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映画洲崎パラダイス赤信号(1956)乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン(2023)新潮社』で、芝木好子への言及があったのを縁に、芝木の『奈良の里(1988)文藝春秋』図書館本を読んだところ、芝木の文体が乙川優三郎のものと酷似していてびっくりした。乙川の根っこには彼女の作品がベースにあったのかと納得する。芝木『奈良の里』では、心に傷をもつ女性たちが再起するさまが描かれる。そのモチーフとして、聞香であったり、骨董、彫刻などの世界が描かれ、このあたりが乙川の「職人もの」作品に通じる。昭
乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン(2023)新潮社』主人公クニオの父は、ヴェトナム戦争時代にニッケルと呼ばれた複座式戦闘機の黒人パイロットだった。ニッケルというのは北側(敵)の地対空ミサイルの囮になる飛行機で、5セント硬貨のニッケルのごと安い命を意味する。そのニッケル乗りの父はPTSDから自死。母は本好きの日本人。主人公のクニオ・バンプルーセンはそのふたりを両親に、やがて日本文学に惹かれ小さな出版社の編集者として歩み始める。日米バイリンガルとしての目線から日本語や文化の美しさを改めて
これは、日本文学を愛したひとりの編集者の人生を静かにたどる小説です。彼の人生で事件といえならば、グアム勤務時代のアメリカ軍人の父の死でしょうか。定年すこし前に会社を辞め、念願の小説執筆をはじめようと、車で房総半島の外房を南下し、終の棲家とする別荘に向かうシーンからこの小説はじまります。クニオ・バンプルーセンAmazon(アマゾン)クニオ・バンプルーセン/乙川優三郎(新潮社)2023年刊お気にいりレベル★★★★★クニオ・バンプルーセン。これが、色の濃い肌を持つ
こちらも、初めての作家さん亡き藩主への忠誠を示す「追腹」を禁じられ生き続けざるを得ない初老の武士周囲の冷たい視線嫁いだ娘からの義絶そして息子の決意の行動…惑乱と懊脳の果て失意の底から立ち上がる人間の強さを格調高く描いて感動を呼んだ直木賞受賞作他に、「安穏河原」「早梅記」旭川市男山酒造北の稲穂こちらも、美味しくいただきましたきょうも、皆さまとともに”いい日”でありますようにcorinpapa
乙川優三郎短編集「夜の小紋」より小紋型染をモチーフに男女の別れと再生を追った「夜の小紋」をタイトルにした短編集。旗本無役の無為な日常に飽いた男は、ふとした縁から老作陶師とその孫娘を手伝うことになり、やがて自らの来し方行く末を考え始める「柴の家」。女が独り生きることのゆらぎを描いた「芥火」「虚舟」など5編を収める。文章が端正すぎて傷のない珠のごとくで困って?しまうのだが、着物、染め、陶芸といった職人世界を細やかに描写していて、ほぼほぼ、山本周五郎を洗練させるとこうした作品になるのかな
ある日失わずにすむもの(徳間文庫)Amazon(アマゾン)1〜4,350円遠からず世界を襲うかもしれない不幸。そのとき、人々はどのように旅立ち、何を失うことになるのか。マーキスはNYのスラム育ち。戦争で、ようやく築いた生活とジャズミュージシャンの夢を奪われる。フィリピンでは、17歳のマルコが銃をとり、人買いの手から娼婦の妹を守る。グアムのホテルマンとして生活を築いてきたベンは、身重の妻に徴兵の知らせが届いたと告げる…。ある日とつぜん踏みにじられるかけがえのない
宣伝ではないが、私はずっと読売新聞を読んでいる。実家が購読してて、そのまま結婚しても読売新聞を読み続けた。実に50年以上。ここまでくれば他の新聞は読めない、いや読みづらい。そうなると、新聞小説が大好きになり、楽しみとなった。宮尾登美子『序の舞』『天璋院篤姫』宮城谷昌光『草原の風』角田光代『八日目の蝉』などなどでも、連載が終わっても、何度も読もうと買ったのは乙川優三郎『冬の標』時代小説なんだけど、封建社会のなかで、母よりも妻よりも家よりも、絵
こちらも、初めての作家さん花映る巻き込まれるようにして友人の仇討ちをとげる侍の感情の揺れを描いた男の縁藩主より家臣譜の執筆を委ねられた丈太夫20年の時を経て病間の妻と嫁ぎそびれた娘と編纂作業に務める悪名客と女中として茶屋で再会した幼馴染ふたりの人生が交差する笹の雪家を守るための末期養子に嫁いだ喜佐一年後に夫が他家の女と出奔した・・・面影桜田門外の変を佐倉藩の隠密が回顧する冬の華藩から三人扶持をいただく無足医師の文礼許されない町
休日です☔️勤労感謝の日🎌「働けることに感謝をしましょう」って言ってた人がいたけど、全然役に立たなくて皆の手助けがないと存在出来ない人だったから、それはお前にしか成立しない考え方なんだよ。joyfitで筋トレ。DL60kgから久々の110kgまで行けたわ👍105kgの刻みが功を奏したな💯山岸先生が初心者はBIG3をやってりゃ良いってんで今後はそうします。joyfit経堂の傘置き場が大好きです。日本も段々治安が悪くなってるからな。貧しくもなってるな。心は豊かにしておこうぜ。こ
早朝バイトや。冷やしとろろそば&親子丼賄い最高!!勝手に美味しいもんを作っちまったぜ🙋10:30までバイト11:00から本業ギリギリ20:00釈放ジムに行く気も起きねーな😑こんな日は四、五杯飲んで寝るに限るな🍻幸い乙川優三郎さんの本にハマっているから救われています🎌
『日本文学100年の名作(10)+100年の10作』[本]日本文学100年の名作第10巻2004-2013バタフライ和文タイプ事務所(新潮文庫)Amazon(アマゾン)249〜5,947円池内紀・…ameblo.jp[本]日本文学100年の名作第9巻1994-2003アイロンのある風景(新潮文庫)Amazon(アマゾン)1〜4,200円池内紀・川本三郎・松田哲夫編「日本文学100年の名作第9巻1994-2003アイロンのある風景」(2015年新潮
木下惠介監督:陸軍(1944)田中絹代乙川優三郎『脊梁山脈(2013)新潮社』終戦後一年ほどして復員した矢田部信幸は、思いがけなくかなり纏まった叔父の遺産を受け取ったにもかかわらず生きる目的を失っていた。そんな中、復員時の恩人・木地師小椋康造の消息を訪ね歩くうちに、木地師の現地調査や由緒を調べることに生きがいを見いだす。乙川優三郎:脊梁山脈(2013)新潮社木工芸の材料を求めて深山を移動する木地師の歴史を遡ると(真偽は定かではないが)始祖は平安初期の皇族との由緒書きが伝えられて
あの春がゆきこの夏がきて乙川優三郎内容説明美しいものを生む。ただそれだけ。女性を愛し、芸術に淫しながら、生きることの重さを忘れずにいる男。美を追求し続け、闘い、ついに見出したのは・・・。本当の自分を知りながら、流れてゆく人間の葛藤を細やかに描き上げた逸品。名手が紡ぐ書き下ろし長編小説。図書館本を予約する時、新着本だったり予約の多い本だったりを参考にしているのだけど、そんな中でたまたま順番が来た乙川優三郎さんの本、初読みの作家さんでした。読み始めてすぐ、表現の仕方がす
うーん、なんだかすっきりしない気分になる人の暗い部分の物語でもこういうのあるんだよねーって感じ。
乙川優三郎の作品R.S.ヴィラセニョール2017年3月単行本2019年11月新潮文庫版レイ・市東・ヴィラセニョールという名のフィリピンと日本のメスティソの女性が主人公。寡聞ゆえメスティソという単語を知らなかったが、ここでは混血の意味で使われているようだ。彼女は乙川作品でよく登場する千葉の御宿で和服生地の染色工房を持っており、メスティソが日本伝統工芸を仕事としている故にさらに難しくなっている、その芸術家としての苦労を、同様のメスティソの隣人や日本人の友人などともに描くとともに、
乙川優三郎文藝春秋2021年6月ナインストーリーズAmazon(アマゾン)798〜5,460円満足?後悔?愉悦?絶望?人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、定年間近の独身男の婚活、還暦過ぎの女友達二人、かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。・妻がパリで活躍し、1年に1度パリに会いに行く夫。・気になっている女性バーテ
FC2にゃ~ごの本棚〇ロゴスの市乙川優三郎評判のいい作品なのですが…ただただ好みでなかったというしかないです⇑クリックお願いいたします<(__*)>
副題に"twelveantiwarstories"(12の反戦物語)とあります。この副題を知らずに読み始め、2篇読み終えたところで表紙を確かめて気づきました。でも、戦場が舞台ではなく、堅苦しく反戦を謳うこともなく、ふつうの人の日常で、遠い存在だった戦争を身近に感じたとき、本当に大切なものが浮き彫りになります。そしてそこには、戦争という国家間の争いからみれば、個人的でささやかな決断が生まれます。◆◆◆ある日失わずにすむもの(文芸書)Amazon
乙川優三郎『男の縁(2006)講談社』は全8篇収録の自撰短篇集(武家篇)。ほぼほぼ、山本周五郎を洗練させるとこうした作品になるのかな、という感じ。緻密で彫琢が〝すぎて〟というキライもあるかもしれないが、乙川の時代小説はどれを読んでも、その完成度の高い仕上がりに感心する。家格を保つために婿に迎えられたものの、継子誕生とともに疎まれ、しかも無役であるため仕事もなく終日無為に過ごしている。40代を迎えた主人公はこのまま朽ち果てるには耐えられず、手慰みとしていた陶芸に没入。ついには職人として生きる
乙川優三郎『蔓の端々(2000)講談社文庫』舞台は越後新発田藩。主人公の瓜生禎蔵は相愛と思っていた隣家の娘八重が親友黒崎礼助と駆け落ち脱藩した。しかも礼助は藩筆頭家老暗殺の嫌疑もかかっていた。そしてこれは10数年前の藩政変にまつわる禎蔵の父の死、父の後を追って自害した母に関連するらしい。禎蔵は図らずも新たな政争に巻き込まれていく。海坂藩を舞台にした藤沢周平『蝉しぐれ』に相似するような作品で、『蝉しぐれ』が大衆文学ならば、乙川優三郎の作品はより抑揚を抑えた筆致で(派手さのないチャンバラシーン
太陽は気を失う乙川優三郎2015年初版十四作の短編集表題作が、東日本大震災を扱っている以外は、人生終盤期の病気や仕事の不調などの哀愁が漂う時を切り取ったもの。表紙イラストとはかなり雰囲気が異なる。整った、かつクリスプな文章で描かれるその時は、悲しく美しく健気で長く余韻を漂わせる。人生終盤期の自分とほぼ同世代だと思われる人びとの切ない思いは、自分の心の横に寄り添って来る。雑誌掲載作品をまとめたものだが、毎月一作品を読む分にはちょうどいいのかもしれないが、まとめて十四
先月の特薦は平成14年直木賞受賞作「生きる」10月の読書メーター読んだ本の数:6読んだページ数:1865ナイス数:617ホテル・ピーベリー(双葉文庫)の感想人生を踏み外し抜け殻のようになった木崎淳平。現実から逃げるようにハワイの片田舎へ旅立った。リピーターは泊め無いと言う変わった滞在型ホテル・ピーベリー。愛想の良いおばさんと無口なご主人、そして5人の宿泊客。そこで事故が起きた。客の一人が酔ってプールで溺死。そしてもう一人はバイクで事故死。本当に事故なのか?木崎は疑問に思う。読了日
直木賞受賞作。☆飛騨守の恩顧にて出世を果たした石田家。当主の危篤に追い腹の覚悟をする又右衛門だが、家老の出した追い腹禁止令。その指示を苦渋の中で守った又右衛門。だが、殉死しなかった者への誹謗は石田家に重くのしかかり不幸は連鎖する。生きる限り苦難は続くのか。☆役目として正論を通したばかりに、仕官先を出て浪人生活をおくることになった武士・羽生素平。貧しさの挙句、患った妻の薬ために娘・双枝を女衒に売り渡してしまう。素平は知り合った伊沢織之助に小金を渡し、女郎屋へ双枝の様子を探るよう
自分の人生が何歳で幕がおりるのかなんて、余命を伝えられるか、その瞬間が訪れるかしながい限りわかりません。野球のように原則9イニングで終わりとわかっていれば、3イニング刻みに序盤・中盤・終盤とわけられます。これが人生となると、最後の段階の終盤を晩年としようとしても、その始まりの時点は通り過ぎてからわかるのでしょう。でも、始まりを意識していない時でも、後に峠を超えてある段階を迎えたと感じることがあります。そんな時期に、立ち止まり振り返ると、進学、就職、結婚、家族の進路など、自分がいまの場所に
太陽は気を失う(文春文庫)Amazon(アマゾン)96〜4,950円内容(「BOOK」データベースより)あの日、私はあと十五分も土手でぼんやりしていたら、津波に呑まれていたかもしれない。奇跡のような十五分に恵まれた自分と、そうでない人とを比べて思う―。福島県の実家で震災に遭遇した女性の実人生に基づく表題作をはじめ、ままならない人生を直視する市井の人々を描いた大人のための名品14篇。芸術選奨文部科学大臣賞受賞作。日曜日から携帯の調子が悪くなり始め、ブログだのSNSだの言っていられない
流れる日芝木好子初出1946年文庫1993年これも乙川優三郎の「ロゴスの市」に、文章が素晴らしい作家としてでてきた芝木好子の作品を読んでみたく思って、良さそうなものを選んで入手したもの。最近、乙川氏由来のものか、少女マンガ関連かに偏っている気がする。さて芝木好子作品は、意外とストーリーが面白かった。美文と言うと何となく、そんなに大きな展開はなく日常風景が淡々と描かれる、みたいなものを想像していたのだか、裏切られたかたち。ストーリーは戦前・戦中の東京を舞台に、7人兄弟姉妹の人生を
この地上において私たちを満足させるもの乙川優三郎2018年12月初版前にレビューした二十五年後の読書と対をなす作品。英語の題名はAfteryearsofwanderingのthefirstblowとthesedondwaveと対をなすことが明確になっているしかし、blowとwaveとここにも作者の言葉へのこだわりが表れている。二十五年後で主人公の編集者の女性とずっと関係のあった作家が、最後と思われる傑作を書く。これを感激しながら読むのが
盤上の夜(創元SF文庫)Amazon(アマゾン)697円内容(「BOOK」データベースより)相田と由宇は、出会わないほうがいい二人だったのではないか。彼女は四肢を失い、囲碁盤を感覚器とするようになった―若き女流棋士の栄光をつづり、第一回創元SF短編賞で山田正紀賞を贈られた表題作にはじまる全六編。同じジャーナリストを語り手にして紡がれる、盤上遊戯、卓上遊戯をめぐる数々の奇蹟の物語。囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋…対局の果てに、人知を超えたものが現出する。二〇一〇年代
インド系アメリカの作家ジュンパ・ラヒリの短編集停電の夜に原著は1999年日本語訳は2000年文庫2003年文章や背景の問題などで翻訳物はあまり読まないのだが、この本は先にレビューをあげた、乙川優三郎の「トワイライト・シャッフル」で、小説を読んだこともない外構工事人が、もらって読んで「良いものだ」と思う本で、調べたら実在の本だったので思わず買ってしまっていた。「背景の問題」というのは、例えば日本の小説では、女性が電車の中で「東京スポーツ新聞」を読んでいる描写があったら、それだ