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前回開催から約1年経過しましたが、今回は4月21日(日)午後、大阪大学外国語学部附属図書館(兼箕面市立船場図書館)の一室をお借りして、2024年度第1回「中国語書籍を読もう会」を開催しました。追跡が出来る記録によると最初の読書会は東京の池袋で2018年1月に開催し、魯迅について参加者の皆さんと喧々諤々語り合いました。その後6年間で15回の読書会を開催していますので、1年間に2回程度の割合で開催ということになるでしょうか。今回は図書館で4名、オンライン(ZOOM)で6名の計10名にご
やっと6冊目の『諶容文集』を読み終わりました。今回読んだ長編小説の『夢中的河』にはがっかりさせられました。長篇小説「夢中的河」:党からの要請に基づき多くの作家が書いた環境保護小説のひとつ。ご本人は結構気合を入れて書いたようですが、テレビドラマ風の内容は陳腐で、創作手法に斬新さは全く見当たりませんでした。中篇小説「人到中年」:1980年代に中編小説コンクールでトップの成績で一等賞を受賞した作品。中年になってもヒラ医師扱いのまま献身的に大病院で働き、結果心臓病で倒れ重体となってしまう女性
4月7日(日)時点で発表者6名、オブザーバ5名の計11名が参加予定です。【参加費無料】お申込は「こくちーず」経由でご連絡ください。折り返し案内状と自己紹介シート様式を送付します。1.催事名:「2024年度中国語書籍を読もう会」2.目的:中国語書籍の原書または翻訳本を通じ、①現代中国に対する理解をより一層深め広めると共に、②世代や職種や環境の違いを超え参加者間の親睦を図る。3.方法:読書会では「発表者」は一人10分で自分の好きな中国語書籍の内容や注目点等をご紹介頂
『諶容文集』全6巻の第5巻を読み終わりました。後2巻(第1巻:長編小説と第6巻:散文雑文)残っています。個人的に彼女の作品で面白いのは中篇小説に多いと考えているのですが、諶容自身は短篇小説を書くのが好きと言っています。しかし諶容のデビュー作2作品は共に長篇小説です。あまり良く解らない作家さんです。(^-^;)今回気になった短篇小説は以下の通りです。「褪色的信」文革時の農民青年と知識青年女子の恋愛を描いています。女性が北京の医学院に進学したことにより、二人の関係は変化していきます。
計画の300冊を達成しましたが、特に何の感慨もありません。史鉄生の短編小説《命若琴弦》に出てくる盲目の旅芸人が、亡くなった師匠の言いつけに従って二胡の弦が千本切れるまで演奏した後、更に黙々と演奏し続けたのが解る気持ちです。先はまだまだ長いです。(ブログはとりあえず3月末まで続けるつもりです)この本は以前に読んだ銭理群の《北大演講録話説周氏兄弟》の続編にあたります。口頭でなされた講義を文章にまとめたものですので、中国語自体もそれほど難しくありません。魯迅についてより知りたい人向けの仕様に
40年間まじめに勉強してこなかったので、中国語も中国現代文学も今更ながら基礎力の無さにがっくり来ています。しかし「千里の道も一歩より」といいますので、高名な先生の専門書や入門書を読み始めています。今回は銭理群先生の著作から、魯迅に関する本を選んでみました。内容は北京大学で行った魯迅・周作人に関する12回の講義録を活字にしたものです。とてもインフォーマティブで、これまで知らなかったことを知り、気づかなかったことを気づかせてくれます。40年経って中国は大いに変わりました。===========
この本は、240冊目に紹介した楊健の「1966-1976的地下文学」の元本です。具体的には、「1966-1976的地下文学」は20年前の2013年に中央党史出版社から出版され、今回の「文化大革命中の地下文学」は、30年前の1993年に朝華出版社から出版されました。これまで外に現れてこなかった文化大革命時の地下文学をこれだけ幅広く取り上げているこの本は非常に貴重です。一方、学術的なまとめ方がされていなく、どちらかと言えば報告文学(ルポルタージュ)的なまとめ方、あるいは総花的なまとめ方がされて
この本は中国当代文学史資料叢書シリーズの中の一巻です。シリーズではこれ以外に「傷痕文学研究資料」「反思文学研究資料」「新写実小説研究資料」など、計16冊が出版されています。この本の面白い点は、茅盾文学賞の作品選定基準が曖昧で、受賞すべきでない人が受賞していることをコテンパンにけなしている所です。掲載されている評論によると、少なくとも第1回、第2回そして第8回の選出作品は基準がおかしいということです。恐らくは、第1回は魏巍「東方」<解放軍系作家の作品>、第2回は張潔「沈重的翅膀」(修訂
中華人民共和国では不遇の人生を送った作家沈従文の半生を描いた自伝です。伝記以外に関係者とやり取りをした書簡や評論なども多数収められています。沈従文は1902年湖南省の湘西に生まれました。当時、湘西は少数民族が多く、他の地域からは隔絶された場所として存在していました。沈従文はそこで小学校を卒業するかしないかの時に地方軍閥に入り書記の仕事をします。しかし学問への夢は捨てがたく、書記の仕事を辞めて北京へと上京します。出版社を開く計画の友達の勧めによって、1931年に湘西で過ごした期間(1902年~1
復旦大学中文系の陳思和教授が、中国現代文学が専攻ではない大学生の一般教養カリキュラム向けに書いた教科書。そのため、15コマ分の内容が用意されています。非常に濃密な内容が書かれています。特に魯迅の「狂人日記」に関する記述は群を抜いて中身が深いです。現代文学で魯迅研究が一番進んでいるからかもしれません。魯迅以外には、周作人の散文集「知堂文集」、沈従文の中編小説「辺城」、曹禺の戯曲「雷雨」、蕭紅の長編小説「生死場」、老舎の長編小説「駱駝祥子」などの名作が題材に挙げられています。元の題
復旦大学中文系の教授であり、著名な中国現当代文学者でもある陳思和氏による巴金の伝記。これまでにいくつも巴金に関する伝記は出版されていますが、この本は巴金の人格形成に焦点を当てていて、とても興味深いです。魯迅の後継者として新文化運動の理論的成果を文学へ落とし込み、理論の文学作品への具体化を積極的に行い、数多くの読者をひきつけた巴金について書かれています。また巴金の作品を読んでみたくなりました。全5章ありますが、既に当初予定の15万字を超えたため、第6章と第7章は書かずに筆を置かれていま
北京十月文芸出版社が出版している「周作人自編集」を全て校正している止庵が書いた「周作人伝」です。止庵という人はとても面白い人で、元は北京医学院口腔系(現北京大学医学部口腔学院)を卒業した歯科医ですが、文学が好きすぎて文学研究者やエッセイストになった人です。周作人は戦前の中国で一時期、魯迅を超える知識人として、また北京大学教授として活躍しました。しかし、戦後になると漢奸として国民党に囚われ、その後南京の監獄から釈放されるも、共産党下では北京で蟄居生活を命ぜられます。晩年は作家協会などの協力を
魯迅の弟の周作人の伝記を書いた本です。これまで中国国内では日本におもねた漢奸としてみなされ、厳しい評価をされてきた人ですが、この3、40年間で風向きが変わってきたようです。そのきっかけになった一つが銭理群教授が書かれたこの本です。周作人は中国の知識人としていろいろな仕事をしていたことが、本を読んで良く解りました。私のおすすめの一冊です。===================================書籍名:《周作人伝中国現代作家伝記叢書》作者:銭理群出版
読み応えのある純文学を久しぶりに読み終わりました。今は満足感で一杯です。第10回茅盾文学賞(長編小説が対象)を受賞した作品ということで読み始めました。この小説は陝西省の地方演劇である「秦腔」をテーマにしています。十代もまだ下の方の田舎の少女が、「秦腔」の劇団に炊事員として入ったことをきっかけに俳優となり、自ら人生の道を拓きはじめます。そして、中国だけでなく海外でも名声を得るトップ女優となり、50歳を過ぎて後継者を育成しますが、その結果、自らはトップ女優の座から退かざるを得なくなるりま
「名家通常知識講座書籍シリーズ」の一冊として、魯迅研究家の銭理群先生が気合を入れて著作した、中学生・高校生・大学生および大学院生向けに書かれた本です。私は今更ながらこの本を読んで、小説集の「吶喊」「彷徨」以外に、魯迅の雑文に関する幅広い知識を得ました。銭理群先生が凄いのは、魯迅の作品について言及されている作品や範囲が極めて広いこと。早速、銭先生の別の面白そうな本をインターネットで注文しました。今から本の到着がとても待ち遠しいです。==============================
北平(現在の北京)に所在する役所(財政所)でスタッフとして仕事をする老李さんは、気の合わない奥さんと離婚したいと家庭内で問題を抱えています。この小説は老李さんを切り口として、大都市に住む平凡な知識分子たちの考え方や当時の時代性、そして社会を描き出しています。また、中国的な伝統文化に対しても多方面から考察を加えています。書籍に付いている帯では「老舎個人が最も満足していた成熟の作品」、「中国の知識分子を書き尽くした小説は、一冊は『離婚』と一冊は『囲城』」と紹介されています。ただ個人
中国現代文学は1915年に雑誌「新青年」(元は「青年雑誌」という名前の雑誌)が出版されたことから「新文化運動」が始まったとされています。しかし、この本では「新文化運動」という呼び名は自分たちが付けたものではなく、反動派が勝手に付けた貶意のあだ名であり、それを逆手に取って自分たちは「新文化運動」という名前を使うようになったということが紹介されています。今となっては五四新文化運動の発生史を明らかにするために、歴史の場面を再現することは不可能ですが、作者は細かな事例を深堀りすることによって
1994年に書かれた張抗抗本人の家族史。中国の解放前から解放後の、1.母のこと、2.母方の祖母と父方の祖母のこと、3.父のことが主に描かれています。小説(フィクション)なのか、小説の形を借りた家族史なのか、家族史の形を借りた報告文学(ルポルタージュ)なのか良く解りませんでした。良く解らないところにこの本の良さがあります。赤色にもいろいろありますが、書名の「赤彤丹朱」に「紅」が混じっていないのがミソです。中国現代史が解らずにこの本を読むと、何を書いているのか理解できませんが、書かれてい
開催12日前で10名様がご出席予定です。その内発表者は4名、オブザーバーは6名です。発表者にまだ少し枠があります。発表者でもオブザーバーでも結構ですので、参加をご希望の方はご一報ください。ーーーーーーーーーーーーー以下の通り、2023年に入って初めての「中国語書籍を読もう会」を開催する計画を立てています。参加をご希望の方はご一報いただきますようよろしくお願いいたします。1.件名:第6回「中国語書籍を読もう会」2.開催日時:2023年3月18日(土)14:00~16:003.
周作仁のエッセイ集です。古文と現代文が混ざった文章で少々とっつきにくいですが、それでも読み進めているうちにだんだんと慣れてきました。特に興味を引いたのは、"关于阿Q"という5ページほどの短い文章でした。===================================書籍名:《周作人自选集秉烛后谈》作者:周作人出版社名:北京出版集团公司北京十月文艺出版社出版日:2012年1月第1版2012年2月第1次印刷
今日はちょっと遠出して、空中庭園のあるミニシアター「シネ・リーブル梅田」に日中合作映画《安魂》を見てきました。「安魂」とは「魂を安らかにする」ことですが、大人になった子供の気持ちを理解しないまま息子に死なれた権威主義的な父親が、息子の死後後悔の念から息子について理解しようと、もがき苦しむ映画です。《安魂》は周大新という作家が書いた対話形式の長編小説を映画化したものです。小説自体は2012年の《当代》第4期に掲載され、2012年8月作家協会より他行本として出版されました。この映画
抗日戦争の時代、中国国民党は日本軍の追跡から免れるため、黄河の堤防を破壊し当たり一面を水浸しにして撤退する時間を稼ごうとします。しかし、そのために周囲の民衆は故郷を追われ、飲まず食わずの状態で流浪を強いられます。この小説では、その時民衆はどのような苦労をしたかが複数の家族の視点から描かれています。李准はこの本で第2回茅盾文学小説賞(1982年~1984年)を受賞しました。個人的にはあまり期待していなかったのですが、情景がイメージ性豊かに描かれていて、外国人でも当時の事情が想像できそう
1月22日(土)午後、第4回「中国語書籍を読もう会」を開催しました。今回も大阪の事務所とZOOMのハイブリッド方式での開催となりました。第4回は計12名の方々にご参加いただきました。関東は東京都、埼玉県、千葉県から、関西は大阪府、京都府、奈良県からと、数多くの都府県からご参加頂くことができました。今回も、中国の農村の現状を鋭く描いた問題作品、今後の映像化も噂される超有名なSF小説、ネット内のいじめが原因で女学生が自殺するサスペンス小説、戦時中に西村真琴と魯迅の間でやり取りされた友情に
30数年前(日中戦争時)故郷の農村で遊撃隊の隊長をしていた于而龍は、前妻の芦花を敵の特務に銃撃され殺された歴史があります。いつか故郷を訪問して墓参りしようと考えていた彼ですが、解放後大きな国営企業の責任者となり、1977年まで妻の墓参りと調査のため故郷に帰ることが出来ませんでした。故郷の農村では良家のお坊ちゃん、遊撃隊では老戦友だった王緯宇ですが、根っからの世渡りのうまさにより革命委員会の主任に成り上がり、于而龍の上司となります。于而龍は、能力があり自分のことをいつも気にかけて
今回は160ページほどの《永日集》を読みました。出来るだけ早く周作人の作品集を読み終わって、胡適の作品集に移りたいのですが、道のりはまだまだ長そうです。後は白話文学に古代漢語に、、、====================================書籍名:《周作人自选集永日集》作者:周作人出版社名:北京十月文艺出版社出版日:2011年3月第1版2011年3月第1次印刷自己評価:★★★
児童文学に関する文章なので簡単だろうと思って読み始めたら、私の苦手な古文で書かれていました。とりあえず”走马观花”で駆け抜けました。先日漢文の単語と構文勉強のために、単語カード(死語!)をいくつか買ってきていたのを思い出してしまいました。それにしても、子供たちの健全な成長のためには児童文学に力を入れないといけないと、五四文化運動の時代(100年前)に考えた周作人先生は只者ではありません。「中国新文学の源流」は解りやすい文章でした。さすが学校の先生をやっているだけあって、口語で理
《自己的园地.》、《绿洲》、《茶话》の3パートからなる文芸評論と雑文(エッセイ)集です。この本を読むと、周作人の興味の範囲が極めて広範囲に渡ることに驚かされます。神話、歌謡、詩から童話、エスペラント語まで多岐のジャンルに渉り話が語られます。また日本についての記述も多く、極めて造詣が深いのが良く解ります。今の世にこれぐらい日本のことを理解している中国知識人がいれば、日中間の交流はもっと進むのにと思います。しかし、これほど日本のことを理解していた周作人ですが、日本に近づきすぎたこと
閻連科(エンレンカ)大好きな作家のひとりです。ゆっくり読み始めたものの一日で読了。横軸に食欲・性欲・金欲を貪る人間・社会・宗教界、縦軸に異教徒間の恋愛を描いています。主人公は仏教徒の玉尼(若くして出家した女子)・雅慧(ヤーフイ)18歳、お相手は20代の道士(道教)・明正(ミョンジョン)。明正が雅慧の師に平気で嘘をつくあたりから、読者を楽しませつつも強い力で引っ張っていく作者独特の世界観が広がっていきます。彼女の師は最初から最後まで作品の中の「良心」であり(ここが救いです)、指導を受け
北京大学が出版している中国現代文学史の教科書です。1980年代以降各地方の大学が現代文学史を出版してきましたが、これまで決定版となるようなものはありませんでした。北京大学がこのようなレベルの高い教科書を発行すると、今後各大学での現代文学史の教育内容は北京大学の考え方に収斂していくように思われます。とはいってもこの本は480ページ(70万字)あり、単に歴史を羅列するだけではなくその裏に隠れたエピソードなどもふんだんに書かれていて、とても興味深いです。大学に行って受講しなくて
読書会を前にこの本を速読しました。莫言はこれで3冊目となります。この本を読んで一番最初に感じたのは、茅盾文学賞を取ったのは、どうして《生死疲労》ではく《蛙》だったのか。おそらくそこには大人の事情があったのでしょう。この小説はコロンビアのノーベル文学賞作家であるガルシア・マルケスが使ったマジックリアリズム(幻魔现实主义)という手法を使っているので、小説はいかようにも解釈できます。《生死疲労》は、私がこれまでに読んだ中国の現代小説で、世界観が一番広くて大きい小説でした。《蛙》も確か