『イニシエーション・ラブ』は、乾くるみの同名小説を堤幸彦が映画化した恋愛ミステリーであり、「映像化は無理」と思われた原作を、映画ならではの方法で成立させたこと自体が、本作最大の成果である。原作の核心は文章だからこそ成立する叙述トリックにあり、人物の姿を直接見せなければならない映画とは本質的に相性が悪い。ところが本作は、その仕掛けを表面的に再現するのではなく、「観客が映像と編集から無意識に物語を補完する」という映画固有の性質へ置き換えた。重厚さや人生への深遠な洞察を競う作品ではないし、そもそも必要