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…っ。女人に殴られたのは初めてだ。チェ・ヨンの心は揺れた。鬼剣で刺して欲しかった?冗談じゃないわ!他人の手を借りて死のうなんて、迷惑な話だわ!天の医員殿!私が刺しましょうか?うるさいオジサンね!どうせ、あなたが王に吹き込んだんでしょ?地固めの為の道具って事?まだ21のガキが舐めた事してくれるわ!それから、チュンソクさん!ウダルチプジャンがテジャンに剣を向けるの?ウダルチってサイテーね!な…何故だ?何故?チュンソクの名を?鬼剣と言った…益々混乱するチェ・ヨ
あーあ…なんでこんな事になったんだろ?元はと言えば、サイコのせいだわ!夢ならいいと、何度も思ったのに、此処は間違いなく高麗だわ…しかも、あの身勝手な恭愍王のせいで、あの不思議な光も消えたし、賭けって何よ!あんな変な奴に閉じ込められて…サイテー!サイコ…熱下がったかな?ガャーン!ベッドから振り返ると其処にサイコが居た!…サイコ遅くなりました。頬を触って熱を確かめる。あれ?今度は素直に触らせてくれるの?武士とは思えない程綺麗な肌ね。熱もさがってる!生きてるのね!サイコ
夕方晴れた空ソン・ユを連れて、2年ぶりに帰って来たトルベ。空港には、チュンソクが部下を大勢連れて待っていた。プジャン…トルベ…目に涙を浮かべながらもまずは、ソン・ユの護送だ!トルベも一緒に車に乗り込み、警察書へ連れて行った。私は何も知らない!弁護士を!ああ、国選でいいですか?あなたの弁護士は降りたようです。はあ?なぜだ?私は何もしていない!証拠は、全て上がってる!息子は、三人の殺人未遂で、既に検察庁に送られた!あの人妻に何かしたのか?あの人妻とは?コーヒー
ウンスを抱いて王宮内を闊歩するテジャンは目立つ。テジャン?恥ずかしいわよ?では、歩きますか?それも恥ずかしい…きっと変な歩き方だわ。典医寺に着くとチャン侍医が驚く。どうされましたか?履物を失くされたので、抱いて来た!無邪気にも程がある!部屋で休ませる。部屋まで行って寝台に座らせると真っ赤になって抗議する!何よ?あれじゃあ、まるで私がバカみたいに走り回ってた事よね?では、本当の事を言いますか?俺は構いませんが?それは、もっと恥ずかしいわよ!それでは、暫く大人しくし
「・・・承知致しました。」「娘を何処ぞへ移送致す振りで牢から見える通路を歩かせろ。父親には猿轡(さるぐつわ)を忘れるな。叫ばれて父親の存在を娘に知られては面倒だ。」「はっ。では明朝其の様に。」「ああ。・・・休める者は迷わず休む様申し伝えておけ。此度の事件は根が深い。長丁場に成るやも知れぬ。」ヨンは如何にも面倒だという表情を隠さない。「はっ。隊長もお休みに成られますか。」「ああ。お前も一通り用事を
「チュンソク。彼奴の詮議は?何ぞ吐いたか。」兵舎に戻ったヨンは自分の執務室には行かず副長室へ顔を出した。「隊長。お帰りなさいませ。」机に向かい書類仕事をしていた副長はその場で立ち上がり一礼した。「ふむ。して、如何だ。」ヨンは副長に手振りで座るよう指示する。「未だ何も。只、何やら迷うて居る様に見受けられます。己の地位を守る盾が娘であるのか、将又(はたまた)誠に父親の情であるのか。兎に角娘に会わせろの一点張りで。
夕餉が終わり、ヨンはウンスの入浴の警護に就き、兵舎に戻る時刻になった。戸口に向かうヨンの後ろをウンスがついて行く。「今宵もゆるりと眠るのだぞ。ソウン達に確と警護させるゆえ安堵致せ。良いな。」ウンスを優しく抱き寄せるヨン。「うん、わかったわ。だいじょうぶだから心配しないで。あなたは今夜は早く休めるの?やっぱり無理?」「然程(さほど)遅うは成るまい。急ぎの事柄以外は、概ね通常通りの体勢に戻す。イムジャの言い付けを守って非番の
ともすれば適当に済ませてしまうか抜いてしまう食生活のヨンにきちんとした食事を摂ってもらいたいウンスは、こう言う話を始めると医師としての知識も相俟(あいま)ってついつい力説し話が長くなるのだ。うっかり口を挟んで更に長くなりはしないかとヨンは短い相槌だけで聞き役に回る。「ちなみにお肉は鶏の胸肉が良いわよ。疲れにくくなる成分が含まれてるから。」「せいぶん?」「うんうん。いろんな物、栄養の事だけどそれをひっくるめて成分て言うの
「あなたはおとうふをたくさん食べた方がいいわ。原材料の大豆はね、畑のお肉って言ってね。身体にとっても良い物だから。」ウンスはもっと食べろとお玉に手を伸ばす。「然うか。」畑の肉?何だ?ヨンは当たり前の様に空になった取り鉢を手渡す。「前にあなたにはタンパク質がたくさん必要って話したの、憶えてる?」「ああ。」「迂達赤はみんなその強靭な身体を維持するのにお肉・魚介類が絶対必要なのね。でもいくら軍部でもいつもいつもお肉は食べら
「さ~て。冷めないうちに食べちゃいましょ。」「ああ。」豆腐炒めを皿に取り分けヨンの前に置いた。「ぜ~ったいにおいしいから食べて。」そう言いながら一口頬張る。んふ♡ウンスは満足気にどんどん頬張る。「見た事の無い料理だ。」取り分けられた皿を眺めてぼそりと呟く。「そうかもね。向こうの世界で私が好んで食べていた料理よ。アジュンマに作り方を説明したら“作れます”って。材料を集めるのにたぶん苦労したと思う。それでも作っちゃうんだから
「僅かではございますが栽培して居る農夫を見つけたので御座います。其の者から直接買い付ける事ができました。」「ありがとう~。さすがアジュンマ。」ウンスの満面の笑みがこぼれる。「実は此れは一級品では御座いませぬ。」うんうんと相槌を打つウンス。「形の悪い物・大きゅうなり過ぎた物を安価で分けて貰うたのです。乾燥して粉末にするには何ら問題もありませぬし、味は一級品と遜色ありませぬ。其れ処か大きゅうなり過ぎた物の方が返って
熱々の鍋と青菜のナムル、付け合せの小皿も幾つか卓上に並ぶ。そして主菜は豆腐と野菜の炒め物。以前好物だと事細かく話した中華風の豆腐炒めだ。憶えていてくれたんだ「本日は豆腐料理にございます。先日医仙様の好物だとお伺い致しましたので。お口に合いますか如何か。」ニコリと微笑みながら最後に匙と箸を二人の前に置いた。「うわぁ~。とってもおいしそう。うれしい、ありがとう。」ニコニコ顔のウンスを前にヨンも満足そうだ。「では馳走になろう。」「う
「・・・兵舎に戻っても良いぞ。」ヨンの声が響く。「おかえりなさい。」振り返ったウンスがにっこり微笑んで迎えた。「ふむ。待たせて済まぬな。二人共兵舎に戻り疲れを取る様に。御苦労であった。」ジヘとミンジはすぐさま立ち上がるとヨンに一礼した。ジヘが湯呑を片付けようと手を伸ばすと、ウンスが止めた。「そのままでいいわ。気にせず戻って。今日もありがとう。お疲れさまでした。」優しく微笑むその顔は心配事など一つもないと言わん
「医仙様。余り思い詰めませぬ様に。」考え込むウンスにミンジが声を掛ける。「少なくとも私共二人は負担等とは思うて居りませぬ。もそっとお気を楽に。」心配の余りジヘも慰めた。「ありがとう。くよくよしても仕方ないわね。私にできる事はただあの人を信じることだけだわ。」ふぅ~...と息を整える。「あの人、たぶんお腹を減らして戻って来るわ。」にっこり笑うその顔は、いつも通りのウンスに戻っていた。「ええ、然うですとも。きっともう
「私が受けた印象では、あの男は武術等全くの素人だと思います。」ミンジが男の気配で感じたことを話す。ジヘも同意する様に大きく頷いた。「故に然程心配なさる事は無いかと思いますが...」ミンジが続ける。「そう...二人ともそう思うのね?」「はい。」二人とも大きく頷いた。「私はね、その男の後ろにいる誰かが怖いの。その誰かは、必ず私を口実にあの人を陥れようとする。私はそれが何より怖い。」「医仙様のご心配なお気持
「一体此処で何を為さって御出でか。然う御聞きして居るのです。」決して大きな声ではない。だが、腹に響く程の威圧感のある声だ。大抵の者は縮み上がるだろう。「む、娘は何処だ!ミランは!ミランを帰さねば御主が常に護って居るあの女の命が如何成っても知らぬぞ!」特別手立てがある訳ではない。だが口からこぼれるのは、いつもミランが準備万端既に裏で手を打っている時のおのれの台詞。頼りにしている当のミランを取り戻す為なのに何と虚しく響く事か。「
「二人とも、今暫く此の方のお傍に居れ。私は所用を一件済ませて参る。」ヨンは武閣氏二人に室内に留まるよう命じた。「行くの?」不安そうな表情を浮かべヨンを見上げる。「大事ない。然程刻(さほどとき)も掛からぬ。二人と茶でも飲んでゆるりと過ごして居れば良い。夕餉も其の内届くであろう。」「二人とも今暫く此の方が室内(ここ)で大人しゅう過ごせる様にお相手致せ。良いな。」「はい。承知致しました。」そう答えるジヘと頷くミンジ。「直
「では戻ると致すか。」「うん。」典医寺の門を潜(くぐ)り武閣氏二人と共に居室へと歩き出す。「あのね。実は午前中のことなんだけどね。」ウンスは隠し事はしないと言うヨンとの約束を守って、今日の出来事を話し始めた。「坤成殿の帰りに変な男に尾(つ)けられてたらしいの。私は直接見てないんだけど、チュモさんが気がついてね。チュモさんがいてくれなかったら面倒なことになってたかも。何かをしてくることもなかったんだけどね。たぶんチュモさんが
尾行されてはいたものの、一行は何事もなく典医寺に到着した。チュモは診察室の入り口脇に陣取って警護を続ける。そのすぐ外では、襲撃の機会を得られないまま典医寺に到着してしまったイム・ビョンチャンが物陰から成す術もなく診察室の方向を睨むことしかできず己の無能さに落胆していた。昼時の僅かな時間、テマンと警護を交代した以外、チュモは着かず離れずウンスの邪魔にならない様に警護を続けた。そして陽が傾きもうすぐそこまで夜の帳(とばり)が下りかけた頃
「何れにしろ某の手抜かりです。義禁府(ウイグムブ)に誰ぞ配して居れば手掛かりを得られたものを。某の考えが及ばず見す見す機会を無駄に致しました。」如何にも残念無念の表情を浮かべた副長。「義禁府からは全てが終わった後報告を受けたのであろう。抑(そもそも)管轄外の事だ。知らせが来ただけでも良しとせねば成るまい。」ヨンは副長の肩をポンと叩いた。「はっ。」「此度は目的を果たせなんだ。来るぞ、今一度。次は確実に目的を果たす
お怒りのリオンですが、それには意味が。。。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー「突っ立ったままじゃ、邪魔だ!さっさと連れて行ってもらおうか」茫然と立っているヤンガクに、冷たく声をかけるが・・・・・・動かないちっ!!!早く行動しないと本当にキ・チョルは助からんぞ!!!自分の自尊心を守る方を優先するか、キ・チョルを助けたい気持ちが大きくなるか・・・・さあ〜て、ヤンガクよ・・・どうするつもりだ?青い顔して迷っているようだが、ふと巡らせたヤンガクの視線が意識不明のキ・チョルを見つ
「迂達赤副長が参られました。」執務室の外で女官が告げる。王は傍らに立つアン内官に瞳(め)で指示を出す。「副長、お入りください。」アン内官の声が響く。すぐさま開かれた扉から副長が一歩入り深く一礼した。応接セットで向かい合う王とヨンを見て申し訳なさそうにチュンソクが口を開く。「お話し中失礼致します。隊長に少々報告が。」「構わぬ。近う寄れ、副長。何ぞあったのか。」王が手招きする。王の問いに副長は答えて良いものかとヨンの方へと眼が泳ぐ。
「無鉄砲にも程があります。然も副長の諫言に耳を貸さず、自ら囮と成ったのです。」収まっていた怒りが再び沸々と湧き上がる。「囮に成った医仙を、隊長は許せぬのか。」ヨンの表情を読み取った王が尋ねる。「然う言う事ではありませぬ。」あの方は何時も己の身を軽んずる他の事柄には思慮深いのに何ゆえ己の事に頓着無いのか「身を挺して護って居る女人が我が身を省(かえり)みず自ら危険に飛び込まれては流石の隊長も平静では居られぬな。」「・・・
滞りなく朝議が終わり、ヨンは王と共に康安殿へと向かう。執務室に入ってすぐ、王は話し始めた。「昨夜、一騒ぎ有った様だが。何が起こったのか申してみよ。」「・・・」全ては憶測...確かな事は未だ何も分かって居らぬ今何処まで王様に話すべきかヨンはどう答えるべきか暫し考えあぐねた。「如何した。何ゆえ黙って居る。」「・・・昨夜、間者による医仙の拉致未遂事件があったのです。」ヨンは重い口を開いた。「今、何と申した..
指し示された方向に目をやり、チュモを見つけるとにっこり微笑みウンスは歩み寄る。「チュモさん。」「医仙様。」チュモはいつも通りウンスに会釈した。「どうしてここに?」「隊長の指示で医仙様の本日の警護に着く事に成り申した。此方の文を隊長から預かって居ります。」そう言うと懐から出した例の書付けをウンスに差し出した。ウンスは黙ってそれを受け取ると丁寧に開いて目を通した。──矢張り武閣氏二人では心許無い。私が迎えに参る夕方迄チュモ
杏が可憐な花を咲かせると初夏の頃に橙色の実を結ぶ実が熟すと甘味を生じ種子は杏仁と呼ばれ噛むと苦いそれには呼吸困難、咳嗽を治す薬徴があり五虎湯、麻黄湯、麻杏甘石湯といった良薬の薬方に用いられる但し、その種子には猛毒が含まれ多くを食すれば呼吸が困難となって死に至るという「医仙…貴女は医仙、そう呼ばれるお方だ。違いますか?」チェ・ヨンの問いかけに、女人は一瞬驚いた顔をするが、すぐにコロコロと笑い出す。「あ〜ごめんなさい。でも可笑しくて…ねえ、わた
王妃の診察を終えたウンスは、外の様子が気になる。診察道具を道具入れに仕舞いながら扉の方をちらりと見て溜め息をついた。さっき到着間近に聞こえた足音は徳興君じゃないわよね気のせいであってほしいけどそうだったらどうしようここから出られない?それとも腹をくくってここから出て行く...?いつまでも逃げてる場合じゃないし・・・「外に徳興君が居るのではと気が気ではないのだな?医仙。」チェ尚宮が見透かした様にウンスに声を掛けた。「叔母様には
「医仙。顔色が悪いぞ。青う成って居る。一体如何したのだ。具合が悪いの成らば暫く此処で休ませて頂くか。」ウンスの徒(ただ)ならぬ様子を見てチェ尚宮が思わず声を掛けた。「だいじょうぶです...ちょっと、ふぅ~...酸欠状態なだけですから。」「さんけつ?状態?」何の事やらさっぱり分からぬ「息が、息が上がってるだけです。」呼吸を整えようと、ウンスは深呼吸を繰り返す。「途中、庭園近くで徳興君様を御見掛け致しました。
「お呼びでしょうか。」直ぐに現れたチュモ。「ああ。典医寺にて医仙の警護に当たれ。往診も少なくはないゆえ同行致せ。俺が迎えに参る夕方迄だ。確と頼む。」そして目の前でさらさらと奇妙な文字を書き始めた。ヨンの手元を見ていたチュモと副長は一瞬驚いたがすぐにこれが噂に聞く天界文字かと納得した。ヨンは書き終わったそれを小さく畳んでチュモに渡した。「あの方に此れを渡せ。然(さ)すれば何ゆえお前が居るのかあの方が納得致すゆえ。良いな。」「は
ヨンと伴に朝餉を食べている頃、武閣氏二人が到着した。ヨンがお役目に忙殺され、一時遠退いていた二人の朝餉もここ数日は伴に済ませる事が出来ている。余りに自然に振る舞う二人を前に、ジヘとミンジも既に違和感は抱いていない。昨夜の一件をチェ尚宮から伝え聞いた二人は、ウンスが常に危険に晒されている事を再認識したのだ。今更ながら、ヨンがウンスの傍にいるのは当然と言えば当然の事だと二人は悟ったのだった。「さあ、徐々(そろそろ)出仕の刻限だぞ。」「うん。