元来、天狗界なるものは、地球創生の当初から存在したといふやうなものではなく、その歴史は比較的新しいもので、神武天皇御宇(ぎょう)二年に入山し、修行の結果奇術を得て身に翼さへ生ずるに至った元筑紫国の産(うまれ)の三大人が、天之日鷲命の命をうけて初めてその界を開かれたものである。(それ以前に存在した所謂(いわゆる)山人(さんじん)、天狗や愚賓(ぐひん)に相当する霊物が、漸次(ぜんじ)天狗界に編入されて此界(しかい)の指揮統制に服するやうになったことは勿論である。一口に天狗界といっても、その境界は極め