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※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。「先輩、やりましたね!自分のことのように嬉しいです。本当に感無量です。」そう言うと、水原は涙を拭った。「水原君、ありがとな。ずーと、心配してくれて。やっと、乗り越えることができたよ。」「先輩、お祝いの品になるか分かりませんが、用意してきました。」「えっ、名にかなあ。」水原は、バックからノートパソコンを取り出し、デスクトップのアイコンをクリックした。「先輩、これです。」「これは、将棋検討ソフト水蓮だよねえ?」「そうです。ま
第74期王将戦7番勝負展望12日開幕のALSOK杯第74期王将戦で永瀬拓矢九段の挑戦を受ける藤井王将は、今年の戦い方を「2手目△8四歩にこだわりがあるわけではない。自分的に面白いと思ったら別の手にチャレンジしたい」と注目発言をしました。デビュー以来8年間、「2手目84歩」はいわば「藤井定跡と言えるものです。もしかすると、角道を開ける手が見られるかもしれません。正に大注目の七番勝負です。七番勝負日程永瀬九段の王将挑戦は4期ぶり2回目。藤井七冠が王将を奪取する前のことで、二日制七番
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。宴会の片付けが終わり、嵐のような時間が過ぎ去ったカウンターに、雲母と凛子は並んで座っていた。疲れた顔の凛子を覗き込みながら、雲母が囁いた。「凜ちゃん、旅行に行かないか?」「えっ、行く!行く!行く~。」「ははは、どこか希望の場所があるかい?」「岳ちゃんと一緒なら、どこでもいい。」そう言うと、凛子は雲母の肩にそっと頭を傾けた。雲母は、凛子の肩を優しく引き寄せ、二人だけの一時に酔いしれていた。凛子が呟いた。「나는너를진심으로
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。店には、多くの棋士仲間が集まっていた。決して広いとは言えない店内に、よくぞまあこれだけ集まったものだ。棋士仲間の一人が興奮気味に言った。「今日は、テレビ取材と聞いていましたので、きっと、お二人ともお見えになると思っていました。」「今日は、雲母さんのお祝いに、みんなで押しかけてきました。」「雲母さん、おめでとうございます!」その言葉を合図に、店内は再び歓声に包まれた。この光景に、中根会長と雲母はぽかーんと口を開けたままであった
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。将棋検討ソフト「スーパー水蓮」インタビューが始まり、十年間の苦悩や最終局への思いなどが掘り下げられていった。約二時間というインタビューが終わり、ディレクターの田中から、放送に関する話があった。「雲母さん、本日はありがとうございました。」「こちらこそ、ありがとうございました。」「このインタビューは、特番で使わせていただきます。」「特番?」「はい、三十分枠での特別番組です。」「えっ、放送されるのですか?」「はい、超人気番組
藤井七冠勝利!!~第32期銀河戦決勝トーナメント2回戦8月9日に行われた第32期銀河戦の決勝トーナメント2回戦、藤井七冠対広瀬九段の対局が配信されました。結果は、160手までで後手の藤井七冠が勝利しました。図は、160手目、藤井七冠が88角成とした局面です。この手を見た広瀬九段が投了しました。投了図以降は、即詰みです。例えば、①▲77銀打~△86飛▲同銀直△65飛打▲76玉△67飛成▲85玉△73桂打▲74玉△83銀打まで②▲7七角打~△6五飛打▲同玉
第74期王将戦展望~挑戦者に永瀬九段藤井聡太王将への挑戦権を争うALSOK杯第74期王将戦リーグのプレーオフが25日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、永瀬拓矢九段が西田拓也五段に118手で勝って4期ぶり2回目の挑戦権を獲得しました。藤井七冠とタイトル戦で顔を合わせるのは、22年6~7月の棋聖戦、23年8~10月と24年9月の王座戦に続いて4回目となります。また、藤井七冠と2日制のタイトル戦で戦うのは初めてです。七番勝負日程永瀬九段は、日常では、研究パートナーでもあ
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。将棋検討ソフト「スーパー水蓮」雲母は、取材を受けるために会館の応接室にいた。隣には、師匠でもある中根会長が座っていた。「雲母君、今日の取材はTBC放送だよ。」「えっ、テレビ局なんですか!」「うん、放送局の社長が将棋の大フアンでね。連盟もお世話になっているんだよ。名人戦のスポンサーでもあるんだ。そういうことで、断れなくてねえ。すまん、付き合ってくれよ。」「そうでしたか。承知しました。」程なくして、ドアがノックされて、会館の
第37期竜王戦七番勝負第4局速報藤井聡太竜王が佐々木勇気八段の挑戦を受ける、第37期竜王戦7番勝負第4局が15日、大阪府茨木市の文化・子育て複合施設「おにクル」で行われています。現在の形勢は、先手の佐々木八段がやや有利な状況です。時間状況等17:5017:52△45銀17:58後手は、このまま封じ手でしょう。候補手としては、①98香成この一手かと思いますが。18:07封じ手の意思表示をした藤井竜王です。現時点での形勢は、先手が大き
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。レースのカーテンからこぼれる微かな光に促され、雲母はゆっくりと体を起こした。昨夜の記憶が蘇り、部屋を見渡した。しかし、そこには凛子の姿はなかった。テーブルの上に、置き手紙があった。(岳ちゃん、おはよう。よく眠れたかしら。昨夜は、膝枕をした途端に寝落ちしたのよ。よほど疲れていたのね。でも、とても嬉しかった。岳ちゃんがこの手紙を読んでいる頃は、私は飛行機の中だと思うわ。仕事で北海道へ。鍵は、ポストの中に入れておいてね。じゃあ、また
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。長いキスだった。二人の思いを確かめるための時間でもあった。唇が離れた時、凛子が言った。「さあ、飲み直しましょ。岳ちゃん。」「うん。飲もう。」「どう、このウイスキーの味は?」「うーん。凄くいいねえ。最高だよ。何という銘柄かな?」「これは、マッカラン。素敵な味でしょ?」「うん。凄く美味いねえ。」「今日のために用意してたのよ。」「そうかあ。ありがとう。」「疲れたでしょ。今日は朝から大変だったから。」「うん、疲れた。でも、こ
第37期竜王戦七番勝負第3局2日目速報藤井聡太竜王が佐々木勇気八段の挑戦を受ける、第37期竜王戦7番勝負第3局が25日、京都市の世界遺産「総本山仁和寺」で始まりました。ここまでは、一勝一敗。午前9時、立会人の福崎文吾九段が定刻になったことを告げると、お互いに深々と一礼。先手の藤井竜王はいつものようにお茶を一口飲み、心を落ち着けてから、飛車先の歩を突きました。佐々木八段は、14手目に飛車を振り、向かい飛車の戦型に。めったに飛車を振らない佐々木八段ですが、大一番で研究手を繰り出
第37期竜王戦七番勝負第3局速報藤井聡太竜王が佐々木勇気八段の挑戦を受ける、第37期竜王戦7番勝負第3局が25日、京都市の世界遺産「総本山仁和寺」で始まりました。ここまでは、一勝一敗。午前9時、立会人の福崎文吾九段が定刻になったことを告げると、お互いに深々と一礼。先手の藤井竜王はいつものようにお茶を一口飲み、心を落ち着けてから、飛車先の歩を突きました。佐々木八段は、14手目に飛車を振り、向かい飛車の戦型に。めったに飛車を振らない佐々木八段ですが、大一番で研究手を繰り出しまし
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。タクシーで約20分。今日の対局の話を楽しげに話すうちに、凛子のマンションに着いた。「さあ、着いたわよ。早く上がりましょう!」「凜ちゃんのマンションはでかいなあ!」「7階の007号。」「へえ、いい番号だねえ。」「そうでしょ。ジェームズ・ボンドよぉ~。」「うん、最高に洒落てる!」二人はエレベーターに乗り込み、007号室へと向かった。「さあ、どうぞ。私のお城へ。本邦初公開!」「おお~いい部屋だねえ。へえ、和室があるのか
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。「いやあ~まいったねえ。中根先生には。ははは。」「そうねえ。びっくりしちゃったわ。」「先生も相当嬉しかったんだなあ。」「まあ、こんなに御代を・・・。」テーブルに置かれた封筒の中身を確認した凛子が呟いた。「あ、手紙が入ってる。読むわね。」(雲母君と凛子君へ。今日は私にとって最高の日だった。こんなに心から嬉しいと感じたのは久しぶりのことだよ。弟子が思い悩む日々をずっと傍で見てきたから、自分のことのような気持ちがしているよ。凛
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。三人に酔いが回り始めた時だった。中根会長が楽しそうに語りかけた。「ところでさあ、君たちはいつ結婚するんだい?」「えっ、先生、誰か結婚するんですかあ?」理解ができていない雲母が聞き直した。「だからあ、君と凛子君だよぉ。」「僕と凜ちゃんですかあ~」「先生、何をおっしゃるの!」凛子が顔を赤らめて言った。「だってさあ、凛子君の顔には雲母君が大好きと書いているし、雲母君もぞっこんだしなあ。ははは・・・」「先生・・・」二人は、
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。凛子の店の前でタクシーを降りた雲母は、暖簾がしまわれていることに気づいた。「あれ、どうしたのだろう。今日は空いているはずだけどなあ。」そう呟きながら、明かりのついた店の様子をうかがうように、引き戸を開けた。すると、凛子が泣きながら飛びついてきた。「岳ちゃん、おめでとう。」「凜ちゃん・・・。どうして結果を・・・。」「中根先生が、対局が終わって直ぐに連絡をくださったの。」「そうかあ。心配かけたけど、乗り越えることができたよ。
第72期王座戦五番勝負第1局速報藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑戦する第72期王座戦五番勝負第1局が本日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われます。1年前も同じ場所で同じタイトル戦の会見を行っていた両者にとって、運命の再戦となります。。八冠獲得から1年、藤井は同学年の伊藤匠七段に叡王のタイトルを取られ、七冠に後退。一方の永瀬九段は1年ぶりにようやくタイトルへの挑戦権を得て、ひのき舞台に戻って来ました。どのような五番勝負となるのか、大注目の一戦です。時間状況
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。対局室では、報道陣が詰めかけ、インタビューが始まろうとしていた。正に、タイトル戦のようだった。それだけ、この一局が注目を集めていた証拠だろう。「雲母四段、今日の勝利で、引退を回避することができました。今のお気持ちをお聞かせください。」「一番の気持ちは、今日の厳しい将棋を何とか勝つことができたという安堵感というか・・・。まだ実感はわいてこないです。」「今回の勝利で、ランキングEクラスに昇級しました。そのことも含めて、ご感想をお願い
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。時刻は午後九時になろうとしていた。記録係の声がまた響いた。「羽柴九段、残り二分です。」その言葉に背中を押されたように、運命の一手が指された。その手は、同飛。この瞬間、控え室では悲鳴に似た声が響いた。「ええー!」「同飛かあ。羽柴先生は、読み切れていない!」「あとは、雲母さんが詰み手順に気づいているかどうかだ!」「三十手を超える詰み手順に、雲母さんが気づいているだろうか?」「正解は一つしかない。」「一手間違えば、逆転だから
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。羽柴九段は、この手を見て顔色が変わった。そして、脇息にもたれたまま長考に入った。時刻は午後六時。夕食休憩の時刻となったが、羽柴九段の長考は二時間を超えて続いていた。雲母は先に退出した。その後、五分ほどして羽柴九段も退出した。夕食休憩が終わり、羽柴九段が漸く着手した。その手は、検討ソフトが示す最善手であった。雲母は、予定通りとばかりに、ノータイムで二の矢を放った。この後、十数手が指され、重大な局面を迎えようとしていた。控え室では、い
第65期王位戦七番勝負第3局を振り返る藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する第65期王位戦七番勝負の第3局が30、31の両日、徳島市で指され、111手で藤井王位が勝ち、対戦成績を2勝1敗としました。角換わりの将棋となり、1日目の序盤、先手番の藤井王位が31手目に3時間10分の大長考をする場面がありました。上図は、190分で指した「同歩」の局面です。後手からの仕掛けは、AIソフトも示した最善手でした。序盤での大長考は珍しくはないのですが、190分というのは初めてではないでしょうか。恐ら
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。昼食休憩まであと三十分。局面は膠着状態で、互いが仕掛けのタイミングを推し量っていた。雲母は、玉の堅さを頼りに、仕掛ける決断をした。念入りに手順を確かめるために、このまま昼食休憩に入ることを考えていた。十二時、記録係が昼食休憩の時刻であることを告げた。羽柴九段が先に立ち上がり、対局室を出て行った。雲母は、数分盤面を見つめた後、対局室を後にした。雲母の勝負メシは「カツ丼御膳」。控え室で一人で食べるのは味気ないことだが、この日ばか
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。対局場へと向かう雲母の姿に、すれ違う棋士仲間が声をかけた。「雲母さん、気合い十分ですね。頑張ってくださいよ。」「ええ、ありがとうございます。頑張ります。」「絶対に上がってきてください。待ってます!」その言葉に、深く頷く雲母。すると、札幌対局で一緒だった井ノ瀬九段が駆け寄ってきた。「雲母さん、先日はご苦労様でした。今日は大一番ですね。難敵ですが、健闘を祈ってます。」「先生、ありがとうございます。力一杯ぶつかってきます。」「
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。運命の大一番の日の朝、雲母は東部会館近くのホテルのロビーにいた。何故か、緊張感もさほど感じることなく、昨夜はぐっすりと睡眠を取ることができた。ほろ苦いコーヒーを飲みながら、対局開始時間までをゆったりと過ごしていた。すると、水原連が声をかけてきた。「雲母先輩!おはようございます。」「おおっ、水原君、奇遇だねえ。」「ですねえ。私も先輩を見かけるとは思いませんでしたよ。」「このホテルに泊まっていたのかい?」「そうなんですよ。昨日こ
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。翌日、北海道から帰京した雲母は、凛子の店に直行した。「凜ちゃん、ただいま。」「岳ちゃん、どうだった北海道は。」「うん、まあ、いい刺激にはなったかなあ。」「そう、臥龍岡名人からは嫌みなことを言われなかったの?」「それはもう、しっかり言われたよ~。」「やっぱりねえ。」「でもね。折角のチャンスだから、しっかり這い上がって来い、って言ったよ。」「へえ、たまにはいいことも言うのねえ~。」「でも、どうせ直ぐに落ちるだろうけどな、
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。翌日、いよいよ対局が始まった。ここまでの成績は、臥龍岡名人の三連勝。ストレートの防衛も大いに可能性が高かった。本局は名人の後手番。先手の注文をどう受け止めるかというものであった。対局が始まり、臥龍岡の姿を見た雲母は、「臥龍岡はまるで別人だなあ。勝負に拘るオーラが凄い。」と感じたのだった。夕刻、封じ手の局面だったが、あっさりと名人が封じる意思表示をした。局面は、名人の指しやすいものだった。雲母は、名人の防衛だろうと確信していた。翌日、封
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。二日後、雲母は会長の中根九段と、対局場となるホテルのロビーにいた。そこへ、両立会人と臥龍岡名人、挑戦者の橋爪棋将が現れた。「改めて紹介することはないと思いますが、今回、急遽記録係を務めることになった雲母君です。」中根九段が、関係者に紹介した。「雲母です。よろしくお願いします。」「雲母さん、急な依頼で恐縮です。こちらこそ、よろしくお願いします。」温厚な橋爪棋将が言った。臥龍岡名人は、無言のまま軽く会釈をしただけだった。「
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。二日後、師匠の中根九段から連絡が入った。次の対局の準備をしていた雲母は、何事かと電話に出た。「雲母君、実は頼みがあるんだ。君にしか頼める人がいなくてねえ。」「何でしょう。私ができることならば、何でもお手伝いします。」「そう言ってくれると助かるよ。今度の名人戦第四局なんだけど、記録係の子が、急病になってねえ。君に頼みたいんだよ。」「名人戦の記録係ですか・・・」「急なんだが、何とか頼むよ。」「承知しました。任せてください。」
※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。雲母は、凛子の店の前に立った。しかし、何となく入るには気が進まなかったが、意を決して、暖簾をくぐった。「岳ちゃん!ダメだったの・・・その顔つきからすると・・・。」「白星だよ・・・。」「よかったあ。ダメだったのかと思ったわ。勝ったのに、まるで敗者のような顔・・・。何かあったの?」雲母は、ことの顛末を詳しく凛子に話した。そして、深いため息をついた。「そうだったの・・・。」凛子は、雲母の複雑な心境が、同じ勝負師として深く理