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三次創作小話「忘羨その後」(121-11)(静室にて)直後、顧シアンが戸を叩き、「入ってもよろしいですか?」ジンイーが戸を開け、「あまりにも辛そうで、声もかけられません」シアンは何も言わず、ウェイインの肩を抱きしめた。ウェイインはシアンの胸に顔を埋めて声を上げて泣き出した。ウェイインの掌をランジャンの左胸に当て、「ワンジー殿は戦っています。ワンジー殿が諦めるまで、私たちも諦めてはいけません」ウェイインはうなずいて、「でも、黄ヨウでも治せないんだ」シアンは「黄ヨウの言葉を伝え
三次創作小話「忘羨その後」(121-10)(静室にて)黄ヨウはウェイインに、「孤児院に少し心配な子がいます。昼食を兼ねて、様子を見てきます」と言い置いて、出て行った。(孤児院にて)「どうしても食べてくれません」スーチンが黄ヨウに懇願する。「何か滋養のある薬はないでしょうか?このままでは、スーレイやスーシャオのようになってしまいます※」話しかけても、反応が薄いハイユン。ハイファはそんなハイユンの衣を握りしめ、離れようとしない。「ユンユン、食べないと痩せ細って、まあまが心配
三次創作小話「忘羨その後」(121-9)(静室にて)ジンイーは、スージュイと黄ヨウに語った。ハイユンとハイファが今、孤児院にいること、そして、その訳合も。三人はやるせなさ*に、暗い顔で黙り込んだ。そこに、沢蕪君からスージュイに昼食の誘いが届いた。ジンイーは、つぶやく。「それにしても、なぜ、ウェイ師兄は黄師叔に助けを呼んだのだろう。沢蕪君でもなく、顧シアン殿でもない。なぜだ?」「おそらく本当に呼びたかった人は、抱山散人なのでしょう。母であり、父であり、敬畏する唯一の師であり、至
三次創作小話「忘羨その後」(121-8)(寒室にて)ジンイーは、動揺を抑えきれない。「縁側から落ちただけでですか?超人のような強靭な肉体と精神力を持った方が?数々の修羅場*をくぐり抜け、危急存亡*の時も生き延びてきた方が?」「今は待つしかない!」沢蕪君に似合わぬ強い口調に、はっとして、「すいません」(言ってもせんない事を)と、ジンイーは身を縮こませた。ジンイーは、ヤク家での一部始終を沢蕪君と顧シアンに語った。・・・・・・・・「藍先生は、ユンユンに、『含光君とウェイ師兄に会
三次創作小話「忘羨その後」(121-7)(静室にて)その日は一晩中、ウェイインと沢蕪君とで、霊力を注ぎ込み、ランジャンの回復を待った。早朝、スージュイと黄ヨウが静室を訪れた。沢蕪君は藍叔父からの伝文を受け取ると、寒室に戻って行った。「霊脈も力強いです。霊力はもう必要ないでしょう」ウェイインは、黄ヨウの言葉に安心して、仮眠をとろうとするが、気が立って眠れない。ランジャンの手を握りしめ、声をかける。「早く起きて、俺の相手をしてくれよ。今まで悪かった。お前を放って置いて。また、二
三次創作小話「忘羨その後」(121-5)(静室にて)スージュイは、温ジャンを黄ヨウの背から降ろし、「それで、どんな治療を?」と尋ねた。「血が止まるのを待って、傷口を癒合します」「癒合?」「傷口は放っておいても、自然にくっつきますが、法術で癒合させましょう」「さすがに抱山散人のお弟子さんですね」沢蕪君は敬服している。「それで治るんだな」ウェイインがすがるように言う。「そこから先が難しいのです。骨の内部で出血したり、脳に損傷があった場合、深刻な状態になることがあります」ウェイ
三次創作小話「忘羨その後」(121-4)(静室にて)「骨折はしていません。この程度の高さなら、脳の損傷もないと思います。部屋の中へ運んで下さい」ウェイインが胸を抱え上げ、スージュイが腿を抱えてみたが、縁側の上まで持ち上がらない。沢蕪君が軽々と横抱きにして、ランジャンを寝床まで運ぶ。縁側に乗せた足が横滑りしたウェイイン。「おおっと」なんとか堪えた。(さっきの夕立のせいか?)足元に酒甕が転がっていた。(あっ、犯人は俺か?ランジャンはこのせいで足を滑らせたのか?)ウェイインは、
三次創作小話「忘羨その後」(121-2)夕立の後に、穏やかな西風が吹く。静まり返った山の中、ひぐらしの鳴き声がもの悲しく響いている。(静室にて)雷鳴で酔いから醒めたウェイイン。「ランジャン、座学がそろそろ始まるんじゃないか?」返事はない。「また、むっつりか。昔のお前に戻ったみたいだな」ウェイインはふらふらと出て行った。(雨上がりは、やけに蒸すな)どこへ行くあてもなく歩いていると、子ども達の楽しげな声が流れてくる。逃げるように冷泉に向かう。岩の上に座り、足を水に浸して空を見
三次創作小話「忘羨その後」(121-1)(120)のー続編です。(寒室にて)沢蕪君は、ジンイーに書状を手渡した。ジンイーとスージュイは頭をくっつける様にして、文字を追った。・・・・・・・・…とうとうハイトルウが倒れました。私よりも藍先生を信頼しています。どうか、一度会いに来て頂けないでしょうか。藍先生におすがりするしか、他に手立てが思いつきません。幼いながら、子ども達は新しい環境に馴染めず、緊張していたように思います。ハイユンは、やはりヤク義父を思い出すのでしょう。ハイトル
三次創作小話「忘羨その後」(120-12)(温家にて)⭐️「そういえば、ハイユンとハイファはどうしていますか?あちらの暮らしに慣れた頃じゃないですか」「それが、なんの音沙汰もないんだ。『無事な証拠ですよ』と沢蕪君はおっしゃってますけど、」「藍先生はどうですか?何か変わったことはないですか?」「それそれ、まるで人が変わったようで、『警備隊員に意見を募り、皆で協力しよう』なんて、信じられるか?あの藍先生がだぞ」苦い煎じ薬を飲んだような顔で、「鼻歌まで歌っていた」「実は、私も信じ
三次創作小話「忘羨その後」(120-11)あれから、十日ほど経ち、座学は中止と決まった。ウェイインとランジャンは、変わらず、二人で静室にこもっている。(温家にて)ジンイーが温家を訪ねた。スージュイ、黄ヨウと会って話がしたかった。ジンイーは、温ジャンを膝の上に乗せて、手遊びをしている。⭐️「息抜きに来たんだ。藍家にいても、雰囲気がしんどくて、どんより曇り空みたいに、今にも雨が降りそうな、重い空気感、分かるだろう?」「お二人が一緒に引きこもるのは、初めてですね」「含光君が閉関し
三次創作小話「忘羨その後」(120-10)(道場にて)翌日から、藍シンはルオシーと修練に励んだ。沢蕪君の立てた日課は、詳細で厳格なものだった。「あなた達と同年代の子弟たちは、これを軽々とこなします。霊力がなくても、基本は一緒です。まず、体力、気力を向上させる事。頑張りましょう」藍シンたちの昨日の顛末を聞いて、沢蕪君は悲しそうに微笑んだ。「では、ワンジーたちの看病はもう限界だというのですね」「お側にいても、これ以上できることはありません。お手上げです」「それでは、二人にお願いが
三次創作小話「忘羨その後」(120-9)(静室にて)藍シンが、いきなりウェイインの手から酒甕をひったくった。「いい加減にしてくれ。放っといてほしいと言ってるんだ」ウェイインは立ち上がり、出て行こうとする。「どこへ行くんですか?」藍シンはウェイインの手首をつかんだ。「酒の呑める所だ」藍シンを振り払おうとする。藍シンは、振り払われた拍子に尻もちをついてしまった。ルオシーが「きゃっ」と小さな悲鳴を上げた。藍シンはウェイインの足にしがみついた。二人は、「離せ」「いやだ」を繰り返し
三次創作小話「忘羨その後」(120-8)(道場にて)「夫婦けんかですか?止めなくていいんですか?」口走った隊員の背中をジンイーがどついた。「真剣勝負がわからないのか?」剣がびゅんと唸る。剣と剣が、“がちっ”と叩き合い、“きぃん”と弾き返す。腕が翻り、剣が閃くと、周囲に風が巻き起こり、空気が揺れる。藍シンとルオシーは呆然と見ていたが、その緊迫感に耐えられず、そっとその場を離れた。入れ替わりに藍叔父が現れた。一戦、二戦と見て、「やめい!」鋭い一声に、二人は剣を引く。自然に拍手
三次創作小話「忘羨その後」(120-7)(静室にて)藍シンとルオシーが、二人の世話をするようになってから、四日が過ぎた。ウェイインとランジャンの熱は下がり、温ニンは岐山へ帰って行った。ウェイインは酒を呑み、縁側でごろごろと過ごし、ランジャンは座禅を組み、瞑想を続けている。(道場にて)毎早朝、藍シンは沢蕪君の隣に正座し、ルオシーの修練の様子を見ている。ルオシーは、落とした木刀を拾って構えると、すぐまた打ち込む。シアンの木刀に弾き飛ばされる。もしくは、軽やかに躱(かわ)され、木
三次創作小話「忘羨その後」(120-6)(静室にて)温ニンは静かに言う。「ジンイー殿のおっしゃる通り、尋常ではない丹力をお持ちです。長引いたとしても、風邪はじきに治るでしょう。ですが、、、沢蕪君は閉関されていた経験がありますから理解して頂けると思います」沢蕪君はうなずいて、「心的な苦痛は、だんだんと薄らいでいくのを待つしかありません」「また、数ヶ月も苦しむ姿を見ているだけなんて、耐えられません」※ジンイーは下を向いたまま、ぼそぼそと言った。誰も慰めの言葉一つ出ない。水を打っ
三次創作小話「忘羨その後」(120-5)(静室にて)ウェイインとランジャンの間に座っているのは、そのふくよかな後ろ姿形から、女人だと分かる。「この方は、林(りん)先生です。疫病の第一人者です。何年も前ですが、ニン叔父と疫病の治療をされたことがあります。今日は、たまたま診療所においでになられた所を、ここまで来て頂きました」スージュイが言うと、「温ニン殿には、いつも貴重な薬草を分けて頂いています。今回は、私の出番はなかったようです」緊張が溶けたように微笑んだ。不思議な魅力の持ち主
三次創作小話「忘羨その後」(120-4)(道場にて)藍叔父は、二畳ほどの大きな紙を取り出した。細かな地図に、赤い丸印が七つ。「これが、私の庵(いおり)だ。君たちの見張り台の位置がこれだ」赤いばつ印が六十箇所ほど。『我々が把握していない見張り台まで…』※藍叔父は、赤い◯から赤いXに赤い線を書き加えていく。『見事に放射状に位置している』※『赤い菊の大輪のようだ』※「そして、五大世家の領地は、」と大きな円を書き入れた。『重なりや隙間もありますが、ほぼ全域を網羅していますね』※
三次創作小話「忘羨その後」(120-3)(静室にて)その夜、二人とも高熱を出した。熱は、上がり下がりを繰り返し、三日経っても快くならない。ランジャンは両手を胸の上に組んだまま、目を閉じ身じろぎ一つしない。一方、ウェイインは暑いし、体も熱いと、ごろごろ寝返りを打ち、うんうん唸っている。藍シュウとサンランが看病を買って出た。冷泉の水を汲んで来ては、その水で体を拭いて、なんとか熱を下げようとしている。「ワンジーが他人に体を触らせているのか?」藍叔父は信じられないという顔だ。「藍シュウ
三次創作小話「忘羨その後」(120-2)翌早朝、涼しい風を受けながら、ウェイインとランジャンは、山の上を飛んで行く。前方には、見渡す限り真っ白な入道雲が浮かんでいた。とりわけ背の高い入道雲が二つ、寄り添っている。右側だけが雨雲に変わるのか、灰色がかっていた。「ジージー、シェンシェン」とファファが指差した。ウェイインは、くすっと笑って、「白い紐と赤い紐をかけてあげようか?」ファファは、懐に手を入れて、うさぎのぬいぐるみを確かめると、雲に手を振っている。薄い雲の中に入ると、ユンユンは
三次創作小話「忘羨その後」(120-1)(119)の続編です。(静室にて)「藍先生は、私が嫌いなんです」ジンイーがウェイインの膝の上に突っ伏して、しくしくと泣き出した。ランジャンの視線に気がついたウェイイン。ジンイーの体を起こして、「藍先生はまだいるのか?」「はい、清談会の打ち合わせに、相談役として出て頂くように、沢蕪君が頼んでいましたから」ランジャンはユンユンとファファに本を読み聴かせている。ユンユンは目で字を追っているようだが、ファファは本を叩いてみたり、頁をめくろうと
三次創作小話「忘羨その後」(119-14)(寒室にて)藍叔父がハイトルウについて話し始まると、顧シアンは、リェンを抱き上げ、ウェンの手を引いて奥の部屋へ。・・・・・・・・🌙「そうですか。ハイユンとハイファを母君の元へ…。喜ぶべきことですが、ワンジーたちには酷ですね」沢蕪君の顔が曇る。「分かっている。ハイの窯元から聞いた。彼らは、あの子たちの親代わりになろうと奮闘し、精一杯、愛を注いでくれたと。敬意と感謝で、頭の下がる思いだ」「それにしても、初めに私たちに相談されなかったのは
三次創作小話「忘羨その後」(119-13)(静室にて)「『お二人にも何か差し上げたいが何がいいでしょうか』と聞かれたので、それは決まってま…」ホアイサンは、莫シュエンユーの唇に、人差し指を当て、「しいい」と言って、「それは、できあがってからのお楽しみにという事にしましょう」ウェイインが「俺たちは礼は受け取らない」と素っ気なく言うと、「わざわざ、一から作ってくれるそうです。あちらのお気持ちなのですから、快く受け取るのが礼儀です」とホアイサンに言い返された。「そうだな、お前が正しい」
三次創作小話「忘羨その後」(119-12)(寒室にて)ウェンは藍叔父の膝の上に座ったが、リェンは顧シアンにしがみついている。「やっぱり、顔が恐いんだ」ウェイインがランジャンに囁くと、ジンイーが思わず、ぷっと吹き出した。藍叔父はため息をついて、「私は変わってないか。少しは険*が取れたと思ったが、、、」「なんと言ったらいいか、凛々しい顔立ちのせいだ。厳しいとか、気難しいとか、堅苦しいとかではなく、」「ウェイイン」とランジャンが止めた。「どつぼにはまりましたね」ジンイーは、にやつ
三次創作小話「忘羨その後」(119-11)(寒室にて)子弟がはやる心を抑えて、小走りしている。「藍先生が、藍先生が戻られました」声を張り上げ、寒室の戸を叩いた。「兄上、よろしいでしょうか」ランジャン、ウェイイン、そして藍叔父が入って来た。沢蕪君は緊張した面持ちで言う。「父上の庵(いおり)を訪ねても、いつも居留守を使われて、四年前から、一度も会って下さらなかったのに」「すまん。お前には合わせる顔がなかった。お前は、毎月一日に来てくれていた。スージュイは毎月十五日。先月には、
三次創作小話「忘羨その後」(119-10)(ヤク家にて)その時、「客人です」という声が。開いた戸から、聶ホアイサンと莫シュエンユーの姿が見えた。「皆さん、私は大丈夫です。どうぞ、父の自慢の作品を見てやって下さい」ハイトルウが「ハイトルウ殿は俺たちが看ています。その間に、ユンユンとファファの話を聞かせましょう。きっと元気が出ます」ウェイインは満面の笑みで言った。(111-8)(111-9)「あまりに愛おしくて、守りたくて、ファファをおぶって講義に出たことがありました。その時
三次創作小話「忘羨その後」(119-9)(景徳鎮、ヤク家にて)「やはり、何を見ても、何一つ思い出せません」ハイトルウが窯場の弟子たちに会釈をし、微笑むと、弟子たちは、魂を抜かれたように、ハイトルウに見惚れている。最後に、寝所に入った瞬間、ハイトルウの表情がこわばった。真っ先に箪笥を開け、子どもたちの衣を手に取ると、その香りを嗅いで、「この香り、覚えています」と涙ぐむ。「もしや、子どもたちを思い出せそうか」ハイの窯元は部屋から出て、すぐに戻って来た。手にハイユンとハイファの似顔絵
三次創作小話「忘羨その後」(119-8)(山小屋にて)「ああ、分かった!」突然、ウェイインが大声を出した。「そうか、ユンユンとファファを雲深不知処に連れて来た男は、藍先生だったんですね!」藍叔父は表情一つ変えない。髭の一本さえ動かさない。ランジャンが言う、「窯元、街まで送りましょう。ハイトルウ殿はどうされますか?」「かなりの覚悟が要る。今日のところは、」ウェイインが言いかけると、「いえ、いつかは乗り越えねばなりません。藍老師のご恩に報いるためにも、景徳鎮に戻り、頑張ってみます
三次創作小話「忘羨その後」(119-7)(山小屋にて)「間違いない。ハイトルウです」ハイの窯元は膝まづき、女人の手に触れようとして、ためらった。(やはり、私が誰か分かっていないのか)涙が堰を切ったように溢れ出る。両手をつき、体全体を震わせて、涙をぽたぽたと落としている。ハイトルウはその肩に触れようとして、戸惑い、藍叔父を見た。藍叔父がうなずくと、ハイトルウは肩の上にそっと手を置いた。藍叔父を見て、「あなた様が娘を救ってくれたお方ですか。あまりに有り難く、このご恩をどうお返し
三次創作小話「忘羨その後」(119-5)(山小屋にて)ウェイインの体がびくっと動いた。「ウェイイン、大丈夫か?」ウェイインは顔をしかめ、目を開けた。「お前こそ、けがはないか?」と言い、上体を起こした。「十六人分の働きをしたのです。休息を十分とって下さい」ムーチンが労わりの言葉をかけた。女人がランジャンとウェイインに茶を淹れて「どうぞ」とすぐそばに置いた。ウェイインはランジャンにもたれたまま、茶をすすっている。ランジャンは、女人に話しかけた。「実は、娘を捜している老翁がい