〔4〕泰澄は、賀州の人なり。世に越[こし]の小大徳[こだいとく]と謂ふ。神験多端なり。万里の地といへども、一旦にして到り、翼なくして飛びつ。白山の聖跡を顕して、兼てその賦を作れり。今に世に伝へたり。吉野山に到りて、一言主の縛[ゆはひ]を解かむと欲ひて、試みに苦[ねむごろ]に加持するに、三匝[めぐり]して已に解けぬ。暗[そら]に声ありて叱[いさ]ひ、繋ぎ縛[ゆ]ふること元のごとし。また諸の神社に向ひて、その本覚を問へり。稲荷[いなり]の社にして数日念誦するに、夢に一の女あり、帳[とばり]の中より出