ブログ記事15件
秋の野の王者ススキ文:日野房枝立秋を過ぎると、残暑の厳しい日が続いても、何となくホッとした思いで、咲き始めた秋草が季節のうつろいを感じさせてくれます。秋の野に咲きたる花を指折りかきかぞうれば七草の花山上憶良秋草は、1種類の美しさではなく、いろいろの花々が咲き混じって、秋の野の美しさ、情趣をうたいあげるもののようです。ある年の明月に七草を全部篭花入にいけてみたことがあります。ハギは宮城野ハギを、ナデシコは河原ナデシコを
風炉の花二題文:日野房江絵:萩原真理子若葉がもえ、風薫る5月から風炉の時期になります。昨年11月の炉開きの格調高さと同じきびしさで、この季節には、炉をふさぎ、畳をかえて道具畳に風炉をすえます。風炉と炉ではかなり厳しい区別があり、釜、香合、炭斗(すみとり)、柄杓、ふた置きまでかわります。花入れもかご花入れが加わり、花もいわゆる風炉の花に変わります。茶花というものは、当然のことながら、めずらしい花だからよいというものではありません。他の道具とのとり合
春の山野で文:日野房江春がたちかえったとはいえ、まだ厳しい寒さの続くころ、百花に先がけて咲くという「万作」の花を訪ねてみました。冷たい風に首をすくめながら、山道をたとって行きます。秋の紅葉のころには見事な照葉を見せる万作も、この時期はまだ葉の出ない裸木のままで、たしかこの辺にあったのだが、と思いながら辺りを見回しました。その時の事です。まだ消えやらず、そこかしこ残っている雪の所々に、わずかに萌えはじめた青いものが目に入りました。折しも春の日の光がやわ
茶花私の記1文:日野房江数年前の稽古茶事のことでした。炭点前、懐石のあと、いったん中立をし、ふたたび「つくばい」で手水(ちょうず)をつかい、亭主(客を招く人)があらためてしつらえた「後座」に席入りをいたします。床の間に進みますと、先ほどまでかかっていた軸がはずされて、床の間の中ほどに、中くぎにかけた竹の花入れに、やぶ椿が露をふくんで一輪、清楚に生けられてありました。この日のためにと亭主が心をこめてとり合わせたお道具は、静かな茶席の中に、いかに
タブ・」シイ・カシ林の分布暖流の対馬海流のぶつかる海辺や国仲の丘はタブ・シイ・カシなどの暖帯林がみられ暖地植物が豊産する。海辺の丘にはタブの黒森があり、ツバキ・トベラ・ツワブキの花が咲き、南国より椰子の実が漂着する。暖地植物の分布北限(9種・シイ・アカガアシ・ゴンズイ・ツワブキ・ヒメウズ・ヤマトグサ・ネコノシタ・クリハラン・ヒロハヤブソテツ)の島、日本海側の分布北限(6種・ムベ・トベラ・シキミ・ヤマザクラ・コモチシダ・マメヅタ)の島である。山地帯の植生分布佐渡は日本海型気候
赤い実に舌つづみ自然のおやつノイチゴ草の実、樹の実は子どもにとってまたとないおいしい自然のおやつである。田植えどき濃紅色のナワシロイチゴの実が熟れる。葉の形がモミジににたモミジイチゴも黄色に熟れる。島の子どもたちはこれらのイチゴをヤマイチゴとかノイチゴと呼んでいる。ナワシロイチゴの実が鈴ににているのでリンイチゴ、黄色い実が垂れ下がるのでサガリイチゴと呼ぶのは真更川(両津市)の子どもたちである。幼いころは海と山での生活のあけくれであったという両津し真更川の土屋さん(17)
甘いチガヤの若穂スカンポ折る音も魅力さつきもちは、むかしの人のおしゃぶりである。「アメノ皮(タケノコの皮)の中に紅シソ、梅干しをいれ皮を三つ折りにする。横からしゃぶるが時間がたつほどタケノコの皮が赤く染まり味が出る。今の子どもたちの想像できないむかしの人のおしゃぶりです」と語ってくれたのは金井町吉井の児玉さん(74)である。ササのあめんぼを、真野の子どもたてはテテッププと呼んでいる。1枚のササの葉を三角形に折りたたんで作られたあめんぼを今の子どもたちもけっこうたのしんで
ホタルかごを編む楽しくみごとな造形美ほうたるこい茶のましょ山伏こい宿かしょうこの唄をきかせてくれた真野町四日町の知本さん(64)は次のように語る。「ササバを持ってホタルを追いました。”山伏”は山辺に住む大きなホタルで、これはゲンジボタルであろう。むこうの川岸から大きなホタルが飛んで来いとの唄を歌った。20匹に1匹のわりあいで大きなホタルがいたものだ。」壇風城跡(真野町)の夜の闇が深く竹田川辺には無数のホタルが飛びかっていたころである。この唄の歌われていたの
花や葉、茎を鳴らすぺんぺん草のガラガラも夏休みのラジオ体操の帰り道に、アサガオの風船わりをしている子どもをみる。前日のしぼんだ花でできる。萼をとり花びらの先を閉じて押え、反対側から息を吹きこむとポンと音をたてて破れる。アサガオのふくれんぼと呼ぶ子もいる。女の子の誕生とともに桐を植え、嫁入りの際のたんすを作るという風習がこの島にもあった。新芽に先立って強い香りのする花が咲くのは6月である。大きな筒形の紫の花である。桐の木の下でいっぱい散った花を集めて、子どもたちはふく
山本おもやの家宝ソテツは漢名蘇鉄の音読みで、蘇はよみがえる意味、衰弱し枯れそうになった時に鉄くずを与えたり、鉄くずをさすと元気を取り戻すというのがソテツの名の由来である。ソテツは九州宮崎県以南、琉球、台湾、中国大陸南部の亜熱帯~熱帯に分布する常緑低木で、高さ2~4㍍、径20~30㌢、ふつう直幹である。宮崎県や鹿児島県の分布北限の自生地は特別天然記念物になっている。西暦1500年頃、南蛮赤毛の人たちによって、琉球から本土にもたらされた。信長も安土城内に植えこんだとい
タンポポで水中花よく回るイタドリ水車草木をつかっての水遊びのうち子どもが好んでやったものにタンポポの水中花がある。タンポポの花茎をもとから4~5㌢に8つぐらいに切り裂く。これを水の中にいれると裂かれた花茎はカールしたようにくるりと外側に反転し水中花ができる。さかさ花とかタンポポの早変わりとかいっている。花茎の内側の細胞が水を吸って膨れ茎の外側より内側が伸びるので外に反転する。植物の膨圧運動である。男の子は、タンポポの吹き流しといって川流しをする。子どもたちが、スイカノポ
「好き」か「きらい」か葉の多いもの使い占う島の子どもたちのする占いごっこにまずオオバコのすじ占いがある。オオバコの葉柄をひきちぎったり葉を半分にさいたりして、でてくるすじの数や長さによって占う。「お前の父さん、しらが何本」といってひきちぎる。すじの数がボーイフレンドの数であったり、運動会の競争順位であったりする。長いすじがでれば長生きとなる。花占いは女の子の夢をかけたロマンチックな占いである。ヒマワリ、コスモス、マーガレットなどの花が材料である。「すてきな人
群がるハチを連想繊細なヒメコバンソウヒメコバンソウの穂が初夏の風にゆれる。帰化植物であるこの草も、畑にはびこるほどになった。繊細な草である。細くすっと伸びた葉、小さな小判に似た穂をいっぱいつける。穂をつける枝々は、髪の毛のように細く波打っている。ほんの少しゆらすだけで震えるように動く。金井町千種の伊藤さんは、小さいころのヒメコバンソウのハチブンブン遊びについて、次のように話す。「ヒメコバンソウを回すように振ると、ひとつひとつの穂が振ると、ひとつひとつの穂が震え
シノダケで鉄砲もエノキの実を飛ばすピシーパシー。ヨノミ鉄砲に夢中の子どもたちである。シノダケで作られる鉄砲は、太すぎたり細すぎたりして、作りなおす子どもたちは辛苦である。やっと作りあげた鉄砲から景気よくたまが飛び出すと、辛苦もふき飛ぶ。島ではエノキをヨノキとかヨノミノキと、エノキの実をヨノミ(エノキの実のなまったもの)とかヨウノミと呼ぶ。エノキは落葉の高木でよくみられる。寺や宮の境内のものは大樹がめだつ。道ばたの大樹は江戸時代の道標の名残とみられる。子どもたち