ブログ記事29件
1.事件の概要不正競争防止法違反に基づく差止仮処分申立事件「パテントリンケージで虚偽の回答をする行為が不競法上違法となる場合の判断基準」東京地判令和6年10月28日令和6年(ヨ)30029(債権者:サムスンバイオエピスカンパニーリミテッド、債務者:バイエル・ヘルスケア・エルエルシー)先発品アイリーア硝子体内注射液40mg/mL(有効成分:アフリベルセプト)は、バイエル薬品株式会社が2012年9月28日に承認を受けたバイオ医薬品です。最初に承認された効能効果は「①中心窩下脈絡膜
2025年4月、厚生労働省は、後発医薬品が先発医薬品の特許に抵触していないかを確認する「パテントリンケージ制度」を2025年度内に見直す方針を発表しました。具体的には、税関でも導入されている「専門委員制度」を参考に同制度を導入することが挙げられています。(4月16日に日刊薬業で報道されました)GE特許抵触確認に「専門委員制度」パテントリンケージ、年度内見直しへ|日刊薬業-医薬品産業の総合情報サイト厚生労働省は、承認審査中の後発医薬品が先発医薬品の特許に抵触していないかどうかを
2025年5月27日付け東レ株式会社プレスリリースによりますと、同日、かねてより注目を集めていたナルフラフィン侵害訴訟事件の知財高裁翻案判決(令和3年(ネ)10037)が出されました。筆者が知る限り、医薬品では史上最高額となる218億円の損害賠償が言い渡されました。判決文の公開を待ちながら、「夜明け前」として、これまでの経緯をご紹介いたします。(1)ナルフラフィン事件の全貌東レが製造販売する経口そう痒症改善剤「レミッチ®」(「レミッチ®カプセル2.5µg」および「レミッチ®OD錠2.
1.事件の概要特許権侵害差止請求事件知財高判令和1年11月14日平成30(行ケ)10110,10112,10115号セレコックス特許を巡って先発対後発の特許係争(無効審判)が続いています。まずは「第1章」として、2019年(令和1年)の知財高裁判決を紹介します。特許庁では特許有効と判断されていましたが、知財高裁で一転したのです。時は2016年、関節リウマチや各種の痛みの治療剤である先発品セレコックス®(有効成分:セレコキシブ)の再審査期間は2015年1月25日に満了していましたが、
1.事件の概要特許権侵害差止請求事件東京地判平成31年5月29日平成29(ワ)44053号少し前の事件になりますが、バイオ医薬品の先発対後発医薬品の特許係争で初めて判決が出されたケースを紹介します。バイオジェンの有する、B細胞リンパ腫の併用療法に関する3件の特許の専用実施権者である原告ジェネンテックは、リツキサンのバイオ後続品(バイオシミラー)を製造販売等するサンド、協和醗酵キリンに対し、製品の差止め及び廃棄を求めて東京地裁に出訴しました。原告、被告、及びそれぞれの製品については次の
>今回から「です・ます」調に変更しました。1.事件の概要特許権侵害差止請求権及び損害賠償請求権不存在確認請求事件第1審:東京地判令和4年8月30日令和3(ワ)13905号第2審:知財高裁判令和5年5月10日令和4(ネ)10093号(原告・控訴人:ニプロ株式会社、被告・被控訴人:エーザイ株式会社、エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社)先発品ハラヴェン®静注1mg(有効成分:エリブリンメシル酸塩)は、エーザイ株式会社が2011年4月22日に承認を受けた抗がん剤です。最
ブロックバスターのパテントクリフめがけて多数の後発メーカーが入り乱れた大型事件1.事件の概要無効審判・審決取消訴訟(令和2年(行ケ)10135)先発品(リリカ®カプセル)の再審査期間は2018年4月15日までであったが、その用途特許(特許3693258号、出願日1997年7月16日、延長5年)に対して再審査期間満了の1年3カ月程前(2017年1月16日)に、沢井製薬が無効審判を請求した。続いて、後発メーカー合計15社が次々とこの審判に参加した。2020年7月14日に無効審判の審決があ
先発の物質特許の無効化を図ったケースが知財高裁大合議事件に1.事件の概要無効審判・審決取消訴訟(平成28年(行ケ)10182、10184)先発品(クレストール®錠5mg、10mg)の再審査期間は2013年1月18日までであり、一方、先発の物質特許(特許2648897、出願日1992年5月28日、塩野義製薬)は、存続期間は5年延長され2017年5月28日まで有効であった。このような状況下、2014年2月4日にテバ製薬が、2015年3月31日に個人X(この当時、厳密にはこの日までは
(1)特許無効審判(特許法123条)特許無効審判(無効審判)とは、すでに登録されている特許に関して、特許性がない(無効理由がある)ことを主張して、特許庁において特許の有効性を争う手続きである。特許権を巡る紛争の解決を目的とする制度であり、平たく言うと特許を潰すための制度といえる。通常、無効審判は、侵害訴訟が提起された際にこれに対する対抗手段として利用されるが、先発対後発医薬品の係争では侵害訴訟の有無とは関係なく後発品参入の障壁となる先発特許をつぶす手段としても頻繁に利用される。先に述べた
(1)特許権侵害訴訟-差止請求・損害賠償請求-特許権侵害訴訟(以下「侵害訴訟」)とは、特許権が侵害されていること又は侵害されるおそれがある場合、特許権者あるいは専用実施権者が、特許権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して、その侵害行為の中止(差止)や、侵害により被った損害を賠償すること(損害賠償)を求める訴訟をいう。なお、特許権侵害とは、権原なき第三者が、業として特許発明の実施をすること(特許法第68条、同2条3項)をいう。訴訟では、原告が被告に対して、差止請求や損害賠償請求を
医薬品業界の特殊性から、医薬品の特許係争、特に先発対後発の競争に関連する制度があります。いずれも薬事承認と関連するため、医薬品開発の現場を知らないとわかりにくい点が多々ありますが、医薬品の特許係争を考える際にはこれらを十分に理解しなければなりません。今回は、医薬品の特許係争に関連する制度として、(1)特許期間延長制度、(2)再審査制度・再審査期間(データ保護)、(3)パテントリンケージ、(4)虫食い申請、そして(5)試験研究の例外規定の5つを一気にご紹介します。(1)特許期間延長制度(
日本では訴訟は多くありませんが、先発対後発医薬品の特許係争は、戦いの経験値を上げた両軍が新たな技巧や戦略を繰り出し、過熱の一途をたどっています。今回は、先発対後発医薬品の戦略と戦いの場について紹介します。1先発の戦略先発品は、特許制度と再審査制度(薬機法14条の4、海外では「データ保護制度」)により保護されている。先発品が承認されると再審査期間が付与される。期間は、新有効成分を含む先発品では8年であり、承認の内容(効能・剤形追加等)によって4~10年となり、この期間中は後発医薬品を申
欧州連合(EU)ではパテントリンケージは禁止されているが、加盟国ベースでパテントリンケージ様の慣行が行われている国がある。1.EU規則EUでは,薬事当局(EMEA:EuropeanMedicinesAgency)による医薬品の承認審査において,欧州規則,欧州指令に記載された理由以外で,医薬品の承認販売を拒絶,保留,取消すことはできない旨が規定されている[i]。ここで,欧州規則,欧州指令に記載された理由とは,品質,安全性,有効性にかかわる科学的基準(公衆衛生)であり,特許権侵害
ニュージーランド外務省のウエブサイト[i]によると,現行の法律と実務によりTPPで要請されるパテントリンケージの要件をすでに満たしているとのことである。TPPの要請は,先発特許権者は,後発品の承認申請が薬事当局に提出された旨の通知を受け取ること,及び先発特許権者が,特許期間中に後発品が販売される前に,特許紛争を解決するための仮処分を求める十分な時間と機会を確保することである。これに対して同国は,薬事当局ウエブサイトの公開情報,差止命令による救済の可能性,及び薬事当局が後発品承認申請を処理する
中国は、2021年にパテントリンケージ制度を導入した。(1)制度概要中国は,対米FTAの要請,医薬品産業における熾烈な国際競争,国内の製薬産業の発達や市場のニーズを受けて,2021年にパテントリンケージ制度を導入した。すなわち同年6月1日に改正中国特許法第76条を施行し,続く2021年7月4,5日に,薬事当局(国家医療品管理局(NMPA)),特許当局(中国知的財産庁(CNIPA))および司法当局(最高人民法院)がそれぞれ,パテントリンケージの運用に関する具体的な規則を公布したことにより
台湾は2019年にパテントリンケージ制度を導入した。(1)制度概要台湾は,TPP及びTIFA(貿易投資枠組協定)への加盟を目指して,2019年8月20日より施行した。パテントリンケージ制度は,2017年12月29日に制定された改正薬事法により規定されている。ハッチ・ワックスマン法をもとにした制度であり,特許情報の登録,パラグラフIV声明,後発医薬品の検査登録許可証の一時発行停止,後発医薬品の独占販売権から構成される。(2)先発特許情報の登録[i]先発メーカーは,先発医薬品の承
サウジアラビアは,2013年にパテントリンケージ制度を導入した。薬事当局(SaudiArabiaFDA,SFDA)は,後発品申請者に対し,販売承認時に,サウジアラビア特許庁及び/または湾岸協力理事会(GCC)特許庁による,先発特許が存在しないことあるいは存在しなくなることを示すレターを提出することを求めている(CircularLetterNo.7448)。しかし,パテントリンケージ制度が存在するにもかかわらず,SFDAは2017年に,ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)のC型肝
韓国は2012年にパテントリンケージ制度を導入した。(1)制度概要韓国は,対米FTAにより2012年にパテントリンケージ制度を導入した。2012年には,医薬品の特許目録搭載と特許権者への後発品申請の通知などが実施され,2015年3月に販売禁止措置の施行により制度の全面施行を開始した。パテントリンケージ制度は,2015年3月15日に施行された改正薬事法(法律第13219号)により規定されており,医薬品の特許目録搭載,後発医薬品の許可申請事実の通知,後発医薬品の販売禁止,および後発医薬品の
ペルーは,対米FTAにより2009年にパテントリンケージ制度を導入した。特許期間内に後発品の承認を得ようとする場合は特許権者に通知すること,及び特許権者が被疑侵害製品の販売前に措置を講じる時間と機会を提供することが必要であるという2つの義務がある。さらに,透明性を確保するため,後発品申請に関して,薬事当局のウエブサイトで申請者名と製品名が公開される。なお,上記2つの義務の代わりに,先発の特許期間中に後発品を承認することを防ぐため,当事者や薬事・特許当局の協力による特許情報に基づく,法
オーストラリアは2005年にパテントリンケージ制度を導入した。オーストラリアでは,対米FTAの規定により2005年1月にパテントリンケージ制度を導入した。規則によると,後発品申請者が,特許のある製品(aproduct),または特許のある用途に関する製品(aproduceforanapproveduse)を販売することが禁止されており,特許のある製品の後発品を申請する際は,特許権者に通知することを要する。しかし実情は,特許権者が後発品申請について通知を受けることはなく,特許権者は
シンガポールは2004年にパテントリンケージ制度を導入した。(1)制度概要シンガポールでは2004年に,対米FTAの規定により,後発品の発売前に,先発特許への侵害を取り締まることを目的としてパテントリンケージが導入された。(2)先発特許情報の登録シンガポールでは,先発特許情報の登録は実施されていない。(3)後発医薬品の申請と先発への通知後発医薬品の承認申請者は,申請時に,申請する医薬品が特許を侵害していないこと,あるいは特許は無効であることを記載した宣誓書を,薬事当
UAEで最初にパテントリンケージが導入されたのは,2000年の厚労省令(MinisterialResolutionfromtheMinistryofHealthandPrevention(MOHAP))404号である。この指令により,UAEは,知財制度の不備により米国企業・製品の障害となる国をリストアップしている米国の監視リスト(Special301ReportWatchListoftheOfficeoftheUnitedStatesTradeR
カナダは1993年に制度を導入した。(1)制度概要カナダでは,北米自由貿易協定(NAFTA)の規定により1993年にPatentedMedicinesNoticeofCompliance(PMNOC)Regulationsを導入した。その後いくつかの改正を経て2017年9月に,EU・カナダ貿易協定に伴い大幅に改正された。この改正と同時期に,特許期間延長制度(CSP)も導入された。なお,カナダにおける延長期間は最大2年である。カナダ最高裁によると,後発品が,リストに掲載された特許
審決取消訴訟(1)延長登録出願の拒絶審決取消訴訟:令和2年(行ケ)10063(終局日令和3年3月25日)承認された有効成分は塩酸塩、特許に記載されたのはフリー体であり、特許庁では延長が認められなかったが、高裁は一転し延長を認めた。上告せず確定。(2)延長登録無効審判の審決取消訴訟:令和2年(行ケ)10096、10097、10098上記と同様の理由により、特許庁では延長登録無効とされたが、高裁は一転し延長登録は無効でないとした。上告棄却により確定。その後⇒特許庁に差戻し⇒審決取消
ANDA申請者の確認訴訟ANDA申請者の通知(NoticeLetter)後、30ヶ月特許権者が訴訟を提起しない場合、ANDA申請者は、先発側に対して、オレンジブックに掲載された特許が無効である、またはANDA申請対象の医薬品がオレンジブックに掲載された特許を侵害しないことについて、確認訴訟を提起することができる(21U.S.C.§355(j)(5)(C)(i))。特許権者は、ANDA訴訟を提起しない場合(つまりパテントリンケージとは独立に)、オレンジブックに掲載されている特許に
ANDA訴訟(ハッチ・ワックスマン訴訟)パラグラフIV証明書により申請を行ったANDA申請者は、FDAからパラグラフIV証明書の受領書を受領してから20日以内に、NDA保持者及び特許権者に通知(NoticeLetter)を行わなければならない(21C.F.R.§314.95(a),21U.S.C.§355(j)(2)(B))。NoticeLetterには、特許の有効性・非侵害について申請者の見解を裏付ける事実及び法的な根拠に関する詳細な陳述を含む必要がある。パラグラ
ANDAについてANDAとは、AbbreviatedNewDrugApplicationの略であり、日本語にすると「後発医薬品の簡易申請」となる。日本語では、ANDA申請と表現されることもあるが(当ブログでも混在の可能性有)、ANDA申請=簡易申請申請ということになってしまう。ANDAは、「パテントリンケージ(4)米国」でも紹介したハッチ・ワックスマン法で定められている。ハッチ・ワックスマン法以前は、後発医薬品であっても新薬と同様の臨床試験が必要とされていた。そのため後発医薬品
米国のパテントリンケージの概要米国のパテントリンケージは、いわゆるハッチ・ワックスマン法(21U.S.C.§505(j):DrugPriceCompetitionandPatentTermRestorationAct.)で規定されている。この法律は、新薬治験により浸食された特許期間の回復、後発医薬品申請の簡略化、後発医薬品の試験への試験研究の例外適用という問題を背景に、共和党のOrrinHatch上院議員と民主党のHenryWaxman下院議員らにより起案され、先
10/6、東和薬品さんより上告期限までに、興和からの上告がなく、損害賠償請求訴訟が終結したことが発表されました。後発メーカー東和薬品の大逆転、勝訴が確定しました。「当社に対する訴訟の終結に関するお知らせ」(東和薬品ウエブサイト)https://www.towayakuhin.co.jp/pdf/news221006.pdf判決文がようやく公開されました。東京地裁判決:平成30年(ワ)第17586号他https://www.courts.go.jp/app/files
セルトリオン社は、韓国に本社を置く、バイオシミラーにフォーカスした企業である。CelltrionHealthcarewww.celltrionhealthcare.jp2022年9月26日付け、同社発表のニュースによると、この度「ベバシズマブ」が、バイオ後続品(バイオシミラー)の承認を取得。共同開発の日本化薬が承認を取得、効能・効果は次の通り。(1)治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(2)扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(3)手術不能又は再発乳