数多の京極小説の中においても、群を抜いて陰鬱な一冊だと思います。頭の先から足の裏まで徹頭徹尾陰鬱さに振り切ったサイドストーリー全十篇。『夏』の直前に襲ってきた目眩。『理』で語られていたあの事件。そしてあの『匣』、あの『檻』、あの『宴』。決して笑わぬ彼女も、視線を怖れる彼も、誰もが人知れずこの世ならぬものを見てしまっていたのです。始終滅滅としており、極めつけは最後の『川赤子』。この水気や湿気が匂い立つ感じが実にいいです。ひたすら冥く危うく、好き者に仁義を切ったような全十夜。実際のところ、京極小説の