蝉の声が聞きたいなあと思う時がある。夜は虫の音で寝たいと思う。窓を開けて澄んだ夏の夜空に映えた月と虫の合唱は、一つの短編小説みたいに思える。オムニバスの夜なんてのは夏好きの人なら理解に容易いことでしょうね、想像するだけで少し体がウズウズしてきます。ベッド際でなんもせずにただ耳と目を空に任せて、虫の声を肴にぬるくなったビール、つまみはいらない。ぼんやり物思いに更けながら、月の灯りでやわらかく照らされた薄雲の周回を見守るだけで、あ、あと扇風機が遠くで首振っといてくれればもう、それは何とも言えない悦び