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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。ハーモニカのあるあるネタを「かるた」で綴ったWebコンテンツ「はもにかるた」企画が、このたび無事に新たなる1年を迎えました。初年度は、私自身が考えたネタ数をのぞき、誠にありがたい事に、217点ものご投稿をいただく事ができました。ご参加いただきましたみなさま、本当にありがとうございました!!元旦より、2024年度版を「はもにかるた専用X(旧Twitter)」にpostさせていただきました。今までの投稿作品は、
91話ビギナーコーナー①ハイレベルなセッションデーは、その後もセットメンバーを変更しながら続いて行き、いつまでもお呼びの掛からなかった僕は、テーブルでジャガとの会話で盛り上がっていた。確かにこの日の目的はセッション演奏への参加ではあったものの、こういったお店での出会いなんて、リストラ続きの会社の同僚との飲み会などでは決して味わえないものだ。それは、久しぶりのわくわくとした楽しい時間だった。あまりに僕だけを褒めそやすジャガに、僕の方も負けじとテンションを上げて言葉を返した。
90話お世話役ジャガサックスを持っているという事は、この男の人もやっぱり今夜のセッションデーの参加者なのだろうか。いかにも人の良さそうな満面の笑顔が、逆に怪しい感じだ。ラガーマンのようながっしりとした体型だけれど大柄ではなく、スウェードのジャケットの腕のところが筋肉でパンパンに広がっている。顔の半分くらいを覆うカールしたヒゲは、自分のような会社員には物珍しいものだけれど、お得意先のデザイナーなどの職種をフリーランスでやっている人のような印象がある。とにかく、個性的な人と見て間違い
2023年コロナ禍で自粛生活となったのをきっかけに、いろいろな出来事を記録しようというくらいの軽いノリで書き綴ってきた『僕の自粛日誌』も、なんと『その⑪』にまでになった。一時はタイトルに“やや終わりに差し掛かった”と入れはしたものの、コロナ第9波の猛威から“また逆戻りとなった”と入れ直し、これからも自分の記録として、気楽に書き続けて行こうと思う。9月末前回の自粛日誌をブログにアップしてから数日後、予期せず嬉しい連絡があった。僕の「絵になる景色でワンフレーズ」という募集企画
89話ハイレベルなセッション③「君、どう?大丈夫?」と僕に聞いて来たギター・ボーカルの参加者は、常連さん風の振る舞いを見せる中年男性で、落ち着き払った余裕があった。メガネのふちのデザインが少々インテリ風で、格好をつけているようには見えるのだけれど、見事にビールっ腹だ。会社でも割りとよくいるタイプで、なんとなく意地が悪そうだと直感で解る。みんなで居酒屋に行き「とりあえずジョッキで生!」と全員が合わせる中、自分だけは「ビンとコップで」と言い出すようなタイプだ。もう一度、僕をチラリと見
88話ハイレベルなセッション②入店から数分、僕はこのお店のセッションがどの様にハイレベルなのかを、マスターから直々に教えてもらっていた。まず演奏される曲は、ブルースセッションと銘打っているとはいえ、実質その半分以上はジャズやファンクっぽいブルースなどであるという事。また、例えどこの店でも演奏されるような定番のブルース・ナンバーのセッションであっても、演奏するリズムやビート感を大幅にアレンジしていたり、時には演奏の途中で急に転調させたりもするのだそうだ。なんでも、マスターの話では近
87話ハイレベルなセッション①季節は巡り、年をまたいでも、バブル崩壊から依然として止まらない会社のリストラが自分の目の前まで迫って来ていた。僕の働くフロアへも、お世話になっていた上司や中堅どころまでが、次々に自主退社の挨拶をしに回って来た。同僚達の誰もが、仕事ではあまりむやみに笑わないで過ごすようになっていた。かつての私用電話や、アフターファイブの飲み会なんていうのもすっかり無くなり、ただ黙々と働く日々。いやいや参加させられていた社員旅行ですらも、今では懐かしいほどだった。
86話第三の勢力最後に呼ばれたのは「ボンさん」という50代くらいの男性で、それまでのセッションには1曲も出演していなかった人だった。その日の最高のメンバーを選んでのセッションでラストを飾るという趣旨からも、店にいる誰もが納得のいかない流れではあった。ボンさんはフラフラしながら客席をかき分け、酔った足取りでゆっくりとステージに上がると、司会の店員の男の子をからかうように、まず頭に軽くチョップを入れる。どうやら、気楽な仲のようだ。昭和を感じさせるくるりとカールした長めのボサボサ髪のやぼ
85話ゴジラ対、悪ゴジラ②仲の悪い「大常連さん」と「サングラスの彼」は共にボーカルだったので、一緒のステージでセッション演奏をする事は決してないまま、イベントは進行して行った。この店のセッションには珍しくギター・ボーカルが数人しかおらず、ボーカルの2人は常に引っぱりダコだった。ブルースは歌を中心とする音楽なので、ボーカルにこだわりを持つ2人がいるのは、誰にとっても望ましい状況だった。ブルースらしい定番ソングを歌ってもらえる回と、荒々しいロックっぽい回とを交互に味わえるとなれば、楽
84話ゴジラ対、悪ゴジラ①しばらくして彼は、キレた時には言葉より先に刃物が出ていそうな印象の妙に甲高い声で、僕に向かって話し始める。「さっき、観てたよ。良いぜ、君。なぁ?君はグッドよ、グッド!!」親指をビシッと力強く立てつつ、嬉しそうにほほえみを浮かべる。どうやらこの人は、先ほどのステージでの僕のテンホールズハーモニカの演奏が気に入り、その僕が困っているのを見かねて、助けてくれたという事のようだ。新たにからまれた訳では無いと少し安心して、改めて彼の方を見てみる。一見すれば確かに
83話初めてのBar③緩やかに流れるジャジー(ジャズっぽい)な流れを含むスローなブルースの伴奏に、僕はそっと自分のテンホールズハーモニカの甘ったるいサウンドを乗せて行った。伴奏の感じから、僕は手持ちのマイクの握りをアナログに弱めて、アコースティックな生音らしい響きに調整して行く。そんなデリケートなフィーリング変更にも当たり前について来るところが、テンホールズの(本当によくできている楽器だよな)と感じさせるところだった。自分でもうっとりするほどのこの状況の中、僕はもうこのBarでの
82話初めてのBar②セッション演奏の開始時間には、店は参加するお客でほぼ満席になっていた。当たり前のようにギターの参加者が多く、ぱっと見て10本くらいのネックがトゲの山のようにきり立っているのが見える。店に僕以外にもハーモニカの人がいたとしても、店の楽器を借りる人やボーカルなどと同じく荷物が無いように見えるため、はた目には判別がつかない。気がつけばステージの準備も済み、第一陣のセッションメンバー達のイントロ演奏が始まっていた。ライブハウスのような爆音ではなく、心地良いくらいの音量
2023年12月15日より、ホームページが一新されます。ドメインはhamonicafe.comのままですので、今まで同様にご利用いただければと思います。ホームページの管理会社やシステムなど、全体的に変わりますので、もし無具合がありましたら、今までと変わらず、「お問い合わせ」から、お気軽にご連絡をいただければと思います。オンラインレッスンの生徒さま方は、Skype、LINE等、今までのご連絡方法のままで構いません。また今までhttps://hamonicafe.jimdofree
81話初めてのBar①出会いというのは本当に不思議なものだ。路上でのハーモニカ演奏を通して「ストリートは弾き語りの人達が歌を聴かせるための場で、自分はハーモニカでのセッションだけが目的だった」という結論がハッキリと出せた直後に、なんとその場を教えてくれた謎の男性当人が現れ、また次に向かう場所を教えてくれたのだから。まるで「勇者の剣」を「ハーモニカ」に持ち替えただけで、冒険物のロールプレイングゲームの主人公ではないか。とはいえ、「はい、そうですか」とすぐにブルースセッションイ
80話心配な提案久し振りの出会い。と言ってもまだ会話をするのも2回目という程度の関係だった。会社員のようには見えないカジュアルなファッションで、年齢差や性別などの違いを一切気にしなさそうな、自由さを感じさせる口調で話し掛けて来る。敬語ではないものの敬意を込めている話し方、それでいて固っ苦しくはない不思議なものだった。人に何かの情報を伝えるのが趣味のような、なんとも表現し難い存在で、まぁ「親切な文化人」といったところだろうか。僕らの路上でのセッション演奏が一段落し、今日出会った
79話弾き語り人②気が付けば、ギターを抱えた大学生くらいの男の子が、僕の前に立ち止まっていた。音が終わる少し前から観ていたようで、僕のハーモニカ演奏を気に入ったのか、弱々しく「あのぅ、一緒にセッションしてもらえませんか~?」と声を掛けて来た。その声に僕は救われた。何に救われたかって、たった数十分間ほどで、もう自分の中からは何も出て来なそうなのが良くわかったからだ。僕は快く応じ、彼もかつて僕がしたようにこちら側に移動して来ると、慣れた調子でギターをケースから取り出し、忙しく弦
78話弾き語り人①バブル崩壊。それは当時、日本人の誰もが経験した壮絶で長きに渡る黒歴史で、相次ぐ大企業の経営破綻、連鎖する倒産、大量のリストラ。そのまま就職氷河期へと突入し、その後数十年と経済を立て直せない日々が、どこまでも続いて行く。僕が入社した年にすでにバブルは崩壊したと聞いてはいたけれど、僕の会社でその影響を肌で感じる様になるまでには、ある程度の月日が掛かった。ある日、路上で演奏する仲間マーシの会社が倒産したとロフトから聞き、次にロフトとも連絡が途絶えてしまった。しば
「ブルースハーモニカ音頭」の魅力は、なんといっても間奏の12小節ブルースの部分をハーモニカのアドリブでサッとキメるところでしょう。今回は、このブルースの部分をアドリブで吹くための「入り口」を紹介したいと思います。このブルースの部分は、今までブルースセッションなどに行き慣れた方でも、少々厄介に感じたかもしれません。それは「マイナーブルース」である点、そして「リズムが音頭」であるという点によるものです。では解説動画をご覧下さい。いかがでしたでしょうか?私は昔から「ブルースを吹
77話シャボン玉僕が路上で演奏していたマーシとロフトに知り合ってから、数回目の休日。結局、僕は電話番号などの連絡先も知らず、2人のあだ名しか知らないまま、休日に晴れていればその場所で会うというキザな関係を続けていた。現代のようにSNSなんてものは無いし、大人同士電話番号を交換し合うというのは、当時はなかなか勇気のいる事だった。ましてや路上でブルースをセッション演奏するなんて場面では、それくらいの距離が最も正しいのかもしれなかった。その日も晴れ渡り、僕が到着する頃には2人はすで
76話決まる時は②それなりに話がはずみ、その後再開したブルース演奏には少しずつコンビネーションが生まれ始めていた。だらだらと、一体何曲のブルースを演奏したのかはわからない。コンクリートの地べたに直接座り込んで演奏していたために、お尻が冷たく、痛くもあった。夕暮れ時が過ぎ、もうあたりは目をこらすほどに暗くなる頃、やや疲れたようにマーシがぽつりと言う。「さて、そろそろ、かな?ロフト」それに答えるロフトが、まだぎこちない呼び方で、僕にも尋ねる。「ああ、だね。哲ちゃんは?」僕
どんな曲でも、最初は手軽な場所から始めるのが一番です。という事で、10秒にも満たない「ワンフレーズ」から挑戦していただくYouTubeコンテンツを制作いたしました。このシリーズは私の作詞作曲したコミックソング「ブルースハーモニカ音頭」を題材にしており、YouTubeのカラオケソフトでお楽しみいただけるシリーズとなっております。まず歌の1番のラストに出て来る「今夜も響け、俺のベンディング」という部分のハーモニカのワンフレーズからお試し下さい。解説は、久しぶりの登場、ブルースハーモニカ奏
75話決まる時は①次に電車を降りたのは、かつて仕事や何かで数回ほど来た事のある駅だった。そこが最近は音楽スポットになっていたなんてまるで知らなかったし、こうして自分がこれからの出会いを前に、ドキドキと胸を高鳴らせる場所になるなんて想像もできなかった。駅前にはマクドナルドやケンタッキーがあり、本屋やビデオ屋、レコード屋にラーメン屋も揃っていた。学生や若者には使い勝手が良い街で、徒歩数分ほどでさまざまな路線に乗り継げるアクセスの良さから、深夜までやっている居酒屋が数件建ち並んでいた。
74話妖精クリオネ②さっきまでの人だかりは消え、僕はクリオネがタバコを吸うのを見ながら、テンホールズハーモニカを一旦ケースに戻した。といっても戻すだけで、しまう訳ではない。彼のギタースタイルが解った今、他に使う可能性の高そうなハーモニカのKeyが揃っているのかを確認し、取り出しやすいようにバッグの上の方に出して、次の演奏の準備をしておいたのだ。クリオネはタバコを深々と吸い、ため息混じりに時間をかけて吐き出す。それは太極拳のようなゆっくりとした動きで、ギターを弾いている時のバタバ
73話妖精クリオネ①迎えた翌週末、前週に続いてののどかな晴天の中、僕は教えてもらった初めての駅に降り立ち、ある人物を探す事になった。その駅周辺は、さほど賑わいのない小さな街ながら、若い人ばかりが行き交い全体が爽やかさに溢れていた。学生やカップルの街、そんな印象を持つような小さな古着屋や雑貨店などがどこまでも連なり、オシャレで生活感の無い様子から、まるで映画か何かの舞台セットのような街並みでもあった。僕は先週出会った男性に教えてもらったギタリストの特徴を思い出し、相手を探し始め
ここで書くのは、私の地元にある「とある飲食店」についての事だ。なぜ「とある」と、半ば隠すように書くのかというと、私には隠れ家的な魅力のある店なので、実のところ人には知らせたくはないのだ。それでいて、こうして書き連ねようとしているというのもおかしな話なのだけれど。それはコロナの第9波がピークを超えてしばらく経った頃だった。コロナ禍になってからというもの、僕とかみさんは人一倍感染防止に積極的な方だった。2人共が自宅で仕事をしているために、徹底した対策を出来たのが大きいのだけれど、いつまで
2023年2月よりスタートした、スマホで撮影する「ハーモニカのワンフレーズ動画」による投稿企画「hamonicafe_one(ハモニカフェ・ワン)」は、11月より、動画の直接投稿参加から、ハッシュタグをつけて各自でpost(旧Tweet)していただく参加方式へと変わりました。運営の私広瀬が、ハッシュタグを確認し次第、専用アカウントへrepost(旧RT)させて頂きます。今までご参加頂いた動画作品も専用アカウントに残りますし、今後もrepostによって再アップをさせていただきたいと思います
72話謎の男性大音量のバンドゾーンが一段落し、後ろにかすかに聴こえるくらいの距離まで離れる頃、自動販売機があったので、僕は気分直しに飲み物を買おうと寄ってみた。ぼんやりと飲み物を選んでいる時、誰かが後ろから僕に声を掛けて来た。「君さ、さっきは大変だったよね」振り返ると中年の男性がいた。どうやらさっきのバンドの演奏を聴いていた観客のひとりのようで、何か話をしたいのか、場所を離れる僕の後をわざわざついて来たようだった。その男性は眉間にシワを寄せながら、僕に同情をするかのように話し
71話道端の宇宙人③僕をバンド側に紹介してくれたありがたい存在の宇宙人だったけれど、その状況は突如として一変する。僕のテンホールズハーモニカを見るなり、今まで以上にすごいテンションでまくしたてるようにしゃべり始めたのだ。「すごいじゃん、すごいじゃん、すごいじゃん!!ハーモニカ、ハーモニカ!!小っちゃぁ~い~。貸して、貸してぇ~」彼女は僕の手からハーモニカをひったくると、空にかざしたり、飛行機のように宙で動かしてみたりと、まるで小さな子供がするような大騒ぎを始める。その姿は少々異様
70話道端の宇宙人②彼女はこちらの返事も聞かず、話し続けた。「なんかさ、社会とか、全然ダメだし。普通の人とかも、話し合わないし。アタシ、宇宙人だからさ。お兄さん、何星人?」答えるまでもないけれど、もちろん僕は地球人だ。それにしても全くついてない、まさかこんなおかしな人に関わる事になろうとは。音楽の演奏仲間を作るどころか、こんな未知との遭遇をする事になるとは想像だにしていなかった。僕は昔からこういう事がとても多い。子供の頃も、みんなで野犬に追われながら四方に散っても、必ず犬は僕の
69話道端の宇宙人①翌日は見事な晴天だった。僕は午前中に洗濯などの雑多な事を手早く済ませると、久しく着ていなかったミュージシャンっぽく見えそうな格好に、いくつものKeyのテンホールズハーモニカの入った布バックを小脇に抱え、午後にはいつもとは違う電車に揺られていた。目指したのは昨夜テレビ放送で紹介されていた弾き語りスポットのひとつだった。都合よく会社の寮の最寄り駅からそれほど離れていない駅にあり、それまでは特に意識した事などない場所だった。駅前の商店街から続くその大通りは、テレ