非可逆性は、われわれ自身の無知に関する場合には、ことさら手当をほどこす術がない。というのは、同じものが存在しながら自己の実体を知ることはできないから。この不幸な状況は、いみじくも二者択一そのものではないだろうか。人は無知でありながら、同時に無知であるのを知ることはできない。現在時、いまの瞬間においては、無知であることは、単に主体の無意識状態にすぎなかった。そして、逆に、無知の意識と純粋さの理念とは、無知が純潔を失い、時を経、満了してはじめて現れる。同様にして、謙虚さと謙虚さの意識とは、一般に、相