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朝食は、昨夜バーベキューをしたテラスでとった。日差しが目に眩しい、良い天気。小鳥のさえずりも爽やかだ。コーヒーは俺がドリップして、パンを焼いたりの料理は、風間さんとまさきがしてくれた。「美味しいわ。新鮮な空気もご馳走ね」「そうですね、青空が気持ち良いです」今日の予定は、って話になって、あの…、って切り出した。大野さんとニノさんも呼んで、皆に立ち会って頂いて、指輪の交換をしたいと思っていると相談すると、「まぁ、素敵。勿論よ」風間さんは二つ返事をくれ、ニノさんの別荘にもその場で連絡
頭上に輝く満天の星。オリオン、シリウス、あれはすばる。冬の星座を数えながら、海岸に出た。月の道は今夜は見えない。…そうだよな。そんなに頻繁に見れるものじゃない。幾つか条件が重なってやっと、しばしの間だけ見れるもの。前回はたまたまラッキーだっただけだ。俺とまさきが出会えた事だって、奇跡的な確率ものだ。長い長い時を経て、世代まで越えて…。出会っただけでなく、俺たちは恋人同士になった。まるで、ロマンチックな映画みたいじゃん。でも、雅紀があんな人気のあるエンターティナーの立場でこの決断
「翔さんの贈ったネックレスを、『映画の君』が元々いた世界に持ち帰って、今ここにいるまぁくんに継承した。…って事ですよね。でも、ここに至るまでの100年の歴史っていうのは、ねぇ?」ニノさんは大野さんと風間さんにチラッとアイコンタクトを取り、二人とも重く頷いてる。そして又、ニノさんは俺たちを見て話を続けた。「我々ジジィ達は、翔さんやまぁくんより当然長く生きてますけど、感染症然り、生活環境の悪化然り、様々な困難に人間は苦しめられてきたんです。そんな中でも人々はなんとか立ち上がって。一生懸命
「じゃぁ、オレの名前と誕生日を『雅紀さん』がそいう風にしたって事…?」まさきが不安気に目を細め、大野さんを見た。「今の時代は、名前と誕生日は、希望があれば遺伝子の提供者が決める事が出来るからな」「何で、自分と同じ名前と誕生日をオレに…」俯く横顔。頬に長いまつ毛の影を落として「ね、翔さん」「あ、はい」急にニノさんに呼ばれて、まさきから視線を移した。「翔さん、ワタシ翔さん達の事情を知らないので、話せる範囲で良いですから、教えて貰っても良いですか?」「私も、もしお嫌でなければだけど。
「…分けよっか。ね?」「うん…」とりあえず、まさきを励ますようにそう言って、俺達は粛々とケーキの切り分け作業をした。「ん、うまい!」「美味しいですね」「ほんと美味しいです」「フルーツとクリームとめちゃくちゃ合いますね」「そう?良かったわ。ありがとう」ボリューミーな見た目の割に、スポンジはシフォンケーキでふわふわ軽くって、甘すぎず、フルーツも美味しく、あっという間にみんなで平らげた。「美味しかったぁ、ご馳走様」「おいしかったね!」「ご馳走様でした」「沢山食べた~、ご馳走様
「こんばん…ケホッ、すみません煙くって。仰ぎすぎて途中で火が消えちゃったのかも」持ったトングで炭と枝の山を崩そうとすると、「ん、ちょっと見せてな。貸して」「あ、はい」おじぃちゃんは、渡した軍手をはめ、トングで墨をかき分け、枝の位置を少し変えた。「枝に水分が残ってたんじゃな。火は生きとるよ。このままあと5分くらい待てば、炭にもちゃんと火が通る」振り向いて、俺に軍手とトングを返してくれながら、優しく笑った。「そっか、水分だったのかぁ。ありがとうございます。おじぃちゃん、バーベキューと
別荘行きは、風間さんのおばぁちゃんと相談し、24日から2泊で泊まりに行く事を決めた。大勢だと楽しいよってまさきと一緒におばぁちゃんをお誘いしたら、頷いてくれて。勿論ポンも一緒に車に乗せて。映画館のおじぃちゃん達にも連絡を取ったから、当日は5人と1匹で集まる予定だ。おばぁちゃんから、別荘は管理会社さんが定期的にメンテナンスしていて、買い物等もお願いすれば揃えて置いてくれるのだと聞いて、事前に食材などを頼んでいた。そして楽しみにしていたその日を無事迎え、東京を出て予定通り、夕刻に到着した。
「ただいまぁ」マンションに戻って玄関のドアを開け、習慣で呟くと「しょちゃんおかえりぃ」って後ろに続いていたまさきが応えてくれて、「まさきもおかえりぃ」ってハグして背中をポンポンし合って、クスクス笑った。一緒に消毒を終え部屋に入った。そんなに広くないリビングなのに、ポンも、置いていた大きなケージも無くなったから、だいぶガランとして見える。「ポンちゃん…ほんとに帰っちゃったんだね…」「うん、でも明日だって変わらずにお散歩に行くし。いつでも会えるよ」「そうだよね!おばぁちゃん、
おばぁちゃんの家からマンションまで、車だとものの5分の距離だ。でも雅紀が、「虹の始まりってどうなってるのかな?」って首を傾げてて、じゃぁちょっとドライブして帰ろうって決めた。虹の橋の始まりに向かって車を走らせるって、中々ファンタジーだな、と思いつつ。「──でも、ホントに良かったの?ポンのこと。夜預かって、朝お散歩を済ませて送ってくとかさ。事情も含めておばぁちゃんに相談したら多分、快諾してくれたんじゃないかなって思うんだけど」気にかかっていた事を聞いた。「うん、…でも多分ね、もう大
朝が来て君が隣にいて。また君のいる朝が来て、日常になっていく。☆☆☆☆☆「しょちゃん、おはよ!」((˘³ˇ)ン…ムニャムニャ…「起きて!走りに行くよ!」「ンん…もうちょい…おれ昨日の夜がんばったもん…」「その昨日の夜、ふたりで腹筋割ろうって約束したじゃん!ほら、行くよ〜」「はぁい…」☆☆☆☆☆思えば初めて結ばれた次の朝から、雅紀は何かと俺の健康面を気にしてくれていて、なんでって聞いたら、返って来たのが、「だって…しょちゃんに元気で長生きして貰わないと…オレひとり残
俺も体力ある方だけど。こんなに細っそい腰をして、彼も相当な体力オバケだぞ。他人と繋がる事が初めてのその身体を、どんなに舐め回されようが、突き上げられようが、恥ずかしいポーズを取らせられようが。健気にも、全てに応えようと頑張ってくれるから…俺の飽くなき探究心と独占欲のスイッチが入ってしまい、もっともっとってギアが上がって止まらなくて。幾度も果てた末に、ようやっと正気に戻った。「ハッ、ハァッ…ハァ、ハァハァ……」荒い呼吸を肩で繰り返しながら、ガクリとまさきに覆いかぶさった。それを何
彼の背後でドアがパタンと閉じてその閉まる瞬間に、ポンが呆然としてこちらを見てるのが見えた。「あっ」「どしたの?」「ポンがこっち見てた」「開けておく?」「うーん…遊んでるって思われそうだよね」邪魔されたくないしなぁ。でもこのままだとさっきの続きで、悪い事したから閉め出した、みたいでさ。「ちょっとオヤツ上げて、ケージに入ってもらうわ」「オレも行こうか?」「ううん、寒いし、ベッド入って待ってて」「ン、わかった」ドアを開けるとポンが、『おかえり!おかえり!』ってしっぽをブンブン振
…ポンの体重は、…えーっと、お預かりが長期になってきたんで、この間動物病院で健康チェックして貰ってたんだ。ポンの奴、体重計の乗るとこがツルツルしてるのが嫌なのか、すぐ降りちゃって量らせてくれなくてさ。最終的に彼がポンを支えて一緒に乗って、量ったんだよな。そう、ポンの体重その時51キロで彼の体重が49キロ、総重量100キロジャストだったな…チーンうっ、重さを意識したら胸の圧迫が倍キツく感じる。痛さと息しづらさがエグいヤバ、身体も動かねえし、声も……「おもっ…乗っちゃダメッ、降りて
『頑張るねっ!』そう海に叫んでいた言葉通り、彼は頑張ってる始まったばかりの教師の仕事で、今夜だって本当は疲れてるんじゃないかと思うのに、「ただいま」玄関先で中に声を掛けると、「おかえりなさぁい♪」って、エプロン姿も甲斐甲斐しく、迎えに出てくれる。「疲れた?外寒かったでしょ~、お風呂にする?ご飯にする?それとも、オ・レ?」くふふふっていつもの楽しそうな笑顔に、疲れも吹っ飛ぶ。でも、毎度思うけど。「オレ」って選択肢を選んだらどうなるんだろ?明日は二人とも休みだし…それに、確認
桟橋でおじいちゃん達と別れた後、俺と彼とポンは、もう少し足を伸ばして海岸を散歩した。「転ばないように気を付けて」「うん!うひゃひゃ!つめたぁいっ」彼はとうに靴を脱ぎ捨て、裸足になってポンと波打ち際ではしゃいでいる。昨夜はあんなに怖かったのに、朝が来て、こうして世界の隅々まで光で満たされると、全ての物の形がくっきりと浮かび上がって安堵する。暗闇は、得体の知れ無さが怖いのだ。分からない物に、人は本能的に畏怖の念を抱く。急に俺の生活に飛び込んできた彼のことも、本来なら怖いはずなんだけどね
『モクテキチフキンデスモヨリノチュウシャジョウニテイシャシマスカ』「ん……ぅん、お願い」もう着いたかぁ。窓の外の流れる光を眺めていて…いつからか寝てしまった。「ん〜っ」起き上がって伸びをしてコートを手繰り寄せた。時計を見ると、23時すぎ。やがて車が停車したけど、彼もポンもまだ起きそうになく、ブランケットをかけ直した。「ねぇ、俺だけ様子見に行ってくるから、エアコンかけたままにしておいてくれる?」『ショウチイタシマシタ』「ありがとう」『オキヲツケテイッテラッシャイマセ』
僕が大好きなドラマは、遺留捜査シリーズです。今年7月に最終シリーズが始まる様で、楽しみにしています。俳優として、上川隆也は演技力があり、どんな役も器用にこなしていて、大好きな俳優の一人です。テレビドラマ「沈まぬ太陽」での演技が特に印象に残っています。「花咲舞が黙っていない」での砕けた演技も、ドラマの魅力アップに貢献していたと思います。映画俳優としては、役所広司、ドラマ俳優としては上川隆也の演技に見入ってしまいます。さて、遺留捜査のエンディングに流れる曲も魅力的な曲が選ばれており、ドラマを盛り立
「ハイ、ティッシュ」「ありがと…」ティッシュボックスから引き出してもらって、俺も一枚取って、一緒に、チーンて鼻をかんだ。久しぶりに泣きすぎて頭が重い。彼を見ると、ウサギみたく目を赤くしてボーッとしてる。彼は共感能力が高いのか?って落ち着いてから思ったけど、でも、『しょーちゃん』って呼び方やあの声の感じは、雅紀そのものだったと思えた…雅紀を思い出す度自分に言い聞かせ、諦め、そうやって何とか記憶に蓋をして閉じ込めてきて、もう一年だ。そろそろ大丈夫だろって思ってたのにな……。その実、一
「じゃ、仕事行ってきます」時間になり、身支度をしながら、リビングでポンにブラシをかけている彼に声を掛けた。「はぁい。うんっ、ほっぺ腫れなくて良かったぁ」心配で距離感がおかしくなってるのか?ズイっと近づいてきて覗き込むから、至近距離で輝く瞳と、思ってた以上に長い睫毛にドギマギしてしまう。「う...、うん。ジンジンしてたのも直後だけだったし。帰って来てからは、冷やしてくれたし。まぁ別に腫れても、マスクで隠れるしさ」「そだけど。でも良かった~。オレ、出掛ける準備やっとくね!すっごい楽
翌朝、ポンにはお留守番をしてもらって、風間さんのおばぁちゃんが入院している病院に、お見舞いに行った。彼も行きたがったから一緒に連れて来たけれど、何人もお見舞しておばぁちゃんが疲れちゃうといけないからって個室の部屋の前で待っていてもらい、俺は録画したポンの様子を見て貰いつつ、ポンを夜もゲージの外で寝かせても良いかと伺いを立てた。実はちょっと理由があって...って説明しかけた時、看護師さんと、後ろから彼もちょっと困った顔で続いて部屋に入って来たから、びっくりして、会話が止まった。「風間さん
「ヨォーし、そのまま……」一緒に竿を持ってくれてたおじいちゃんが網を受け取って魚が静かになった所をすかさず掬い上げた。「おぉ、こりゃでっかいな」懐中電灯で照らされた網の中で、大きなお魚は海水を求めて時折ピチピチと跳ねている。「すごくキレイ...桜色してる」濡れたウロコがツヤツヤ光って、とても鮮やかな色「だろ?こりゃ真鯛だな」「鯛?良かったぁ~。じゃぁこの怖いお魚は、逃がしちゃいましょうね?ね?」「まぁ鯛が釣れたから、ウツボは食わなくても良いか」「じゃ、逃がしましょ。よいしょっ
「上手く逃せないって…その、最後まで出来ないって事?」アバンチュール云々よりも、その原因を先に知りたい。「そうじゃないんだけど…。こんなんじゃないって、もっと違うって、カラダが…。カラダが憶えてるの」「それって、つまりは前の恋人との記憶がって事だよな?」忘れられないの?苦しいのは、だから?「ううん、恋人なんていない。これまでずっと」キッパリと言い切る彼。「えっ?でも身体が憶えてるって。…どーゆーこと?」訳が分からない。「…ゆめ、で。」「夢?」「1年くらい前から、同
「えー、ポンちゃんと一緒に寝ちゃダメなの?」夜も更けて、さぁ寝るぞってポンをゲージに入れると、彼は残念そうにゲージの外からポンを撫で、そう言った。「おばぁちゃん家では、夜はちゃんとケージに入れて寝かせてたんだって聞いたからさ。出来るだけ同じような環境にしてあげないと」「ン。そうだね、確かに。じゃぁさっ、一緒に寝る?」じゃぁ、出前でも取る?みたいな気軽さ。「俺は犬の代わりか?」「うんっ!」うん、て。そんなアナタ元気一杯に。「だって今冬だよ?夜中寒くなっちゃう。風邪ひいちゃうよォ…
なんでこうなった…いや、誘ったのは俺だけど!でも、彼もホイホイ着いてくるなんて。もしかしてこーゆーの慣れてる??「ねぇねぇ、コーヒー、冷めちゃうよ…?」リビングでポンと遊んでいた彼が、いつの間にかキッチンに来ていて、俺の背後から手元を覗き込んで言った。「あ、ハイハイ、ただ今」我に返り、ソーサーに載せたカップをカチャカチャさせながら、ダイニングテーブルに運んだ。そう、俺は交差点のお向かい同士で偶然再会した彼の無邪気さに、つい旧知の友に会ったかのように気が緩んで、『これから家に帰っ
久々にワインを飲みすぎた。酔い醒ましにとマンションのベランダに出て、夜空を見上げれば、一面に幾千もの星が散りばめられ、冬の冴えざえとした空気に一層鮮やかに、キラキラと瞬いている。手を伸ばせばどれかに届きそうだそんなふわふわした気持ちの今夜。今日ね、雅紀と良く似た人と出会ったよふわふわついでに、心の中で話しかけた。当然、雅紀である筈は無いのだけど。でも、こんなに嬉しいもんなんだな。あの姿が、ちゃんとこの世界に存在してるって。勿論、別人で、全然別の人生があって。めちゃくちゃ嫌な性
2019年12月23日23時50分・・・・・「ここから先の話は、翔ちゃんとオレだけ。誰にも言わないで」「なに、改まって」今度はオレが、翔ちゃんときちんと向かい合って言った。「ねぇ、オレたちさ。翔ちゃんとオレは…、20代を過ぎた頃、お互いを思う気持は実は恋心なんだって気が付いた。でも、その気持ちを『これは恋なんかじゃない、友情なんだ』って一生懸命否定して、言い聞かせて。随分苦しくって、時間も掛かったけど、お互い必死で封印したよね」「…何で今更、そんな話すんの」翔ちゃんは、
彼がポンと洗面台の方で髪を乾かしている間に、うっすら埃が積もった床にクリーナーを作動させた。朝の明るい日差しって、結構埃が目立つもんなんだね何しろ、この時間にゆっくり部屋にいるのって久しぶり。リビングから見える、ふたつのドア。ひとつは俺の部屋。もうひとつは、雅紀が使っていた部屋。そのドアは一年前、彼が最後に閉めたままだ。未だカサブタ状態なんだよなぁ。雅紀との親密だったエピソードをふと思い出してしまう事は、治りきってない傷のカサブタを剥がす事によく似ている。自分が思っているよりも
「どうぞ、上がってください。ポンはまだよ。ちょっとここで待ってようね。あ、バスルーム、あちらですので使って下さい」除菌システムが自動で動き、正常に終了したのち、ポンを残して彼を先にバスルームに案内しようとすると、「あの、ポンちゃんの足元洗ってあげますよね?良かったら、オレやりましょうか?」「えっ?」思わぬ彼の申し出に驚いてる間に、彼はニコニコと、「バスルーム、お借りしますし。ついでにポンちゃんも洗います」そう言って、ポンを抱え上げてくれ、「うわ重っ」と笑いつつ、運んでくれた。「
「んん?どしたのポン」川沿いの道に行こうとしたら、お座りして、首を振ってイヤイヤしてる。「ルート変える…?久しぶりに公園の方にでも行ってみっか」そちらの方向にちょっとリードを引っ張ってみると、立ち上がって、スムーズに歩き出した。「ま、たまには違うとこじゃないと飽きちゃうね」その広い公園は、ジョギングの人やわんちゃん連れのお散歩の人が結構いて、たまにわんちゃん同士がキャンキャン吠えてる場面にも出くわしたりする。ポンくらい大きい子は滅多にいないので、たまにすれ違うわんちゃんがじっと固まっ
2120年12月・・・・・昨夜まで降り続いた雨が上がり、朝の陽射しに照らされたテーブルは、コーヒーの入ったマグカップと、ドーナツをひとつ置いたお皿だけが載っている。「いただきます」いつものように手を合わせ、ニュースを眺めながら、もぐもぐと口に運んだ。毎日色んな出来事が起こり、日々はあっという間に後ろに過ぎ去ってゆく。雅紀が居なくなってから早一年が過ぎていた。俺は家で仕事するのをやめ、常時ミュージアムに出勤するパターンに変えていた。やる事は無限にあるもので、蔵書整理、資料補修、広報