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コロナ禍終息を願う漢詩!(結句)ようやく結句に至りました。「三伏の深憂、気平らかならず」ですが、起句、承句、転句をつないできて、まとめの結句と言えるでしょう。ここでも読み方は、2字、2字、3字が基本です。「三伏」は夏の土用を3期に分けた呼び方で厳しい暑さの期間を示します。「深憂」は文字通り深く憂えることです。最後の3字「気不平」は気持ちが平常心でいられないということ。結句の平仄は仄起こり七言絶句の形式により、「平仄平平仄仄平」(〇●〇〇●●◎)という並びになりました。
コロナ禍終息を願う漢詩!(転句)七言絶句の漢詩も第3句の転句に差し掛かりました。起句は詩の始まりで、夏の昼下がり庭の半夏生を眺めている光景でした。そして第2句の承句では起句を受けて花はいつ見てもいいなあというような和んだ気持ちを表しています。ところが第3句の転句では、これらのことが急変するのです。瞬く間に世界に流行したCOVID19、すなわち新型コロナ感染症の蔓延です。時の移り変わりと疫病に嘆き悲しんでいる状況を表現しています。
コロナ禍終息を願う漢詩!(承句)七言絶句の漢詩の第2句、すなわち承句になります。「歳時」とは歳月の移り変わり、「花際」とは花が咲いているほとりをいいます。また、「笑相迎」はわらってあいむかえると読みます。「笑う」は「咲う」に通じ、花が咲く時の微笑ましい気分とをかけた言葉となっています。結局、この承句は「思えばこのように花を愛でる光景は、ずっと前から日常のことでした。」となりましょうか。ここで平字を〇、仄字を●、平字のうち押韻の字を◎で表しています。押韻は韻を踏むともいい、下平声
仄起こり式七言絶句(標題等)コロナ禍も3年目を迎えましたが、ウイルスは変幻自在に形を変え人類を脅かしています。日本では現在第7波が収束しかけてはいますが、まだまだ油断できません。祈る思いで悪疫退散の詩を作りました。形式は仄(そく)起こりの七言絶句で、平声30韻目の中から下平声第八の「庚」(こう)の文字で押韻しています。ちなみに30韻目とは上平声15と下平声15に分類されている漢字のグループです。そして漢詩の第1,2,4句の末尾に、それぞれ「庚」のグループに所属している漢字の中から選
漢詩は平仄の組合せの妙で、詩に味わいが出る(知古庵)漢字には必ず文字に平仄が決められています。文字を読んだときのアクセントが平坦なものを平字といい、アクセントが変化するものを仄字といいます。例えば天地人という3文字では、【天】と【人】が平字で、【地】が仄字となるのです。現代の漢詩の規則は中国の唐時代に完成したもので、その時の決まりごとが千数百年守られてきたのです。漢詩はそのルールを現在まで厳格守って美的感覚を問うものですが、あくまで唐時代の中国語に対してであって、日本語に関
一目で仄字だと見破る方法とは?フクツチキに平字無し漢詩は熟語、すなわち詩語を組み合わせて作っていくのです。また、漢詩は中国語のアクセントである四声を巧みに組み合わせることで、きれいな抑揚を醸し出す工夫がされています。抑揚のない平坦な発音の平声(ひょうしょう)を基本として、アクセントに変化があるものを仄声(そくせい)といいますが、それらを上手にコラボレーションしていると考えられるのです。先に、ある文字の発音だけでは、それが平字であるか仄字であるかは分からず、正確には
前熟語と後熟語前回は仄字の「美」という文字を対象に前熟語と後熟語を考えました。今度は平字の文字を使ってみましょう。「流」という字の韻目(韻のグループ)は「尤」(ユウ)となりました。この字の前熟語と後熟語をいくつか上げてみましたのでご覧下さい。どの言葉も見慣れた文字ですね。実際、この文字も漢詩の詩語としてはよく使われると思います。
前熟語と後熟語最も使うと思われる熟語は二字の言葉です。漢詩で用いる詩語も一番多いのが二字の言葉でしょう。今、三省堂の「漢辞海」を引いているのですが、この辞典の特長はある言葉の熟語が掲載した後欄に、その文字を前後に配置した前熟語と後熟語が載せてあることです。例として「美」という文字の熟語を調べたときに、通常、その字に続く字を付けて熟語になる、いわゆる前熟語が載っている訳です。漢詩を創作する場合は、平仄を重視するところは、熟語のあとの方の字なのです。これを後熟語といいます。後熟
春懐岳峰作七言絶句の漢詩「春懐」:厳しかった冬の寒さもようやく終わり春の兆し愛でる詩を作りました読み方しゅんかいせいこうびだんそうばいあらたなりいっぺんのじょうかいじざいのひとさんけいやふうかんしょくさりほうしんうごかんとほっしてすでにはるをしょうず平起こり七言句の平絶仄と押韻この詩の韻目は上平声十一真です。韻目というのは一句、二句および四句の末尾に押韻知る際の韻のグループのことをいいます。ここでは上平声十五に分けられた韻目のうち、十一
鶴の恩返しの漢詩完成版「一天鶴鳴」一天鶴鳴(いってんかくめい)命脈旧恩如水遙(めいみゃくのきゅうおんみずのごとくはるかなり)織縫羽翼坐深宵(しょくほうのうよくしんしょうにざす)動容露顕離情切(どうようろけんしりじょうせつなるを)牽袂飛鳴雪半銷(たもとをひくひめいゆきなかばとかさんとす)漢詩昔話「一天鶴鳴」(空一面に響く鶴の声))そう言えば私「つう」は以前、家の主人に命を助けられた事があるのです。山の中で怪我をして動けないところを「与ひょう」が助け
「鶴の恩返し」の結句を作ります起承転結の最後の句を考えます。鶴の姿を見られたつうは、名残惜しいけれどこの家から去る決心をするのです。そして元の大空に帰って行くという悲しいストーリーです。始めの二字は、「惜別」(せきべつ・●●)、「愛別」(あいべつ・●●)、「牽袂」(たもとをひく・○●)が候補とし、最後の「牽袂」を選んだのです。次の二字は「天高」(てんたかく・○○)、「飛鳴」(ひめい・○○)の中から後者を採りました。三字の詩語は(ゆきなかばとかす・●●◎)の中から、
つるの恩返しから七言絶句の転句を作る!「つるの恩返し」の転句漢詩の導入部といえる起句では、命を助けて貰ったところに嫁いで過去を回想するシーンを句にしました。それを受けた承句で、深夜まで機織りして恩人の為に尽くす場面を句にしたのです。さて、転句は大きな場面転換が必要です。そこで、始めの二字を「動容」(どうよう・●○)とし、次の二字は「露顕」(ろけん・●●)としました。そして、終りの三字はいくつかの候補がありました。まず、「凄寒日」(せいかんのひ・○○●)、次に「相思
つるの恩返しから七言絶句の承句を作る!「鶴の恩返し」の承句起句の続き!起承転結の第二句目の承句を作ります。命を助けられた恩義のある与ひょうの嫁いだつうは、与ひょうのために価値ある織物を作ることにしました。織っている姿を絶対見ないように頼んで、機織り(はたおり)を続けました。実はつうは自分の羽を抜いてきれいな布を作っていたのです。もちろん、与ひょうはそんなことは露ほども知りません。以上の内容を承句に当てることにしました。承句の平仄は次のとおりです。○は平字、●は仄
鶴の恩返しの漢詩創作オペラ「夕鶴」のストーリーに基づいて漢詩を作ります。先ず第一句である起句を検討していきます。過去に命を助けられたことがある鶴は、人の姿になって恩人の与ひょうの妻となりました。それは大雪の日に傷を負って動けないところを与ひょうが見つけ、手当てをして山に返してくれたからです。起句は命を助けられたことを、つうが回想する場面としました。この漢詩は仄起こり七言絶句の公式を使います。文字の区切りは原則、二字、二字、三字で考えます。起句の公式は次のと
昔の民話「鶴の恩返し」を漢詩に……日本の民話「鶴の恩返し」を題材とした木下順二の戯曲「鶴女房」に、団伊玖磨が作曲したオペラ「夕鶴」を取り上げます。あらすじは次のとおりです。舞台は雪国の寒村の一軒家。百姓の与ひょうと妻のつうが住んでいました。つうの織る布は都で高く売れると評判でした。狡猾な運ずと惣どは、少し頭の弱い与ひょうが金儲けをしているのを不思議がり、こっそり機屋(はたや)を覗きこみ、そこに鶴の羽を見つけたのです。もしかして、つうは鶴の化身ではないかと思った運ずと惣どは与ひょう
「二字の平字」を使う場合の注意点は?二字の平字例えば、気象を表した二字の熟語は、漢詩の規則でいう平字でしょうか。仄字でしょうか。平字を○、仄字を●で示してみます。雲煙(○○)、晴雲(○○)、晩霞(●○)、夜涼(●○)この例のように、二字目が平字(○)の場合は、すべて平字の詩語に分類されるのです。以下に説明しておきます。漢詩の七言絶句の文字区切りは、二字、二字、三字となります。五言絶句の場合では、二字、三字という形になります。句の終りの三字の熟語も分解すれば、ほとんどは二
西道山の漢詩「城山」を検証(その2)七言絶句「城山」西道仙孤軍奮闘破囲還(こぐんふんとうかこみをやぶってかえる)一百里程塁壁間(いっぴゃくのりているいへきのあいだ)吾剣既折吾馬斃(わがけんはすでにおれわがうまはたおる)秋風埋骨故郷山(しゅうふうほねをうずむこきょうのやま)(訳)孤立して闘った我が軍は、漸く血路をひらき鹿児島まで辿り着いた。幾山河を越えて城山まで帰還したのだった。しかし、すでに剣は折れ、馬も斃れてしまった。もはや我が志も尽き
西道山の漢詩「城山」を検証(その3)漢詩「城山」の押韻と平仄起句の二字目「軍」は平字ですから、この詩は平起こり七言絶句の漢詩ということになります。押韻を確認してみましょう。韻目は上平声十五「刪」(サン)で、その中から「還、間、山」の字が韻字として使われているのです。押韻は起句、承句、結句の末尾に置かれています。では、平仄はどうでしょうか。各句の区切りは原則二字,二字,三字となっています。この漢詩「城山」の平仄を調べて記号を並べてみたのが、上に示したものです。
「月照墓前作」西郷南洲★「月照墓前の作」西郷南洲相約して淵に投ず後先なしあに図らんや波上再生の縁頭を回らせば十有余年の夢空しく幽明を隔てて墓前に哭す鹿児島県の英雄と言えば筆頭に上げられるのが西郷南洲こと西郷隆盛公でしょう。鹿児島藩士の西郷は名を吉之助、後に隆盛と称しました。島津公に仕え藩政に参画、総督府参謀となり、明治六年陸軍大将に任ぜられました。征韓論を唱えましたが意見が入れられず、故郷の鹿児島に帰国します。明治十年に兵を挙げて西南の役が勃発します。
押韻の確認西郷隆盛の漢詩の押韻を確認韻を踏む(押韻)個所は、第一、二、四句の最後の七文字目となるのです。第三句の転句は押韻せず、最後の文字は必ず仄字と決まっているのです。この詩では、起句の三文字「後先無し」の「先」、承句の三文字「再生の縁」の「縁」、そして結句の三文字「墓前に哭す」の「前」という文字が韻字ということになります。
西郷南洲(隆盛)の七言絶句「月照墓前作」を検証してみましょう「月照墓前作」の平仄(意訳)「月照と隆盛が二人で相約して海中に身を投じたのは、同時であって後先はなかった。しかるに自分のみ再び生き残るとは思いもよらぬことであった。振り返れば十有余年の夢となってしまった。今は只、空しくあの世とこの世を隔てている墓前で慟哭するのみである。西郷南洲の漢詩「月照墓前作」の押韻と平仄の検討この詩は起句の二字目「約」が仄字ですから、仄起こり七言絶句ということになります。押韻は起句
ノウゼンカズラの花がきれいに咲きました!それを漢詩に!綺花映碧空岳峰作綺花碧空に映ゆきかへきくうにはゆりょうしょうかようりょくいんのうちつちをこがすえんいへききゅうをあおぐようえいするせんしかぜかげをもてあそぶしつらいしゅううてんこうにかなふ平起七言絶句韻=東(中、穹、工)○○○●●○◎○●○○●●◎○●○○○●●●○●●●○◎【訳】綺麗な花が青空に映えるのうぜんかずらの花模様が緑の中で美しいコントラストを見せています。
詩が完成したら押韻と平仄のチェックを!漢詩が完成すればそれぞれの規則の当てはまっているかを検証しなければなりません。いわゆる推敲ですね。規則の間違いがないかを確認することと、併せて、詩の内容が意図したようになっているかの点検を兼ねることになります。そこで、標題「一天鶴鳴」の押韻と平仄を検討します。起句の二字目「脈」が仄字であるので、この詩は仄起こり七言絶句ということになるのです。その公式は次のとおり。○は平字、●は仄字、△▲は平仄はどちらでもいいもの、◎は押韻個所の平字で表します。
「浦島伝説」漢詩、2連作の完成版です!浦島太郎伝説の漢詩書き下し文【1】おうせきのぎょふかいへんをあゆむどうじいくたびかさいなむをあはれむほうおんきはいひとのしるなしえんらくりゅうぐうせえんをわする【2】ようやくきょうしゅさめりしょうをくむじんこうのしゃおんこきょうへかへるへんてんむきゅうしんこうをやぶるたちまちろうきょうとなりひとりほうこうす
完成した後半の浦島伝説の漢詩・押韻最も重要な規則の押韻の文字は、下平声七陽の韻目の中から選びました。・平仄二四不同は完璧でした。二六対に外れた転句は、「挟み平」の特例により二六対より優先されるのでこれも許されました。・挟み平この詩は挟み平の特例を用いた漢詩となりました。・孤平の禁七言絶句の漢詩では四字目の平字が仄字に挟まれることは許されないので、変更方法を考えました。「戻」は仄字●なので、平字の「帰」を使って、孤平の禁をクリアしたのです。・書き下し文
七言絶句の漢詩で孤平の禁を避ける変化技は?通常の転句(右)と挟み平の転句(左)仄起こり七言絶句の漢詩には特殊な変化技があるのです。それは三行目の転句の下三文字のところです。普通の転句の三字は、右のように平仄仄(○●●)なのですが、左の「破深契」のように仄平仄(●○●)の形に替えることができるのです。それを「挟み平」といい、特別なルールとして認められています。挟み平を使うと、二六対という平仄のルールが崩れてしまいます。すなわち二六対にならず二六不同になってしまいますが、
おとぎばなし浦島太郎伝説後半の漢詩の詳細な検証漢詩の詳細な検証一応、漢詩としての体裁は整いましたが、ここでさらに詳しく検証して完全な形にしたいと思います。・押韻漢詩で最も重要視される規則である押韻を調べましょう。一,二,四行目の文字を音読みすると、ショウ、キョウ、コウとなり、漢和辞典を引くと、下平声七陽の韻目です。すべて、その韻目の中の文字が用いられていることから、押韻は正しいことが確認されました。・平仄二四不同、二六対を確認します。二四不同とは各行の二
おとぎばなし「浦島太郎伝説」の後半の様子を漢詩に……おとぎ話・浦島伝説後半の漢詩ができました。太郎は遊興にも飽き、故郷が恋しくなって竜宮城に別れを告げます。しかし、年月が経ちすぎて見慣れた古里はなく、人々も見知らぬ人ばかりです。諸説ありますが、滞在3年で帰還したら300年が経過していたとか?おどろいた太郎は約束を破り玉手箱を開けるのです。すると、白煙とともに瞬時に老人となり独りさまようという悲しい結末を迎えてしまうのです。押韻や平仄の確認は省きますが、漢詩の諸規則に合っているため
おとぎばなし「浦島太郎伝説」の押韻や平仄を調べてみよう×○でたらめ漢詩→修正→仄起こり七言絶句浦島伝説の前半部分、すなわち亀を助けて竜宮城へ行くまでを漢詩にしましたが、文字の羅列だけでは漢詩とは言えないことが分かりました。左がでたらめ漢詩ですが、漢字を見た限りでは何となく意味は分かりますよね。しかし、駄目なんです。まず、この詩をみて、一句、二句、四句の末尾の文字に注目します。「有」、「受」、「年」の文字を音読みするのです。す
「浦島太郎伝説」の漢詩は何がでたらめなのでしょうか?(後半)○平仄間違い○韻目間違いこの詩の起句に注目して、二字目「遊」の平仄を調べると平字であることが分かりました。したがって、この詩は平起こり七言絶句の公式を用います。その公式に照らし合わせて平仄を検討したところ、赤丸の処の文字の平仄が違っているのです。すなわち、平字で指定された個所が仄字になり、仄字で指定された個所が平字になっているのです。次に押韻を調べてみましょう。起句、承句、結句の末尾の文字「情」、「契」、「