1994年の放送開始以来、倒叙ミステリーの金字塔として君臨した『古畑任三郎』。その第3シーズン(以下、3rdシーズン)は、シリーズとしての「完成」と「変奏」が見事に同居した、極めて質の高いシーズンである。脚本家・三谷幸喜と主演・田村正和の阿吽の呼吸は頂点に達し、マンネリズムという長期シリーズの宿命を、キャラクター配置の妙と脚本の深化によって打破している。特に、イチローやSMAPといったスペシャル版の祝祭的な雰囲気とは一線を画し、連続ドラマとしての構成美と、人間の「業」に焦点を当てた重厚な物語群は