元禄期は、武家と商人の経済的地位の逆転が表面化した重要な画期であった。幕府は貨幣改鋳による莫大な貨幣発行益によって、ひとまず財政危機を脱したが、貨幣発行権を持たない諸大名は商人の前に膝を屈して、返す目途の立たない借金を申し入れる他ない苦境に立たされたのである。これは武家を頂点とする封建的支配体制の重大な危機であった。本来、武家は絶対的な支配力をもって領地・領民に君臨する君主であり、最大の富を有する者であった筈なのに、天下統一後100年を経ずして商人に経済の主導権を奪われるに至ったのだ。なぜそんな