形な関心と弟への男女の好意の二つが少しずつかさを増し、わたしの気持ちがあらぬ方へと飛んでいく。前の家族
八木沢里志『純喫茶トルンカしあわせの香り』しあわせの香り-徳間書店www.tokuma.jp『純喫茶トルンカ』の続編。基本的にこの手の喫茶店ものは来客のもたらすイベントがそのまま作品の面白さなのだけれど、その意味で120点の年上ミステリアスお姉さんが出てくる「シェード・ツリーの憂鬱」がもうそれだけで最高。早逝した幼馴染の姉の遺言で幼馴染わ守ろうと陽気に道化を続ける少年が、小器用なところが鼻について周囲にいじめられる(だから本当の器用!ではない)。モヤモヤしてる中、幼馴染の家の喫
窪美澄『夜に星を放つ』『夜に星を放つ』窪美澄|単行本人の心の揺らぎが輝きを放つかけがえのない人間関係を失って傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを真摯に問いかける短編集。books.bunshun.jp放たれてしまった星は広い夜空を漂って、美しいけれど決して手が届かない。直木賞受賞の短編集。コロナ禍で人との関係が薄まる中でその前から抱えていた姉の死を飲み込むまでの無意識の紆余曲折を描く「真夜中のアボカド」。海が大好きで親から離れて祖母の家で海を満喫しようとした
八木沢里志『純喫茶トルンカ』純喫茶トルンカ-徳間書店www.tokuma.jp強面で何やら色々な過去がありそうなマスター、看板娘をしてるその生意気な子供、穏やかそうで実は熱いところもあるバイトくん。theフィクションな喫茶店に訪れる前世の恋人や余命わずかで人生を見つめ直してるおじさん、亡くなった姉の恋人らの様々なお客たちが各エピソードの原動力に。コテコテの喫茶店もので安心感を覚える感じ、幸せ。各話オチは見え見えで、そこのわかりやすさが逆にいいというか、喫茶店で隣の客とマスターの
伊藤計劃・円城塔『屍者の帝国」「ProjectItoh」2015年劇場アニメ化公式サイトノイタミナムービー第2弾『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』2015年劇場アニメ化。イラストレーターredjuiceによる描き下ろしビジュアル発表!公式サイトにてPV第2弾公開中。project-itoh.comんー、ちょっと前2作から期待してたのと違って残念。伊藤計劃じゃなくて円城塔の作品だなと。つまり、伊藤計劃の作品の面白さはSFっぽくなさ、尖った用語や世界観より登場人物の内面に重点を置いた
伊藤計劃『ハーモニー』「ProjectItoh」2015年劇場アニメ化公式サイトノイタミナムービー第2弾『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』2015年劇場アニメ化。イラストレーターredjuiceによる描き下ろしビジュアル発表!公式サイトにてPV第2弾公開中。project-itoh.comこれも寧ろ伊藤のフォロワーを先に見てるって話なのかもしれないけれど、王道百合SFだなーと納得感が一番強い印象。つまり、ミステリアスで反社会的な短命っぽい天才少女と、そこまではいかないけれどどことな
伊藤計劃『虐殺器官』「ProjectItoh」2015年劇場アニメ化公式サイトノイタミナムービー第2弾『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』2015年劇場アニメ化。イラストレーターredjuiceによる描き下ろしビジュアル発表!project-itoh.comアメリカの特殊暗殺部隊隊員である主人公が、世界各地に内戦・虐殺を引き起こす黒幕と目される男を、時に直接対峙しながら追跡し、その虐殺の真相に迫る。敢えて逆順で語る愚を犯せば極めてPSYCHO-PASS的な話の流れで、そりゃノイタミナ
吉村萬壱『ハリガネムシ』文春文庫『ハリガネムシ』吉村萬壱|文庫無性に酷いことがしてみたくなる……禁断の受賞作愛ではない。堕落でもない。あの女からもう一つの世界を知った、それだけ。身の内に潜む「悪」を描き切った驚愕の芥川賞受賞作!books.bunshun.jp部屋に出たカマキリを戯れにつついて怒らせ、鎌を振り回すそれの頭を手慰みに指で吹き飛ばすと、腹からハリガネムシが這い出してくる。悍ましい内臓に潜む化け物はカマキリの中だけでなく、ひょんなことから部屋に居着いたソープ嬢のサチコを壊し
『シェルブールの雨傘』映画シェルブールの雨傘(1963)について映画データベース-allcinema傘屋の娘ジュヌヴィエーブと工員の青年ギイの恋が、アルジェ戦争によって引き裂かれ、互いに愛し合いながらも、別々の道を歩くまでを描いた悲恋劇。台詞というものは無く、全編、歌によってストーリーが進行していく、という歌曲形式をとっている。監督:ジャック・ドゥミキャスト:カトリーヌ・ドヌーヴwww.allcinema.netミュージカル映画の祖。なるほど確かにストーリーは薄くとも楽しめる。
町田康『きれぎれ』『きれぎれ』町田康|電子書籍books.bunshun.jpこう、やっぱりこの人の本はわざとらしいというか、その文体への拘りが内容と結びついているとしてもなお、読み手のノイズになってしまう。遺産をもらい損ねた資産家の令息が、台無しになっていく人生の中で、馬鹿にしていた友人に頭を下げ価値観そのものを擲つ過程を描く。主人公の価値観が、世界が崩壊して腐り落ちていくから、それに平仄を合わせるかのように視点は変転を繰り返し、錯乱してたかが知れた現実と釣り合いの取れない脅迫的
4月6日(水)、葵区駿府城公園横にある、110番センターとエスピーひろばに行ってきました。110番センターでは、実際に県内すべての110番通報を受けていて、走行中のパトカーの場所が、大画面でわかるようになっていました。エスピーひろばでは、モンタージュを作ったり足跡を探したりと、ゲームをしながら警察の仕事を学びました。タブレットで操作できる3DのARパトカーも出現して、面白かったです。
桐野夏生『錆びる心』文春文庫『錆びる心』桐野夏生|文庫劇作家にファンレターを送り続ける生物教師。十年間耐え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。魂の孤独を鋭くえぐる全六篇books.bunshun.jp全6話の短編集。いかにもこの人らしく、技巧的でもなければ強い思想があるわけでもない。THE大衆小説という感じの、流されるように自然に目が進む筋で、適度にワクワクしたりドキドキしたりするところも行き届いている。1本目の「虫卵の配列」はとにかくインパクト重視。失恋中の2人の女性が
『失恋文庫』【失恋文庫】製作者インタビュー配信おはらの!ライトノベル好きバーチャルYouTuberの本山らのです!コミックマーケット963日目西B-07aビッグ・ラグーンさんにて頒布されます、『失恋文庫書き下ろし失恋小説アンソロジー』について、制作の中心となられた涼暮皐先生と羽海野渉さんへインタビューを行います!あらすじも初公開!本山らのTwitt...m.youtube.com半年かけて、次は別れずに済むんじゃないかと読み返しては打ちひしがれる日々。失恋オムニバスで、最初の2編
柴田勝家『ヒト夜の永い夢』ヒト夜の永い夢-ハヤカワ・オンラインwww.hayakawa-online.co.jp1,100円商品を見る南方熊楠が粘菌で思考する人口天皇を作って、それを奪う謎の組織と暗闘を繰り広げ、歴史的な大事件の裏で互いに天皇を繰り出して戦う歴史SF。もうあらすじだけでインパクトが強くて、さすがとしか言いようがない。これだけめちゃめちゃに設定を盛っておきながら設定はそれほど重くなく、作者のSFの中でも読みやすい。南方を始め、福来友吉、江戸川乱歩など、実在の人物で進むから
野﨑まど『[映]アムリタ』[映]アムリタ新装版文庫「[映]アムリタ新装版」のあらすじ、最新情報をKADOKAWA公式サイトより。『バビロン』『HELLOWORLD』の鬼才・野崎まどデビュー作再臨!www.kadokawa.co.jp野﨑まど、実はちゃんと読んだことなかったんですよね。少し早く来た2010年代というイメージの人だけれど、このデビュー作が2009年刊行ねえと。芸大生の主人公が好意を持っている女子に誘われて映画の撮影を受けるが、その映画は学内に鳴り響く天才後輩少女の監督作
井上達夫『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください井上達夫の法哲学入門』リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください井上達夫の法哲学入門|毎日新聞出版安保法制、憲法改正、歴史問題、朝日新聞問題・・・真のリベラルは、今いかに考えるべきか。リベラリズム論の第一人者、「怒りの法哲学者」井上達夫東大教授が、右旋回する安倍政権と、欺瞞を深める胡散臭い「リベラル」の両方を、理性の力でブッタ斬る!mainichibooks.com大学時代に法学徒から度々
小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2-ハヤカワ・オンラインwww.hayakawa-online.co.jp902円商品を見る父親の手を流れる話になってよりフェミニズムSFとして王道に進んだ2冊目。逃げてきた自らのイエに誘拐されてしまったダイオードを助ける話。ダイオードに強烈な執着する少女が出てくるのはいかにも最近のハヤカワSFっぽい。現実と結びつけた話をすると、BBCで(新)タリバン政権下で学びを続けようとしてる地下女性コミュニ
小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』ツインスター・サイクロン・ランナウェイ-ハヤカワ・オンラインwww.hayakawa-online.co.jp836円商品を見るハヤカワのあらすじが完璧な一作。「人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎
逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』同志少女よ、敵を撃て-ハヤカワ・オンラインwww.hayakawa-online.co.jp2,090円商品を見るさすがに話題作、アガサクリスティー賞だからミステリかなんて後回しにしてたのは大失敗。作品としては、東側テーマの小説のテンプレートを抑えて全体に読みやすくしている分主人公セラフィマの感情に集中しやすくなっていて、メリハリが1番の主張だと思われる。猟師の子セラフィマが村を連れ出され、国家ではなく師イリーナによって女性狙撃兵として育てられるというスト
佐々木毅「マキアヴェッリと『君主論』」『マキアヴェッリと『君主論』』(佐々木毅):講談社学術文庫製品詳細講談社BOOK倶楽部小国分立し戦乱が絶え間なかったルネサンス期イタリアにあって、マキアヴェッリは権力の本質、その獲得と維持の方法、喪失の原因を追究した。政変により2度も追放の憂き目を見る数奇な運命のなかで、彼が著した『君主論』は近代政治学の嚆矢となる。本書はマキアヴェッリの主著『君主論』を全訳するとともに、その生涯をとりまく華麗な歴史群像を描写しながら思想形成の背景を明らしにし…boo
村田沙耶香『信仰』『信仰』村田沙耶香|単行本「なあ、永岡、俺と、新しくカルト始めない?」現実こそ正義。好きな言葉は「原価いくら?」の私は、カルト商法を始めようと誘われ――。信じることの危うさと切実さをめぐる8篇。books.bunshun.jpエッセイ1本を含む短編8本。表題の『信仰』は原価厨であることに象徴される「現実主義者」の永岡が、不思議な雰囲気を纏う高校同期の斉川とひょんなことから再会し、彼女が教祖を務める「ことになる」というカルトの立ち上げに触れ、「自分を騙してくれないか」
いとうせいこう『想像ラジオ』河出書房新社池澤夏樹個人編集日本文学全集想像ラジオいとうせいこう耳を澄ませば聞こえるはず―大反響を呼んだあの名作が、早くも文庫化。www.kawade.co.jp評判や受賞歴からすると期待外れというか、小説として単純につまらないという印象を受けており非常に残念。文学賞が界隈の価値観に基づいて選定されることに不思議はないが、やはり小説として最低限のレベルはあるべき。タイトルの『想像ラジオ』をOAする謎の男、高木のてっぺんに引っかかっているというのだが、
大湾秀雄『日本の人事を科学する因果推論に基づくデータ活用』UTokyoBiblioPlaza東京大学|UTokyoBiblioPlaza-大湾秀雄「日本の人事を科学する」www.u-tokyo.ac.jp採用や女性雇用(キャリア)や再雇用といった労働に関する社会スコープでの問題について、筆者が主催した企業人事担当者の勉強会の結果や他の研究の紹介を通じて、因果推論の手法を見せつつ比較的簡易に整理をしている本。意図は分かるし読み物として面白かったのだが、学部計量経済学取得程
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』わたしを離さないで-ハヤカワ・オンラインwww.hayakawa-online.co.jp1,078円商品を見る反出生主義者として、飲み込むのがとても難しい小説だった。核心部分も含むあらすじは以下の通りだ。キャシーは自身が育った全寮制の学校のような施設であるヘールシャムを回想する。極端に親の匂いを欠く子供たちが、少し「進んだ」、つまり温情主義ではあるものの必ず論理武装された形での教育を受ける施設だった。彼らの恐らく一円にもならないように見える絵を厳か
辻村深月『傲慢と善良』辻村深月『傲慢と善良』公式サイト本屋大賞『かがみの孤城』の著者が胸を張って送り出す作家生活15周年記念作品。婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な”恋愛”小説。publications.asahi.com結婚式前に女性が失踪するという、小説としてはありふれた題材だ。結婚の前であるか後であるかはおく
柚木麻子『らんたん』「らんたん 第二部」連載スタート記念◇柚木麻子さん特別インタビュー|小説丸世田谷にある恵泉女学園は、柚木麻子さんが中高生時代に通った母校だ。創立者、河井道は津田梅子のもとで学び、留学を経て女性の教育に尽力した人物。その型破りな人生を追うのが、本誌連載の「らんたん」。三部作の第一部が終了し、第二部がスタートするこのタイミングで、執筆の背景をうかがった。shosetsu-maru.com筆者の出身校である恵泉女学園の創設者である河井道を主人公とした大河小説。柚木麻