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測量士:Kが、雪深い村に到着したのは夜遅くだった。ヴェストヴェスト伯爵の城に雇われ、やって来たKだったが、旅館「橋屋」に空いている部屋はなく、主人の好意で食堂に泊めてもらうことになり、暖炉のそばで横になったKは、城の執事の息子:シュヴァルツァーに起こされ、村は城の所有であり伯爵の許可なく泊まることは許されないと告げられた。とりあえず城には電話で確認が取れたものの、村人たちからは好奇の目を向けられる。やがて見知らぬ二人の助手:アルトゥルとイェレミーアスが派遣され、メッセンジャー:バ
⠀「源氏物語2」角田光代訳紅葉賀から花宴・葵・賢木・花散里・須磨・明石まで紫式部が石山寺に参籠中、琵琶湖の湖面に映える十五夜の名月を目にし、『今宵は十五夜なりけり』と『須磨』の巻から源氏物語を起筆した…という伝説があるらしく、「須磨」をしっかりと読んでみたが、その説はちょっと無理があるような気がする。「あさきゆめみし」(大和和紀)では明石の入道が非常に良かったので「明石」を特に楽しみに読んだ。雷鳴の轟く須磨から明石の風景描写が味わい深く素晴らしい。源氏君は花から花へ飛び回る蝶の
戦争の始まる何か月か前に十二歳だった僕は、カルメンという女の子にラブレターを渡した。このことがきっかけとなり、父は僕に学校を辞めさせた。それからアンリ四世校に通うまでの三年間、家でひとりで勉強した。アンリ四世校に通うようになって、両親の知り合いのグランジエ夫妻の娘:マルトと出会った。僕は、彼女以外の誰に対しても愛情を注ぐことができなくなった。しかし、彼女には婚約者:ジャックがいた。学校をさぼって、結婚式を控えた彼女の買い物に付き合い、家具を一緒に選んでやった。やがて、彼女の新居を
文明ゆえに人間は、仮に残忍さが軽減されたとしても、その代り、以前にも増していっそう、質が悪く忌まわしい残忍さを身につけたと言えよう。以前の人間は、大量殺戮の内に正義を見ており、良心の呵責なしに当然殺してしかるべき相手を殺していた。ところが今の我々は、大量殺戮は忌まわしい行為である、と見なしていながら、そのくせ以前にも増して大規模にこの忌まわしい行為を営んでいるのだ。どちらのほうが質が悪いか?あんた方に自分で判断してもらいたい。時空を超えて突き刺さる
雪合戦で、学校の花形:ダルジェロスの投げた球を胸に受けたポールは、血をはいて倒れた。助けを呼びに行った友人:ジェラールが、雪の球に石が入っていたと教頭に証言するが、ダルジェロスを崇拝するポールは、否定する。ジェラールは、ポールを家まで送っていくが、病気の母を看病する姉:エリザベートに罵られ……。正直なところ、これは、ちょっと。。。もっと若い時に読むべきだったかなと。第1部の子供時代はともかく、第2部では、大人になっていないといけないはずなのに、子
古い家を売り、引っ越しに伴う家財道具の整理のため二十年ぶりに故郷へ帰った僕は、幼馴染の閏土(ルントウ)と再会した。大笊を仕掛けて鳥を捕まえ、夏には海で貝殻を集め、月夜にはスイカ畑の番をする閏土は、幼い僕の憧れだった。久しぶりに見た彼だったが、一目で閏土だとわかった。しかし、「旦那様!……」と声を掛けられた僕は……。「故郷」子どもの頃は気づきもしなかった互いの貧富の差を、大人になった閏土の呼びかけで初めて認識するお坊ちゃまの僕。憧れのまなざしで見ていた少年の卑屈とも思
⠀⠀「変身/掟の前で他2編」カフカ/丘沢静也訳中学生の時に新潮文庫で「変身」を読んだ時は、単純に、不条理小説カッコいい、だった。2022年4月に「100分de名著」で取り上げられ、もう一度読んでみようと新訳を積読にしていたものをようやく再読。何だこれは。こんなに面白かったとは。不覚だった。目覚めたら何故か虫に変わっていたザムザ・グレーゴルの有名すぎる物語だが、「虫=甲虫類」ではなく、ドイツ語ではUngezieferは、例えばカラスやネズミなども含む、有害で小さな生物全般で
ドストエフスキー著/亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫、全5巻)を読了しました。最初に手に取ったのが4年くらい前で、その時は2巻の途中くらいで挫折し、去年の夏くらいからまた読み始めて、先日ようやく最終ページを捲るに至りました。長かった…。以下、直接的な表現は避けますが、雑感をつらつら書き残しますので、ネタバレを気にされる方はお気を付けください。……………………………………………………………感想としては、凄まじいパワーに満ちた作品で、読了感が半端なかったです。さすがロシア
一九四*年、アルジェリア沿岸の町:オランで、それは起こった。医師:ベルナール・リューは、自宅の診察室を出て一匹のネズミの死骸につまずいた。その日を皮切りに、ありとあらゆる場所からネズミたちの死骸が人間たちの目の前に現れ、それは日ごとに増え続けた。やがて、それがぱたりとなくなると、今度は人間たちが、リンパ節を腫らして亡くなった。瞬く間に遺体は増え、埋葬は困難を極め、突然出現した感染症:ペストのため、町は封鎖された。新訳で再読しました。例によって例のごとく、内容忘
≪デイリー・ガゼット≫のしがない記者であるわたし:エドワード・ダン・マローンは、かねてから思いを寄せるグラディスに結婚の申し込みをしようとしたが、危険に自ら飛び込み名誉を得るような冒険者が好きだとはぐらかされる。さっそく変人で有名な動物学者:ジョージ・エドワード・チャレンジャー教授を訪ねたわたしは、アマゾン川流域に、ジュラ紀の恐竜たちが生息する場所が存在することを聞かされる。その夜、チャレンジャー教授は、動物学会館で、絶滅したとされる生物が、今もなお生息する地を訪れたことがある
紀元前三九九年春、七〇歳のソクラテスは、突然、「不敬神、及び若者を堕落させた罪」で告発される。告発者は、若い詩人:メレトス、弁論家:リュコン、革職人で保守派の政治家:アニュトスの三人。彼らの「告発」のあと、五〇一人のアテナイの裁判員の前で、被告人:ソクラテスは「弁明」を述べる。もしだれかが最善だと考えて自分自身を配置するか、指揮官に配置されたなら、思いますに、その持ち場に留まって、死でも他のどんなことでも恥に優先して斟酌することなど断じてせず、あえて危険を冒すべき
ジョージ・オーウェルって、てっきりSF作家だと思ってました。だって『一九八四年』なんて読めば、そう思うやん。というか、それしか読んでないからなんやろけど。しかし、この評論集を読むと、自ら志願してスペイン内戦にも参加していて、彼はジャーナリスト、ルポルタージュ作家だったんだと認識を新たにしました。そして、自ら『一九八四年』について、「最高にひどい不出来」と評しているのにびっくりしました。えっ、なんで?収録されている「なぜ書くか?」(一九四六年)の中
法学を学ぶためパリにやってきた貧乏貴族の長男:ウジェーヌ・ド・ラスティニャックは、社交界の花形である従姉:ポーセアン子爵夫人の舞踏会で、美しい女性:アナスタジー・ド・レストー伯爵夫人に心奪われる。しかし、下宿人仲間から、彼女が自分たちと同じヴォケール館に下宿する元製麺業者のさえない老人:ゴリオ爺さんの愛人だと聞かされて愕然とする。真相を確かめようと、レストー夫人宅を訪ねたものの、伯爵夫妻の怒りを買ってしまう。自分の犯した失敗に腹を立てながら向かったポーセアン夫人宅で、レストー夫人
知人の消息を知ることができるロンドンのテルソン銀行は、フランスの逃亡貴族たちにとって大切な拠点だった。そのテルソン銀行気付けで、元フランス侯爵サン・テヴレモンド宛に、一通の封筒が届く。それは、チャールズ・ダーネイが捨てたフランスでの名前だった。内容は、投獄された、かつての下僕:ギャベールからの救援依頼だった。パリ支店の帳簿を守るため、パリ行きの準備をしていたロリーに、素性を隠しダーネイは、ギャベール宛に「すぐ行く」との伝言を託し、自らもパリへと発った。舞台は、ロ
ロンドンのテルソン銀行の行員:ジャーヴィス・ロリーは、ルーシー・マネットに付き添い、フランスへ渡った。亡くなったと聞かされていたルーシーの父の消息が分かり、迎えにいくためだ。バスティーユに幽閉され、精神を病んだ元医師である彼女の父は、かつての使用人:ドファルジュの庇護のもと、身を潜め暮らしていた。今は、パリの場末:サン・タントワーヌで、居酒屋の亭主に収まっているドファルジュを訪ねた二人は、生きる屍と化したマネットをロンドンへと連れ帰る。高校生の時に読んで以来の再
最近、家族が読み終えた本を私も(勝手に)借りて読み始めました。それがアリストテレス『二コマコス倫理学』光文社古典新訳文庫です。5年ほど前の出版で日本語訳が驚くほど読みやすく楽しみながら読み進めています☆
カラマーゾフの兄弟4(光文社古典新訳文庫)1,132円Amazonアリョーシャは、長兄:ミーチャが狼藉を働いた二等大尉:スネギリョフの息子:イリューシャを、彼と仲たがいしていた少年たちと共に見舞う。しかし、イリューシャが、心底会いたいと願っているコーリャ・クラソートキンは、その中にはいなかった。以前、イリューシャがスメルジャコフに唆され、針を刺したパンを野良犬:ジューチカに与えてから、コーリャとは絶交状態になっていた。十一月の初め、イリューシャの元へ、コーリャが飼い犬:ペレ
食事のあとの余興として、ウラジーミル・ペトローヴィッチは、その家の主人から初恋の話を求められる。四十がらみのウラジーミルは、十六歳の夏の思い出をノートに書き記し、二週間後、披露することに。その恋の相手とは、別荘の離れに越してきた落ちぶれた公爵夫人の娘:ジナイーダだった。いつも取り巻きの男たちに囲まれ、女王のように振る舞う美しい年上の女性に魅せられて……。光文社が、読書情報サイト「本がすき。」で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための臨時休校で、お家で過ごす中高生のため、
鼻/外套/査察官(光文社古典新訳文庫)748円Amazon床屋のイワン・ヤーコヴレヴィチが、朝食のパンを二つに切り分けると、中から出てきたものは鼻ッ!てっきりお客の鼻を亭主が剃り落としたと思ったおかみさんに怒鳴られて、イワンは、その鼻を川に捨てに行く。一方、その鼻の持ち主である八等官のコワリョフは、鼻の上にできたおできの具合を見ようと鏡を覗いたところ、鼻がないッ!あわてて警視総監のところに行く途中、五等官の制服を着て馬車に乗り込む自分の鼻を見つける。コワリョフは、馬車
地底旅行(光文社古典新訳文庫)/光文社Amazon.co.jp叔父:オットー・リーデンブロック教授に呼ばれ、書斎へ入った私:アクセルは、叔父が手に入れたばかりの古書の中に挟まれた一枚の羊皮紙を目にする。それは、アイスランドで昔使われていたルーン文字で書かれた暗号文だった。有名な錬金術師:アルネ・サクヌッセンムという署名があり、地球の中心へと至るヒントが記されていた。その暗号文を解読した私たちは、サクヌッセンムに続けとばかり、地球の中心目指して旅にでることに。。。『二年間の休暇』、『海底二
カンディード(光文社古典新訳文庫)/光文社¥1,078Amazon.co.jpむかし、ドイツのウェストファリア地方、ツンダー・テン・トロンク男爵の城に、気だてのやさしい若者:カンディードが住んでいた。カンディードは、男爵の妹と近隣の貴族との子だったが、父の貴族の先祖を七十一人までしか証明することができず、母が結婚を拒んだ。しかし、カンディードは、家庭教師:パングロスの教えを受け、城の中で、何不自由なく暮らしていた。ところが、ある日、男爵の娘:クネゴンデ姫とキスをしていたのを見咎められ、男
カラマーゾフの兄弟3(光文社古典新訳文庫)/光文社¥922Amazon.co.jpゾシマ長老が永眠し、人々は、鵜の目鷹の目で、奇跡を待ち焦がれていた。しかし、奇跡どころか、長老の遺体からは腐臭が漂い、アリョーシャをも混乱させる。そんな放心状態のアリョーシャを、ラキーチンがグルーシェニカの家へと連れて行く。アリョーシャを歓迎するグルーシェニカは、自ら悪い女だと宣言しながら、それでも、葱を一本、人にあげたことがある言い、その由来であるおとぎ話を語る。そして、五年前に彼女を捨てたポーランド人の
カラマーゾフの兄弟2(光文社古典新訳文庫)/光文社Amazon.co.jp最期の近いと思われるゾシマ長老から、お前のいないところでこの世に別れを告げることはしないから、約束した人たちのところへ行くようにと促されたアリョーシャは、まず、父:フョードルの家へと足を運ぶ。そこで、グルーシェニカをめぐる父と長男:ミーチャとの確執、ミーチャの婚約者:カテリーナに横恋慕する次男:イワンと、三つ巴になったカラマーゾフ家の惨状を吐露する父親に、相変わらず誠実に対応すると、続いてホフラコーア夫人の家へ向かっ
カラマーゾフの兄弟1(光文社古典新訳文庫)/光文社Amazon.co.jp地主:フョードル・パーヴロヴィチ・カラマーゾフは、二度結婚し、三人の子どもをもうけた。長男:ドミートリ―は、名門貴族:ミウーソフ家の才色兼備の最初の妻:アデライーダとの子で、次男:イワンと三男:アレクセイは、駆け落ち同然で二度目の妻となった当時十六歳の孤児で、裕福な慈善家の養女:ソフィア・イワーノヴナとのあいだに生まれた。粗野で好色なフョードルは、母をなくした子どもたちの養育に特に気を配ることもなく、暮らしてきた。そ
愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える(光文社古典新訳文庫)/光文社¥596Amazon.co.jp精神疾患のため施設で療養していたジュリー・バランジェは、金持ちの実業家:アルトグに甥:ぺテールの養育係として雇われた。運転手付きのリンカーンで迎えに来たアルトグは、飛行機事故で死亡した兄夫婦の財団の後継者であるぺテールの後見人で、障害者しか雇わない慈善家でもあった。翌日、アルトグは、わがまま放題の悪がき:ぺテールをジュリーに預け、どこかへ出かけて行った。リュクサンブール公園に散歩に
ピノッキオの冒険(光文社古典新訳文庫)/光文社Amazon.co.jp大工のサクランボ親方からもらった棒っきれで、ジェッペットさんは、操り人形を作った。ピノッキオと名付けたその人形は、手が出来上がった瞬間、ジェッペットさんのかつらをむしり取り、足を作りおえると、ジェッペットさんの鼻のてっぺんを蹴りとばし、外へ飛びだしていった。ジェッペットさんは、連れもどそうと追いかけるが、虐待と間違えられ、牢屋に入れられるはめに。。。サクランボ親方って?ジェッペットさんって、かつらなの????
デーミアン(古典新訳文庫)/光文社¥778Amazon.co.jpラテン語学校に入学した頃のこと。十歳のぼく:エーミール・シンクレアは小さな嘘をついた。見栄を張って、年上のガキ大将:フランツ・クローマーに盗んでもいないリンゴを盗んだ冒険談を得意げに語ったのだ。すると、クローマーは、果樹園の持ち主に密告するとぼくを脅した。ぼくは、クローマーの強請に応じてしまう。はじめは、自分の貯金箱から、そして、お手伝いのリーナの買い物かごからくすねたお金を、クローマーに渡した。しかし、クローマーの要求
郵便配達は二度ベルを鳴らす(光文社古典新訳文庫)/光文社¥950Amazon.co.jp眠り込んでしまい無断で乗り込んだことがバレて、トラックを放り出されてしまった俺:フランク・チェンバーズは、道路沿いの小さなレストランに辿り着く。そこで働く気などなかった。しかし、ギリシャ人の店主:ニック・パパダキスの妻:コーラに魅せられて、そこに腰を落ち着けた。男女の関係になった二人は、ニック殺害の計画を立てる。しかし、……。会話文が多くて、さくさく読めます。何度も映画化されているようですが、二転
ナルニア国物語1魔術師のおい(光文社古典新訳文庫)/光文社Amazon.co.jp父がインドへでかけ、ディゴリーは病気の母と二人で、郊外から伯父と伯母の住むロンドンへ引っ越してきた。隣に住む女の子:ポリーと仲良くなったディゴリーは、二人で屋根裏を探検中、誤ってアンドリュー伯父の書斎に入り込んでしまう。そこでアンドリュー伯父から黄色い指輪を貰ったポリーは、ディゴリーの目の前で、いきなり姿を消した。魔術師の伯父が、妖精の血を引く名付け親の持っていた土から作った魔法の指輪で、ポリーを別の世界へ